第34回 東京スマートドライバー

2015/11/19

今回は首都高の交通事故を減らすプロジェクト「東京スマートドライバー」を追跡。
コメントは事務局 林潤一郎さんでした。

「東京スマートドライバー」が 放送作家の小山薫堂さんを発起人に発足したのは2007年8月。
2006年当時、首都高では年間約1万2,000件の交通事故が発生していました。
道路面の事故対策はしていたものの、それまで以上の効果を生み出すにはどうするか?
そう考えた時に問題解決には物事の片側からだけ見ていると行き詰る。
つまり、道路の管理者だけが交通安全に一生懸命になっていてもダメで、
ドライバーの意識が変わらないと交通事故は減らないという考えがきっかけになりました。

そこから練られたプロジェクトが「東京スマートドライバー」。
世界一、難しい道だと言われる首都高で事故が増えていなのは、
ドライバーの運転にも交通事故が起きない秘密があるのではという仮説が立てられました。
クルマを運転する人が持つ、目に見えないコミュニケーショ力ではないだろうかと。

東京スマートドライバーは道路や車などのハード面からではなく、
人=ソフト面から交通事故を減らすため「交通安全」をブランド化して、
まずは、その意思をドライバーたちに表明してもらうことを目指しました。

さらに、交通安全を目指す時、ふつうは悪い運転を注意します。
これを逆転の発想で良い運転をしている人を誉め、
誉められれば、もっと良い運転をしたくなるという気持ちの連鎖で
ドライバー1人1人が運転に注意深くなる事を目指したのです。

具体的な活動としては交通安全のマインドをブランド化することからスタート。
デザイナーの水野学さんにシンボルを作ってもらい、
安全に走ることこそカッコイイと共感してくれる人は、
東京スマートドライバーのロゴマーク、ピンクチェッカーフラッグを車に貼って、
安全に走る事を宣言しようとドライバーの意識変革を提言しました。

首都高上には交通安全を想起させる大弾幕を掲げることにします。
それをスマートメッセージと名付けました。
言葉は「スピード落とせ」「カーブに気を付けろ」といった
よくある注意喚起ではなく「無事に辿りつく事がゴールです」というメッセージで
「この先には大事な人が待っているんだ」ということをドライバーに伝えました。
そして、発足から1〜2年で、相関関係は明確に証明できませんが、
首都高の事故は減っていったのです。

東京スマートドライバーは抽象的だけではなく、具体的なアプローチもしています。
わかりやすい英語で安全運転に洗練されたキャッチコピーをつくり5つのアクションを推奨。


「good Accele」 ー 時間帯や道路状況に合わせてスピードを変えて走る


「early brake」 ー カーブ手前でなるべく早めに減速してからカーブに進入する


「winker communication」 ー ウィンカーのタイミングや渋滞時のハザードなど
                   車を降りなくてもドライバーがコミュニケーションをとるようにする


「keep distance」 ー 前の車との距離は学校のプール1つ分を目安にとる


「use information」 ー 道路の状況は運転を始める前に、
               なるべく頭にルートや渋滞状況を入れておく


この東京スマートドライブが首都高だけではなく、
全国の交通事故を減らすきっかけになるかもしれません。
首都高に限らず、心の「スマートドライバー」を目指しましょう。