2017.07
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【学生コラム】農業革命と人工知能

こんにちは!あいうえお順でブログのトップバッターになってしまった
未来授業学生員会・東京大学文学部3年、島根出身の安部晃司です。

本日、いよいよ未来授業の募集が開始しましたね!
これから、よりたくさんの人へ、より深く未来授業の魅力を伝えられるよう、学生チームとして活動していきます。

未来授業、今年のテーマは、
「AIは産業・社会の何を変えるのか?
シンギュラリティ後の世界で私たちはどのように生きていくのか。」

私は最近、『サピエンス全史』(ユヴァル・ノア・ハラリ著)という本を読んでいます。現生人類の誕生から現代にいたるまで、人類がいかにして文明を発達させてきたのかを「認知革命」「農業革命」「科学革命」という3つのターニングポイントに分けて論じている本で、書店でも平積みになっているのをよく見かけます。
その中でも特に、人類が狩猟採集生活から栽培・飼育生活に転換した農業革命の記述で、小麦栽培について印象的な一節がありました。

 「私たちが小麦を栽培化したのではなく、小麦が私たちを家畜化したのだ」

なるほど!小麦の立場に立ってみると、より多くの子孫を広い範囲で残すために、人間にせっせと世話をさせている、と考えられるわけですね。
しかも、著者のハラリによると、狩猟採集生活よりも楽になると思って始めた栽培の方が、かえって作業や拘束時間が長いというのです。つまり人間は、自分たちの生活を楽にしようと思って小麦栽培を始めたのに、どっこい、わざわざ身を削って小麦という種の繁栄に貢献していたわけです。
このように、自らが利用している側だと思っていたら、実は利用されていた、なんていうことは実はよくあるのではないでしょうか。
至るところで飛んでいるwi-fiは非常に便利ですが、GPSよりもはるかに高精度で私たちの位置情報をつかんでいます。
私たちが当たり前に使っている交通系ICカードも、「どんな年齢層の、どの性別の人が、何時ごろに、どこからどこまで、何線を利用して移動したのか」という情報をデータとして提供しています。
スマホだって、日々私たちに様々な情報を届けつつ、私たちの情報をサービス提供者に送っているわけです。

私たちが便利だと思って使っているものが、思わぬところで、思わぬ形で、私たちを利用しているのです。
ちょっと怖い気がしてきませんか?

だけど、怖いからといって、wi-fiやICカード、スマホを使わないっていうわけにはいきませんよね。私たちの生活は、一度新しいものを受け入れると、(より機能的な代替品が現れない限り)それなしでは成り立たなくなってしまいます。
そこで、こうした便利なものとどう付き合っていくのかを考えていかなければなりません。
ハラリは、「贅沢品は必需品となり、新たな義務を生じさせる」といいます。

便利なものは欠かせないものとなるのですが、付き合い方を考えないと、私たちを幸せにしてくれるどころか、逆に負担を増やしてしまうようです。

Wi-fiやICカードにはあまりその性質は感じられないかもしれませんが、スマホには思いあたる節があるのではないでしょうか。

「付き合い方を考える」というのは、今すでに私たちの前に存在しているものだけでなく、これから私たちの前に現れるテクノロジーの結実についても必要な気がしています。
いざ、眼前に現れた時に考え始めるのでは遅いのかもしれません。あれよあれよという間に、なんとなく生活に入り込まれ、「使っているようで使われている」という状態になりかねません。

これから私たちの生活に大きく入り込んでくるものといえば、多くの人がAI(人工知能)を思い浮かべるのではないでしょうか。
AIが進化すると人間の仕事がなくなる!などという議論を聞くこともあります。が、そんな議論をしていても仕方ありません。早晩、私たちの生活がAIと大きく関わることになるのは明らかです。では、私たちは今、何を考えれば、AIとうまく付き合っていけるのでしょうか。
この問いは、「農業革命の際に欠けていた視点は何か?」という問いと重なります。
農業革命の時には、「生活が楽になりそう」と考えて始めた結果、かえって人間の生活を苦しめたそうです。その時、人類は何を「考えていなかった」のでしょうか。
それは「これから、私たち人類が、どのように命のバトンをつないでいきたいのか、どういう存在でありたいのか」といったことではないでしょうか。
こうしたことを考え、AIとどのように関わっていきたいのかをいうビジョンをもってAIを受け入れた時、私たちは幸せな社会をつくることが出来るのだと思っています。

 ぜひ一緒に、10月15日に、未来授業で考えてみませんか?
応募・詳細は、こちらから!https://www.tfm.co.jp/fes/form/
(文責:東京大学 文学部 3年 安部晃司)

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