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Dream HEART vol.618 俳優 升毅さん 映画「美晴に傘を」

2025年02月01日

今夜ゲストにお迎えしたのは、映画『美晴に傘を』で主演を務められました、俳優の升毅さんです。

升毅さんは、1955年、東京都のお生まれです。
近畿大学経済学部をご卒業されていらっしゃいます。

大学在学中の20歳で、俳優としてデビュー。
1991年には、劇団『MOTHER』を結成し、座長を務められるなど、大阪を拠点に、舞台役者としてご活躍されていた中、1995年、テレビドラマ『沙粧妙子-最後の事件-』で見せた演技に注目が集まり、以降、数多くのドラマ、舞台、映画作品などで、ご活躍中でいらっしゃいます。


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──それぞれが緩やかに変化していく軌跡

茂木:1月24日(金)より、YEBISU GARDEN CINEMAをはじめ全国で公開中の映画『美晴に傘を』なんですけども、まず作品について皆さんにご紹介しますと…。
北の小さな町を舞台に、喧嘩別れした息子の葬儀に出席しなかった父親・善次が、四十九日前に訪れた息子・光雄の妻・透子と、娘・美晴と凛たちに戸惑いながら、亡き息子への思いを馳せる様を描いた作品で、升さんは、この父親・善次を演じていらっしゃいます。
最初に脚本を読まれた時というのは、どういう印象だったんですか?

升:ここ何年か、家族だったりとか、親子だったりとか、兄弟だったりとか、コミュニティの人達の優しさとかその関係性で、人というのは成り立っているな、という作品だったりとか、そういう作品を結構多くやらせて頂いていて、その中の1つとして今回も読ませて頂きました。
最終的に心が温まるいい映画だな、と、特に派手さもないし、すごく淡々とした、本当に小さな町の中で起こっている小さな出来事なんだけど、すごく心に染みるな、と、それがすごく印象的でした。

茂木:本当にすごく人情物と言うか、人情の温かいところもある作品ですが、演じてみて、どの辺りがこの作品の魅力だと感じられましたか?

升:それぞれがそれぞれ、少しずつ少しずつ進化していくと言うか、変化していくと言うか。そういうのが、すごくゆっくりなんですけど、最終的には「皆ちょっとずついい方向に向かったな」っていう。そのゆっくりとした動きの中で、それぞれにちゃんとスポットライトが当たっていて、その過程がすごく素敵だなと思いましたね。

茂木:この美晴さんというのは、「聴覚過敏を持つ自閉症で、聞こえてくる様々な音を擬音語に変える才能を持つ」という、すごく個性の強い役だったじゃないですか。でも、本当に今の社会の中ですごく関心を持たれていることでもあるし、非常に現代的な作品でもあるかな、と思ったんですけれども。

升:そうですね。家族のあり方が色んな形に変化してきたりとか、今も色んな形があるというその1つの形の中で、実際に起こり得ることであろうし、そういう関係性を描いてるので、「日常」と言えば日常ですし、「現在」と言えば現在だな、という感じはすごくしますよね。

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茂木:この演じられた善次は、自分の気持ちを素直に表現することが難しい、という役でしたけれども、演技として難しいところもありましたか?

升:言葉にすることの楽さと難しさというのは、やっぱりあるんですよね。逆に言葉にしないこともあって、でも言葉にはしてないんだけど気持ちはあるので、その気持ちでいると、恐らくそういう表情になるのだろう、という。 だから、そういう気持ちを表情で出そうとしないでいいんですよね。
なので、それをちゃんと撮影してくださっていて、そういう表情に見えているということがOKなので、僕自身としては特に、セリフがないから困ることもないし、その時のその感情でいさえすれば、そういう空気、表情になっている、と信じてやっています。

茂木:ということは、俳優・升毅の現時点における集大成、みたいな役だったんですかね?

升:「集大成」とまでは言えないと思いますけど(笑)。でも、ここ何年か自分が目指していると言うか、心掛けている表現に、今回も非常にマッチした作品になったと思います。

茂木:そうですか。
そしてこの息子さんの妻・未亡人の透子を演じた田中美里さんが、公式ホームページのコメントで「升さんの背中の演技が忘れられない」というようなことを書かれていましたが。

升:いや、そんなふうに言って頂けるなんて、もう恐縮ですよ。恐らくは役として、自分の旦那さんのお父さん、「はじめまして」のお義父さんですし、「一体この人はどういう人なのか?」というのをずっと見ていらっしゃったからこそ、そういうことを感じられたのかな、と思ったんですけど。いや、ちゃんと見てくれていたんだな、という(笑)。

茂木:(笑)。
そして、この息子の娘である美晴さんを演じられた、日髙麻鈴さん。聴覚過敏という大変難しい役をやっていらっしゃいましたけど、現場でご覧になっていてどうでしたか?

升:僕がこの脚本を読んだ時に、「この美晴をきちんと演じられる人がいれば、成功するな」と思うぐらい、難しい役だったと思うんですよ。「一体どなたがこの役をされて、僕が読んだ感じ通りに、もしくはそれに近い表現をされるんだろう?」という、期待と不安が両方あったんですけど。
撮影に入る前に一度皆で顔合わせをして、本読みをしたんです。その時の麻鈴ちゃんは、第一声から既にもう「美晴」だったんです。驚きました。

茂木:それはすごいですね…!

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升:はい。もう、ぞっとするほど「美晴」だったんですよ。

茂木:素晴らしいですね。何かあると布団の中に潜っちゃう役でしたけども、じゃあ、そこまでちゃんと役を作ってこられていたんですね。

升:素晴らしかったです。

茂木:やっぱり、そういう各俳優さんの力が合わさったケミストリーと言うか、そういうのは、僕たちも画面から感じました。

升:そうですか。本当にね、チームワークがいいと言うか。バジェットとしてすごく小さな映画なので…。

茂木:かなり苦労されたみたいですね。

升:スタッフさんの数も少ないですし、全員が全員なんですけど、自分の出番のない日はスタッフとして参加するんですよ。皆、自ら。

茂木:ええ!? どういうことですか?

升:いや、「今日は出番がないので、何か現場でお手伝いできることがあればやりたい」と、皆がそういう思いでいるので。

茂木:升さんも何かされたんですか?

升:僕は、休みの日は見学に行って、どういう進行してるかというのをずっと見守りながら、もしそこに荷物があって片付けなきゃといういう時は、もちろん手伝いましたし(笑)。

茂木:ええ(笑)。

升:なんかね、今回はそういうチームだったんですよ。

茂木:今回、渋谷悠監督は初長編作品ですよね。この作品は、そこへのエネルギーがすごいですね。

升:そうですね。僕と同じように小さな劇団出身の役者さんも多くて、そこら辺もすぐに共感ができたので、誰に言われるではなく、皆が率先してそういう形になっていった、という。

茂木:これは本当に奇跡のような映画だと思うので、是非皆さん、『美晴に傘を』をご覧頂きたいと思います。
これから映画をご覧になるリスナーの方に、メッセージをお願いしてよろしいでしょうか。

升:はい。どの世代の方が見ても共感できる登場人物が必ず出てきますし、「自分の身近にもこんなことはきっとあるよね」という、そういう人間関係で心を温かくしてくれる映画なので、是非劇場でご覧頂けたら嬉しいです。

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映画『美晴に傘を』(@miharunikasawo) / (旧Twitter)公式アカウント


映画『美晴に傘を』公式サイト


升 毅さん (@MASTER1955129KC) / (旧Twitter)公式アカウント


升 毅さん 公式サイト


●映画『美晴に傘を』予告編 - YouTube