Dream Heart(ドリームハート)

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Dream HEART vol.617 映画監督 吉田大八さん 「前とは違うことをしたい」

2025年01月25日

今夜ゲストにお迎えしたのは、映画『桐島、部活やめるってよ』の監督を務められました、映画監督の吉田大八さんです。

吉田監督は、1963年、鹿児島県のご出身です。

早稲田大学第一文学部をご卒業後、CMディレクターとして活動。
そして2007年に、『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』で長編映画デビューし、第60回カンヌ国際映画祭の批評家週間部門に招待されました。

その後、実在の日本人結婚詐欺師を題材にした『クヒオ大佐』や、西原理恵子原作の『パーマネント野ばら』を監督され、2012年、4作目である『桐島、部活やめるってよ』で、第36回日本アカデミー賞最優秀作品賞と、最優秀監督賞を受賞されていらっしゃいます。


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──CM制作で培われた惹きつける力

茂木:監督はずっとコマーシャルを撮られていますが、(映画と)両方されるという相乗効果のようなものはありますか?

吉田:両方向に行ったり来たりしていることの相乗効果というのはどうか分からないですけど、やっぱり自分の本籍地は未だにCMにあるような気はしています。
何か細かいところですかね。ある種、小さいものを撮る時にやたら時間をかけてしまうとか、そういうところも含めて。
自分ではなかなか客観的に考えないんですけど、コマーシャルで「最初にどうやって見ている人を掴むか」とか、基本的にコマーシャルというのは、テレビの方に注意を向けていない人をこっちへ振り向かせるというところから始まるから、そこで鍛えられたものは大きかったんじゃないかな、と思いますね。

茂木:映画と違って、コマーシャルは興味がない人が見ているから、そこでパッと掴まなくてはいけない。

吉田:そうなんですよ。だから、まずは音ですよね。よそ見している人に向けて印象的な一言だったり、トーンだったり、音楽でまず振り向かせて、15秒とか30秒の間に離さないように惹きつけ続ける、みたいな。間違いなく、そういう訓練は20年ぐらい知らず知らずの間にしていたはずですね。

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茂木:その手法があるから、監督の映画を観ていると、本当に短いシーンで「ガーン」と来るんですよね。やっぱりそれは、コマーシャルで鍛えられたということがあるからなんですね。

吉田:きっとそうだと思います。

茂木:吉田監督は本当に色々な作品を撮られますよね。どうですか? ご自分の中で“映画の幅広さ”というのは、どういうふうにお感じになられていますか?

吉田:やっぱり「前と違ったことをしたい」、というのが大きいかも知れないですね。

茂木:前と違ったことをしたいんですか。

吉田:だって、2回も同じことを続けるのは辛くないですか?

茂木:じゃあ、毎回、過去の自分と違うことをされている。

吉田:そんな大げさなものでもないんですけど。
例えば、直近で僕がこの前撮ったのは『騙し絵の牙』という映画なんですけど、反動でもっと小さい世界に行きたくなった、とか、絶対そういうのがある気がするんですよ。男性主人公が続いていれば、女性の主人公の映画をやりたいな、とか、その程度ですけど。
そんな昔のことを覚えていられないので、別に過去やったことがないことを探しているというわけじゃないですよ。だけど、自分でいくつか選択肢があるんだったら、少なくとも直近でやったこととは違うことをやりたいな、と、そっちに行きがちな気はします。

茂木:ご自身が脚本に関わる場合と、他の方が脚本を書かれている場合とはどうですか?

吉田:脚本を誰かにお願いする場合でも、誰かと一緒に書く場合でも、1人で書く場合でも、結局脚本作りには最初から関わるという意識ではいるんです。
結果的に、手を動かさない時と、自分でも手を動かす時と、1人で手を動かす時がある、という、それぐらいの違いですね。

茂木:今『敵』が絶賛上映中ですが、現時点で(次回作の)構想というのはどれぐらいありますか?

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吉田:構想はないことはないんですけど、まだ具体的にはそんなに決まっていないです。

茂木:やっぱりこれからも、ご自身で脚本を書かれるんですか?

吉田:場合によりますね。今作っているのは、シナリオライター2人で書いていて、それを今進めています。うまく行けばそれが次の作品になるんですけど、それは映画じゃないかもしれません。

茂木:そうですか。楽しみですね。

吉田:ありがとうございます。

茂木:発想というのは、常にどこかから種を探している感じなんですか?

吉田:探してはいないんですけど、溜まっていきますよね。だからiPhoneのメモとかパンパンなんですけど。
でも断片で終わっちゃうんですよね。それを次の段階に育てる根気とか、そういうのはなかなか出なくて、種のままで終わっちゃったり、種でずっと放置していたら似たようなものが他で出て来ちゃったりとか。そういうことがあるから、早く実現したり形にしなきゃいけないなといつも思うんですけど、基本的に怠け者なんですよ。

茂木:いやいや(笑)。

吉田:本当にそうなんですよ。家にいるのが好きなんで(笑)。

茂木:でも、だんだんキャリアを積み重ねてこられて、今回の『敵』が東京国際映画祭で素晴らしい評価を受けたということもありますし、徐々にご自身が撮られたいものを撮ることができる環境になってきていると思うんですけど、これからはどういう方向の映画を撮っていきたいと思っていらっしゃいますか?

吉田:次は、『敵』とは全く違う映画を撮りたいですね。

茂木:「違うことをやりたい」と。

吉田:多分、100%、モノクロではないと思います。

茂木:(笑)。

──吉田大八さんの『夢・挑戦』

茂木:監督この番組のテーマは『夢と挑戦』なんですけども、これからの監督の『夢・挑戦』は何でしょうか?

吉田:ここで言うのもちょっと憚られるんですけど…。僕は喋るのがすごく好きなんですよ。喋るのが好きで、年を取るごとに、喋るのが好きなことがもう病気に近くなってきて。この間、友達の家で、気がついたら13時間も喋っていた、ということがあって。

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茂木:えー!

吉田:だから、喋る仕事がしたいなと。

茂木:喋る仕事というと、例えば、ラジオとかですか?

吉田:ラジオの番組とか、自分の好きな音楽をかけて…。こういうふうに人と話すのはちょっと自分には荷が重いんで、1人で喋って、好きなものをかけて。まぁそれは、そんな需要がないのであり得ないんですけど、夢としては、そういうのを夢に見ることはあります。
こういうところで言うと、売り込んでるみたいでちょっといやらしいんですけど(笑)。すみません(笑)。

茂木:いやいや(笑)。楽しみにしております。
映画『敵』は、テアトル新宿をはじめ、全国で公開中です。監督、この映画『敵』なんですが、これからご覧になるリスナーの方々にメッセージをお願いできますでしょうか?

吉田:筒井康隆さん原作の小説なんですけれども、筒井さんの作品の中でも、もしかしたら知る人ぞ知るという作品なのかも知れません。でも、『時をかける少女』とかの名作をたくさん書かれている作家さんですけど、僕が中学の頃から愛読してきた筒井康隆さんの作品の中でも1番か2番に好きな作品を映画化することができて、僕はすごく幸せなので、この幸せを皆さんにも是非味わって頂きたいです。劇場でご覧ください。

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『敵』
1月17日(金)テアトル新宿ほか全国公開
ⓒ1998 筒井康隆/新潮社 ⓒ2023 TEKINOMIKATA
宣伝・配給:ハピネットファントム・スタジオ/ギークピクチュアズ


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映画『敵』オフィシャルサイト


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