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Dream HEART vol.602 映画監督 安田淳一さん 映画「侍タイムスリッパー」

2024年10月12日

今週ゲストにお迎えしたのは、映画『侍タイムスリッパー』の監督、安田淳一さんです。

安田監督は、1967年、京都府のお生まれです。

大阪経済大学在学中から、映像制作業を開始し、卒業後は様々な仕事を経て、ビデオ撮影業を始める傍ら、映画製作も実施。

2014年に自社制作した『拳銃と目玉焼』は、東映系シネコンにて全国6都市・各都市ミニシアターにてロードーショーされました。

また、2017年制作の『ごはん』は、シネコン全国5都市他ミニシアターにてロードーショー後、各地で様々な主催者による上映イベントが38ヵ月間続くロングラン作品となりました。

現在、公開中の新作『侍タイムスリッパー』は、口コミで話題が広まったことから、新宿ピカデリー、TOHOシネマズ日比谷ほか、全国130館以上で順次拡大公開しています。


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──昭和時代の人情ものや昔の時代劇のような世界観

茂木:監督は今57歳。これまでもヒットを飛ばされているんですけど、この大輪の花を咲かせたのは、意外と遅咲きと…。

安田:(笑)。僕ね、幼少の頃によくプラモデルを作りっぱなしで放っておいたりとかして、親父に「中途半端なことをするな」と怒られていたんですよね。それがずっと残っていて、何か物事を始めたら、ある程度の結果が出るまでやり続ける、みたいな感じの性格になってしまって。
映画も、始めた時に「最後にきちっと全国の映画館で上映できるような作品を作るまではやりきろう」と思ってやってきました。

茂木:そのお父様が病に倒れられて、今お米の農家を継がれてもいるということなんですけど、お父さんに報告したかったですね。

安田:いや、もう本当に親父に見せたかったですわ。それだけはすごく残念です。悔いが残ります。

茂木:また、今回『侍タイムスリッパー』で非常に重要な役割をしている、斬られ役の殺陣師(たてし)、福本清三さんにもお見せしたかったですよね。

安田:そうです。福本清三さんに殺陣師の役で出て頂くということで進んでいたというところでもあったんですけども、福本さんが2021年の元旦にお亡くなりになって、その時は、正直辞めようと思ったんです。でもその後、福本清三さんを担当されていた方から、東映京都の皆さんを紹介して頂いて、現在に至っているということです。

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茂木:ということは、これは福本さんが結んでくださったご縁ということですね。

安田:本当にそうですね。

茂木:さて、この『侍タイムスリッパー』なんですけど、どんな作品か紹介させてください。
「幕末の会津藩士・高坂新左衛門が長州藩士を襲撃した夜、落雷によって現代の京都の時代劇撮影所にタイムスリップしてしまい、斬られ役として、第2の人生を歩もうとする姿をコメディタッチで描いた作品です。主演は、時代劇で活躍する俳優山口馬木也さん。」
…ということなんですけど、山口さんは本当に良かったですね!

安田:本人もとても喜んでくださっていて、初めてお会いした時に「自主映画なんですけどいいんですか?」というふうなことを言ったら、「僕は25年役者してきて、自分がこの本の主役をやらせて頂ける、ということがすごく幸運で、今までやってきてよかったな」というようなことを言ってくれはって、嬉しかったです。

茂木:この映画の感想は、「時代劇の愛に溢れている」とか、「自然と涙が溢れる」。これは涙腺を刺激するような映画になっていますね。

安田:僕自身がちょっと古めの映画が好きということもあるんですけども、昭和の時代によくあった「人情もの」とか、或いは、テレビ時代劇で描かれた、一銭にもならへんのに街の人がお互い助け合う、みたいな世界観を、この映画の中にも再現できたらなと思って作りました。

茂木:監督はこの映画について、「本物の侍を観客に見てもらいたいんだ」と仰いましたが、本当にそれを実現していますよね。

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安田:いや本当に。「本物の侍」というのは、実は副次的なもので、僕が小さな自分のテーマで思っていたのは、「日本の時代劇映画史上、最も、真剣を使って戦っているようにお客さんが錯覚するような映画にしたい」と思ったんですね。特にラストの立ち回りですけども。
それを一生懸命、脚本でも、現場の撮影時に監督としても、それから殺陣師の方も俳優としても、「どうやったらこれが真剣に見えるんだろう?」とやっていたら、完成した時に「真剣に見えた」と言ってくれはるお客さん以上に、「本当の侍がいる」みたいなことを仰ってくださるお客さんがいたんです。だから副次的やったけども、そう感じてくださるお客さんが多いというのは、映画がある程度うまくいったんだなと思っています。

茂木:タイムスリップものとして僕が凄いなと思ったのは、実は最後まで、幕末からタイムスリップした人は自分がタイムスリップしたと言わないんですよね。

安田:そうです。

茂木:これは凄くないですか?

安田:いやこれね、僕も書きながら「これでええんかな?」と思っていたんですけども、実はこの映画、先ほど名前も出ました、福本清三さんに対するオマージュがいっぱいあって。
例えば、劇中で「頑張っていれば、誰かがどこかで見ていてくれる」などのセリフとか、着用されている衣装とか、斬られ方とか、色々あるんですけども、実は福本さんの「自分のことで他人を煩わせない」というその生活そのものが、新左衛門の中に投影されてあるんです。

茂木:そうなんですか。実は、主人公には福本さんの生き方が反映されている、と。

安田:そうです。福本さんが亡くなられたのは2021年の1月1日でしたが、発表されたのは1月4日だったんですよ。その当時、僕も親交がありましたので、東映撮影所の方に「安田さん、ごめんな」と。「安田さんにすぐ言いたかってんけども、福本さんが生きてはったら、『わしの訃報で世間の正月気分を吹っ飛ばしたらあかん』みたいことを言わはるに決まってるから、4日にしたんだよ」と言われて。「あ、そういう人でしたね」と言って、僕もちょっと涙したんです。

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茂木:素敵な人ですね。

安田:謙虚で素晴らしい方でした。

茂木:そして、共演されている方々も本当に魅力的な方々で。助監督、山本優子役が、沙倉ゆうのさん。この方は、もう安田組の欠かせない俳優ですね。

安田:(笑)。初めてイベント用のショートムービーに出てもらった時から、もう20年近くのお付き合いがあるんですけれども。その後、未来映画社という長編映画を作っていくレーベルを立ち上げた時に、僕たちが「大人から子供まで誰もが喜べる、映画館を出て元気が出るような映画を作っていくんだ」ということを標榜した時、彼女の風貌とかがすごくそれに向いているなと思って、以降、我々の看板女優ということで頑張ってもらっています。

茂木:前作の『ごはん』でも非常に印象的な主演をされていますが、今回は助監督の役で、しかも、なんと安田組で本当に助監督をされていたと聞いていますが(笑)。

安田:これはふざけた話なんですけどもね(笑)。僕は普通の仕事もしているので、次の映画の企画とかを話し合える人が、その人も監督であったり、色々仕事を持っていたりして、なかなかいないんですけども、沙倉さんだけは意外と普段は暇なので(笑)、ちょいちょい頼まれる仕事もあったり、電話とか、実際にお家の方に伺って、お母さんとかと一緒にこの映画の話をしてたんですわ。
で、「助監督役をやってもらおうと思ってるんやけども、スタッフも少ないから、ついでに助監督もやっといたら?」みたいな感じになって、「それやったら、役柄の他に、助監督のギャラも入るんちゃう?」と笑いながら言ったら、「あ、ほなやろうかな」という感じにならはったんです(笑)。

茂木:(笑)。
監督、『侍タイムスリッパー』をもう観た方もいらっしゃると思うんですけど、これから観るという方もいらっしゃるので、是非メッセージをお願いできますでしょうか?

安田:はい。本作は、タイムスリップを扱っているんですけども、劇場の中で皆で笑ったり、最後は拍手してみたり、というその雰囲気そのものが、昭和にタイムスリップしたような感覚に思えるような作りになっていますので、ぜひ劇場の方で「タイムスリップ」を体験してみてください。

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『侍タイムスリッパ―』
大ヒット公開中
(c)2024未来映画社



映画「侍タイムスリッパー」公式サイト


映画「侍タイムスリッパー」(@samurai_movie) / X(旧Twitter)公式アカウント


●映画『侍タイムスリッパー』予告編 - YouTube