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Dream HEART vol.598 コピーライター、クリエイティブ・ディレクター 小西利行さん 著書「すごい思考ツール 壁を突破するための〈100の方程式〉」

2024年09月14日

今週ゲストにお迎えしたのは、コピーライターで、クリエイティブ・ディレクターの、小西利行さんです。

小西さんは、博報堂を経て、2006年POOL inc.設立。
言葉とデザインでビジョンを生み、斬新なストーリーで世の中にムーブメントをつくり出していらっしゃいます。

主なお仕事に、「伊右衛門」や「ザ・プレミアム・モルツ」、「PlayStation」や、車のコピーで話題となった「モノより思い出。」など、1000を超えるCMや広告作品、また、「伊右衛門」や「こくまろカレー」などの商品開発、ハウス「母の日にカレーをつくろう」、スターバックス「47 JIMOTOフラペチーノ」など、多数のプロモーション企画も担当。

そして、2017年に施行された「プレミアムフライデー」の発案・企画・運営にも参画。
都市やホテル開発では、越谷「AEON LakeTown」、京都「GOOD NATURE HOTEL」、立川「GREEN SPRINGS」などをトータルプロデュースされました。

また、話題のハンバーグ店「挽肉と米」のオーナー兼クリエイティブ・ディレクターでもいらっしゃいます。


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──センスは技術

茂木:今回文藝春秋から出ているご著書『すごい思考ツール 壁を突破するための〈100の方程式〉』によると、今やPlayStationというのは世界のゲーム機市場で本当にすごい位置を占めているんですけど、立ち上げの時は後発だったわけですよね。

小西:大後発ですね。任天堂さんがいて、SEGAさんがいて、PlayStationもどうなるか分からなかったんですけど、それは本当に僕の師匠とか先輩方が立ち上げて行かれて。ソニー・コンピュータエンタテインメントの皆さんもすごい素敵な、今から考えるとすごくストリートな考え方でどんどん新しいことばかり取り込んでやっていくような方々だったので、その中に揉まれて揉まれて、失敗しまくってしまくって、藻掻きまくっていた時代ですね。

茂木:今回の『すごい思考ツール』の中で僕の一番の共感ポイントと言うと、小西さんは今やこんな天才クリエイターなのに昔は意外とポンコツだったということなんですが。

小西:ポンコツでしたね(笑)。僕は一番最初、例えば先輩に呼び出されて「辞めた方がいい」と言われたことがあります。それが1日に別々の2人から「もう辞めた方がいいよ」と言われるという悲しいことが…。本当に向いてないと思っていたから、辞表を2回書いていますし。

茂木:この本の中でも、博報堂のクリエイティブに配属された時に「補欠だ」と言われたとか。

小西:そうですね(笑)。博報堂のクリエイティブには、試験を受けて、デザイナーと、CMを作る人間と、コピーライターの4人ずつ、12人が入るんですね。僕は、何でか分かんないけどコピーライターが5人いるけどまあいいかと思っていたんですけど、ある時僕を選んでくれた先輩格の方が、パーティーでお酒を飲まれていたんと思うんですけど、「小西くん、小西くん」と呼んで、「いや、君は本当は補欠で13番目だから、それだけ頑張ってね」と言われて、「言わんでええわ!」と思って。

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茂木:そんなところから、何で今のすごい人になったのかという秘密が、こんなに惜しげもなくね。

小西:ありがとうございます(笑)。

茂木:本当に読みでがあって。大抵こういう本を読んでいても、100もあれば後の方になるとリピートと言うか、そのバリエーションと言うか、リフレインになることが多いんですけど、これは本当に100も違うことが詰まっていて、すごくないですか?

小西:いや、自分でもここまで濃密にする予定はなくて、もうちょっと軽く書きたかったんですけど…。僕は博報堂という会社を辞めてから今のPOOLという会社を作って18年半が経っているんですけど、もうすぐPOOLの社長を卒業して新しい若い人に任せようとしているんですよ。僕は一介のクリエイターと言うか、本当にクリエイティブをずっとやっていく人間に戻りたいなと思って、「この30何年間の自分を総括しよう」と考えて、自分の昔の体験とか、やってきたこととかを思考ツールと結びつけて全部書いてみたら、めちゃくちゃ濃密になっちゃって。「これ、ページ数がめちゃくちゃいきますけど」と言って、「じゃあこのぐらいで頑張りましょう」ということで、文藝春秋の編集者と一緒に頑張ったという感じです。

茂木:この本の中でも書かれているんですけど、どうしても「広告」と言うと、バブルのちょっと前だったのかな? 感性で書いて1行100万円、美味しい生活とかね、才能がある人は楽して儲けられる職業だというイメージを未だに持っている方もいらっしゃると思うんですけど、この本で全部それが破壊されますね。

小西:そうですね。本当はすごい地道な作業で、「華やかでしょう?」とか、「才能が必要なんでしょう?」と言われるんですけど、努力と、頑張って獲得する技術と、真面目な気持ちじゃないとコピーライターはできないと思います。
逆に言うと、僕は「コピーライティングというのは才能じゃなくて技術だ」とはっきり思っていて、つまり手に入れることができるものだと。だとすれば、色んな人…例えばビジネスパーソンの人たちであったとしても、色んな仕事をやってらっしゃる方でも、コピーライティングの技術を使えば、色んなことができるようになるとは思っています。

茂木:「センスがある・ない」ということをよく皆が言うじゃないですか。それが小西さんの説によると、実は「技術」だということなんですよね。

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小西:はい。茂木さんも「お話になる言葉とかのセンスがいいよね」とか絶対あると思うんですね。ただ、皆さんはセンスを才能だと思ってらっしゃるんですけど、今茂木さんに言って頂いたみたいに技術なんです。
僕は、失敗をたくさん積み重ねていくことで獲得される、間違わない力だとはっきり思っていて、大体「服装のセンスがいい」とか「言葉のセンスがいい」とか「色々お話されることのセンスがいい」というのは、そこをすごい練習する、もしくは色んな体験をしたことによって、「あの言葉、あの服を選んではいけない」というのが積み重なってきた人たち、上手く選ぶ人たちの話だということなのかと思っています。そう思うと、失敗の数と知識量とちょっとした優しさがあれば、「センス」ということが身につくと思っているんです。

茂木:なるほどな。

小西:皆さん、「センスがない」と仰るんですよ。「僕にはセンスがないから、こういうのは無理なんです。クリエイティブとか駄目なんです」と言われる方には、厳しめに「センスがないと思ってらっしゃるのは怠慢です」とはっきり言っています(笑)。

茂木:今はこんなに温厚な感じですけど、ずいぶん棘のある言葉を吐いていた過去もあるということなんですが。厳しい方だったんですか?

小西:そうですね(笑)。僕は若い時とかは尖っていて、博報堂の先輩からは「博報堂で一番沸点が低い」と言われて(笑)、「お前、何でも怒るね」と言われていたんですよ。
ある時は、打ち合わせ室にたくさん20人ぐらいの人がいて、「こんなにいらないだろう」と思って、若造が偉そうに入って行って、「いらない人がたくさんいるんで、出てってもらえますか?」と言って(笑)。それで僕が席に戻って待っていたら、「小西さん、酷いこと言うけど、まあとりあえず減らしたよ」と言ってきて。僕はもちろん上の方がいなくなって若い子だけ残って欲しかったのに、真逆で、上の組織の方が残っていて(笑)。「仕事ができない」と(笑)。

茂木:(笑)。そんなクリエイティブの現場で戦ってきた小西さんの、本当に宝石のような『思考ツール』がたくさん書いてあるんですが…。実は今回の『すごい思考ツール』は、広告とか宣伝のノウハウ本ではないんですよね。

小西:そうですね。『壁を突破するための〈100の方程式〉』と書いてあるのは、壁は、小さい・大きいもあれば形も違いますけど、あらゆるビジネスに存在するじゃないですか。皆が壁に当たって「どうしようかな?」と考える時に、ペラペラと捲って頂いたりすると、「こういうやり方もあるし、こういうやり方もあるし、こういうやり方もあるのか」と、いくつか考え方が分かるようになる。そのために書いたので、広告的と言うよりはビジネスのツールです。

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小西利行さん (@konishi_toshiyu)) / X(旧Twitter)公式アカウント


POOL inc. 公式サイト


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