2024年08月24日
今週ゲストにお迎えしたのは、京都芸術大学で客員教授を務められている、本間正人さんです。
本間さんは、1959年、東京都のお生まれ。
東京大学文学部社会学科をご卒業後、松下政経塾(3期生)を経て、ミネソタ大学大学院を修了。
「教育学」を超える「学習学」の提唱者で、「楽しくて、即、役に立つ」参加型研修の講師として、アクティブ・ラーニングを30年以上、コーチングを25年以上実践し、「研修講師塾」「調和塾」を主宰。
現在は、京都芸術大学で客員教授、NPO学習学協会代表理事などを務めていらっしゃいます。
──軽量化できないものこそが人間ならではの力
茂木:本間先生はもの凄くお忙しいと思うんですけど、時間管理というのはどうされてるんですか?
本間:「1週間=□?」という質問があった時に、ここに箱があったら、茂木さんは何て入れます?
茂木:すみません、教えてください(笑)。
本間:多くの人が「7日間」と書くと思うんですよ。
農業社会では7日なんです。お天道様が上がって、沈んで、また上がるのが「日」という単位じゃないですか。でもね、これだけ人工照明もあって社会が忙しい時に「日」という単位で考えていたら、色んなことができなくなっちゃう。
だから僕の提案は、「1週間を168時間で考えよう」と。
茂木:おお、なるほど!
本間:そうするとね、「フルタイムの仕事」と言うじゃないですか。労働基準法上は、168分の40ですよ。
もちろん睡眠時間というのがある。もし1日8時間睡眠だと、週56時間。そしてフルタイムの仕事が週40時間だと、72時間の可処分時間が残る計算になるんですね。
もちろん通勤時間があったり、家事があったり、介護があったり、子育てがあったり、色んな環境があると思うけど、「7日」で考えるよりは「168時間」で考えた方がタイムデザインは上手くいく、というのが、僕の提案です。
茂木:そうやって実践されてらっしゃるんですか?
本間:僕もちょっと詰め込み過ぎていて余白が空かないこともあるんですけれども、一応実践しています(笑)。
茂木:そして、この本間先生の『100年学習時代』では「学ぶことの喜び」を書かれているんですけど。
ただリスナーの中には、ここで書かれている学校教育の問題なんかもあって、「学ぶ」ということに対してちょっと自信を失っていると言うか、私には無理だと思っている方もいらっしゃると思うんですが、そういう方にはどういう(お話をされるんですか)?
本間:『北斗の拳』ではないんですけど、「あなたは既に学んでいる」(笑)。
茂木:えー、格好よすぎ! そうなんですか?
本間:なかなか実感がないかもしれないんだけれども、過去を振り返ってみたら、何かできるようになってることが…料理が上手くなっていたりとか、子育てで腹を立てる機会がちょっと減っていたりとか、前よりは仕事の単位時間当たりの能率が良くなっていたりとか、人が許せるようになったりとか、色んな進歩・成長というのが、「見て行けば」あると思うんです。
茂木:ちょっと待ってください。今、先生がとてもいいこと仰ったんですけど、「人が許せるようになった」というのも「学び」ということですか?
本間:絶対そうですよ。人間的成長の、最たるものの一つですよね。
茂木:素晴らしいですね。
あと、これも恐らく多くのリスナーが、「人と比較してしまう」。これはどうですか。
本間:そうですよね。古典的な学校教育は、順位をつけて、それで成績が良い方がよろしいと言う。でも、「KPI(キー・パフォーマンス・インデックス)」と言いますけれども、誰かが「これが大事です」と決めた指標・決めた判断基準で、自分を合わせようとしているわけですね。
でも、「桜梅桃李」という言葉もありますけれども、桜には桜の花が咲き、梅には梅の花、桃には桃、すももにはすもも、皆咲かせる花が違う。だって、元々種も違えば環境も違うわけだから。
「みんなちがって、みんないい」ということが、教育支援が足りない社会では無理だったんですよ。学校の先生ができる人というのはもう本当に限られた人だけで、学ばなきゃいけない人がいっぱいいた時には、教室で生徒を集めてやる一斉授業というものが合理的だった。
でも今の世の中、スマホ1台あれば世界の最先端のことがただで学べる社会になったわけで、むしろ僕たちが意識を向けるべきは「学びの楽しさ・喜び」というものを伝えていくこと。そしてそれは、1人1人皆違っていて全然構わないし、順位なんてナンセンスだ、というのが僕の提案ですよね。
茂木:説得力ありますよね。
先週もこの『100年学習時代』を紹介したんですけども、本当に繰り返しなりますが、本間先生の構想35年。
本間:(笑)。でもね、やっぱり今「アーティフィシャル・インテリジェンス(人工知能)」というものがこれだけ発展してくると、本当に「人間がやらなければならないこと」・「人間しかできないこと」を僕たちももっともっと真剣に考える必要があるわけです。『平安時代の荘園制度が終焉した理由とその影響について、300字で述べよ。』なんて大変じゃないですか。
茂木:ChatGPTだったらね。
本間:(ChatGPTは)瞬間にやります。
だから、そういう知識が要らなくなったわけではないけれども、総体的な重要性は下がったわけで、むしろこれからその生成AIとか、サーチエンジンとAIが合体したようなものが社会の中で普及していく。その時に、人間はどんなことを身に付けていったらいいのか、どんな力を磨いていくのがいいのか、というのがすごく大事なんです。
なので、茂木さんの仰ってきた「クオリア」なんていうのは1番大事なことです。
茂木:ありがとうございます。
本間:「客観的に測定できることが大事だ」というのが「古典的な科学」だとするならば、「気づき」とか「体験の質」とか軽量化できないものこそが、AIに取って代わられない人間ならではの力だ、と。だからね、そういうことを磨いていくことがとても大事だと思うんですよね。
茂木:恐縮でございます…!
本間先生、先週もお伺いしたんですが、この『100年学習時代』をこれから読まれるという方の中で、特に「ちょっと勉強とか嫌だったんだよね」とか、「学ぶって、私にできるかどうか分からない」と思っている方々のために、このご著書について何かメッセージを頂けますか?
本間:学校教育とは、やっぱり個人主義モデルなんですよ。ペーパーテストが与えられて、「あーこの問題が分からない。茂木くん、教えて!」と言ったら、カンニングだと言われるじゃないですか。でも社会に出たら、1人で完結している仕事なんてまずほとんどなくて、誰かとのコラボレーションで、力を合わせて色んな困難に直面していく。
でもね、問題は、「1人で解かなければならない」という思い込みが強すぎると、困難に直面した時に、1人で抱え込んで苦しむ。メンタルヘルスダウンする。そういう悲しいケースというのをいっぱい見てきた。
これは学校教育だけが悪いわけじゃないけど、「問題を1人で解かなければならない」という誤った思い込みを多くの人が持っているので、今学ぶことに対して尻込みしている人がいたら、「誰か一緒にやる人を見つける」、というのがすごく大事なことです。
茂木:素敵ですね。だから僕がいいなと思ったのは、この『100年学習時代』をみんなで読む読書会とかがあるんですよね。
本間:やっている人が既にいるんです。
茂木:いるんですね。それはいいかもしれないですね。読書会をしている方からどういう報告が来ていますか?
本間:「一章ずつ読んでいく」という人もいれば、通して読んで、「一番好きになったキーワードはどれ?」と言ってそれをお互いにシェアする読書会とかもあります。
茂木:何しろ本間先生が35年掛けて作られた本でございます。『100年学習時代』、ぜひ皆さんお読み頂きたいと思います。
──本間正人さんの『夢・挑戦』
茂木:本間先生、色々お話を伺ってきたんですが、この番組はですね、『夢』そして『挑戦』がテーマとなっております。もう既に色んなことをされてると思うんですけど、これからの『夢』そして『挑戦』は何でしょうか?
本間:ライフワークとしては、学習する地球社会のビジョンを世界中の人たちと作り上げていく、ということなんですけど。
「学習学」という観点から言うと、「学習学」という言葉を広辞苑に…英語で「learnology」と呼んでいますけれども、これをウェブスターやオックスフォードの辞書に載せたい、というのが僕の夢ですね。
茂木:素晴らしいですね。
本間:あり得ないわけではなくて、既に『英辞郎』というネットの辞書があるんですけど、その中には「学習学(learnology)」と入っているんです。
茂木:入っているんですね。
本間:広辞苑もオックスフォードも、決してありえなくはないと思っています。
茂木:もしそれが実現できたら、松下幸之助さんの「新しい人間観に基づく政治・経営の理念の探求」という宿題も出来たということになるんでしょうか。
本間:「これで終わりというものがない」、というのが「最新学習歴」の考え方なので、義理は果たしつつあるんじゃないかなとは思っております(笑)。
■プレゼントのお知らせ
番組でご紹介してきました、本間正人さんのご著書
『100年学習時代 はじめての「学習学」的生き方入門』に、
直筆サインを入れて3名の方にプレゼントいたします。
ご希望の方は、お名前やご住所、電話番号など、必要事項を明記の上、
メッセージフォームより、ご応募ください。
私、茂木に聞きたい事や相談したい事など、
メッセージを添えていただけると嬉しいです。
尚、当選者の発表は、商品の発送をもってかえさせていただきます。
たくさんのご応募、お待ちしております。
●本間正人 ((@learnologist) / X(旧Twitter)公式アカウント
●100年学習時代 はじめての「学習学」的生き方入門/ 本間正人 (著)
(Amazon)
●BOW BOOKS 公式ページ
●Learnology 公式サイト
本間さんは、1959年、東京都のお生まれ。
東京大学文学部社会学科をご卒業後、松下政経塾(3期生)を経て、ミネソタ大学大学院を修了。
「教育学」を超える「学習学」の提唱者で、「楽しくて、即、役に立つ」参加型研修の講師として、アクティブ・ラーニングを30年以上、コーチングを25年以上実践し、「研修講師塾」「調和塾」を主宰。
現在は、京都芸術大学で客員教授、NPO学習学協会代表理事などを務めていらっしゃいます。
──軽量化できないものこそが人間ならではの力
茂木:本間先生はもの凄くお忙しいと思うんですけど、時間管理というのはどうされてるんですか?
本間:「1週間=□?」という質問があった時に、ここに箱があったら、茂木さんは何て入れます?
茂木:すみません、教えてください(笑)。
本間:多くの人が「7日間」と書くと思うんですよ。
農業社会では7日なんです。お天道様が上がって、沈んで、また上がるのが「日」という単位じゃないですか。でもね、これだけ人工照明もあって社会が忙しい時に「日」という単位で考えていたら、色んなことができなくなっちゃう。
だから僕の提案は、「1週間を168時間で考えよう」と。
茂木:おお、なるほど!
本間:そうするとね、「フルタイムの仕事」と言うじゃないですか。労働基準法上は、168分の40ですよ。
もちろん睡眠時間というのがある。もし1日8時間睡眠だと、週56時間。そしてフルタイムの仕事が週40時間だと、72時間の可処分時間が残る計算になるんですね。
もちろん通勤時間があったり、家事があったり、介護があったり、子育てがあったり、色んな環境があると思うけど、「7日」で考えるよりは「168時間」で考えた方がタイムデザインは上手くいく、というのが、僕の提案です。
茂木:そうやって実践されてらっしゃるんですか?
本間:僕もちょっと詰め込み過ぎていて余白が空かないこともあるんですけれども、一応実践しています(笑)。
茂木:そして、この本間先生の『100年学習時代』では「学ぶことの喜び」を書かれているんですけど。
ただリスナーの中には、ここで書かれている学校教育の問題なんかもあって、「学ぶ」ということに対してちょっと自信を失っていると言うか、私には無理だと思っている方もいらっしゃると思うんですが、そういう方にはどういう(お話をされるんですか)?
本間:『北斗の拳』ではないんですけど、「あなたは既に学んでいる」(笑)。
茂木:えー、格好よすぎ! そうなんですか?
本間:なかなか実感がないかもしれないんだけれども、過去を振り返ってみたら、何かできるようになってることが…料理が上手くなっていたりとか、子育てで腹を立てる機会がちょっと減っていたりとか、前よりは仕事の単位時間当たりの能率が良くなっていたりとか、人が許せるようになったりとか、色んな進歩・成長というのが、「見て行けば」あると思うんです。
茂木:ちょっと待ってください。今、先生がとてもいいこと仰ったんですけど、「人が許せるようになった」というのも「学び」ということですか?
本間:絶対そうですよ。人間的成長の、最たるものの一つですよね。
茂木:素晴らしいですね。
あと、これも恐らく多くのリスナーが、「人と比較してしまう」。これはどうですか。
本間:そうですよね。古典的な学校教育は、順位をつけて、それで成績が良い方がよろしいと言う。でも、「KPI(キー・パフォーマンス・インデックス)」と言いますけれども、誰かが「これが大事です」と決めた指標・決めた判断基準で、自分を合わせようとしているわけですね。
でも、「桜梅桃李」という言葉もありますけれども、桜には桜の花が咲き、梅には梅の花、桃には桃、すももにはすもも、皆咲かせる花が違う。だって、元々種も違えば環境も違うわけだから。
「みんなちがって、みんないい」ということが、教育支援が足りない社会では無理だったんですよ。学校の先生ができる人というのはもう本当に限られた人だけで、学ばなきゃいけない人がいっぱいいた時には、教室で生徒を集めてやる一斉授業というものが合理的だった。
でも今の世の中、スマホ1台あれば世界の最先端のことがただで学べる社会になったわけで、むしろ僕たちが意識を向けるべきは「学びの楽しさ・喜び」というものを伝えていくこと。そしてそれは、1人1人皆違っていて全然構わないし、順位なんてナンセンスだ、というのが僕の提案ですよね。
茂木:説得力ありますよね。
先週もこの『100年学習時代』を紹介したんですけども、本当に繰り返しなりますが、本間先生の構想35年。
本間:(笑)。でもね、やっぱり今「アーティフィシャル・インテリジェンス(人工知能)」というものがこれだけ発展してくると、本当に「人間がやらなければならないこと」・「人間しかできないこと」を僕たちももっともっと真剣に考える必要があるわけです。『平安時代の荘園制度が終焉した理由とその影響について、300字で述べよ。』なんて大変じゃないですか。
茂木:ChatGPTだったらね。
本間:(ChatGPTは)瞬間にやります。
だから、そういう知識が要らなくなったわけではないけれども、総体的な重要性は下がったわけで、むしろこれからその生成AIとか、サーチエンジンとAIが合体したようなものが社会の中で普及していく。その時に、人間はどんなことを身に付けていったらいいのか、どんな力を磨いていくのがいいのか、というのがすごく大事なんです。
なので、茂木さんの仰ってきた「クオリア」なんていうのは1番大事なことです。
茂木:ありがとうございます。
本間:「客観的に測定できることが大事だ」というのが「古典的な科学」だとするならば、「気づき」とか「体験の質」とか軽量化できないものこそが、AIに取って代わられない人間ならではの力だ、と。だからね、そういうことを磨いていくことがとても大事だと思うんですよね。
茂木:恐縮でございます…!
本間先生、先週もお伺いしたんですが、この『100年学習時代』をこれから読まれるという方の中で、特に「ちょっと勉強とか嫌だったんだよね」とか、「学ぶって、私にできるかどうか分からない」と思っている方々のために、このご著書について何かメッセージを頂けますか?
本間:学校教育とは、やっぱり個人主義モデルなんですよ。ペーパーテストが与えられて、「あーこの問題が分からない。茂木くん、教えて!」と言ったら、カンニングだと言われるじゃないですか。でも社会に出たら、1人で完結している仕事なんてまずほとんどなくて、誰かとのコラボレーションで、力を合わせて色んな困難に直面していく。
でもね、問題は、「1人で解かなければならない」という思い込みが強すぎると、困難に直面した時に、1人で抱え込んで苦しむ。メンタルヘルスダウンする。そういう悲しいケースというのをいっぱい見てきた。
これは学校教育だけが悪いわけじゃないけど、「問題を1人で解かなければならない」という誤った思い込みを多くの人が持っているので、今学ぶことに対して尻込みしている人がいたら、「誰か一緒にやる人を見つける」、というのがすごく大事なことです。
茂木:素敵ですね。だから僕がいいなと思ったのは、この『100年学習時代』をみんなで読む読書会とかがあるんですよね。
本間:やっている人が既にいるんです。
茂木:いるんですね。それはいいかもしれないですね。読書会をしている方からどういう報告が来ていますか?
本間:「一章ずつ読んでいく」という人もいれば、通して読んで、「一番好きになったキーワードはどれ?」と言ってそれをお互いにシェアする読書会とかもあります。
茂木:何しろ本間先生が35年掛けて作られた本でございます。『100年学習時代』、ぜひ皆さんお読み頂きたいと思います。
──本間正人さんの『夢・挑戦』
茂木:本間先生、色々お話を伺ってきたんですが、この番組はですね、『夢』そして『挑戦』がテーマとなっております。もう既に色んなことをされてると思うんですけど、これからの『夢』そして『挑戦』は何でしょうか?
本間:ライフワークとしては、学習する地球社会のビジョンを世界中の人たちと作り上げていく、ということなんですけど。
「学習学」という観点から言うと、「学習学」という言葉を広辞苑に…英語で「learnology」と呼んでいますけれども、これをウェブスターやオックスフォードの辞書に載せたい、というのが僕の夢ですね。
茂木:素晴らしいですね。
本間:あり得ないわけではなくて、既に『英辞郎』というネットの辞書があるんですけど、その中には「学習学(learnology)」と入っているんです。
茂木:入っているんですね。
本間:広辞苑もオックスフォードも、決してありえなくはないと思っています。
茂木:もしそれが実現できたら、松下幸之助さんの「新しい人間観に基づく政治・経営の理念の探求」という宿題も出来たということになるんでしょうか。
本間:「これで終わりというものがない」、というのが「最新学習歴」の考え方なので、義理は果たしつつあるんじゃないかなとは思っております(笑)。
■プレゼントのお知らせ
番組でご紹介してきました、本間正人さんのご著書
『100年学習時代 はじめての「学習学」的生き方入門』に、
直筆サインを入れて3名の方にプレゼントいたします。
ご希望の方は、お名前やご住所、電話番号など、必要事項を明記の上、
メッセージフォームより、ご応募ください。
私、茂木に聞きたい事や相談したい事など、
メッセージを添えていただけると嬉しいです。
尚、当選者の発表は、商品の発送をもってかえさせていただきます。
たくさんのご応募、お待ちしております。
●本間正人 ((@learnologist) / X(旧Twitter)公式アカウント
●100年学習時代 はじめての「学習学」的生き方入門/ 本間正人 (著)
(Amazon)
●BOW BOOKS 公式ページ
●Learnology 公式サイト