2024年08月03日
今週ゲストにお迎えしたのは、ゴールドマン・サックス証券の元トレーダーで現在は社会的金融教育家としてご活躍中の、田内学さんです。
田内さんは、1978年のお生まれ。
東京大学大学院情報工学系研究科修士課程修了後、2003年、ゴールドマン・サックス証券株式会社に入社。
以後16年間、日本国債、円金利デリバティブ、長期為替などのトレーディングに従事され、日銀による金利指標改革にも携われました。
2019年にゴールドマン・サックス証券を退職し、現在は「社会的金融教育家」として活動され、ビジネス向けの金融経済をテーマとした講演だけでなく、中高生向けにお金の教育や社会科の公共の講演も行なっていらっしゃいます。
──お金と社会との繋がり
茂木:田内さんは先日、東洋経済新報社より『きみのお金は誰のため』という本を発売されました。「読者が選ぶビジネス書グランプリ」で2024年総合グランプリ、優勝おめでとうございます!
田内:ありがとうございます。
茂木:これは、どういうところが読者に受けたんでしょうか?
田内:色んな世代が読んでくださっているんですけれど、ビジネス書としては珍しく、女性の割合が半分ぐらいいらっしゃるんです。そして読んだ方が、「こういうお金の勉強を、もっと早い時からしたかった」とか、「子供に読ませたい」とか(仰る)。
やっぱりお金の話になると「自分とお金」だけの話になっちゃうんですけれども、「それが社会とどう繋がっていくか?」ということを考えると、より世の中のことが分かる。もっと言うと、「世の中で役立つから、お金って貰えるんだ」ということをちゃんと物語仕立てで理解していくと、「お金を増やすためには何をしなきゃいけないか」ということも分かりやすくなるでしょうし。でもそれだけじゃない、「“お金”という道具を使って、どう自分の人生を幸せにするか」を考え直した、というような話は聞きますね。
茂木:主な登場人物は、中学生の男の子と、金融バリバリのキャリアウーマンの方、そして謎の「ボス」という人物。この3人の織りなすドラマも非常に印象的ですね。
田内:はい。ビジネス書とかお金の勉強となっちゃうと、なかなか難しくて読み進められない。そこを、小説の力を借りて実際の自分たちの生活に落とし込んで理解していくのが一番いいのかな、と思ったんですよね。
茂木:今回のご著書の中でポイントが3つあって、1つ目は「お金自体には価値がない」。これはどういうことですか。
田内:やっぱり僕もそうですけど、お金にはもちろん価値があると思うわけですよ。だけど、よく考えると、ただの紙切れなんです。「なんでここに価値が生まれているのか?」というところから考えると、より社会のことが分かる。
茂木:…ということなんですよね。これには驚愕の答えが用意されていて、ちょっとネタバレになるので言いませんが、国との関係であることがあって、円というお金が価値を持った、と。
田内:そうですね。大事なのは、今僕らは「お金」というものに対してすごい万能感を抱いてると思うんですよ。だからとにかくお金を増やせばいい、と。ところが、よく考えてみると、もし僕らが「無人島に皆で移住します」という時に、「何を持っていきますか?」と。
茂木:お金を持って行ってもしょうがないね(笑)。
田内:それにも関わらず、僕らは今、将来に向けてお金を増やそうとしている。「お金って一体何なのか?」と。
茂木:さぁ、「これはどういうことなのかな?」と気になった方は、『きみのお金は誰のため』を読んでください。
そして2つ目は、「お金で解決できる問題はない」。これはどういうことですか?
田内:もちろんお金を使うと、問題を解決できるように見えるんですよ。ところが実際は、「お金を使うことによって、そのお金を受け取った人が何かしら働いてくれる。問題解決をしてくれる」というところが、実はすごく重要なんです。それを分からないまま、例えば日本の経済成長とかの話もそうですけれど、とにかくお金を増やそうとしている。
ところがですよ。実際この数十年を振り返ってみた時に、日本は「失われた30年」とか言われているけれども、金融資産は増えていますよね。その金融資産…お金を使って僕らは色んな便利なものを買うことができる。それはそのお金を払うことで、誰かが問題解決をしてくれている。それで、例えばiPhone買うんでも何でもいいと思うんです。すごい便利になりました。ところが、実際にその問題を解決しているのは外国の人たちです。となると、今起きてるように円安が起きたりして、日本の「円」というお金の価値はどんどん失われてしまう。
大事なのは、「この円というお金を受け取って、問題を解決してくれる人はどれだけいるか」。そのために僕らは色んなビジネスをしたり物を作ったり売ったりしているんですけども、その根源が分からないままお金を増やそうと思っても、うまくいかないですよね。
茂木:なるほどなぁ。それがどういうことなのかということは、この『きみのお金は誰のため』を読むと、「ボス」という人物が熱く語ってくれますよね。
そして3つ目は、「みんなでお金を貯めても意味がない」(笑)。これはどういうことですか?
田内:ポイントは「みんなで」というところなんですよ。もちろん僕1人、茂木さん1人だったら、お金を貯めれば、将来そのお金使えば楽して暮らすことができるわけですね。今一番のお金の不安というのは「老後の不安」だと思うんですね。老後の不安のために僕らはせっせとお金を貯めようとしているんですが、みんなでお金を貯めることによってどうなるか。
例えば、「老後資金が2000万円足りないと言われているので、みんな2000万円貯めました」。「じゃあみんな働かなくていいか?」と言うと、そこでは誰か働いてる人がいないと社会が回らないわけですよ。
働く人がいなくなるということはないんですけれど、少子化が進んで、今もすごい勢いで減っているんですよ。確か去年とかは、年率にして5.〇%減ったんですよね。後12年ぐらいで子供の出生数は半減しちゃう。と考えると、その何十年後に自分たちが老後を迎えて、さあ貯めたお金を使おうという時に働く人がいなければ、十分な物やサービスは手に入らない。そうなって何が起きるかと言うと、今も起きつつありますけども、インフレがどんどんきつくなってくる。だって、作ってくれる物やサービスが限られてるわけだから、みんな将来、老後のために介護をしてもらおうと思っても、介護してくれる人がいない、と。
茂木:だからこの田内さんの『きみのお金は誰のため』という小説は、真っ当なことを伝えてくれるんですよね。
田内:真っ当です(笑)。
茂木:人間として、ものすごく(真っ当)ですよね。お金のことでちょっと酔っぱらっちゃってる人が多いんだけど、「実は世の中はこうなってるでしょ?」と言われたら、確かにそうですもんね。
田内:そうなんですよね。僕がゴールドマン・サックスという会社で、もうまさにマネー資本主義の真ん中にいて色んなお金の動きを見た時に、一番当たり前のことで気づいたのは、「お金は全体で増えない」んですよね。
茂木:誰かから誰かに行っている。
田内:移動している。
よく言う「金融資産とかは増えている」という話もあるんですけど、実は金融資産が増える時は、反対側で誰かの金融負債が増えている。貸し借りが増えているだけだったりするんですよね。そう考えると、実は個人ではお金を増やすこと自体が目的になるんだけれど、全体ではそれはできないんです。
茂木:なるほど…。ぜひ皆さんも『きみのお金は誰のため』をお読みください。まだ読んでない方もいらっしゃると思うので、読者の方にメッセージを頂けたらと思うんですが。
田内:はい。SNSを見ていてもそうなんですけど、今お金の不安がすごく多いと思うんですよね。その不安の正体が分からないままお金を増やさなきゃと思っていても、詐欺とかもありますし、結果的にうまくいかなかったり、お金を増やすことばっかり考えてしまって本当の人生の目的が分からなくなってしまう。そういう人向けに、「お金というものは何なのか」とか、「自分の人生とは何なのか」とか、「お金と仲間とかはどう繋がっていくのか」とか、全てを込めた小説形式の本なので、普段ビジネス書を読まない方でも読みやすいと思います。是非お手に取って読んでもらいたいと思います。
●田内学 (@mnbtauchi) / X(旧Twitter)公式アカウント
●田内学 (@tauchimnb) / 公式 Instagram
●田内学 note 公式サイト
●きみのお金は誰のため / 田内学 (著)
(Amazon)
●東洋経済新報社 公式ページ
田内さんは、1978年のお生まれ。
東京大学大学院情報工学系研究科修士課程修了後、2003年、ゴールドマン・サックス証券株式会社に入社。
以後16年間、日本国債、円金利デリバティブ、長期為替などのトレーディングに従事され、日銀による金利指標改革にも携われました。
2019年にゴールドマン・サックス証券を退職し、現在は「社会的金融教育家」として活動され、ビジネス向けの金融経済をテーマとした講演だけでなく、中高生向けにお金の教育や社会科の公共の講演も行なっていらっしゃいます。
──お金と社会との繋がり
茂木:田内さんは先日、東洋経済新報社より『きみのお金は誰のため』という本を発売されました。「読者が選ぶビジネス書グランプリ」で2024年総合グランプリ、優勝おめでとうございます!
田内:ありがとうございます。
茂木:これは、どういうところが読者に受けたんでしょうか?
田内:色んな世代が読んでくださっているんですけれど、ビジネス書としては珍しく、女性の割合が半分ぐらいいらっしゃるんです。そして読んだ方が、「こういうお金の勉強を、もっと早い時からしたかった」とか、「子供に読ませたい」とか(仰る)。
やっぱりお金の話になると「自分とお金」だけの話になっちゃうんですけれども、「それが社会とどう繋がっていくか?」ということを考えると、より世の中のことが分かる。もっと言うと、「世の中で役立つから、お金って貰えるんだ」ということをちゃんと物語仕立てで理解していくと、「お金を増やすためには何をしなきゃいけないか」ということも分かりやすくなるでしょうし。でもそれだけじゃない、「“お金”という道具を使って、どう自分の人生を幸せにするか」を考え直した、というような話は聞きますね。
茂木:主な登場人物は、中学生の男の子と、金融バリバリのキャリアウーマンの方、そして謎の「ボス」という人物。この3人の織りなすドラマも非常に印象的ですね。
田内:はい。ビジネス書とかお金の勉強となっちゃうと、なかなか難しくて読み進められない。そこを、小説の力を借りて実際の自分たちの生活に落とし込んで理解していくのが一番いいのかな、と思ったんですよね。
茂木:今回のご著書の中でポイントが3つあって、1つ目は「お金自体には価値がない」。これはどういうことですか。
田内:やっぱり僕もそうですけど、お金にはもちろん価値があると思うわけですよ。だけど、よく考えると、ただの紙切れなんです。「なんでここに価値が生まれているのか?」というところから考えると、より社会のことが分かる。
茂木:…ということなんですよね。これには驚愕の答えが用意されていて、ちょっとネタバレになるので言いませんが、国との関係であることがあって、円というお金が価値を持った、と。
田内:そうですね。大事なのは、今僕らは「お金」というものに対してすごい万能感を抱いてると思うんですよ。だからとにかくお金を増やせばいい、と。ところが、よく考えてみると、もし僕らが「無人島に皆で移住します」という時に、「何を持っていきますか?」と。
茂木:お金を持って行ってもしょうがないね(笑)。
田内:それにも関わらず、僕らは今、将来に向けてお金を増やそうとしている。「お金って一体何なのか?」と。
茂木:さぁ、「これはどういうことなのかな?」と気になった方は、『きみのお金は誰のため』を読んでください。
そして2つ目は、「お金で解決できる問題はない」。これはどういうことですか?
田内:もちろんお金を使うと、問題を解決できるように見えるんですよ。ところが実際は、「お金を使うことによって、そのお金を受け取った人が何かしら働いてくれる。問題解決をしてくれる」というところが、実はすごく重要なんです。それを分からないまま、例えば日本の経済成長とかの話もそうですけれど、とにかくお金を増やそうとしている。
ところがですよ。実際この数十年を振り返ってみた時に、日本は「失われた30年」とか言われているけれども、金融資産は増えていますよね。その金融資産…お金を使って僕らは色んな便利なものを買うことができる。それはそのお金を払うことで、誰かが問題解決をしてくれている。それで、例えばiPhone買うんでも何でもいいと思うんです。すごい便利になりました。ところが、実際にその問題を解決しているのは外国の人たちです。となると、今起きてるように円安が起きたりして、日本の「円」というお金の価値はどんどん失われてしまう。
大事なのは、「この円というお金を受け取って、問題を解決してくれる人はどれだけいるか」。そのために僕らは色んなビジネスをしたり物を作ったり売ったりしているんですけども、その根源が分からないままお金を増やそうと思っても、うまくいかないですよね。
茂木:なるほどなぁ。それがどういうことなのかということは、この『きみのお金は誰のため』を読むと、「ボス」という人物が熱く語ってくれますよね。
そして3つ目は、「みんなでお金を貯めても意味がない」(笑)。これはどういうことですか?
田内:ポイントは「みんなで」というところなんですよ。もちろん僕1人、茂木さん1人だったら、お金を貯めれば、将来そのお金使えば楽して暮らすことができるわけですね。今一番のお金の不安というのは「老後の不安」だと思うんですね。老後の不安のために僕らはせっせとお金を貯めようとしているんですが、みんなでお金を貯めることによってどうなるか。
例えば、「老後資金が2000万円足りないと言われているので、みんな2000万円貯めました」。「じゃあみんな働かなくていいか?」と言うと、そこでは誰か働いてる人がいないと社会が回らないわけですよ。
働く人がいなくなるということはないんですけれど、少子化が進んで、今もすごい勢いで減っているんですよ。確か去年とかは、年率にして5.〇%減ったんですよね。後12年ぐらいで子供の出生数は半減しちゃう。と考えると、その何十年後に自分たちが老後を迎えて、さあ貯めたお金を使おうという時に働く人がいなければ、十分な物やサービスは手に入らない。そうなって何が起きるかと言うと、今も起きつつありますけども、インフレがどんどんきつくなってくる。だって、作ってくれる物やサービスが限られてるわけだから、みんな将来、老後のために介護をしてもらおうと思っても、介護してくれる人がいない、と。
茂木:だからこの田内さんの『きみのお金は誰のため』という小説は、真っ当なことを伝えてくれるんですよね。
田内:真っ当です(笑)。
茂木:人間として、ものすごく(真っ当)ですよね。お金のことでちょっと酔っぱらっちゃってる人が多いんだけど、「実は世の中はこうなってるでしょ?」と言われたら、確かにそうですもんね。
田内:そうなんですよね。僕がゴールドマン・サックスという会社で、もうまさにマネー資本主義の真ん中にいて色んなお金の動きを見た時に、一番当たり前のことで気づいたのは、「お金は全体で増えない」んですよね。
茂木:誰かから誰かに行っている。
田内:移動している。
よく言う「金融資産とかは増えている」という話もあるんですけど、実は金融資産が増える時は、反対側で誰かの金融負債が増えている。貸し借りが増えているだけだったりするんですよね。そう考えると、実は個人ではお金を増やすこと自体が目的になるんだけれど、全体ではそれはできないんです。
茂木:なるほど…。ぜひ皆さんも『きみのお金は誰のため』をお読みください。まだ読んでない方もいらっしゃると思うので、読者の方にメッセージを頂けたらと思うんですが。
田内:はい。SNSを見ていてもそうなんですけど、今お金の不安がすごく多いと思うんですよね。その不安の正体が分からないままお金を増やさなきゃと思っていても、詐欺とかもありますし、結果的にうまくいかなかったり、お金を増やすことばっかり考えてしまって本当の人生の目的が分からなくなってしまう。そういう人向けに、「お金というものは何なのか」とか、「自分の人生とは何なのか」とか、「お金と仲間とかはどう繋がっていくのか」とか、全てを込めた小説形式の本なので、普段ビジネス書を読まない方でも読みやすいと思います。是非お手に取って読んでもらいたいと思います。
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