Dream Heart(ドリームハート)

土曜22:00-22:30 TOKYO FM/全国38局でON AIR 各局放送時間

REPORT 最新のオンエアレポート

Dream HEART vol.588 ナチュラルスマイルジャパン株式会社代表取締役 松本理寿輝さん 著書「普通をずらして生きる ニューロダイバーシティ入門」

2024年07月06日

今週ゲストにお迎えしたのは、「まちの保育園」や「まちのこども園」を運営されている、
ナチュラルスマイルジャパン株式会社代表取締役、松本理寿輝さんです。

松本さんは、1980年、東京都のお生まれ。

2003年に一橋大学をご卒業後、博報堂、不動産ベンチャーを経て、
かねてからの保育の構想の実現のため、
2010年、ナチュラルスマイルジャパン株式会社を設立。

また、一方では、イタリアで先端的な幼児教育の取組みをしている、
レッジョ・エミリア・アプローチの国際ネットワーク日本窓口団体
「JIREA」の代表もつとめていらっしゃいます。

認可保育所「まちの保育園」、認定こども園「まちのこども園」を都内6箇所に運営し、
保育の場をまちづくりの拠点として位置づけ、豊かな社会づくりをめざし、
ご活動されていらっしゃいます。


null


──まちぐるみで取り組む、創造性と協働性の教育

茂木:松本さんは先日、アメリカのマサチューセッツ工科大学メディアラボの所長を務められて、そして現在は千葉工業大学の学長も務めていらっしゃいます伊藤穰一さんと、共著『普通をずらして生きる ニューロダイバーシティ入門』という本を発売されました。拝読しまして、素晴らしい試みをされているなと思いました。

松本:ありがとうございます。

茂木:この認可保育所「まちの保育園」、そして認定こども園「まちのこども園」。これはどういう特徴があるんでしょうか?

松本:その名が示す通りなんですけども、まちぐるみの保育をしていまして。その時に二つの想いをよく語っているんですけど、「子どもたちの育ち・学びを、社会や地域と繋いでいく」というようなところが一つと、もう一つが、保育園、あるいは学校もそうだと思うんですけど、「まちづくりの担い手になっていく、まちづくりの拠点になって地域のウェルビーイングを進めていく」という、そういった二つの視点を持った園です。

茂木:子どもも育つし、まちもみんな幸せになる、というような。

松本:はい。そういうことを色々考えながらやってきました。

null


茂木:そして、伊藤穰一さんとの共著の中にもある『ニューロダイバーシティ』。これは最近よく聞く言葉ですけど、どういう意味なんでしょうか?

松本:「脳神経の多様性」…というのを茂木さんの前でお話するのもあれなんですけど(笑)。

茂木:いえいえ!

松本:自閉症とかADHD圏の子たちのところの運動から始まっているんですけれども、いわゆる生物学的には「脳の正常なバラエティ」とされていて、脳の感じ方とか考え方、その違いがあることによって、それを何かの障害としてみなすのではなくて、むしろそれを可能性として捉えて、その子が持っている素敵な部分を伸ばしていく、ということをやっていこうと。そんな考え方に基づいています。

茂木:松本さんの取り組まれていることは、「まちで子どもを育てる」、「子どもを通してまちが育つ」、そして「個性とか可能性を大事にする」、ということですね。
今番組を聴いてくださっている方で、ご自身のお子さんとかあるいは周りに、個性が非常にユニークで、いろんな現場で「うちでは受け入れられません」とか、逆に「ちょっといづらい」とか、そういう思いをされている方がいらっしゃると思うんですけど、松本さんご自身の経験から、子どもの個性はどう捉えればいいとお考えですか?

松本:私が大学の時に、自分の理想の教育のあり方を考え始めたんですが、まさに「個性を大切にする」というところは一つ自分の着眼点でもあったわけなんですね。というのと、「まちぐるみ」というか「社会と繋がる」ことの重要さのようなことは、自分なりに価値観としてありました。その中で、『レッジョ・エミリア』という幼児教育のアプローチに出会うんですけれども…。

茂木:これはよく聞く名前ですけど、どういうアプローチなんでしょうか?

null


松本:これは、イタリアのレッジョ・エミリア市というところが発祥の教育のアプローチなんですけども、「創造性と協働性の教育」と言われています。「知識というのは大人から届けられるもの、伝達されるものではなくて、創造されるものだ」、というようなところから、特徴的には、教室で知識を届けるのではなく、アトリエで子どもたちが何かを表現したり作ったりしながら、自分の目的と、社会のいろんな理念・概念を繋げて創造していく、というようなことをやっているんです。
プロジェクトベースドラーニングみたいなことが結構広がってきているとは思うんですけども、ある種、その先駆け的なところでもあると思います。それを1970年代ぐらいからやられていて、そういった、いわゆるクリエイティビティの教育を進められている、ということです。
子どもというのは、社会によって興味関心とかいろんな事象に出会ったり、文化に出会ったりしながら、自分を開いていきます。それが子どもの権利だという考えで、地域…まちが子どもたちの学びの環境や育ちの環境を支えているんですよね。そういったところが本当に素敵だなと思います。
かつ、まちの大人たちも、子どもと関わりながら子どものレンズを通して自分が知っている世界と新しく出会い直す、というようなことなどあるので、子どもたちが参加することによってまちも少し豊かになって楽しくなっていく。
そういったことを民主主義的にやっているようなまちでもあるんですけども、その「創造性と協働性の教育」ということが、レッジョ・エミリア・アプローチと言われています。

茂木:やっぱりそういうところだと、子どもの個性というものは生かされるんですか。

松本:はい、そうですね。個性に繋げていこうとすると、レッジョの中心的な哲学というかアプローチの考え方に『100のことば』というものがあるんです。まさに教育というのはいわゆる言葉を使って伝達するみたいな考え方があったわけですけども、その「言葉」ということにすごく多様性・多声性を持たせているようなところがあって。つまり『100のことば』というのは、100人いればもちろん100通りの言葉がある。そういったいわゆる“違い”に価値を置いているということです。
あるいは、一人一人の言葉に重きを置いている、ということもあるわけですけども、もうちょっと幅広いと言うか深い概念があります。
というのは、いわゆる言語だけでこんなに豊かで複雑な世界を理解するのは勿体ない。言語というメディアだけでこの世界を捉えるんじゃなくて、人間というのは本来は非言語的でもっと豊かな経験しているんです。例えば「表現」を一つの言語と捉えて、何かを書いたり、造形したり、あるいは音楽で何かを表現したり、身体を使ってダンスで表現したり…。人間は様々な表現があったりするわけですけども、そういった表現というのも世界と対話する一つの言語と捉えて、表現という領域も大事にしながら、この複雑な世界と対話するということをやっている。
そういうところがあるので個性を大事にしますし、その一人一人が持っている得意な部分とか特性みたいなところに注目して、それから学びの環境を築いてるというのが、レッジョ・エミリア・アプローチかなと思います。

null



まちの保育園・こども園 公式サイト


レッジョ・エミリア・アプローチの日本窓口「JIREA」公式アカウント


●普通をずらして生きる ニューロダイバーシティ入門 / 伊藤穰一 (著), 松本理寿輝 (著)
(Amazon)



linkties(リンクタイズ株式会社)公式アカウント