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Dream HEART vol.586 ハーバード大学医学大学院・精神医学教授 ロバート・ウォールディンガーさん 著書「グッド・ライフ 幸せになるのに、遅すぎることはない」

2024年06月22日

今週ゲストにお迎えしたのは、ハーバード大学医学大学院・精神医学の教授、
ロバート・ウォールディンガーさんです。

ロバート・ウォールディンガーさんは、1951年のお生まれ。

マサチューセッツ総合病院を拠点とするハーバード成人発達研究の現責任者であり、
ライフスパン研究財団の共同創立者でもいらっしゃいます。

ハーバード大学で学士号を取得後、ハーバード大学医学大学院で医学博士号を取得。

臨床精神科医・精神分析医としても活躍しつつ、
ハーバード大学精神医学科心理療法プログラムの責任者を務めていらっしゃいます。


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──人生の幸福に重要なのは、他者との人間関係

茂木:世界的なベストセラーになったご著書『グッド・ライフ 幸せになるのに、遅すぎることはない』についてお伺いしていきたいんですけども。
教授、グッドライフの結論は、「人間が幸せになるために一番大事なことは何だ」、ということなんでしょうか?

ウォールディンガー:はい、重要な要素が二つあります。
まず一つ目。これは誰もがそんなに驚くような事実ではないと思うんですけれども、“身体的な健康”です。これが長寿であったりとか、あるいは健康寿命に大きな影響を及ぼすということです。
二つ目。こちらの方が皆さん驚かれるかと思います。それは一番幸福な人、そして一番長生きする人、そして一番健康な人…この人達というのは、一番“他者と良好な人間関係を築いている人達”なんです。

茂木:普通幸せの条件と言うと、お金だとか、社会的な地位だとか、自分が何かを達成…アチーブすることだと思いがちなんですけども、そうではないということなんですね。

ウォールディンガー:その通りです。実際に一番幸福な人達というのは、一番お金持ちであるわけでもなく、そして名声を享受しているわけでもなく、とても働き者というわけでもありません。その幸福な人達というのは、人間関係が最も良好な人達なんです。

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茂木:「人間関係」と言っても今は非常に多様になってきて、家族のあり方も必ずしもかつての家族のあり方とは違ってきていると思うんですけど、ご著書で報告されている「人間関係の大切さ」というのは、多様性の時代にどのように変わってきているのでしょうか?

ウォールディンガー:そうですね。今まさに多様性の時代ということで、理想系の幸福というものはありません。つまり、何千ものを人生がある中で色んな幸福のあり方があると思うんです。その幸福のための公式みたいなものは存在せず、様々な多様な人がいるからこそ、様々な幸せのあり方があると思うんです。

茂木:このご著書『グッドライフ』の中では、家庭での関係、あるいは友人との関係だけではなく、職場で仕事をしている時の人間関係も大事だということをお書きになっていると思うんですけど、このことについてちょっと教えて頂けますか?

ウォールディンガー:はい。私達の研究の中で何百人もの労働者・会社員の方々の調査を行いました。
その中で、やはり「職場に少なくとも1人は自分の個人的なことを話せる・打ち明けられるような友達がいると、幸せになれる」という結果が出ております。お友達がいることによって、ハッピーになれてそして生産性も上がるという結果が出ております。
しかしながら、会社員の中の30%のみが、そういった友人がいる、と。他の70%の人達は友人がいないので、ほとんど仕事に対してのエンゲージメントが低い、という結果が出ております。
そして、もしかしたら「友人がいることによって、生産性を削いでしまうような結果になるかもしれない」と思われる方もいるんですが、実際には生産性が上がるんです。

茂木:今メディアが変わって、多くの人が家族といる時にもスマートフォンに夢中になっています。ご著書の中で、「スクリーンタイムよりもピープルタイム…人と直接向き合う時間を過ごすように」とご提案されていると思うんですけど、この点について教えて頂けますか?

ウォールディンガー:実際に他の人達と会って、様々なやり取りをする中でエネルギーを貰うことはできます。それによって幸福度を上げることはできるんです。
また、オンラインでも、主体的に関わる、そして活発に人とやり取りをすることによって、更に幸福度を増すことができます。
しかしながら、受動的に他の人達の生活をただ漫然として眺めることは、それによって、自分の幸福度が下がってしまうという結果が出ています。

茂木:ありがとうございます。
なんと、ウォールディンガー教授は禅の先生…老師でもあるということです。その禅の考え方の中でとても大事な“マインドフルネス”のことについて、ご著書の中で非常に大事なことだと書かれています。特に人と向き合う時に、その人の細かいところまで気づいたり、注意を向けたりするためにマインドフルネスが大事だと仰っていますが、禅の瞑想と人間関係の関連ついて、何か教えて頂けることがあったら教えてください。

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ウォールディンガー:そうですね。禅によって私達は注意を向ける練習をすることができます。つまり、他の人達に対して注意を向ける価値に気づくことができていくようになります。そして、その人に集中するということを学ぶことができます。
そういった注意の仕方を学び、そしてたくさんの人達に対して気配りであるとか、あるいは注意・配慮をすることによって、人間関係が向上していくわけです。

茂木:ご著書『グッドライフ』は世界的なベストセラーなんですけども、この日本はまさにその禅の瞑想が盛んに行われている国でもあります。日本にはそういう伝統的な文化があるんですけども、ご著書がこの国で読まれる時に読者がどういう受け止め方をするかとか、こういうところを読んでほしいというメッセージがありましたら、教えてください。

ウォールディンガー:「本の中で何に注目をしてほしいか」といったご質問だったと思いますけれども…。様々な関係性を見ていく、そして関係性をより良くしていく中で、皆さんは健康になり、そして幸福な人生を享受することができます。
本の中に演習があって、どういうふうに自分達の人生や関係性を捉えるのか、そしてそれを向上させていくのか、といったところが学べるかと思います。

茂木:これからこの『グッド・ライフ 幸せになるのに、遅すぎることはない』を読みたいなと思っている方や、興味を持ったという日本の読者に向けて、ウォールディンガー教授から何かメッセージを頂けますでしょうか?

ウォールディンガー:「是非皆さんには、自分の本当に大切な人に注意を向けてほしい」、というのが私のメッセージです。色んな圧力があって、仕事もやらなきゃいけない、あるいは電話で色んな処理をしなければいけないということもあるでしょうけれども、しかし、大切な人に対して注意を振り向けて、一緒に時間を過ごすことによって、力を取り戻すことができるんです。

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Robert Waldinger(@robertwaldinger)さん / X(旧Twitter)公式アカウント


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