Dream Heart(ドリームハート)

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Dream HEART vol.569 作詞家・音楽プロデューサー 秋元康さん 「夢というのは、全力で背伸びした、その1ミリ先にある」

2024年02月24日

秋元康さんは、1958年、東京都のお生まれです。

高校時代から放送作家として『ザ・ベストテン』等数々の番組構成を担当。
作詞家としては美空ひばりさんの『川の流れのように』をはじめ、
多くのヒット曲を誕生させていらっしゃいます。

そのほか、企画・原作の映画『着信アリ』はハリウッドでリメイクされ、
2008年『One Missed Call』としてアメリカで公開。
また、原作の『象の背中』は 2012年、韓国JTBCでテレビドラマ化され、
オペラの演出や歌舞伎公演の作・演出等も手掛けていらっしゃいます。
AKB48ほか、乃木坂46、櫻坂46、日向坂46等、
女性グループのプロデューサーとしてだけではなく、SHOW-WAやMATSURI等の
男性グループのプロデュースも手掛けていらっしゃいます。
2022年4月には、紫綬褒章を受章されるなど、
日本を代表するクリエイターとしてご活躍中でいらっしゃいます。


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──今より未来に目を向ける

茂木:秋元さんというのは、ご自身で考えると、どういう人なんでしょうかね。

秋元:落ち着きがないという意味では茂木さんと同じなんだけど、茂木さんと違うのは、俺の見た目は落ち着いて見えるんですよ。俺の何が落ち着いていないのかと言うと…。うちの母親がずっと言ってたんだけど、例えば「康は子供の頃から、遊園地に行っても、コーヒーカップに乗ろうが、ジェットコースターだろうが、乗っている時に、次に乗りたいものを見てる」と。

茂木:それはすごい話ですね。

秋元:そういう“落ち着いてない”んですよ。好奇心がいつも湧き出てしまって。茂木さんからも色んなことを教えてもらったけど、例えば「一番のボケ防止は、子供の頃の自分の部屋の間取りを思い出すことですよ」とか、ああいうのがすごく面白いんだよね。

茂木:秋元さん、だってもう世間的にはAKBとか乃木坂とかこれだけヒットさせてるわけですから、その好奇心という意味においては、もうそれでいいじゃないかと思うんですが。手元の資料だと、作詞家としてのシングルのトータルセールスが、2015年の時点で1億枚を超えているそうですね。

秋元:そうだったかもしれないですね。

茂木:すごくないですか? これだけヒットを飛ばし続けてる人は他にいないと思うんですけど、まずそこについては、ご自身ではどうお考えですか。

秋元:あんまり興味がないかもしれないですね。

茂木:興味がない(笑)。

秋元:やっぱり、「過去こうでしたよね」とかと言うよりも、「未来のこういう話にわくわくする」とか、未来の方に向いてしまいますよね。

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茂木:お母様が仰っていたという、「康がコーヒーカップに乗ってても、次は何に乗ろう」と。

秋元:そう。だから、今売れた枚数を数えるよりも、次のものを見たい、作りたい、ということかな。

茂木:教えて頂ける範囲内で、秋元さんが今、次に乗ろうと思っている遊具とかライドは何ですか?

秋元:次の遊具は、やっぱりグローバルに通用するドラマなり映画でしょうね。
一番は、韓国の素晴らしさ。K-POPがあれだけグローバルになった。それは、多分韓国というマーケットが5000万人より少なくなってしまった。そこで、世界に出なきゃいけないという意識を、若い人がずっと持っているからじゃないですか。留学も日本人よりも遥かに多いし、時の政府もカルチャーとしてのK-POPやドラマ・映画を支援して、ここまでの産業にしたわけですよね。それは素晴らしいと思うんですよ。
野茂英雄くんがメジャーリーガーとして渡った時に、誰も成功すると思っていなかったのに、あれだけの結果を出して、それがイチローとか松井秀喜とか、今の大谷翔平まで続くわけじゃないですか。だから、僕がどうのこうのと言うよりも、きっかけとして、そういう道なりドアなりを開けられたら、きっと僕よりもっと優秀な日本の人たちがやるんじゃないかな、と思うんですよね。

茂木:秋元さんは、もう既に海外との仕事を色々されているじゃないですか。リメイクもされていますし。ここからの動きとして、一番ありうるシナリオと言うか、どういうことを考えていらっしゃるんですか?

秋元:一番は、やっぱり“濃いカルピスの原液”ですよね。結局は、そこでまた同じことが起きる。例えば今、色んなプラットフォームで人気の韓国のドラマやショートという韓国の映画を真似したり、そっちに行くと勝てないだろう、と。

茂木:薄まる方だから、ということですね。

秋元:そう。だって、原液は韓国にある。あるいは、欧米の何かを真似しようとしても、駄目じゃない。

茂木:原液は向こうにあるから。

秋元:そうすると、やっぱり日本の「全然関係ないよ」、「そんなのはどうでもいい。俺たちの好きなことやるんだよ」と言っていた、かつてのアニメの人達や、アイドル文化を粛々と作っていた人達のような、オリジナリティですよね。つまり、人から「当たらない」と思われることがすごく大事なんです。それこそが、つまりブルーオーシャンなんですよ。レッドオーシャンに行く気はさらさらないんですよね。

茂木:でもそれは、今、多くの人がイメージしている海外への出方とは違いますよね。多くの人は、韓国のタレントエージェンシーとコラボしてとか。それはそれでやっていいんだけど、原液を作るというのはしていない。

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秋元:そう。今、韓国のチームとも作品を作っていますし、ハリウッドとも作っていて、もちろんそれはそれで全力でやりますけど。きっとふとした時に、「これは誰もやったことがないんじゃないか」というようなことができるんじゃないかな、と思っちゃうの。

茂木:すごいなぁ。そのうち秋元さんが、かつてAKBの時の「秋葉で劇場を作ったんだよ」、みたいなことを仰るんでしょうね。僕が戸惑って「え、それどういうことですか?」と言っていると、それがいつの間にか広がっていくのかなぁ。

秋元:だから、そういうことがきっと起きるんじゃないかなと思います。

茂木:楽しみですね。

──秋元康さんの『夢・挑戦』

茂木:この番組は『夢・挑戦』がテーマなんですけど、もし具体的なゴールとか「こういうことをやりたい」というものがありましたら、教えて頂きたいんですが。

秋元:全くないんですよね。目指すものがない。それはなぜなら、高校2年生の時から、ふっと幽体離脱して歩んでいるような人生じゃないですか。ただ、リスナーに言いたいのは、あるいは、AKBや坂道のオーディションに来てくれる子たちに必ず言うのは、「夢というのは、全力で背を伸ばして、背伸びして、その1ミリ先にある」んですよ。

茂木:ほう!

秋元:だけど届いてないから、触れてなくて、1メートル上か、1キロ先にあるように感じるじゃない。でも実は、傍で見ていると、「あと1ミリなのにな」というのが夢なんだよね。夢の方から離れることはないのに、見てると、皆自分の方が踵を下げるわけ。それはもったいないなと思うんだよね。
でも、それを僕が「ここで踵を下げたらもったいないだろ」と言ったら、それは意味がないんですよ。結局そこのところで、夢が1ミリ先だったのが、もしかしたら10センチ上に上がっちゃうかもしれないし。だから、自分で信じるしかないんだよね。

茂木:秋元さんは、触れた瞬間というのが自分で分かったんですか?

秋元:いや、触れた瞬間は分からないけども。でも、むしろ僕ぐらいになると、思い込みが激しいから、「絶対ある」と。だから多分、昔のゴールドラッシュとか埋蔵金とかは、きっとそれじゃないの? 「絶対ここにある!」と思って掘り続けるわけじゃない。

茂木:あと1ミリ先にあるかもしれないし。

秋元:そうそう。僕なんかは、例えばAKBを始めようが、映画を始めようが、ドラマを始めようが、「絶対当たる!」と、「これは絶対来るはずだ! きっと俺はまだ1ミリ先に触れてないだけだ!」って信じてるね(笑)。

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秋元康さん(@yasushi6057) 公式Instagram


AKB48 公式サイト