2024年02月10日
斎藤幸平さんは、1987年のお生まれで、
東京大学大学院の准教授でいらっしゃいます。
ベルリン・フンボルト大学哲学科博士課程を修了。
ご専門は、経済思想、社会思想です。
ご著書『Karl Marx's Ecosocialism: Capital, Nature,
and the Unfinished Critique of Political Economy』
(邦訳で、『大洪水の前に』) によって、
イギリスで運営されているマルクス研究界最高峰の賞、
ドイッチャー記念賞を、日本人で初めて、歴代最年少の31歳で受賞されました。
また、ご著書『人新世の「資本論」』は50万部のベストセラーとなり話題を集めました。
今、最も注目される経済思想家として、ご活躍中でいらっしゃいます。
──日本の活字文化は誇れるコモン
茂木:斎藤幸平さんは、今は日本の大学で教えていらっしゃるわけですけど、よく「日本の大学はヨーロッパとアメリカの大学の中間的な性格を持っている。でも、だんだんアメリカの大学に近づいてきてしまっている」と言いますが、その辺りはどうお感じになりますか。
斎藤:ジャーナルと呼ばれるような査読論文とかそういうものを書いて、できるだけ引用されて…と、そういうものを数値化した、大学のランキングというものがあるんですけど。それを上げて行くことこそが、大学の研究の目的である、というような姿は、私はやっぱりちょっと違和感があって。
ドイツに行ってすごく感じたのは、研究というのは社会の為のものである。別に自分が引用されるものを書くことが目的ではなくて、教育も含めて、社会にしっかり還元していく、ということの大切さは、ドイツですごく学びましたね。
それが今自分の中では、例えばこういう自分の学んだことを、今の社会の格差とか環境問題についての発言とかコミットメントというのに繋がっている、というのはあります。
茂木:今、色々なテレビ番組でもコメンテーターとして大活躍されていますが、どうですか? 斎藤さんから見て、アメリカ、そしてドイツを中心にヨーロッパをご覧になってきた中で、メディアに出ていることもあるし、日本の現状について色々感じることがあると思うんですけど。
斎藤:でも、僕は日本に帰ってきて、逆に日本の凄さに気が付いたんです。例えば、あの『人新世の「資本論」』という本は、言えば結構難しい本ですよ。
茂木:僕は出てすぐ読みましたけど、まあ骨のある本ですよね(笑)。
斎藤:あれが50万部売れる。
茂木:ベストセラーになりましたもんね。
斎藤:本屋に行くと、マルクスとかだけじゃなくて、色んな哲学とか、最近ではChatGPTとか、ガザとか、色んな重要な問題についてのテーマの話が、日本語でも毎月のようにどんどんアップデートされて出ていて。しかもそれが安価に出ている。今、書店の数が減っているとか色々ありますけれど、未だにそれだけの読者の方々がいて、日本の文化として残っている。
ドイツでもアメリカでも、これだけ書店が街中にあって、色んな人たちが本を読んでいる社会というのはなかったし、今の私なんかはそういうことがあってメディアに出させて頂くと、その発言が人々の問題を考える上に繋がっていく。そういう有機的な連関があるというのは、多分あんまり意識されてないと思うんですけど、僕は日本にしかない素晴らしい文化だと思っています。
茂木:ある意味では、まさにコモンなんですかね。
斎藤:そうです。本、書店というものを媒介とした、一つの活字文化。もちろんインターネットとかで変わってきて、YouTubeとかになってきているところもあるけれど、未だにこれだけ残っているというのは、誇っていいコモンだと思いますね。
茂木:だから、そこら辺はまだ希望がないわけではない、という。
斎藤:本当に、今まで自分が研究してきた難しいことというものを、こうやってメディアに…今日も茂木さんとラジオでお話させて頂いて、こういう話をこれだけさせて頂けるような、社会的な地位とか教養の土壌とか、そういうものに関心があるということは、やっぱり世界の問題や社会を変えていく、すごい力になりますよね。
──斎藤幸平さんの『夢・挑戦』
茂木:先週ご紹介しました『コモンの「自治」論』でも、たくさんの方と色々な問題を研究されていることが伝わってくるんですが、ラジオを聴いている方が斎藤さんの社会的な関心事に、どういう機会がありますか。
斎藤:これは私の夢に関係するんですけど…。内田樹さんが『凱風館』という合気道の道場やっていて、そこの場自体が、色んな人たちが来るコモンになっていますよね。合気道をやらない時も、例えば講演会をやったりだとか、色んな演劇をやったりだとか、そういう他のアクティビティでも使える場所になっていて、お弟子さん達がたくさんいる。そういう道場じゃないけれど、まさに知をコモンにしていくということは、私は非常に大事だと思っていて。仮に大学が無償化されても、どうしても、東京大学に入れる人数とか授業を受けられる人数は、すごく制限がかかっているので…。
茂木:入試がちょっと大変ですもんね。
斎藤:なので、もっとそういう色んな人達と有機的に結びつけるような、“知の道場”みたいなものを、いつか作りたいなと思っていますね。
茂木:そうですか。そこに行くと、大変難しいんだけど、色々こういう価値のあることを考えられるとか、実践できる。
斎藤:私は東京に来る前、大阪に5年間いて、関西で内田先生の道場に行ったりだとか、色んな対話をさせて頂く中で、ああいうコミュニティがあるということは、まさにコモンの自治の一つなんじゃないかな、ということを、最近感じていますね。
茂木:なるほど。
この番組でお聞きしている『夢と挑戦』、そういう「“知の道場”みたいなものを開きたい」、ということを仰ってくださったんですが、改めて、『夢・挑戦』は何になりますか?
斎藤:まず、やっぱり研究者として、マルクスだけじゃないですけど、そういう思想家、哲学が持っているポテンシャルを引き出すような研究は、これからもしっかり続けていきたいなと思います。それは、今年にもう1回ドイツに行って、しっかり研究をする、ということなんですけれども。
それと合わせて、実践の面で、こういう『コモン』と呼ばれるものを社会に具現化していったり、その考え方とか実践を広めていく、という活動も、色々したいなと思っています。既にいくつか始めてはいるんですけれども、将来的には、さっき言ったような“知の道場”みたいなこともできたらいいな、なんて思っております。
■プレゼントのお知らせ
番組でご紹介してきました、現在発売中の
斎藤幸平さんのご著書『コモンの「自治」論』を
3名の方にプレゼント致します。
ご希望の方は、お名前やご住所、電話番号など、必要事項を明記の上、
メッセージフォームより、ご応募ください。
私、茂木に聞きたい事や相談したい事など、
メッセージを添えていただけると嬉しいです。
尚、当選者の発表は、商品の発送をもってかえさせていただきます。
たくさんのご応募、お待ちしております。
●斎藤幸平さん(@koheisaito0131) 公式アカウント / X(旧Twitter)
●コモンの「自治」論 / 斎藤 幸平 (著)他
(Amazon)
●集英社 公式サイト
東京大学大学院の准教授でいらっしゃいます。
ベルリン・フンボルト大学哲学科博士課程を修了。
ご専門は、経済思想、社会思想です。
ご著書『Karl Marx's Ecosocialism: Capital, Nature,
and the Unfinished Critique of Political Economy』
(邦訳で、『大洪水の前に』) によって、
イギリスで運営されているマルクス研究界最高峰の賞、
ドイッチャー記念賞を、日本人で初めて、歴代最年少の31歳で受賞されました。
また、ご著書『人新世の「資本論」』は50万部のベストセラーとなり話題を集めました。
今、最も注目される経済思想家として、ご活躍中でいらっしゃいます。
──日本の活字文化は誇れるコモン
茂木:斎藤幸平さんは、今は日本の大学で教えていらっしゃるわけですけど、よく「日本の大学はヨーロッパとアメリカの大学の中間的な性格を持っている。でも、だんだんアメリカの大学に近づいてきてしまっている」と言いますが、その辺りはどうお感じになりますか。
斎藤:ジャーナルと呼ばれるような査読論文とかそういうものを書いて、できるだけ引用されて…と、そういうものを数値化した、大学のランキングというものがあるんですけど。それを上げて行くことこそが、大学の研究の目的である、というような姿は、私はやっぱりちょっと違和感があって。
ドイツに行ってすごく感じたのは、研究というのは社会の為のものである。別に自分が引用されるものを書くことが目的ではなくて、教育も含めて、社会にしっかり還元していく、ということの大切さは、ドイツですごく学びましたね。
それが今自分の中では、例えばこういう自分の学んだことを、今の社会の格差とか環境問題についての発言とかコミットメントというのに繋がっている、というのはあります。
茂木:今、色々なテレビ番組でもコメンテーターとして大活躍されていますが、どうですか? 斎藤さんから見て、アメリカ、そしてドイツを中心にヨーロッパをご覧になってきた中で、メディアに出ていることもあるし、日本の現状について色々感じることがあると思うんですけど。
斎藤:でも、僕は日本に帰ってきて、逆に日本の凄さに気が付いたんです。例えば、あの『人新世の「資本論」』という本は、言えば結構難しい本ですよ。
茂木:僕は出てすぐ読みましたけど、まあ骨のある本ですよね(笑)。
斎藤:あれが50万部売れる。
茂木:ベストセラーになりましたもんね。
斎藤:本屋に行くと、マルクスとかだけじゃなくて、色んな哲学とか、最近ではChatGPTとか、ガザとか、色んな重要な問題についてのテーマの話が、日本語でも毎月のようにどんどんアップデートされて出ていて。しかもそれが安価に出ている。今、書店の数が減っているとか色々ありますけれど、未だにそれだけの読者の方々がいて、日本の文化として残っている。
ドイツでもアメリカでも、これだけ書店が街中にあって、色んな人たちが本を読んでいる社会というのはなかったし、今の私なんかはそういうことがあってメディアに出させて頂くと、その発言が人々の問題を考える上に繋がっていく。そういう有機的な連関があるというのは、多分あんまり意識されてないと思うんですけど、僕は日本にしかない素晴らしい文化だと思っています。
茂木:ある意味では、まさにコモンなんですかね。
斎藤:そうです。本、書店というものを媒介とした、一つの活字文化。もちろんインターネットとかで変わってきて、YouTubeとかになってきているところもあるけれど、未だにこれだけ残っているというのは、誇っていいコモンだと思いますね。
茂木:だから、そこら辺はまだ希望がないわけではない、という。
斎藤:本当に、今まで自分が研究してきた難しいことというものを、こうやってメディアに…今日も茂木さんとラジオでお話させて頂いて、こういう話をこれだけさせて頂けるような、社会的な地位とか教養の土壌とか、そういうものに関心があるということは、やっぱり世界の問題や社会を変えていく、すごい力になりますよね。
──斎藤幸平さんの『夢・挑戦』
茂木:先週ご紹介しました『コモンの「自治」論』でも、たくさんの方と色々な問題を研究されていることが伝わってくるんですが、ラジオを聴いている方が斎藤さんの社会的な関心事に、どういう機会がありますか。
斎藤:これは私の夢に関係するんですけど…。内田樹さんが『凱風館』という合気道の道場やっていて、そこの場自体が、色んな人たちが来るコモンになっていますよね。合気道をやらない時も、例えば講演会をやったりだとか、色んな演劇をやったりだとか、そういう他のアクティビティでも使える場所になっていて、お弟子さん達がたくさんいる。そういう道場じゃないけれど、まさに知をコモンにしていくということは、私は非常に大事だと思っていて。仮に大学が無償化されても、どうしても、東京大学に入れる人数とか授業を受けられる人数は、すごく制限がかかっているので…。
茂木:入試がちょっと大変ですもんね。
斎藤:なので、もっとそういう色んな人達と有機的に結びつけるような、“知の道場”みたいなものを、いつか作りたいなと思っていますね。
茂木:そうですか。そこに行くと、大変難しいんだけど、色々こういう価値のあることを考えられるとか、実践できる。
斎藤:私は東京に来る前、大阪に5年間いて、関西で内田先生の道場に行ったりだとか、色んな対話をさせて頂く中で、ああいうコミュニティがあるということは、まさにコモンの自治の一つなんじゃないかな、ということを、最近感じていますね。
茂木:なるほど。
この番組でお聞きしている『夢と挑戦』、そういう「“知の道場”みたいなものを開きたい」、ということを仰ってくださったんですが、改めて、『夢・挑戦』は何になりますか?
斎藤:まず、やっぱり研究者として、マルクスだけじゃないですけど、そういう思想家、哲学が持っているポテンシャルを引き出すような研究は、これからもしっかり続けていきたいなと思います。それは、今年にもう1回ドイツに行って、しっかり研究をする、ということなんですけれども。
それと合わせて、実践の面で、こういう『コモン』と呼ばれるものを社会に具現化していったり、その考え方とか実践を広めていく、という活動も、色々したいなと思っています。既にいくつか始めてはいるんですけれども、将来的には、さっき言ったような“知の道場”みたいなこともできたらいいな、なんて思っております。
■プレゼントのお知らせ
番組でご紹介してきました、現在発売中の
斎藤幸平さんのご著書『コモンの「自治」論』を
3名の方にプレゼント致します。
ご希望の方は、お名前やご住所、電話番号など、必要事項を明記の上、
メッセージフォームより、ご応募ください。
私、茂木に聞きたい事や相談したい事など、
メッセージを添えていただけると嬉しいです。
尚、当選者の発表は、商品の発送をもってかえさせていただきます。
たくさんのご応募、お待ちしております。
●斎藤幸平さん(@koheisaito0131) 公式アカウント / X(旧Twitter)
●コモンの「自治」論 / 斎藤 幸平 (著)他
(Amazon)
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