2024年01月06日
渡部陽一さんは、1972年、静岡県のお生まれです。
明治学院大学 法学部 法律学科をご卒業されていらっしゃいます。
学生時代から、世界の紛争地域を専門に取材を続け、
戦場の悲劇、そこで暮らす人々の生きた声に耳を傾け、
極限の状況に立たされる家族の絆を見つめていらっしゃいます。
また、イラク戦争では、米軍の従軍(EMBED)の取材を経験され、
これまでの主な取材地は、イラク戦争のほか、ルワンダの内戦、コソボ紛争、チェチェン紛争、
ソマリアの内戦、アフガニスタン紛争、パレスティナ紛争、ロシア・ウクライナ戦争など。
今もなお、現地に赴き、人々の声に耳を傾け、現場の真実を伝えて続けていらっしゃいます。
──戦場の日常
茂木:渡部陽一さんは、今回ディスカヴァー・トゥエンティワンより『晴れ、そしてミサイル』という本を出されたんですよね。帯には「戦場は日常でできている」と。そして「ニュースやSNSではわからない 僕が見てきた戦争の『本当』」ということで、勉強になる本でした。
渡部:はい。僕は戦場カメラマンになり、紛争地の前線に入った時、驚いたことがあるんです。それは、戦場という前線であっても、家族や子供たちが繰り返される日常を過ごしていたんです。この繰り返される戦場の日常というものが、カメラマンとして一番最初に驚いたことなんです。今回出させて頂いたこの書籍には、戦場という日常に立たされた家族・子供たちの、家族の温かい時間、そして、戦場であっても地域の方々との繋がりによって、1日1日を大切に生き延びていく・暮らしていく。戦場という日常を、具体的に日本との重なる部分、そして戦場だから違う部分を、写真と文章でお届けさせて頂きました。
茂木:ありがとうございます。戦場と言っても、実は日常的な生活も一方ではあると。
渡部:そうなんです。
茂木:これは、現地に行ったことがないので、わからなかったんですが。
渡部:戦場紛争地と言うと、その国のどこもかしこも、いたるところが廃墟になっている、というイメージがあるんですけど、もちろん、激戦地域は激しい壊滅の状態ではあるんですけど、都市部の…例えばウクライナ首都キーウ。キーウの中心部に中央駅から電車で降りていくと、ぱっと見ると、駅前の感じは、それこそ東京の駅周辺と変わらない。高層ビルがたくさん並んでいて、美しい劇場があったり、大学があったり、地下鉄があったり、子供たちが学校に通っていたり。ぱっと見ると、普段の日常の暮らしがあるんです。ただ、そんな日常の中であっても、突発的に巡航ミサイルが撃ち込まれてきたり、激しい銃撃が行われたり、ドローンミサイルが撃ち込まれたりする。
戦場取材というのは、“戦場という日常”であっても、そこで暮らしている方々の暮らし…買い物をしたり、インターネットカフェをしたり、学び場に行ったり、ピクニックをしたり、犬の散歩をしたり、こうした日常は、ぱっとその地に降りた時には、「ここは本当に戦場なのだろうか?」、「ここで激しい紛争が起こっているのだろうか?」とちょっとびっくりするほどの日常がある。その日常を知ってほしい。その日常がある中で戦いが続いていることを、激しい映像だけではなく、戦場という日常に暮らしている家族、特に子供たちの声、想い、学校という一つの日本の当たり前の日常から見える、世界の紛争地の学校の学び場。そんな日常を、今回この『晴れ、そしてミサイル』の中で、かなり具体的に描かせて頂きました。
茂木:そこが、今回この本の魅力と言うか、本当に渡部さんが撮られた写真もたくさんありまして。こういう日常があるからこそ、やっぱり平和が大切、ということですよね。
──“夢の国”日本で平和のためにできること
渡部:そうですね。戦場から日本に戻ってきた時強く感じること。やっぱり日本の暮らしというものは、“夢の国”。
茂木:夢の国?
渡部:学校に行けたり、仕事をすることができたり、友人と買い物に行けたり、家族で暮らすことができたり…。世界中で暮らしている方々が求めている“幸せの条件”というものが、日本の中には詰まっている。
食べるもの…食べ物があるだけではなく、食べるものを選ぶことができる。夜、自由に外を歩くことができて、車に乗って皆でご飯を食べに行くことができる。雨露をしのげる家がある。インターネットが自由にできる。何より、学校で学ぶことができる。こうした日常というものは、紛争地に立たされた家族の誰しもが、一番求めている“幸せの条件”なんです。
その条件が日本の中には詰まっている。事件であったり、悲しいことは確かに日本の中にたくさんあります。ただ、1日1日を向き合っていくことができる。この1日過ごすことができるというのは、幸せの極致。この当たり前の日常というものは、戦禍の方々の誰しもが今一番求めている、幸せの思いなんですね。
茂木:今日、まさに2024年最初の放送となるんですけども、今、渡部さんが仰ってくださった、この“夢のような国、日本”の日常の平和がずっとずっと続いてほしいな、と、本当にこの年の初めに思います。
今回書かれました、『晴れ、そしてミサイル』の中では、“平和の為にできること”について書かれていて、「一番大切なのは、世界を知ること」だと仰っていますね。
渡部:僕は世界中で戦争が起こる様々な理由…民族であったり、宗教であったり、国境であったり、領土、資源、水を巡る戦争も、現代では起きています。そんな様々な背景がある中でも、世界中を回って感じたことは、「一つだけでいい。相手のことを知ってみること」。自分が好きなジャンルから入っていってみる。「どうして、この地域ではこの食べ物を食べて、この食べ物は食べないのか?」。「どうして、この地域では、子供たち、男性女性、みんなが別々でご飯を食べなければならないのか?」。それぞれの背景一つだけでいい。興味あることから知ってみることによって、張りつめた怒りであったり、不安であったり、恐怖というものは、少しでも和らいでいく。何だったんだろう、と感じるほどに柔らかくなる。
世界のことを一つだけでいい、自分の好きなジャンルから知ってみること。ここから入っていくことによって、世界中はもう全て、ノーボーダー。民族や宗教や領土、そういった線引きや、様々な距離感というものは、意外と存在しない時なんだ。ノーボーダー。これはもう、2024年のスタンダードだと感じていますね。
●渡部陽一さん オフィシャルサイト
●渡部陽一さん (@yoichiomar) 公式アカウント / X(旧Twitter)
●渡部陽一さん(@yoichiwatanabe1972) 公式Instagram
明治学院大学 法学部 法律学科をご卒業されていらっしゃいます。
学生時代から、世界の紛争地域を専門に取材を続け、
戦場の悲劇、そこで暮らす人々の生きた声に耳を傾け、
極限の状況に立たされる家族の絆を見つめていらっしゃいます。
また、イラク戦争では、米軍の従軍(EMBED)の取材を経験され、
これまでの主な取材地は、イラク戦争のほか、ルワンダの内戦、コソボ紛争、チェチェン紛争、
ソマリアの内戦、アフガニスタン紛争、パレスティナ紛争、ロシア・ウクライナ戦争など。
今もなお、現地に赴き、人々の声に耳を傾け、現場の真実を伝えて続けていらっしゃいます。
──戦場の日常
茂木:渡部陽一さんは、今回ディスカヴァー・トゥエンティワンより『晴れ、そしてミサイル』という本を出されたんですよね。帯には「戦場は日常でできている」と。そして「ニュースやSNSではわからない 僕が見てきた戦争の『本当』」ということで、勉強になる本でした。
渡部:はい。僕は戦場カメラマンになり、紛争地の前線に入った時、驚いたことがあるんです。それは、戦場という前線であっても、家族や子供たちが繰り返される日常を過ごしていたんです。この繰り返される戦場の日常というものが、カメラマンとして一番最初に驚いたことなんです。今回出させて頂いたこの書籍には、戦場という日常に立たされた家族・子供たちの、家族の温かい時間、そして、戦場であっても地域の方々との繋がりによって、1日1日を大切に生き延びていく・暮らしていく。戦場という日常を、具体的に日本との重なる部分、そして戦場だから違う部分を、写真と文章でお届けさせて頂きました。
茂木:ありがとうございます。戦場と言っても、実は日常的な生活も一方ではあると。
渡部:そうなんです。
茂木:これは、現地に行ったことがないので、わからなかったんですが。
渡部:戦場紛争地と言うと、その国のどこもかしこも、いたるところが廃墟になっている、というイメージがあるんですけど、もちろん、激戦地域は激しい壊滅の状態ではあるんですけど、都市部の…例えばウクライナ首都キーウ。キーウの中心部に中央駅から電車で降りていくと、ぱっと見ると、駅前の感じは、それこそ東京の駅周辺と変わらない。高層ビルがたくさん並んでいて、美しい劇場があったり、大学があったり、地下鉄があったり、子供たちが学校に通っていたり。ぱっと見ると、普段の日常の暮らしがあるんです。ただ、そんな日常の中であっても、突発的に巡航ミサイルが撃ち込まれてきたり、激しい銃撃が行われたり、ドローンミサイルが撃ち込まれたりする。
戦場取材というのは、“戦場という日常”であっても、そこで暮らしている方々の暮らし…買い物をしたり、インターネットカフェをしたり、学び場に行ったり、ピクニックをしたり、犬の散歩をしたり、こうした日常は、ぱっとその地に降りた時には、「ここは本当に戦場なのだろうか?」、「ここで激しい紛争が起こっているのだろうか?」とちょっとびっくりするほどの日常がある。その日常を知ってほしい。その日常がある中で戦いが続いていることを、激しい映像だけではなく、戦場という日常に暮らしている家族、特に子供たちの声、想い、学校という一つの日本の当たり前の日常から見える、世界の紛争地の学校の学び場。そんな日常を、今回この『晴れ、そしてミサイル』の中で、かなり具体的に描かせて頂きました。
茂木:そこが、今回この本の魅力と言うか、本当に渡部さんが撮られた写真もたくさんありまして。こういう日常があるからこそ、やっぱり平和が大切、ということですよね。
──“夢の国”日本で平和のためにできること
渡部:そうですね。戦場から日本に戻ってきた時強く感じること。やっぱり日本の暮らしというものは、“夢の国”。
茂木:夢の国?
渡部:学校に行けたり、仕事をすることができたり、友人と買い物に行けたり、家族で暮らすことができたり…。世界中で暮らしている方々が求めている“幸せの条件”というものが、日本の中には詰まっている。
食べるもの…食べ物があるだけではなく、食べるものを選ぶことができる。夜、自由に外を歩くことができて、車に乗って皆でご飯を食べに行くことができる。雨露をしのげる家がある。インターネットが自由にできる。何より、学校で学ぶことができる。こうした日常というものは、紛争地に立たされた家族の誰しもが、一番求めている“幸せの条件”なんです。
その条件が日本の中には詰まっている。事件であったり、悲しいことは確かに日本の中にたくさんあります。ただ、1日1日を向き合っていくことができる。この1日過ごすことができるというのは、幸せの極致。この当たり前の日常というものは、戦禍の方々の誰しもが今一番求めている、幸せの思いなんですね。
茂木:今日、まさに2024年最初の放送となるんですけども、今、渡部さんが仰ってくださった、この“夢のような国、日本”の日常の平和がずっとずっと続いてほしいな、と、本当にこの年の初めに思います。
今回書かれました、『晴れ、そしてミサイル』の中では、“平和の為にできること”について書かれていて、「一番大切なのは、世界を知ること」だと仰っていますね。
渡部:僕は世界中で戦争が起こる様々な理由…民族であったり、宗教であったり、国境であったり、領土、資源、水を巡る戦争も、現代では起きています。そんな様々な背景がある中でも、世界中を回って感じたことは、「一つだけでいい。相手のことを知ってみること」。自分が好きなジャンルから入っていってみる。「どうして、この地域ではこの食べ物を食べて、この食べ物は食べないのか?」。「どうして、この地域では、子供たち、男性女性、みんなが別々でご飯を食べなければならないのか?」。それぞれの背景一つだけでいい。興味あることから知ってみることによって、張りつめた怒りであったり、不安であったり、恐怖というものは、少しでも和らいでいく。何だったんだろう、と感じるほどに柔らかくなる。
世界のことを一つだけでいい、自分の好きなジャンルから知ってみること。ここから入っていくことによって、世界中はもう全て、ノーボーダー。民族や宗教や領土、そういった線引きや、様々な距離感というものは、意外と存在しない時なんだ。ノーボーダー。これはもう、2024年のスタンダードだと感じていますね。
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