2023年10月07日
石山アンジュさんは、1989年、神奈川県のお生まれです。
2012年、国際基督教大学(ICU)をご卒業後、リクルートに入社。
その後、クラウドワークス経営企画室を経て、
2018年、若い世代のシンクタンク「Public Meets Innovation」を設立。
現在は、一般社団法人シェアリングエコノミー協会の代表理事を務めていらっしゃいます。
「シェア(共有)」の概念に親しみながら育ち、シェアリングエコノミーを通じた、
新しいライフスタイルを提供する活動を行うほか、政府と民間のパイプ役として、
規制緩和や政策推進にも従事されていらっしゃいます。
──関係人口とは
茂木:今回お出しになった本が、『分散する生き方 多拠点ライフ』ということで、何かちょっと魅力的な響きですけども。
石山:この本のキーワードは「分散する」というキーワードです。コロナ以降どんどん社会が変わってきている中で、これからの個人の生き方も、社会の生き方も、「分散する」というキーワードが、持続可能な未来を作っていくんじゃないかというのが、本書で一番伝えたいメッセージで。これからの「社会×分散」というところでも、ぜひ茂木さんのコメントを頂きたいなと思っていました。
茂木:そうですね。僕、これを読んでいてびっくりしたのが、石山アンジュさんは“都会の人”というイメージが強かったんですけど、なんと今、大分の、しかもこれはかなり田舎ですか?
石山:めちゃくちゃ田舎なんですよ。
茂木:そこにも拠点があるんですね。
やっぱり日本国としても、国土が均衡ある形で発展していく事が大事だと思うんですけど、石山さんのように、都会と地方を行ったり来たりする人が増えると、どんないいことがありますか?
石山:今政府は、「都会と地方を行ったり来たりする人」を、『関係人口』と定義して推進をしているんですけれども、やっぱり、これまで地方というのは、移住政策が一丁目一番地だったわけですよね。でも日本全体から見ると、各自治体が移住政策をしても人口減少が全体で進んでるから、ある種人口を奪い合う概念になっちゃうんです。でも、お互いの地域に、定期的に人が移動しながら多拠点生活をする人が増えれば、それは人口をシェアする発想で、どの地域にも人やお金が潤っていく。そういった視点で、今政府が『関係人口』を進めようとしているんです。
茂木:この『関係人口』というのは面白いですね。
石山:面白いですよね。または、世界でも今『デジタルノマド』と言って、日本だけじゃなく、コロナで世界もリモート化が進んでいるので、今その「デジタルノマドビザ」というのを各国政府が作って、リモートワークをしながら日本に住んでくれる・滞在してくれる人用の専用のビザを作る国が増えていて…。
茂木:そうなんですか。
石山:はい。日本も今、その検討が始まっています。
茂木:それというのは、例えばプログラマーとかWebで完結するような仕事とか、そういうことなんですかね。
石山:そうですね。これまでの就労ビザは、その国の企業に勤めたりしなきゃいけなかったと思うんですけど、元々自分のいる国の仕事をオンラインでしながら長期滞在ができる、という制度ですね。
──複数の選択肢を持つという豊かさ
茂木:今回のご著書の最後の方には、色々なそのサービスがあって本当に目移りしちゃうんですけど…。リスナーの皆さんも思っているんでしょうけど、お値段というか、お金の面がちょっと気になりますが、実際にどうですか?
石山:そうですよね。まさに、これまで多拠点と言うと別荘を持つような感覚で、家賃が2倍かかるものだったと思うんですね。ただこの本に紹介している「多拠点サービス」と言われるサービスが、今、色々なスタートアップを中心に出てきていて、例えば、「月額4万円から、全国250ヶ所に住み放題」というサービスが出てきています。
茂木:いわゆる“サブスク”みたいなものですよね?
石山:そうです。“暮らしのサブスク”というモデルですね。
あとは、例えば10万円の家賃のお家に住んだら、自分が大分にいて、東京にいない滞在日数を家賃から引いてくれるという、そういったサービスもありますし。ワーケーション感覚で、まずはスモールスタートを始めたい人は、2泊3日から月1万円で滞在ができるというサービスもあったりします。
なので、今の家賃にちょっとプラス2万とか3万みたいなイメージで始めることができるし、もう一つは、自分がいない時は、自分の今のご自宅を、例えば民泊で貸し出すなどをすることによって、収入を得ることもできるわけですね。
茂木:本当にいわゆる“シェアリング・エコノミー”が現実化してきてるんですね。
石山:より身近になってきていると思います。
茂木:リスナーの中には、お子さんとかの学校、教育関係が気になるという方もいらっしゃると思うんですけど。
石山:そうなんです。これまでは、やっぱり独身で自由に行き来できる方が多かったんですけれども、最近、「デュアルスクール」という制度を導入する自治体が少しずつ増えていて。「デュアルスクール」とは、「二つの地域の拠点の小中学校・高校に通える」という制度です。
これまでは、やはり住民票を置いている地域の学校に行かなきゃいけないというのがあったんですけれども、二つの地域の学校に籍を置いて学ぶことができるという、そういった自治体が出てきています。なので、家族でも多拠点生活が少しずつできるようになってきているんですね。
茂木:実際、そういうことやってる方々がいらっしゃるんですね。
石山:いらっしゃいます。この本でも、インタビューで、そういったデュアルスクールを選択した方のお話をお聞きしているんですけれども、都会と秋田県とか、ウィンタースポーツの時期3ヶ月だけ、秋田県の学校に子供を通わせる、みたいな。「でも、お子さんは急に転校みたいな感じになって、大丈夫ですか?」と聞いたら、「意外と子供の方が早く馴染めるから、全然そこは問題なかった」と、その家庭のご家族は言っていましたね。
茂木:これは深い経済とかライフスタイルというレベルで言うと、“所有から共有へ”とか、“所有価値から使用価値・利用価値へ”とか、そういう何か哲学の変化の背景もあるんですかね?
石山:はい、そう思います。わくわく楽しい多拠点ライフという側面もあるんですけど、やっぱりコロナ以降大きく社会が変化する中で、「何が豊かさか?」という物差しが、今180度変わりつつあるんじゃないかなと思ってるんですね。それがこの『分散する生き方』で、「家も仕事も人間関係も、複数同時に選択肢を持っていることが、むしろ安心や安定、豊かだ」というふうに思う価値観に変わってきた。
これまでは、一つの企業でキャリアを積み上げたり、何かゼロから積み上げていくことが、安定・安心のステータスだったと思うんですけど、明日地震が起こるかわからない、明日新しい感染症が来るかもしれないという、何が起こるかわからないリスクと共存する前提の社会では、「何があっても大丈夫」というのは、複数選択肢を持っていくことなのかな、と思います。
茂木:僕、この『多拠点ライフ』を拝読して思ったのが、本当にそういう生き方は今もっと広げられると言うか、いろんな職業の方…ごく普通の生活の方でも、こういう可能性があるんだな、というのは強く感じました。
石山:本当に、誰もが他拠点生活ができる時代に、今まさになりつつある、というふうに思いますし、そういった多拠点ライフをする人が日本に増えていくことによって、色んな地域に人・お金が集まって、持続可能な社会になっていくように思います。
これまでも、“脱東京”みたいな価値観や政策が結構前から言われてきたと思うんですけど、何でそれが実現できなかったかと言うと、普通の生活の中ではそれが当たり前の選択肢として取れる時代じゃなかったからなのかな、と思うんですよね。仕事とか、家とかどうしちゃうの?という選択肢が、まだまだパターンが少なかったし、選択肢も少なかったし。
茂木:そうですね。
石山さん、この番組を聴いて、「多拠点ライフとかシェアリングエコノミーに興味あるな」という方に、このご著書の『分散する生き方 多拠点ライフ』を読む以外で、生活の中で最初の一歩として試すことができることがあれば、何か教えていただけますか?
石山:皆さん、旅行に行かれると思うんですけど、旅行に行く時に、ただ観光するだけじゃなくて、「ここにもし住むとしたら?」という視点で旅行してみると、「あ、ここにスーパーあるんだ」とか…。
茂木:なるほど!
石山:「ここにWi-Fiがあったら、ここで作業できるな」とか、「学校ってこんな近くにあるんだ」とか、そういった視点で旅行してみてもらえると、「もしかしたら、ここなら住めるかもしれない」とか、「もう1回、もう一つの家を作ってみたいかもしれない」みたいな、そんな視点が持てるんじゃないかな、と(笑)。
茂木:これから旅行する時には、多拠点ライフの候補地として下見のような感覚で。
石山:下見のような旅行をすると、全然違う視点で日常が見えたり、ローカルな視点がその地域で発見できたりするんじゃないかなと思いますね。
●石山アンジュ(@Anjurian)さん 公式アカウント / X(旧Twitter)
●石山アンジュ(@anjuishiyama)さん 公式 Instagram
●石山アンジュさん 公式サイト
●『多拠点ライフ』/ 石山アンジュ (著)
(Amazon)
●株式会社クロスメディア・パブリッシング 公式サイト
2012年、国際基督教大学(ICU)をご卒業後、リクルートに入社。
その後、クラウドワークス経営企画室を経て、
2018年、若い世代のシンクタンク「Public Meets Innovation」を設立。
現在は、一般社団法人シェアリングエコノミー協会の代表理事を務めていらっしゃいます。
「シェア(共有)」の概念に親しみながら育ち、シェアリングエコノミーを通じた、
新しいライフスタイルを提供する活動を行うほか、政府と民間のパイプ役として、
規制緩和や政策推進にも従事されていらっしゃいます。
──関係人口とは
茂木:今回お出しになった本が、『分散する生き方 多拠点ライフ』ということで、何かちょっと魅力的な響きですけども。
石山:この本のキーワードは「分散する」というキーワードです。コロナ以降どんどん社会が変わってきている中で、これからの個人の生き方も、社会の生き方も、「分散する」というキーワードが、持続可能な未来を作っていくんじゃないかというのが、本書で一番伝えたいメッセージで。これからの「社会×分散」というところでも、ぜひ茂木さんのコメントを頂きたいなと思っていました。
茂木:そうですね。僕、これを読んでいてびっくりしたのが、石山アンジュさんは“都会の人”というイメージが強かったんですけど、なんと今、大分の、しかもこれはかなり田舎ですか?
石山:めちゃくちゃ田舎なんですよ。
茂木:そこにも拠点があるんですね。
やっぱり日本国としても、国土が均衡ある形で発展していく事が大事だと思うんですけど、石山さんのように、都会と地方を行ったり来たりする人が増えると、どんないいことがありますか?
石山:今政府は、「都会と地方を行ったり来たりする人」を、『関係人口』と定義して推進をしているんですけれども、やっぱり、これまで地方というのは、移住政策が一丁目一番地だったわけですよね。でも日本全体から見ると、各自治体が移住政策をしても人口減少が全体で進んでるから、ある種人口を奪い合う概念になっちゃうんです。でも、お互いの地域に、定期的に人が移動しながら多拠点生活をする人が増えれば、それは人口をシェアする発想で、どの地域にも人やお金が潤っていく。そういった視点で、今政府が『関係人口』を進めようとしているんです。
茂木:この『関係人口』というのは面白いですね。
石山:面白いですよね。または、世界でも今『デジタルノマド』と言って、日本だけじゃなく、コロナで世界もリモート化が進んでいるので、今その「デジタルノマドビザ」というのを各国政府が作って、リモートワークをしながら日本に住んでくれる・滞在してくれる人用の専用のビザを作る国が増えていて…。
茂木:そうなんですか。
石山:はい。日本も今、その検討が始まっています。
茂木:それというのは、例えばプログラマーとかWebで完結するような仕事とか、そういうことなんですかね。
石山:そうですね。これまでの就労ビザは、その国の企業に勤めたりしなきゃいけなかったと思うんですけど、元々自分のいる国の仕事をオンラインでしながら長期滞在ができる、という制度ですね。
──複数の選択肢を持つという豊かさ
茂木:今回のご著書の最後の方には、色々なそのサービスがあって本当に目移りしちゃうんですけど…。リスナーの皆さんも思っているんでしょうけど、お値段というか、お金の面がちょっと気になりますが、実際にどうですか?
石山:そうですよね。まさに、これまで多拠点と言うと別荘を持つような感覚で、家賃が2倍かかるものだったと思うんですね。ただこの本に紹介している「多拠点サービス」と言われるサービスが、今、色々なスタートアップを中心に出てきていて、例えば、「月額4万円から、全国250ヶ所に住み放題」というサービスが出てきています。
茂木:いわゆる“サブスク”みたいなものですよね?
石山:そうです。“暮らしのサブスク”というモデルですね。
あとは、例えば10万円の家賃のお家に住んだら、自分が大分にいて、東京にいない滞在日数を家賃から引いてくれるという、そういったサービスもありますし。ワーケーション感覚で、まずはスモールスタートを始めたい人は、2泊3日から月1万円で滞在ができるというサービスもあったりします。
なので、今の家賃にちょっとプラス2万とか3万みたいなイメージで始めることができるし、もう一つは、自分がいない時は、自分の今のご自宅を、例えば民泊で貸し出すなどをすることによって、収入を得ることもできるわけですね。
茂木:本当にいわゆる“シェアリング・エコノミー”が現実化してきてるんですね。
石山:より身近になってきていると思います。
茂木:リスナーの中には、お子さんとかの学校、教育関係が気になるという方もいらっしゃると思うんですけど。
石山:そうなんです。これまでは、やっぱり独身で自由に行き来できる方が多かったんですけれども、最近、「デュアルスクール」という制度を導入する自治体が少しずつ増えていて。「デュアルスクール」とは、「二つの地域の拠点の小中学校・高校に通える」という制度です。
これまでは、やはり住民票を置いている地域の学校に行かなきゃいけないというのがあったんですけれども、二つの地域の学校に籍を置いて学ぶことができるという、そういった自治体が出てきています。なので、家族でも多拠点生活が少しずつできるようになってきているんですね。
茂木:実際、そういうことやってる方々がいらっしゃるんですね。
石山:いらっしゃいます。この本でも、インタビューで、そういったデュアルスクールを選択した方のお話をお聞きしているんですけれども、都会と秋田県とか、ウィンタースポーツの時期3ヶ月だけ、秋田県の学校に子供を通わせる、みたいな。「でも、お子さんは急に転校みたいな感じになって、大丈夫ですか?」と聞いたら、「意外と子供の方が早く馴染めるから、全然そこは問題なかった」と、その家庭のご家族は言っていましたね。
茂木:これは深い経済とかライフスタイルというレベルで言うと、“所有から共有へ”とか、“所有価値から使用価値・利用価値へ”とか、そういう何か哲学の変化の背景もあるんですかね?
石山:はい、そう思います。わくわく楽しい多拠点ライフという側面もあるんですけど、やっぱりコロナ以降大きく社会が変化する中で、「何が豊かさか?」という物差しが、今180度変わりつつあるんじゃないかなと思ってるんですね。それがこの『分散する生き方』で、「家も仕事も人間関係も、複数同時に選択肢を持っていることが、むしろ安心や安定、豊かだ」というふうに思う価値観に変わってきた。
これまでは、一つの企業でキャリアを積み上げたり、何かゼロから積み上げていくことが、安定・安心のステータスだったと思うんですけど、明日地震が起こるかわからない、明日新しい感染症が来るかもしれないという、何が起こるかわからないリスクと共存する前提の社会では、「何があっても大丈夫」というのは、複数選択肢を持っていくことなのかな、と思います。
茂木:僕、この『多拠点ライフ』を拝読して思ったのが、本当にそういう生き方は今もっと広げられると言うか、いろんな職業の方…ごく普通の生活の方でも、こういう可能性があるんだな、というのは強く感じました。
石山:本当に、誰もが他拠点生活ができる時代に、今まさになりつつある、というふうに思いますし、そういった多拠点ライフをする人が日本に増えていくことによって、色んな地域に人・お金が集まって、持続可能な社会になっていくように思います。
これまでも、“脱東京”みたいな価値観や政策が結構前から言われてきたと思うんですけど、何でそれが実現できなかったかと言うと、普通の生活の中ではそれが当たり前の選択肢として取れる時代じゃなかったからなのかな、と思うんですよね。仕事とか、家とかどうしちゃうの?という選択肢が、まだまだパターンが少なかったし、選択肢も少なかったし。
茂木:そうですね。
石山さん、この番組を聴いて、「多拠点ライフとかシェアリングエコノミーに興味あるな」という方に、このご著書の『分散する生き方 多拠点ライフ』を読む以外で、生活の中で最初の一歩として試すことができることがあれば、何か教えていただけますか?
石山:皆さん、旅行に行かれると思うんですけど、旅行に行く時に、ただ観光するだけじゃなくて、「ここにもし住むとしたら?」という視点で旅行してみると、「あ、ここにスーパーあるんだ」とか…。
茂木:なるほど!
石山:「ここにWi-Fiがあったら、ここで作業できるな」とか、「学校ってこんな近くにあるんだ」とか、そういった視点で旅行してみてもらえると、「もしかしたら、ここなら住めるかもしれない」とか、「もう1回、もう一つの家を作ってみたいかもしれない」みたいな、そんな視点が持てるんじゃないかな、と(笑)。
茂木:これから旅行する時には、多拠点ライフの候補地として下見のような感覚で。
石山:下見のような旅行をすると、全然違う視点で日常が見えたり、ローカルな視点がその地域で発見できたりするんじゃないかなと思いますね。
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