Dream Heart(ドリームハート)

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REPORT 最新のオンエアレポート

Dream HEART vol.544 落語家の立川志らくさん 「成り行きに任せて、目標は立てない」

2023年09月02日

立川志らくさんは、1963年8月16日東京都のご出身。

1985年に立川談志に入門され、1988年二つ目昇進、1995年真打に昇進されました。

創意溢れる古典落語に加え、映画に材をとった『シネマ落語』でも注目を集め、
落語界きっての論客としても知られていらっしゃいます。

また、落語家のほかに、映画監督(日本映画監督協会所属)、映画評論家、
エッセイスト、昭和歌謡曲博士、劇団主宰と幅広く活動されていらっしゃいます。


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──メディアとの付き合い方

茂木:師匠、メディアとの関係なんですけど、色んなことを経験されてきてるじゃないですか。落語家として、メディアとの付き合い方というのは、どう思われます?

志らく:談志、それから志ん朝、先代の圓楽師匠、それから、この間亡くなられた円楽師匠もそうだし、小朝師匠もそうですね。皆、若い頃売れるんですよ。テレビでワーッと売れて知名度か全国区になって、ある程度の年齢に行くと、もうテレビはたまに出島外交で出て、あとは高座・落語を中心に生きていく、と。それが一番いいやり方だと皆思ってたんです。
でも私は、そうではない。若い頃のほんの1〜2年、ちょっとアイドル的に売れたことはあるんだけど、それ以降はもうテレビとは縁を切って、テレビには出ない。とにかく落語中心に。それで、50歳を過ぎてからテレビに出始めて、ある程度名前が売れた、初めてのケースだと思うんですよ。

茂木:そう言われれば、そうかもしれないですね。

志らく:私はね、この後10年20年経って「ほら! 志らくはテレビさえ出なかったら、名人になったのに」で、終わる場合もあるし、それはどうなるかわからないんだけど、私のやり方はすごくいいと思うんですよ。
若い頃ちょこっとテレビをやった時に、全部自分が壊れちゃうわけですね。落語もできなくなっちゃうわけ。女の子のファンがキャーキャー言って落語も聞かないし、そういう仕事ばっかり来ちゃうから。そうすると、芸人として、あのまま突っ走ったらば、本当に中途半端なろくでもない落語家になったと思うんです。「昔売れてたね」ぐらいの。
だけどそれをやめて、やっぱり若い頃、ちゃんと落語をやるようにして落語と向き合って。それである程度余裕ができた、50歳を過ぎてからテレビの方に行くと、落語の方が崩れることはないですね。

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茂木:やはり、談志師匠が亡くなった年のよみうりホールで『芝浜』をやった、というのは、師匠にとっては大きな出来事でしたか。

志らく:これはたまたまなんだけど、私はものすごく運命的に感じ取ってるんだけども…。談志がいつも年末に『芝浜』をよみうりホールでやる、と。それがまるでもうベートーベンの『第九』のような年末行事になってた。
談志が最後に『芝浜』をやった時に、「落語のミューズが降りてきた」と言った。それが、たまたま「もう入院していてできないから、志らく、代わりにやれよ」ということで、それでスケジュールを取っといたんだけども、ひと月前に死んじゃうんですよね。それで自分が高座に上がった時はもう、私の中で一つの伝説ですね。“談志が死んだひと月後に、談志と同じ高座に上がって、そこで『芝浜』をやった”というのが。なんか談志から「後は頼んだよ」とバトンをもらったような、そんな気持ちになりましたね。

茂木:志らく師匠はメディアに丸め込まれていない数少ないうちの1人だと思うんですけど、これからメディアの中でのご自身の発言とか、どうされるんですか?

志らく:談志が「人生成り行きだ」というね。「ケセラセラ、成り行きに任せるしかない」と。この寅さんの金言の中でも、29作目で、柄本明の演じた若い修行してる男にね、「目標を立ててる」ということに対して寅さんが笑うんですよ。「お前、目標を立ててるから駄目なんだよ」と。「目標立てちゃ駄目だね。だからお前、出世しないんだ」と。
普通、サラリーマンだとか企業だとか色々の人は、ちゃんと目的を立てて設計図を立ててやらないと、人生上手くいかないけども、芸人だとか芸術家だとか役者だとかそういった人は、「こんなふうになりたい」という目標は駄目ですね。いらないです。

茂木:いらない(笑)。

志らく:はい。だから、なすがまま、人生成り行きで、その時その時に対処していった方が、結果的に良くなるんじゃないかなと、そういう気がしますね。

茂木:なるほど。今師匠が仰ってくださったように、この『決定版 寅さんの金言・現代に響く名言集』。ひょっとしたら、この渥美清さんが演じていた寅さんの生き方というのは、今の日本人がつまらなくなってしまったとすると、それを面白くするためのヒントが色々あるのかもしれないですね。

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志らく:そうですね。日本人はこういう言葉だとか、こういう考え方を大切にしてきた。今、除夜の鐘をうるさいと騒音にしちゃって、クレームつけてね、それをお寺の人が聞いて「あ、そうですか。じゃあ今年は除夜の鐘やめます」なんて、日本人としておかしいでしょ。寅さんがいたら、「おい! 日本人なんだから、除夜の鐘がうるさいなんて言っちゃいけないよ。うるさいと思ったら耳栓を貸してあげるよ、おじさん」と言う。これが寅さんなんですよ。

茂木:なるほど(笑)。
師匠のお話を聞いて、まず師匠の落語会に行こうと思ってる人も多いでしょうし、でもこれからどうやって生きていったらいいのかなと思ってる人もいるかもしれないので、若いリスナーの方々に、少しメッセージとかアドバイスをいただけたら、と思うんですが。

志らく:『男はつらいよ』にしても、落語にしても、若い人からすると結構敷居が高いと思うんですよ。だけども、『男はつらいよ』を観てみると、落語を聴いてみると、全然敷居が高くない。本当に、皆さんが普段楽しんでる映画だとかテレビドラマと、何ら違いはない。もし、つまらないと思ったり難しいと思ったら。それは演じ手が下手なだけ。本当に、現在と接点を持ってやっている芸人の芸を聴いたらば、わかんない言葉だとか古いしきたりなんか関係なく、面白い方が前面に来ます。それは『男はつらいよ』の渥美清さんを知らない、倍賞千恵子さんを知らない、森川信さんを知らない、と言っても、そんなの関係ない。いい役者は、見た途端に虜になる、そういうもんだと私は思いますね。

──立川志らくさんの夢・挑戦

茂木:師匠、この番組のテーマは『夢と挑戦』なんです。先ほど師匠は「特に計画は立てない」という風に仰ったんですけど、あえて、今後挑戦したいこととか夢があるとすると、何でしょうか?

志らく:一番の夢は、私は芝居が好きなんですが、コメンテーターのイメージがつきすぎてしまったので、(劇団で)お芝居をたくさんやりたいですね。コメンテーターだから、多分世間のイメージはないと思うんですよ。映画だとかテレビドラマだとか、そういったところで。…あと、ラジオもやりたい(笑)。

茂木:師匠のラジオはみんな聴きたいですよ。だって師匠は、ご自身の劇団もお持ちですよね?

志らく:ええ。「下町ダニーローズ」という劇団です。ラジオもね、テレビに出る前は結構やってたんですよ。テレビに出るようになったら全くラジオからお声が掛からなくなっちゃいました。

茂木:このラジオを聴いてらっしゃる全国のラジオプロデューサーの方(笑)。師匠が…。

志らく:ラジオ番組だったら、すぐ私やります(笑)!

茂木:とおっしゃってますので、ぜひ、お声掛け頂けたらと思います(笑)。

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■プレゼントのお知らせ

番組でご紹介してきました、現在発売中の立川志らくさんのご著書
『決定版 寅さんの金言・現代に響く名言集』に
志らく師匠の直筆サインを入れて、3名の方にプレゼントいたします。

ご希望の方は、お名前やご住所、電話番号など、必要事項を明記の上、
メッセージフォームより、ご応募ください。

私、茂木に聞きたい事や相談したい事など、
メッセージを添えていただけると嬉しいです。

尚、当選者の発表は、商品の発送をもってかえさせていただきます。
たくさんのご応募、お待ちしております。



ワタナベエンターテインメント 公式ホームページ


立川志らくさん 公式ホームページ
 独演会「立川志らく落語大全集」
 16年かけて志らく持ち根多(プラス根多おろし)203席をテーマごとに分けて全部演じ切ろうというプロジェクト!(2015年にスタートした)
 次回は10月11日(水)19:00開演 会場/渋谷・伝承ホール
 テーマ:大河ドラマ与太郎 演目「牛ほめ」「金明竹」「道具や」「大工調べ」
 前売 3500円(全席指定) チケット発売 9/2(土) 10時
 ・チケットぴあ(Pコード521-708) ・ローソンチケット(Lコード34402)・イープラスで発売
 *その他立川志らくさんの独演会の情報など、詳しくは公式サイトでご確認ください。

立川志らくさん 公式アカウント(@shiraku666) / X(旧Twitter)


立川志らくさん 公式Instagram


●『決定版 寅さんの金言・現代に響く名言集』立川志らく(著)
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