2022年11月19日
結城真一郎さんは、1991年、神奈川県のお生まれ。
開成高校、そして、東京大学法学部をご卒業されていらっしゃいます。
2018年、『名もなき星の哀歌』で、第5回新潮ミステリー大賞を受賞し、
2019年にデビュー。
2020年に『プロジェクト・インソムニア』を刊行、また、「小説新潮」掲載の短編小説
『惨者面談』がアンソロジー「本格王2020」に収録されます。
2021年には、『#拡散希望』で、第74回日本推理作家協会賞短編部門を受賞後、
3冊目の長編作品である『救国ゲーム』を刊行され、
第22回本格ミステリー大賞の候補作に選出されます。
そして、6月30日に、ミステリー小説『#真相をお話しします』が、
全国の書店で次々にベストセラー1位を獲得し、話題を集めていらっしゃいます。
──最後に全ての伏線が回収される気持ち良さ
茂木:このご著書『#真相をお話しします』の取り上げられているテーマは、「YouTuber」、「リモート飲み会」、「マッチングアプリ」、「SNS」など、本当に今の時代ならではのモチーフがありますね。これはどうしてこういうことにしたんですか?
結城:一番大きいのは、大体のミステリーのネタは偉大な先輩作家さん達がやり尽くしてしまっていて、僕ごときが頭捻って思いつくことは、もう先行事例があるので…。そうなってくると、昔の人達が書けなかったもの…それを書くとしたら、今の時代にあるもの、今ならではのものを使うと、新しい鉱脈が見つかるんじゃないかな、という期待感を込めて、その辺りを使いました。
茂木:本当にそれは素晴らしい仕掛けだと思います。でも、描かれてる事は“変わらない人間性”というかね。
結城:おっしゃる通りですね。なので、人間の仄暗い部分とか、醜い部分みたいなものというのは、時代を越えていつもあると思うんですけど。それが今の時代のガジェットとかを使うと、従来になかった形で見えて来たりとか、そういう所に新しさがあるんじゃないかな、というそんな予感を持って取り組んだという感じですね。
茂木:そして、これがびっくりなんですけど、『#真相をお話しします』の発売前に、プロモーションの一環として、この中にも収録されている『#拡散希望』、これをなんと、WEBで無料公開されたと! これは今でも無料公開されているんですか?
結城:そうですね(笑)。今でも読めます。
茂木:これは太っ腹と言うか、どういうことですか?
結城:僕もそういうことを先行的にやっているという事例を余り知らなかったので、だいぶ英断だなと思っています。
茂木:これは新潮社の方から?
結城:そうです。僕からと言うよりは新潮社さんの方から、「無料公開で大盤振る舞いしてやりましょう!」というご提案を頂きました(笑)。
確かに、一話全文公開、かつ、短編集の中でも賞を頂いていて、割りと目玉となるであろう作品を出す、というのはかなり珍しいので。なので、それも含めて話題になったかな、という側面はあるかなと思いますね。
茂木:この『#拡散希望』ももちろん素晴らしく、びっくりしましたけど、これがYouTuberをモチーフにしたものですね。結城真一郎さんの作品はいつもそうなのかもしれませんが、伏線が張られていて、油断して読んでいると途中から「あれ!?」となって…。後半から最後にかけての謎解きの快感と言うか、あれは技術的にはかなり難しいんじゃないですか?
結城:そうですね。ただ、自分がミステリーを読んでいて一番気持ちいいなと思えるのは、どんでん返しとかそういうことよりも、やっぱり最後に全ての伏線が一気に纏まって、ちゃんと綺麗に風呂敷が畳まれる、という部分なので、それを自分でもやってみたいなという思いは強く持つようにしています。
──作品の根本は「自分の身に起きたなら」
茂木:最初の『惨者面談』を読んだだけでも、結城さんの凄さが分かりますよね。何であんなものを思いつくんですか?
結城:本当ですか? ありがとうございます! 実を言うと、自分も大学生の頃、この『惨者面談』に出てくる主人公と同じアルバイトをやっていて、その経験を元に「どんなことが起こったら、自分はぶったまげるかな」とか、「こういう状況に放り込まれることがあったら面白いよな」みたいなことを考えていたんです。
茂木:じゃあ、“自分を驚かせる”ということで書いている?
結城:はい。そういう所を目指している部分はあると思います。
茂木:でも、ある意味では、エンタメの王道かも知れませんね。
結城:「自分の身に起きた時に何が…」というのは、一番ド派手で面白い部分だと思うので。どの作品も、「自分の身に起きたら」という所が根本にあるかも知れないですね。
茂木:結城さんが凄いなと思うのは、“人間洞察”と言うんですかね…例えば、動機について、納得いかないと何となく落ち着きが悪いじゃないですか。だから、「こういう動機でこういうことをするんだ」という所は、自分の中ではどのように発想しているんですか?
結城:やっぱり「自分がこの状況下に置かれたらどう思うかな」とか、そういう所はかなり毎回考えるようにはしています。特に、このマッチングアプリを題材にしている二番目の『ヤリモク』とかは、かなり「自分だったとしたら…」という所を強く意識していたものにはなりますね。
色々と動機の案がいくつも浮かんでくるんですけど、やっぱりしっくり来ないものはそれを採用しないようにしています。なので、具体的にどんなものを思い描いていたかは忘れてしまいましたけど、「これはやや突飛過ぎるかな?」とか、「自分だったらこうは思わないよな」というものがある場合は、それを採用しないでもっと納得がいく部分まで考え抜くようにはしていますね。
茂木:皆さん、是非“騙された”と思って(笑)。結城真一郎さんの『#真相をお話しします』を買って読んでください。これを買って、読んで、損をしたと思う人はいないでしょう。
結城:そうであって欲しいですね。
●結城真一郎(@ShinichiroYuki) Twitter
●新潮社 ホームページ
※↑番組でご紹介しました、「#拡散希望」の全文は、
こちらのリンクからお読みいただけます!
●#真相をお話しします / 結城 真一郎 (著)
(Amazon)
開成高校、そして、東京大学法学部をご卒業されていらっしゃいます。
2018年、『名もなき星の哀歌』で、第5回新潮ミステリー大賞を受賞し、
2019年にデビュー。
2020年に『プロジェクト・インソムニア』を刊行、また、「小説新潮」掲載の短編小説
『惨者面談』がアンソロジー「本格王2020」に収録されます。
2021年には、『#拡散希望』で、第74回日本推理作家協会賞短編部門を受賞後、
3冊目の長編作品である『救国ゲーム』を刊行され、
第22回本格ミステリー大賞の候補作に選出されます。
そして、6月30日に、ミステリー小説『#真相をお話しします』が、
全国の書店で次々にベストセラー1位を獲得し、話題を集めていらっしゃいます。
──最後に全ての伏線が回収される気持ち良さ
茂木:このご著書『#真相をお話しします』の取り上げられているテーマは、「YouTuber」、「リモート飲み会」、「マッチングアプリ」、「SNS」など、本当に今の時代ならではのモチーフがありますね。これはどうしてこういうことにしたんですか?
結城:一番大きいのは、大体のミステリーのネタは偉大な先輩作家さん達がやり尽くしてしまっていて、僕ごときが頭捻って思いつくことは、もう先行事例があるので…。そうなってくると、昔の人達が書けなかったもの…それを書くとしたら、今の時代にあるもの、今ならではのものを使うと、新しい鉱脈が見つかるんじゃないかな、という期待感を込めて、その辺りを使いました。
茂木:本当にそれは素晴らしい仕掛けだと思います。でも、描かれてる事は“変わらない人間性”というかね。
結城:おっしゃる通りですね。なので、人間の仄暗い部分とか、醜い部分みたいなものというのは、時代を越えていつもあると思うんですけど。それが今の時代のガジェットとかを使うと、従来になかった形で見えて来たりとか、そういう所に新しさがあるんじゃないかな、というそんな予感を持って取り組んだという感じですね。
茂木:そして、これがびっくりなんですけど、『#真相をお話しします』の発売前に、プロモーションの一環として、この中にも収録されている『#拡散希望』、これをなんと、WEBで無料公開されたと! これは今でも無料公開されているんですか?
結城:そうですね(笑)。今でも読めます。
茂木:これは太っ腹と言うか、どういうことですか?
結城:僕もそういうことを先行的にやっているという事例を余り知らなかったので、だいぶ英断だなと思っています。
茂木:これは新潮社の方から?
結城:そうです。僕からと言うよりは新潮社さんの方から、「無料公開で大盤振る舞いしてやりましょう!」というご提案を頂きました(笑)。
確かに、一話全文公開、かつ、短編集の中でも賞を頂いていて、割りと目玉となるであろう作品を出す、というのはかなり珍しいので。なので、それも含めて話題になったかな、という側面はあるかなと思いますね。
茂木:この『#拡散希望』ももちろん素晴らしく、びっくりしましたけど、これがYouTuberをモチーフにしたものですね。結城真一郎さんの作品はいつもそうなのかもしれませんが、伏線が張られていて、油断して読んでいると途中から「あれ!?」となって…。後半から最後にかけての謎解きの快感と言うか、あれは技術的にはかなり難しいんじゃないですか?
結城:そうですね。ただ、自分がミステリーを読んでいて一番気持ちいいなと思えるのは、どんでん返しとかそういうことよりも、やっぱり最後に全ての伏線が一気に纏まって、ちゃんと綺麗に風呂敷が畳まれる、という部分なので、それを自分でもやってみたいなという思いは強く持つようにしています。
──作品の根本は「自分の身に起きたなら」
茂木:最初の『惨者面談』を読んだだけでも、結城さんの凄さが分かりますよね。何であんなものを思いつくんですか?
結城:本当ですか? ありがとうございます! 実を言うと、自分も大学生の頃、この『惨者面談』に出てくる主人公と同じアルバイトをやっていて、その経験を元に「どんなことが起こったら、自分はぶったまげるかな」とか、「こういう状況に放り込まれることがあったら面白いよな」みたいなことを考えていたんです。
茂木:じゃあ、“自分を驚かせる”ということで書いている?
結城:はい。そういう所を目指している部分はあると思います。
茂木:でも、ある意味では、エンタメの王道かも知れませんね。
結城:「自分の身に起きた時に何が…」というのは、一番ド派手で面白い部分だと思うので。どの作品も、「自分の身に起きたら」という所が根本にあるかも知れないですね。
茂木:結城さんが凄いなと思うのは、“人間洞察”と言うんですかね…例えば、動機について、納得いかないと何となく落ち着きが悪いじゃないですか。だから、「こういう動機でこういうことをするんだ」という所は、自分の中ではどのように発想しているんですか?
結城:やっぱり「自分がこの状況下に置かれたらどう思うかな」とか、そういう所はかなり毎回考えるようにはしています。特に、このマッチングアプリを題材にしている二番目の『ヤリモク』とかは、かなり「自分だったとしたら…」という所を強く意識していたものにはなりますね。
色々と動機の案がいくつも浮かんでくるんですけど、やっぱりしっくり来ないものはそれを採用しないようにしています。なので、具体的にどんなものを思い描いていたかは忘れてしまいましたけど、「これはやや突飛過ぎるかな?」とか、「自分だったらこうは思わないよな」というものがある場合は、それを採用しないでもっと納得がいく部分まで考え抜くようにはしていますね。
茂木:皆さん、是非“騙された”と思って(笑)。結城真一郎さんの『#真相をお話しします』を買って読んでください。これを買って、読んで、損をしたと思う人はいないでしょう。
結城:そうであって欲しいですね。
●結城真一郎(@ShinichiroYuki) Twitter
●新潮社 ホームページ
※↑番組でご紹介しました、「#拡散希望」の全文は、
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●#真相をお話しします / 結城 真一郎 (著)
(Amazon)