2022年09月17日
川村元気さんは、 1979年、神奈川県横浜市のお生まれ。
『電車男』『告白』『悪人』『モテキ』『おおかみこどもの雨と雪』『君の名は。』
『怒り』『天気の子』『竜とそばかすの姫』などの映画を製作。
2010年、アメリカのThe Hollywood Reporter誌の「Next Generation Asia」に選出され、
翌年、2011年には、優れた映画製作者に贈られる「藤本賞」を史上最年少で受賞。
また、2012年、初の小説『世界から猫が消えたなら』を発表し、
23カ国で出版され累計200万部を突破。話題を集めました。
2018年には、初の監督作品『どちらを』が
カンヌ国際映画祭短編コンペティション部門に選出されるなど、
映画プロデューサー、脚本家、そして小説家、映画監督と、
各分野でご活躍中でいらっしゃいます。
──人生にカットはかからない
茂木:親子の絆を描いた映画『百花』なんですけど、今回はちょっと古いレンズを使ったんですか?
川村:詳しいですね(笑)。そうなんです。40年前のカールツァイスのレンズを使っているんですが、フォーカスが合う位置がもの凄く狭いレンズなんです。“記憶というものの、忘れたり覚えたりするスレスレの感じ”を表現するのにいいなと思って、そういうレンズを使っています。
茂木:画面から本当にその質感が伝わってきます。
川村:カメラマンと、どういうルックにするのかということは相当議論しています。映画やドラマを観ていると、記憶や回想シーンはセピア色とかで出てきたりする。そういうのをやりたくなかったんです。なぜかと言うと、僕たちが頭の中で何かを思い出す時は、別にセピア色になってないからです。むしろ、現実と地続きに、記憶は乱暴にでたらめに頭の中に入ってくるわけですね。
なぜワンシーンワンカットで撮るのかと言うと、我々が今生きている人生には、カットがかからないから。だけど、記憶はでたらめにインサートされる。そういう頭の働き自体を映像にしたいなと思っていたので、そういうレンズの選定とか撮り方を、なるべく頭の働きに近い感覚にならないかなと思って撮りました。
なので、「茂木さんが脳科学者的にそれをどう見るのかな?」というのには興味があったんです(笑)。
茂木:僕がすごく面白いなと思ったのは、“プレシャス・フラグメンツ”という言葉があるんですよ。それは、“突然蘇ってくるかけがえのない断片”です。マルセル・プルーストの『失われた時を求めて』のマドレーヌの瞬間がそうなんですけど…。
今回、監督の映画を観ていて、「プレシャス・フラグメンツなんだな」と思いました。なぜ脈絡なくそれが蘇ってくるのかは分からないですけど、蘇ってくるわけじゃないですか。
川村:そうですね。
茂木:この映画『百花』でも、“半分の花火”というものが重要なモチーフとしてありますが、大切なものなんでしょうね。
茂木:それにしても、お母様のセリフで、ある大切な時に「このことも全部忘れちゃうのよ」というようなことをおっしゃるじゃないですか。あれは切ないですね…。
川村:人間の脳みそはうまくいっていないと言うか、“忘れちゃいけないことを忘れるのに、忘れたいことはいつまでも覚えている”。そういうことが、すごく人間らしいし、頭の不思議なところだなと思うんです。だからそれ自体がすごく感動的だし、切ないし、それを物語にしようというのはずっと根幹にありました。
茂木:川村元気さんは、映画監督としてだけではなくプロデューサーとしても数々のヒット作を出してきたんですが、“映画の今後”というのは、どのようにお考えになっていますか。
川村:今回『百花』は映画館で観るために作ったんですが、配信が出てきて、テレビも多様化してきて、YouTubeやTikTokには面白い映像がいっぱいあって…という中で、“映画館で映画を観る”というアドバンテージに自覚的にならないと、生き残っていけないなと思うんですよ。「少なくともスマホを観ないことがマナーになっている2時間」というのは、圧倒的なアドバンテージなはずで。
茂木:確かに…!
川村:『百花』はそこを最大限に活かしていますし、今後の自分の作る映画は、そこを相当意識的に向き合うことになるだろうな、と思っています。もう映画館でスマホを切って観るということは、レアで貴重な体験になっているんですよね。
●映画『百花』公式サイト
●映画『百花』公式(@movie_hyakka) Twitter
●KOE 公式サイト
●川村元気さん (@seka_neko)Twitter
●『百花』予告
『電車男』『告白』『悪人』『モテキ』『おおかみこどもの雨と雪』『君の名は。』
『怒り』『天気の子』『竜とそばかすの姫』などの映画を製作。
2010年、アメリカのThe Hollywood Reporter誌の「Next Generation Asia」に選出され、
翌年、2011年には、優れた映画製作者に贈られる「藤本賞」を史上最年少で受賞。
また、2012年、初の小説『世界から猫が消えたなら』を発表し、
23カ国で出版され累計200万部を突破。話題を集めました。
2018年には、初の監督作品『どちらを』が
カンヌ国際映画祭短編コンペティション部門に選出されるなど、
映画プロデューサー、脚本家、そして小説家、映画監督と、
各分野でご活躍中でいらっしゃいます。
──人生にカットはかからない
茂木:親子の絆を描いた映画『百花』なんですけど、今回はちょっと古いレンズを使ったんですか?
川村:詳しいですね(笑)。そうなんです。40年前のカールツァイスのレンズを使っているんですが、フォーカスが合う位置がもの凄く狭いレンズなんです。“記憶というものの、忘れたり覚えたりするスレスレの感じ”を表現するのにいいなと思って、そういうレンズを使っています。
茂木:画面から本当にその質感が伝わってきます。
川村:カメラマンと、どういうルックにするのかということは相当議論しています。映画やドラマを観ていると、記憶や回想シーンはセピア色とかで出てきたりする。そういうのをやりたくなかったんです。なぜかと言うと、僕たちが頭の中で何かを思い出す時は、別にセピア色になってないからです。むしろ、現実と地続きに、記憶は乱暴にでたらめに頭の中に入ってくるわけですね。
なぜワンシーンワンカットで撮るのかと言うと、我々が今生きている人生には、カットがかからないから。だけど、記憶はでたらめにインサートされる。そういう頭の働き自体を映像にしたいなと思っていたので、そういうレンズの選定とか撮り方を、なるべく頭の働きに近い感覚にならないかなと思って撮りました。
なので、「茂木さんが脳科学者的にそれをどう見るのかな?」というのには興味があったんです(笑)。
茂木:僕がすごく面白いなと思ったのは、“プレシャス・フラグメンツ”という言葉があるんですよ。それは、“突然蘇ってくるかけがえのない断片”です。マルセル・プルーストの『失われた時を求めて』のマドレーヌの瞬間がそうなんですけど…。
今回、監督の映画を観ていて、「プレシャス・フラグメンツなんだな」と思いました。なぜ脈絡なくそれが蘇ってくるのかは分からないですけど、蘇ってくるわけじゃないですか。
川村:そうですね。
茂木:この映画『百花』でも、“半分の花火”というものが重要なモチーフとしてありますが、大切なものなんでしょうね。
茂木:それにしても、お母様のセリフで、ある大切な時に「このことも全部忘れちゃうのよ」というようなことをおっしゃるじゃないですか。あれは切ないですね…。
川村:人間の脳みそはうまくいっていないと言うか、“忘れちゃいけないことを忘れるのに、忘れたいことはいつまでも覚えている”。そういうことが、すごく人間らしいし、頭の不思議なところだなと思うんです。だからそれ自体がすごく感動的だし、切ないし、それを物語にしようというのはずっと根幹にありました。
茂木:川村元気さんは、映画監督としてだけではなくプロデューサーとしても数々のヒット作を出してきたんですが、“映画の今後”というのは、どのようにお考えになっていますか。
川村:今回『百花』は映画館で観るために作ったんですが、配信が出てきて、テレビも多様化してきて、YouTubeやTikTokには面白い映像がいっぱいあって…という中で、“映画館で映画を観る”というアドバンテージに自覚的にならないと、生き残っていけないなと思うんですよ。「少なくともスマホを観ないことがマナーになっている2時間」というのは、圧倒的なアドバンテージなはずで。
茂木:確かに…!
川村:『百花』はそこを最大限に活かしていますし、今後の自分の作る映画は、そこを相当意識的に向き合うことになるだろうな、と思っています。もう映画館でスマホを切って観るということは、レアで貴重な体験になっているんですよね。
●映画『百花』公式サイト
●映画『百花』公式(@movie_hyakka) Twitter
●KOE 公式サイト
●川村元気さん (@seka_neko)Twitter
●『百花』予告