2022年05月28日
秀島史香さんは、1975年、神奈川県茅ヶ崎市のお生まれ。
慶應義塾大学法学部政治学科在学中に、ラジオDJとしてデビューされます。
ラジオ番組を中心に、映画、テレビ、CM、アニメなどのナレーションのほか、
プラネタリウム、美術館音声ガイド、飛行機の機内放送や
EXILEの『Ti Amo』や、絵本朗読CD『おとえほん』に参加するなど、
多岐にわたり、活動されていらっしゃいます。
秀島さんのハスキーで都会的な声質、そして、あたたかい人柄とフリートークが、
クリエイターからリスナーまで、幅広く人気を集めていらっしゃいます。
──人の“コピペ”から自分の言葉へ
茂木:今回、朝日新聞出版から、ご著書『なぜか聴きたくなる人の話し方』を発売されていらっしゃいます。ご著書の中でもありますけど、たまたまラジオがかかっていて、思わず聴き入っちゃうのは、何が秘密なんでしょう?
秀島:「何だろうな?」と、私もずっと思っていたんですが。特にこのコロナ禍が長引いておりますけれども、ラジオから聴こえてくる声というものに、自分自身がハッとしたり、ホッとあったかくなったり、勇気づけられたり、と感じることがとても増えたんですよね。
「その秘密って何かな?」と、ふむふむとまたゼロから考え直す機会がありまして…。一つ一つ分解して行くと、「あ、これってもしかして“間の取り方”であったり、“程よい喋りの量”であったり、“ラジオの一対一で向き合ってくれている感じ”をより感じるDJさんがいらっしゃるな」と思ったんです。“例え”ですとか、“どんな言葉の選び方をしている”とか、“フォーマルか、砕けているか、その塩梅”…色んな要素があると思うんですよね。そこで「あ、気持ちいいな」と感じる要素というのは、様々パーツからなっているな、ということで、それを一つ一つブレイクダウンしていったのが、この本になるんです。
茂木:“自分の言葉を持つ”という、秀島さんの今のようなご自身の語り方は、どういう風にして獲得できたんですか?
秀島:やっぱり色んな失敗がありました。ラジオDJを始めた時から、東京のFM局で月曜日から金曜日までの“帯”番組をしていて、「毎日、何か新しいことを喋らなければいけない」だったり、「今日終われば、しばらくネタを溜めるための期間があるというわけではなくて、日々続ける」ことは本当に大変だったと思います。
そういった新人時代に、私は、人の言葉ばかりを借りて来ては、とっかえひっかえして、似合わないものでも「たぶんこれはいけるんじゃないか」という風な勘違いをして、一言で言えば“コピペ”をしていたかな、と。
ゼロから考えるというよりも、どこからか借りて来ては…でもそれは、全部が全部悪いことではないと私は思うんですよね。
茂木:そこから始めてもいいということですか。
秀島:はい。色々な新しい要素をバンバン自分の中に入れて行き、最終的に自分の形にするものであれば、有りだと思うんです。ただ、取って来て、何もフィルターを掛けずにそのまま外に出す、というのは…。そこに自分の考えとか感情というのを一度潜らせて何か生まれてくる分にはいいと思うんですが、トゥルッとそのまま右から左へと言うと、自分自身でも「今日何言ったかなぁ?」と手応えも残らないし、もちろん成長もないですし、「何だったんだろう?」という、そんな自問自答が、新人時代はずっとあったんです。
茂木:ラジオはごまかしが利かないじゃないですか。全部人間が表れてしまうと言うか。そういう意味においては、秀島さんの人間性にリスナーは魅力を感じているんだと思うんです。その辺り、どんな人生経験を積むと、こういう魅力的な喋り方ができるようになるんでしょう?
秀島:どうなんでしょう? どんどん歳を重ねてくると、正直になってくるのは一つ言えるのかな、と思って(笑)。それこそ、新人時代は色んなもので固めていました。鎧のようなものを纏っていました。
茂木:そうなんですね。
秀島:「いかに自分が出来るかということを、早く証明したい!」、「格好いいDJになりたい」、「出来る人と思われたい」、という…。
茂木:と言うか、格好いいですけどね。
秀島:いえ! もう失敗ばかりですし、いまだに色んなヘマはやりますし、読み間違いだっていっぱいありますし、知らないことばかりです!
──まずは話しかけることから
茂木:慶応義塾大学の先生と対談で「秀島君は全然就活をしないで一生懸命DJをやっていたよ」とお話しをされていましたけど、当時の秀島さんの原点にすごく興味があります。だって、今も、メディアで働きたいという学生はいるじゃないですか。でも、「こうしなくちゃいけないんじゃないか」とか考えると思います。
秀島:「べき」とか、「しなきゃ」とか、色々過去のものをなぞってみたり、というのも、もちろん型としてそれはそれでいいと思うんですけど…。でも、今でも私は不思議なんですよ。性格的には石橋を叩いて叩いて、補強して渡るようなタイプだったんです。
茂木:元々人見知りだったとか。
秀島:そうなんです。なので、なんで、出来るかどうかも食べて行けるかどうかも分からない、フリーランスというラジオDJの世界に「えいや!」と飛び込めたか、というのが、「あの時は、よくぞ決断できたね!」と自分でも思いますね。
茂木:ご両親もよく許してくれましたね。
秀島:うちの父は割りと「もう自由に好きなことやれ!」みたいな感じで(笑)。サラリーマンなんですけど、「自分の職場を見てると、やっぱりまだまだ厳しいものはあるぞ」と。当時は就職氷河期だったんです。先輩方は手堅いところにバシバシ就職を決めてましたけど…。
茂木:慶應の法学部だもんなぁ! それは皆、優良企業に行くでしょう。
秀島:とは言え、紙のエントリーシート100枚とか書いて…。そして、やっぱりまだまだ女性はこれからなのかな、という形で。男子には案内が来ているのに私には来ない、とか。
茂木:そういう苦労をされている方もいらしたんですね。
秀島:そういう時代だったと思います。そういうのを横で見ていると、だったら一度きりの人生だし、学生時代にラジオの現場で大人たちが楽しそうに仕事をしてるのを見てしまったら…(笑)!
茂木:確かにラジオは楽しいですよね(笑)。
秀島:楽しいですよね! 「私に出来るかどうかは何の保証もないけど、ちょっとこれは頑張ってみるか!」という気持ちでしたね。
茂木:4月から新生活をスタートして、コミュニケーションで悩んでいる方も多いと思うんです。もちろん今回のご著書『なぜか聴きたくなる人の話し方』を読んで頂きたいんですが、リスナーの皆さんに、コミュニケーションの仕方、話し方のヒントのようなものを一つお伝えいただけますか。
秀島:ギクシャクしていいと思います(笑)! まずは、“話しかける”というところから。これは、「泳ぐにはどうするか?」「水の中に入って下さい」という、本当にこれなんですけど…。
お悩みを相談してくれる人たちに実際聞いてみると、「こんなことを話したら、変な奴と思われるかな?」とか「もし会話が続かなかったらどうしよう?」とか、やる前から色々と心配し過ぎのように感じるんですよね。赤ちゃんもそうですけど、何回も転んで転んで、ようやく歩けるようになる、ということで、人はいきなり上手く爆笑を取ったりとか、30分楽しく雑談ができる、みたいなことにはならないと思います。
茂木:秀島さんも転んだんですか?
秀島:いっぱい転びました! 生傷だらけでした。今もそうです(笑)。
●秀島史香(@tsubuyakifumika) Twitter
●秀島史香 公式ブログ
●秀島史香Instagram (@hideshimafumika)
●なぜか聴きたくなる人の話し方 / 秀島史香(著)
(Amazon)
慶應義塾大学法学部政治学科在学中に、ラジオDJとしてデビューされます。
ラジオ番組を中心に、映画、テレビ、CM、アニメなどのナレーションのほか、
プラネタリウム、美術館音声ガイド、飛行機の機内放送や
EXILEの『Ti Amo』や、絵本朗読CD『おとえほん』に参加するなど、
多岐にわたり、活動されていらっしゃいます。
秀島さんのハスキーで都会的な声質、そして、あたたかい人柄とフリートークが、
クリエイターからリスナーまで、幅広く人気を集めていらっしゃいます。
──人の“コピペ”から自分の言葉へ
茂木:今回、朝日新聞出版から、ご著書『なぜか聴きたくなる人の話し方』を発売されていらっしゃいます。ご著書の中でもありますけど、たまたまラジオがかかっていて、思わず聴き入っちゃうのは、何が秘密なんでしょう?
秀島:「何だろうな?」と、私もずっと思っていたんですが。特にこのコロナ禍が長引いておりますけれども、ラジオから聴こえてくる声というものに、自分自身がハッとしたり、ホッとあったかくなったり、勇気づけられたり、と感じることがとても増えたんですよね。
「その秘密って何かな?」と、ふむふむとまたゼロから考え直す機会がありまして…。一つ一つ分解して行くと、「あ、これってもしかして“間の取り方”であったり、“程よい喋りの量”であったり、“ラジオの一対一で向き合ってくれている感じ”をより感じるDJさんがいらっしゃるな」と思ったんです。“例え”ですとか、“どんな言葉の選び方をしている”とか、“フォーマルか、砕けているか、その塩梅”…色んな要素があると思うんですよね。そこで「あ、気持ちいいな」と感じる要素というのは、様々パーツからなっているな、ということで、それを一つ一つブレイクダウンしていったのが、この本になるんです。
茂木:“自分の言葉を持つ”という、秀島さんの今のようなご自身の語り方は、どういう風にして獲得できたんですか?
秀島:やっぱり色んな失敗がありました。ラジオDJを始めた時から、東京のFM局で月曜日から金曜日までの“帯”番組をしていて、「毎日、何か新しいことを喋らなければいけない」だったり、「今日終われば、しばらくネタを溜めるための期間があるというわけではなくて、日々続ける」ことは本当に大変だったと思います。
そういった新人時代に、私は、人の言葉ばかりを借りて来ては、とっかえひっかえして、似合わないものでも「たぶんこれはいけるんじゃないか」という風な勘違いをして、一言で言えば“コピペ”をしていたかな、と。
ゼロから考えるというよりも、どこからか借りて来ては…でもそれは、全部が全部悪いことではないと私は思うんですよね。
茂木:そこから始めてもいいということですか。
秀島:はい。色々な新しい要素をバンバン自分の中に入れて行き、最終的に自分の形にするものであれば、有りだと思うんです。ただ、取って来て、何もフィルターを掛けずにそのまま外に出す、というのは…。そこに自分の考えとか感情というのを一度潜らせて何か生まれてくる分にはいいと思うんですが、トゥルッとそのまま右から左へと言うと、自分自身でも「今日何言ったかなぁ?」と手応えも残らないし、もちろん成長もないですし、「何だったんだろう?」という、そんな自問自答が、新人時代はずっとあったんです。
茂木:ラジオはごまかしが利かないじゃないですか。全部人間が表れてしまうと言うか。そういう意味においては、秀島さんの人間性にリスナーは魅力を感じているんだと思うんです。その辺り、どんな人生経験を積むと、こういう魅力的な喋り方ができるようになるんでしょう?
秀島:どうなんでしょう? どんどん歳を重ねてくると、正直になってくるのは一つ言えるのかな、と思って(笑)。それこそ、新人時代は色んなもので固めていました。鎧のようなものを纏っていました。
茂木:そうなんですね。
秀島:「いかに自分が出来るかということを、早く証明したい!」、「格好いいDJになりたい」、「出来る人と思われたい」、という…。
茂木:と言うか、格好いいですけどね。
秀島:いえ! もう失敗ばかりですし、いまだに色んなヘマはやりますし、読み間違いだっていっぱいありますし、知らないことばかりです!
──まずは話しかけることから
茂木:慶応義塾大学の先生と対談で「秀島君は全然就活をしないで一生懸命DJをやっていたよ」とお話しをされていましたけど、当時の秀島さんの原点にすごく興味があります。だって、今も、メディアで働きたいという学生はいるじゃないですか。でも、「こうしなくちゃいけないんじゃないか」とか考えると思います。
秀島:「べき」とか、「しなきゃ」とか、色々過去のものをなぞってみたり、というのも、もちろん型としてそれはそれでいいと思うんですけど…。でも、今でも私は不思議なんですよ。性格的には石橋を叩いて叩いて、補強して渡るようなタイプだったんです。
茂木:元々人見知りだったとか。
秀島:そうなんです。なので、なんで、出来るかどうかも食べて行けるかどうかも分からない、フリーランスというラジオDJの世界に「えいや!」と飛び込めたか、というのが、「あの時は、よくぞ決断できたね!」と自分でも思いますね。
茂木:ご両親もよく許してくれましたね。
秀島:うちの父は割りと「もう自由に好きなことやれ!」みたいな感じで(笑)。サラリーマンなんですけど、「自分の職場を見てると、やっぱりまだまだ厳しいものはあるぞ」と。当時は就職氷河期だったんです。先輩方は手堅いところにバシバシ就職を決めてましたけど…。
茂木:慶應の法学部だもんなぁ! それは皆、優良企業に行くでしょう。
秀島:とは言え、紙のエントリーシート100枚とか書いて…。そして、やっぱりまだまだ女性はこれからなのかな、という形で。男子には案内が来ているのに私には来ない、とか。
茂木:そういう苦労をされている方もいらしたんですね。
秀島:そういう時代だったと思います。そういうのを横で見ていると、だったら一度きりの人生だし、学生時代にラジオの現場で大人たちが楽しそうに仕事をしてるのを見てしまったら…(笑)!
茂木:確かにラジオは楽しいですよね(笑)。
秀島:楽しいですよね! 「私に出来るかどうかは何の保証もないけど、ちょっとこれは頑張ってみるか!」という気持ちでしたね。
茂木:4月から新生活をスタートして、コミュニケーションで悩んでいる方も多いと思うんです。もちろん今回のご著書『なぜか聴きたくなる人の話し方』を読んで頂きたいんですが、リスナーの皆さんに、コミュニケーションの仕方、話し方のヒントのようなものを一つお伝えいただけますか。
秀島:ギクシャクしていいと思います(笑)! まずは、“話しかける”というところから。これは、「泳ぐにはどうするか?」「水の中に入って下さい」という、本当にこれなんですけど…。
お悩みを相談してくれる人たちに実際聞いてみると、「こんなことを話したら、変な奴と思われるかな?」とか「もし会話が続かなかったらどうしよう?」とか、やる前から色々と心配し過ぎのように感じるんですよね。赤ちゃんもそうですけど、何回も転んで転んで、ようやく歩けるようになる、ということで、人はいきなり上手く爆笑を取ったりとか、30分楽しく雑談ができる、みたいなことにはならないと思います。
茂木:秀島さんも転んだんですか?
秀島:いっぱい転びました! 生傷だらけでした。今もそうです(笑)。
●秀島史香(@tsubuyakifumika) Twitter
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●なぜか聴きたくなる人の話し方 / 秀島史香(著)
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