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Dream HEART vol.477 映画監督 川和田恵真さん 「『マイスモールランド』は心の中にある」

2022年05月21日

川和田恵真監督は、1991年、千葉県で、
イギリス人の父親と日本人の母親の間に誕生されました。

早稲田大学在学中に制作した映画『circle』が、東京学生映画祭で準グランプリを受賞。

その後、2014年に「分福」に所属し、是枝裕和監督の作品等で監督助手を務められます。

5月6日より全国公開となった映画『マイスモールランド』が、
商業長編映画デビューとなり、現在、注目を集めています。

また、この作品は、2018年の第23回釜山国際映画祭で若いクリエイターを支援する、
「ASIAN PROJECT MARKET(APM)」で、アルテ国際賞(ARTE International Prize)を受賞。
そして、今年、第72回ベルリン国際映画祭では、全部門の作品から選出される
アムネスティ国際映画賞のスペシャル・メンションに輝き、世界からも大きな注目を集めています。


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──社会から感じる疑問や怒り

茂木:映画『マイスモールランド』は、(題材が)ある意味では社会派なので、撮るのを実現するまでに、誰がお金を出すかとか大変だったんじゃないですか?

川和田:まさに(笑)。こういうテーマを持った作品が、シネコンでかかっていることは本当にないと思うんですよ。でもそういうものを作りたいと思ったので、すごく時間は掛かったんですけど、この作品の力を信じて参加してくださった会社の皆様のお陰で作ることができました。

茂木:日仏共同制作ということですが、フランス側はどういう感じで制作に参加されているんですか?

川和田:やっぱり最初は、中々日本だけで資金を集めてくるのが難しいこともあって、フランスの助成金を申請して通りました。なので、フランスでは、この映画の仕上げ作業を行なっています。撮影は全て日本で行なって、その後にフランスに2か月ぐらい滞在して、映画の色味や音の細かい調整といったものを全てフランスで行ないました。

茂木:ドキュメンタリー映画の『牛久』という作品も拝見して、やはり難民の問題を題材にしているのですが、難民に認定される方々と、不法滞在をする方々を同じ役所がやっているという構造的な問題もあったりして。やっぱり、そろそろ日本はちゃんと考えないとまずいですよね。

川和田:そうですね。取り締まることと保護は、全く相反することなので、それを一つの機関が担っているということが、まず一つ大きな矛盾になっています。だからこそ、国際基準の認定ができていないんだと思うんです。難民条約に批准している以上、そこに希望を見出して来る人がいるので、そこは国際基準にしていく必要があるんじゃないかな、と私は思います。

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茂木:色んな人が言ってらっしゃると思うんですけど、主演の嵐莉菜さんと監督は、何だか雰囲気が似ていますね。

川和田:ありがとうございます(笑)。親戚みたいな感覚はあります。

茂木:監督の分身と言うか、そういう側面もある映画なのかなと思ったんですが。

川和田:観てくれた知り合いからは、「途中から恵真にしか見えなかった」という言葉を貰って(笑)。

茂木:そうですよね。自伝的とは言わないですけど、ある種の自分の内面の風景を映している気がします。監督の作品は、自分の経験から来るところが大きいんですかね?

川和田:それも大きいです。それと、社会をどう見ていくか、そういう作りになっているかなと思います。

茂木:なるほど。ということは、次以降の作品がどうなるかというのは、そこら辺にヒントがありそうですね。

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川和田:はい。やっぱり社会を見て、自分が疑問に思ったこととか、怒りを感じたこととかから、作って行けたらいいなと思います。

茂木:今お話をしているととても穏やかなんですけども、怒ることもあるんですね。

川和田:はい、結構怒ります(笑)。

茂木:(劇中であったように)家族が引き裂かれるなんてことがあってはいけないことですが、でも、実際に日本では、過去にもクルドの方が強制送還されるという事件がありましたもんね。

川和田:そうなんです。“収容”ということ自体が、家族を引き裂いています。

茂木:生活基盤も失ってしまう。これは本当に考えないといけないですね。監督がおっしゃるように、それを告発するというよりは、こういう人間ドラマとして描くことで、深いところで人々の意識が変わっていくといいですね。

川和田:はい。本当にそれを願っています。

茂木:改めて、この『マイスモールランド』は、どういう方々に観て頂きたいですか?

川和田:本当に一人でも多くの方に、と思うんですけど、全くこういう問題に関心がないという方にも届けたいです。そういう方々の無関心が、今こういう状況に一つ繋がってしまっているところもあると思うので、少しでも関心を持って頂きたいです。でも、社会派ではあるんですけど、あくまで“ある少女の青春を描いている物語”だという、そういう入り口から入って頂けたらいいなと思っていて。それぞれ、どこかに視点を置いて頂けると思うので、青春物語として、家族の物語として、まずは気軽に映画館に足を運んで頂けたら嬉しいなと思います。

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茂木:本当に、キュンキュンする淡い恋愛映画でもありますもんね。

川和田:そうなんです。

茂木:そして、「『マイスモールランド』は心の中にある」という、このメッセージも素敵ですね。

川和田:ありがとうございます。

茂木:監督の『マイスモールランド』も心の中にありますか。

川和田:はい。それぞれの心にあるものだと思います。このタイトルにはいくつも意味を込めていて、社会によって線を引かれてしまう、そういう物理的な『スモールランド』が生まれてしまっているということにも気づく、一つのきっかけにもなるかなと思っています。

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映画『マイスモールランド』 公式サイト


映画『マイスモールランド』公式(@mysmallland)Twitter


第25回東京学生映画祭準グランプリ作品『circle』予告編

↑インタビュー中にあった、川和田監督の初作品の予告編はこちらです!


●小説版「マイスモールランド」/ 川和田 恵真 (著)
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