2022年04月30日
根本宗子さんは、1989年、東京都のお生まれです。
19歳で、劇団、月刊「根本宗子」を旗揚げ。
以降、劇団公演全ての作品の作・演出を務められ、
そのほかにも、様々なプロデュース公演の作・演出も担当されていらっしゃいます。
ご自身が手がけた作品では、「演劇界の芥川賞」と称される、
岸田國士戯曲賞に4度ノミネートされ、
また、近年では、清竜人さん、チャラン・ポ・ランタンさんなど
様々なアーティストとタッグを組み、
完全オリジナルの音楽劇を積極的に生み出していらっしゃいます。
常に演劇界で新しい仕掛けを考える根本さんは、
今月、4月21日に初の長編小説『今、出来る、精一杯。』を
小学館より発売されていらっしゃいます。
──車椅子の女性は、怪我をしていた時の自分
茂木:先日、ご自身が手掛けられたミュージカルドラマ『20歳の花』が、第25回文化庁メディア芸術祭の新人賞受賞ということで、おめでとうございます! すごく斬新な仕掛けの演劇ですよね。
根本:ありがとうございます。コロナ禍になってから、劇場での公演が思うようにできない時期があったので、気軽にお家で観て頂けるコンテンツを色々考えた中の一つだったんです。
茂木:スマートフォン向けのニュースサービス、「LINEニュース」の動画コンテンツということで、メッセージのやり取りなども上手く劇作に入れていますね。
根本:そうですね。LINEの「VISION」という、縦型で観て面白いものを作っているチームがあって、そこと組んで作りました。メッセージが出て来たりとか、スマートフォンの中で起こっているような感じのストーリーでした。
茂木:相手はいますけど、一人のドラマですもんね。
そして、今回はついに小説デビューですね! 『今、出来る、精一杯。』という小説が、小学館から発売ということで。
根本:これは、23歳の時に自分が書いた舞台の小説化なんです。
茂木:月刊「根本宗子」で、2013年に初演した代表作なんですね。今まで3回上演されて、そして、新国立劇場でミュージカルにもなっているんですよね。この代表作が小説になったということですけど、どうですか?
根本:自分が車椅子だった時の話を書いているのもあって、やっぱりちょっと向き合うのが一番しんどい作品ではあります。演劇は、演じてくれる役者がその場にいてたくさんの人とお稽古をするので、もちろんイニシアティブは私にありますが、皆で作るものなので、役のエネルギーも分散するんです。でも、小説は一人で全部の役と向き合い直さなきゃいけなかったので、結構書くのがしんどかったですね。
茂木:そうなんですか。読ませて頂いて本当に面白かったと言いますか、演劇的な興奮がありましたね。群像劇と言うか、たくさん登場人物がいて、それが最後に「いや、ここがこう繋がるの!?」というような…。
根本:あ、その感じは小説でもありましたか?
茂木:もちろんありました!
根本:良かったです。小説だけを読んでくださった方とお話するのは、今日が初めてなんですよ。周りは演劇も観てしまっているので、その感じが小説でちゃんと表現できているかどうかが一番心配だったんです。茂木さんにそう言って頂けて、今嬉しいです。
茂木:内容を一部ご紹介すると、“東京都三鷹市のスーパーマーケット「ママズキッチン」で働く人々は、皆どこか変。しかし、もっとおかしいのは、毎日この店を訪れ、「お弁当をただでくれ」を叫ぶ、車椅子に乗る女だった。” これが、実はご自身なんですね。
根本:はい。「お弁当をただでくれ」はやってないですけど(笑)。自分の怪我した時のことを書いている役です。
茂木:この小説を読んでいて一番「あれ?」と思ったのが…。もうお亡くなりになったお母様が、中村勘三郎さんの奥様と仲が良くて、小学校の頃から歌舞伎をずっとご覧になっていた、と。…というバックグラウンドじゃないですか。この『今、出来る、精一杯。』に出て来る人たちは、絶対にお友達とか周りにいなかったタイプの人たちでしょう?
根本:そうですね。近くに、モデルになっている人がいるわけではないです。
茂木:劇作家の想像力はすごいですね!
根本:いや、でも、もちろん想像の部分もあるし、大人になってから出会った人だったり、自分が恋愛で経験してきたこととかも入っています(笑)。
茂木:意外と、駄目な男の人とのご縁もあったんですか?
根本:これを書いていた当時は、本当にそういう感じだったんですよ(笑)。
茂木:(笑)。そういう人(駄目な男の人)も、実際にいらしたということですか。
根本:はい。そこも、自分でもう一回振り返るのは、きつかったですね(笑)。
茂木:そうですか(笑)。ある意味では、現実とフィクションが色々一体となっているという。
根本:だいぶフィクション要素が強い作品ですけど、現実の部分も入っています。
茂木:『今、出来る、精一杯。』は、根本さんの今までの演劇人生の元気さと言うか、色んなエネルギーが詰まってますよね。
根本:そうですね。あの当時の熱量で今も同じようにものが書けているか、と言われると、考えてしまうところがあるぐらい、演劇への情熱がありました。もちろん今もあるんですけど、飲み込まなきゃいけない現実や色んなことを見て、大人になってしまったんです(笑)。自分で読み返していて、若くて「正論が一番正しい」と信じている感じが、「私は当時、生き辛かっただろうな」と思いました。
茂木:生き辛かったんですか。
根本:世の中にずっと怒っていました(笑)。
茂木:根本さんはこうやってお話しているとすごく爽やかな方だと思うんですけど、『今、出来る、精一杯。』に出てくる登場人物は面倒くさい人が多いですよね。どこからこの人たちは出て来るんですか?
根本:みんな面倒くさいですよね。でも、この要素は自分の中にあるんだと思います(笑)。
茂木:そうですか? 今お話ししていると、面倒くささは何もないですが。
根本:なるべく面倒くささがない状態で家を出るようにはしています(笑)。理詰めでものを詰める癖は、当時の方があったんですよね。大人になって「人との関係性が築けないな」と思ったり、「怒ってもいいことはないな」と思って、なくなりました。でも、当時の自分が羨ましくもありますね。
●月刊「根本宗子」 公式サイト
●根本宗子 (@nemoshuu)・Twitter
●根本宗子(@nemochimaki)・Instagram
●今、出来る、精一杯。/ 根本宗子(著)
(Amazon)
●小学館 公式ホームページ
★番組でご紹介した、第25回文化庁メディア芸術祭 エンターテインメント部門の新人賞を受賞した、根本宗子さんが手がけた『20歳の花』は、LINE NEWS VISIONの公式ページにて、全10話の閲覧が可能です。
・SNSミュージカル!!「20歳の花」
19歳で、劇団、月刊「根本宗子」を旗揚げ。
以降、劇団公演全ての作品の作・演出を務められ、
そのほかにも、様々なプロデュース公演の作・演出も担当されていらっしゃいます。
ご自身が手がけた作品では、「演劇界の芥川賞」と称される、
岸田國士戯曲賞に4度ノミネートされ、
また、近年では、清竜人さん、チャラン・ポ・ランタンさんなど
様々なアーティストとタッグを組み、
完全オリジナルの音楽劇を積極的に生み出していらっしゃいます。
常に演劇界で新しい仕掛けを考える根本さんは、
今月、4月21日に初の長編小説『今、出来る、精一杯。』を
小学館より発売されていらっしゃいます。
──車椅子の女性は、怪我をしていた時の自分
茂木:先日、ご自身が手掛けられたミュージカルドラマ『20歳の花』が、第25回文化庁メディア芸術祭の新人賞受賞ということで、おめでとうございます! すごく斬新な仕掛けの演劇ですよね。
根本:ありがとうございます。コロナ禍になってから、劇場での公演が思うようにできない時期があったので、気軽にお家で観て頂けるコンテンツを色々考えた中の一つだったんです。
茂木:スマートフォン向けのニュースサービス、「LINEニュース」の動画コンテンツということで、メッセージのやり取りなども上手く劇作に入れていますね。
根本:そうですね。LINEの「VISION」という、縦型で観て面白いものを作っているチームがあって、そこと組んで作りました。メッセージが出て来たりとか、スマートフォンの中で起こっているような感じのストーリーでした。
茂木:相手はいますけど、一人のドラマですもんね。
そして、今回はついに小説デビューですね! 『今、出来る、精一杯。』という小説が、小学館から発売ということで。
根本:これは、23歳の時に自分が書いた舞台の小説化なんです。
茂木:月刊「根本宗子」で、2013年に初演した代表作なんですね。今まで3回上演されて、そして、新国立劇場でミュージカルにもなっているんですよね。この代表作が小説になったということですけど、どうですか?
根本:自分が車椅子だった時の話を書いているのもあって、やっぱりちょっと向き合うのが一番しんどい作品ではあります。演劇は、演じてくれる役者がその場にいてたくさんの人とお稽古をするので、もちろんイニシアティブは私にありますが、皆で作るものなので、役のエネルギーも分散するんです。でも、小説は一人で全部の役と向き合い直さなきゃいけなかったので、結構書くのがしんどかったですね。
茂木:そうなんですか。読ませて頂いて本当に面白かったと言いますか、演劇的な興奮がありましたね。群像劇と言うか、たくさん登場人物がいて、それが最後に「いや、ここがこう繋がるの!?」というような…。
根本:あ、その感じは小説でもありましたか?
茂木:もちろんありました!
根本:良かったです。小説だけを読んでくださった方とお話するのは、今日が初めてなんですよ。周りは演劇も観てしまっているので、その感じが小説でちゃんと表現できているかどうかが一番心配だったんです。茂木さんにそう言って頂けて、今嬉しいです。
茂木:内容を一部ご紹介すると、“東京都三鷹市のスーパーマーケット「ママズキッチン」で働く人々は、皆どこか変。しかし、もっとおかしいのは、毎日この店を訪れ、「お弁当をただでくれ」を叫ぶ、車椅子に乗る女だった。” これが、実はご自身なんですね。
根本:はい。「お弁当をただでくれ」はやってないですけど(笑)。自分の怪我した時のことを書いている役です。
茂木:この小説を読んでいて一番「あれ?」と思ったのが…。もうお亡くなりになったお母様が、中村勘三郎さんの奥様と仲が良くて、小学校の頃から歌舞伎をずっとご覧になっていた、と。…というバックグラウンドじゃないですか。この『今、出来る、精一杯。』に出て来る人たちは、絶対にお友達とか周りにいなかったタイプの人たちでしょう?
根本:そうですね。近くに、モデルになっている人がいるわけではないです。
茂木:劇作家の想像力はすごいですね!
根本:いや、でも、もちろん想像の部分もあるし、大人になってから出会った人だったり、自分が恋愛で経験してきたこととかも入っています(笑)。
茂木:意外と、駄目な男の人とのご縁もあったんですか?
根本:これを書いていた当時は、本当にそういう感じだったんですよ(笑)。
茂木:(笑)。そういう人(駄目な男の人)も、実際にいらしたということですか。
根本:はい。そこも、自分でもう一回振り返るのは、きつかったですね(笑)。
茂木:そうですか(笑)。ある意味では、現実とフィクションが色々一体となっているという。
根本:だいぶフィクション要素が強い作品ですけど、現実の部分も入っています。
茂木:『今、出来る、精一杯。』は、根本さんの今までの演劇人生の元気さと言うか、色んなエネルギーが詰まってますよね。
根本:そうですね。あの当時の熱量で今も同じようにものが書けているか、と言われると、考えてしまうところがあるぐらい、演劇への情熱がありました。もちろん今もあるんですけど、飲み込まなきゃいけない現実や色んなことを見て、大人になってしまったんです(笑)。自分で読み返していて、若くて「正論が一番正しい」と信じている感じが、「私は当時、生き辛かっただろうな」と思いました。
茂木:生き辛かったんですか。
根本:世の中にずっと怒っていました(笑)。
茂木:根本さんはこうやってお話しているとすごく爽やかな方だと思うんですけど、『今、出来る、精一杯。』に出てくる登場人物は面倒くさい人が多いですよね。どこからこの人たちは出て来るんですか?
根本:みんな面倒くさいですよね。でも、この要素は自分の中にあるんだと思います(笑)。
茂木:そうですか? 今お話ししていると、面倒くささは何もないですが。
根本:なるべく面倒くささがない状態で家を出るようにはしています(笑)。理詰めでものを詰める癖は、当時の方があったんですよね。大人になって「人との関係性が築けないな」と思ったり、「怒ってもいいことはないな」と思って、なくなりました。でも、当時の自分が羨ましくもありますね。
●月刊「根本宗子」 公式サイト
●根本宗子 (@nemoshuu)・Twitter
●根本宗子(@nemochimaki)・Instagram
●今、出来る、精一杯。/ 根本宗子(著)
(Amazon)
●小学館 公式ホームページ
★番組でご紹介した、第25回文化庁メディア芸術祭 エンターテインメント部門の新人賞を受賞した、根本宗子さんが手がけた『20歳の花』は、LINE NEWS VISIONの公式ページにて、全10話の閲覧が可能です。
・SNSミュージカル!!「20歳の花」