2021年08月21日
リトさんは、1986年、神奈川県のお生まれです。
ご自身のADHDによる偏った集中力やこだわりを前向きに生かすために、
2020年より独学で制作をスタートされます。
その後、Instagram、Twitterに毎日のように投稿する葉っぱ切り絵が注目を集めます。
その作品が、国内メディアで続々と紹介されるほか、
米国(アメリカ)、英国(イギリス)、イタリア、フランス、ドイツ、ロシア、イラン、タイ、インドなど、
世界各国のネットメディアでも取り上げられ、話題となりました。
そして先日、講談社より、
初作品集『いつでも君のそばにいる 小さなちいさな優しい世界』を発売されました。
──ADHDと診断されて救われた
茂木:リトさんは、ADHD(注意欠陥多動性障害)といつ診断を受けられたんですか?
リト:2018年なので、本当に最近と言えば最近ですね。
茂木:それまで、ご自身では仕事をしていて「ちょっと変だな」と思ったこともあったんですね。
リト:それはやっぱり思っていました。僕は弟がいるんですけど、弟は結構要領が良くて何でもそつなくこなせるタイプなんですけど、僕は正反対で、もう凡ミスばっかり。仕事していても、指示されてはじめてハッと気づく。「言われる前に早く動いて」と言われるような、「自分はどんくさい人間だなぁ」と、親からもそう言われていました。「どうして、自分はこんなに仕事とかできなくて、要領が悪い人間なんだろう?」と、ずっと頭の中でモヤモヤがあったんですね。
茂木:はっきり言うと、世間で言う“駄目人間”のような…。
リト:そうです。僕は、いわゆる『真面目系クズ』と言われるような人間だったんです。
茂木:『真面目系クズ』(笑)! この診断を受けたというのは大きかったですか?
リト:大きかったですね。やっぱり「自分はこれからどうやって生きていけばいいのか」というのも何も分からない状態で。そして自分にできることも分からない中で、「どうやって仕事を選んだらいいか」、「何が自分に合った仕事なのか」、「世の中に自分に合う仕事なんて何一つないんじゃないか」というぐらい、気持ち的には追い詰められていたんですよね。
茂木:でも、リスナーの方で、似たような経験をしている方は多いと思うんです。それで、専門的にADHDという診断が下ると、自分のことが分かったという気持ちになったんですか?
リト:そうです。今まで自分の駄目な性格のせいだと思っていたけど、「最初から脳に欠陥があるんだったらしょうがないよな」と、そこで一つ救われたんです。
茂木:なるほど。ADHDと言うのは、環境によっていわゆる“障害”として出る場合もあるんですけど、あくまでも“脳の個性”です。注意が散漫になってしまったりするんですが、グッと集中すると他のことが見えなくなるぐらい集中されてしまうこともあるんですよね。
リト:そうなんですよ。先ほども『偏った集中力』と紹介いただいたんですけど(笑)、自分の好きなこと…例えば、テレビゲームとか、好きな番組を観ることとか、そういうところにはグッっと集中するけど、勉強とか人の話を聞くこととか、興味ないことに対しては全く集中が続かないんです。
茂木:リトさんは、今回講談社から『いつでも君のそばにいる 小さなちいさな優しい世界』という作品集が出たわけですけど、表紙になっているジンベエザメの作品(『アクアリウム』)なんか本当にすごくて、こちらはブレイクするきっかけになった作品の一つなんですか?
リト:そうですね。この作品が自分のターニングポイントの一つになりましたね。
茂木:スペインの葉っぱの切り絵アーティストの作品を観て葉っぱを思いついたそうなんですが、そのスペインの方の作品はどういう作品なんですか?
リト:その方が最初に作っていたのは、葉っぱのちょうど上半分をカットして森が広がっている中に、鹿か何かの動物が生息している、絵本の一場面を切り取ったような雰囲気の作品でした。
茂木:なるほど。そこから始めて、リトさんの物語性とか優しさとか温かさ詰まったこの世界に、どうやってたどり着いたんですか?
リト:最初からではなかったんですよ。最初は自分の好きなものとか、ゲームのキャラクターだったりとか、スターウォーズの一場面とかを葉っぱで作っていたんです。だけど、やっぱりうまくいかなくて、それで色々試行錯誤をしていたんです。その中で、「自分の好きなものを作っているだけじゃ駄目なんだな」ということに気づいて、まず“みんなに楽しんでもらう”ということを第一に考えなきゃいけないと思って、誰が見ても可愛いモチーフにシフトしていきました。そしてこの『アクアリウム』を出した時に、ドカンといったんですよね。
茂木:リトさんはADHDと診断された時に自分のことが分かったわけですけど、同じように発達障害など脳の個性を抱えて苦労されている方がいらっしゃると思います。そういう方に言ってあげたいことなどはありますか?
リト:僕も含めてなんですけど、「自分は駄目人間で、才能なんかなくて、自分が活躍できる場所はないから、今この場所を離れてしまったら何もなくなってしまう」という思いで、合わない仕事を毎日ずっと続けているという方がいっぱいいらっしゃると思うんです。怒られても「でも辞めるのも怖い」みたいな。
だけど、一回離れてみると、「自分は何で、あんなところにずっとしがみ付いていたんだろう?」と思うんですよ。気持ちがすごく楽になると言うか。なので、“一度離れてみる”というのはすごく大事なことかもしれないですね。
茂木:それは大切なことだと思います。逆に、上司の方も悪気があって怒っていたわけじゃないと思うんですが、個性で失敗しちゃう方もいらっしゃるから、余り叱り過ぎたり一つの型に当てはめすぎるのも良くないんですかね。
リト:そこは難しいところですよね。本人も自分の特性をうまく理解していないから、周りにも伝わらないし、周りもどうしてあげたらいいかわからない。僕もそれですごく悩んだんですよ。
上司から「あなたが仕事をしやすくするために私たちが合わせるから、どうして欲しい?」と言われた時に答えられなかったんです。「すみません、頑張ります」しか言えなくて。
だからまず、本人が自分の強みと弱みをしっかり分かって、その上で、「こういうところが苦手なので、ここはカバーしてください。その代わり僕はこういうことができるので、ここだったら頑張れます」と言う。まずは、“自分が自分自身を理解する”。そして“それを相手に分かりやすく伝える”ということが、すごく大事なんじゃないかなと思います。
●いつでも君のそばにいる 小さなちいさな優しい世界 / リト@葉っぱ切り絵
(Amazon)
●リト@葉っぱ切り絵 (@lito_leafart) Twitter
●リト@葉っぱ切り絵(@lito_leafart) - Instagram
●講談社 公式サイト
ご自身のADHDによる偏った集中力やこだわりを前向きに生かすために、
2020年より独学で制作をスタートされます。
その後、Instagram、Twitterに毎日のように投稿する葉っぱ切り絵が注目を集めます。
その作品が、国内メディアで続々と紹介されるほか、
米国(アメリカ)、英国(イギリス)、イタリア、フランス、ドイツ、ロシア、イラン、タイ、インドなど、
世界各国のネットメディアでも取り上げられ、話題となりました。
そして先日、講談社より、
初作品集『いつでも君のそばにいる 小さなちいさな優しい世界』を発売されました。
──ADHDと診断されて救われた
茂木:リトさんは、ADHD(注意欠陥多動性障害)といつ診断を受けられたんですか?
リト:2018年なので、本当に最近と言えば最近ですね。
茂木:それまで、ご自身では仕事をしていて「ちょっと変だな」と思ったこともあったんですね。
リト:それはやっぱり思っていました。僕は弟がいるんですけど、弟は結構要領が良くて何でもそつなくこなせるタイプなんですけど、僕は正反対で、もう凡ミスばっかり。仕事していても、指示されてはじめてハッと気づく。「言われる前に早く動いて」と言われるような、「自分はどんくさい人間だなぁ」と、親からもそう言われていました。「どうして、自分はこんなに仕事とかできなくて、要領が悪い人間なんだろう?」と、ずっと頭の中でモヤモヤがあったんですね。
茂木:はっきり言うと、世間で言う“駄目人間”のような…。
リト:そうです。僕は、いわゆる『真面目系クズ』と言われるような人間だったんです。
茂木:『真面目系クズ』(笑)! この診断を受けたというのは大きかったですか?
リト:大きかったですね。やっぱり「自分はこれからどうやって生きていけばいいのか」というのも何も分からない状態で。そして自分にできることも分からない中で、「どうやって仕事を選んだらいいか」、「何が自分に合った仕事なのか」、「世の中に自分に合う仕事なんて何一つないんじゃないか」というぐらい、気持ち的には追い詰められていたんですよね。
茂木:でも、リスナーの方で、似たような経験をしている方は多いと思うんです。それで、専門的にADHDという診断が下ると、自分のことが分かったという気持ちになったんですか?
リト:そうです。今まで自分の駄目な性格のせいだと思っていたけど、「最初から脳に欠陥があるんだったらしょうがないよな」と、そこで一つ救われたんです。
茂木:なるほど。ADHDと言うのは、環境によっていわゆる“障害”として出る場合もあるんですけど、あくまでも“脳の個性”です。注意が散漫になってしまったりするんですが、グッと集中すると他のことが見えなくなるぐらい集中されてしまうこともあるんですよね。
リト:そうなんですよ。先ほども『偏った集中力』と紹介いただいたんですけど(笑)、自分の好きなこと…例えば、テレビゲームとか、好きな番組を観ることとか、そういうところにはグッっと集中するけど、勉強とか人の話を聞くこととか、興味ないことに対しては全く集中が続かないんです。
茂木:リトさんは、今回講談社から『いつでも君のそばにいる 小さなちいさな優しい世界』という作品集が出たわけですけど、表紙になっているジンベエザメの作品(『アクアリウム』)なんか本当にすごくて、こちらはブレイクするきっかけになった作品の一つなんですか?
リト:そうですね。この作品が自分のターニングポイントの一つになりましたね。
茂木:スペインの葉っぱの切り絵アーティストの作品を観て葉っぱを思いついたそうなんですが、そのスペインの方の作品はどういう作品なんですか?
リト:その方が最初に作っていたのは、葉っぱのちょうど上半分をカットして森が広がっている中に、鹿か何かの動物が生息している、絵本の一場面を切り取ったような雰囲気の作品でした。
茂木:なるほど。そこから始めて、リトさんの物語性とか優しさとか温かさ詰まったこの世界に、どうやってたどり着いたんですか?
リト:最初からではなかったんですよ。最初は自分の好きなものとか、ゲームのキャラクターだったりとか、スターウォーズの一場面とかを葉っぱで作っていたんです。だけど、やっぱりうまくいかなくて、それで色々試行錯誤をしていたんです。その中で、「自分の好きなものを作っているだけじゃ駄目なんだな」ということに気づいて、まず“みんなに楽しんでもらう”ということを第一に考えなきゃいけないと思って、誰が見ても可愛いモチーフにシフトしていきました。そしてこの『アクアリウム』を出した時に、ドカンといったんですよね。
茂木:リトさんはADHDと診断された時に自分のことが分かったわけですけど、同じように発達障害など脳の個性を抱えて苦労されている方がいらっしゃると思います。そういう方に言ってあげたいことなどはありますか?
リト:僕も含めてなんですけど、「自分は駄目人間で、才能なんかなくて、自分が活躍できる場所はないから、今この場所を離れてしまったら何もなくなってしまう」という思いで、合わない仕事を毎日ずっと続けているという方がいっぱいいらっしゃると思うんです。怒られても「でも辞めるのも怖い」みたいな。
だけど、一回離れてみると、「自分は何で、あんなところにずっとしがみ付いていたんだろう?」と思うんですよ。気持ちがすごく楽になると言うか。なので、“一度離れてみる”というのはすごく大事なことかもしれないですね。
茂木:それは大切なことだと思います。逆に、上司の方も悪気があって怒っていたわけじゃないと思うんですが、個性で失敗しちゃう方もいらっしゃるから、余り叱り過ぎたり一つの型に当てはめすぎるのも良くないんですかね。
リト:そこは難しいところですよね。本人も自分の特性をうまく理解していないから、周りにも伝わらないし、周りもどうしてあげたらいいかわからない。僕もそれですごく悩んだんですよ。
上司から「あなたが仕事をしやすくするために私たちが合わせるから、どうして欲しい?」と言われた時に答えられなかったんです。「すみません、頑張ります」しか言えなくて。
だからまず、本人が自分の強みと弱みをしっかり分かって、その上で、「こういうところが苦手なので、ここはカバーしてください。その代わり僕はこういうことができるので、ここだったら頑張れます」と言う。まずは、“自分が自分自身を理解する”。そして“それを相手に分かりやすく伝える”ということが、すごく大事なんじゃないかなと思います。
●いつでも君のそばにいる 小さなちいさな優しい世界 / リト@葉っぱ切り絵
(Amazon)
●リト@葉っぱ切り絵 (@lito_leafart) Twitter
●リト@葉っぱ切り絵(@lito_leafart) - Instagram
●講談社 公式サイト