2021年07月10日
パトリック・ハーランさんは、1970年、アメリカ・コロラド州のご出身。
1993年、ハーバード大学の比較宗教学部をご卒業後、22歳の時に来日。
その後、1997年に、吉田眞さんとお笑いコンビ「パックンマックン」を結成。
日米コンビならではのネタで人気を集めます。
お笑い芸人として活動する一方、NHK『英語でしゃべらナイト』などにも出演し、
司会やコメンテーターとしてもご活躍中です。
現在は芸能活動を続けながら、東京工業大学で非常勤講師として、
教壇に立っていらっしゃいます。
──お金がないという劣等感
茂木:この『逆境力 貧乏で劣等感の塊だった僕が、あきらめずに前に進めた理由』の中で“劣等感の塊”と言っていますが、勉強はすごくできたわけじゃないですか。
パックン:勉強はできるタイプなんですけど、がり勉じゃないです。前の授業の宿題を、その次の授業でやっていました。ですから、その日最後の授業の宿題は、翌日の朝一でやるという。
茂木:先生が一番嫌がるタイプの(笑)。
パックン:いえ、僕の先生は、大体僕のことが好きでした。何故かと言うと、全部わかっていたので。
茂木:だからもう教える必要がない、と。
パックン:はい。試験も大体オールAですし、対して研究とかをしていなくても、「今回は数学コンクールがあるから出ないか?」と頼まれて出て、割りと賞を取ったりする、そういう楽な生徒だったんですよ。
茂木:…なんだけど、“劣等感”を持っていたのは何故だったんですか?
パックン:お金がないから。
例えば、僕はおっちょこちょいで忘れ物とか激しいので、子供の頃は上着とかをどこかに置き忘れて、なくしちゃうんですよ。でも上着を買うお金がない。ということは、上着なしでトレーナーとかを重ね着して学校に行く。馬鹿にされますよね。でもしょうがないです。
靴も穴が開くけど新しい靴を買うお金がないから、アメリカの細長いパン1斤を靴下の上に履いて、その上にさらに靴を履くと、これはレインブーツ代わりになるじゃないですか。でも、馬鹿にされます。これが劣等感の始まりと言うか、原点です。
で、お父さんが近くにいない。ですから、他の子供がお父さんに連れて行ってもらい、皆でアメフトをやったりボーイスカウトに参加したりする。僕はお父さんがいないから、皆がやっているそういう活動もできない。
「俺は何者なんだ」と。母がいるけど、母もいつも忙しい。兄弟もいない。お金もない。「俺は誰の役にも立ってないんだ!」と、7〜8歳の頃から思い始めたんですね。
茂木:お母さんが小切手を見て泣いているところを見たことがあるとか。
パックン:そうです。アメリカは自分の貯金から直接小切手を切って、支払いできるんです。それが家計簿の代わりに使えるわけです。
茂木:そうか、あとどれぐらい残っているのかもわかるの?
パックン:そういうことですね。給料日に給料が入って、貯金額がぐんと上がって、それから小切手を1個ずつ切っていくと、減っていくんですね。それが次の給料日までに間に合わないと、夜お母さんはその小切手帳を見て泣いている。「どうしよう。水道代が払えない」「電気代が払えない」「パトリックのコートが買えない」「靴に穴が開いてる、買えない」「大きくなって履けない」「どうしよう」…。
そういうお母さんを見て、俺が何かしなきゃいけないなと思って、10歳の頃に新聞配達を始めたんですね。
茂木:この本を読んでいると、周りの人がずいぶん助けてくれたみたいですね。
パックン:間違いないですね。茂木さんもそうじゃないですか? たぶん成功する皆は、誰かの手を借りていると思うんですよね。
僕はお母さんが就職している時はすごく忙しい。お母さんがいない間、鍵っ子の時に僕が誰に面倒を見て貰ったかと言うと、例えば3軒隣のジェイソン君のお母さん。いつも家にいる。大体手作りクッキーが焼きたてで、学校から帰ると「(ピンポーン)ジェイソン君いるか?」って言って、いなくても「どうぞ上がってクッキー食べて」「牛乳飲んで」「今日はどうだった?」と、僕の話を聞いてくれたわけですね。
茂木:この本がすごくいい本だな、と思うのが、日本の子供たちのこともちゃんと考えてくださっていますよね。
パックン:僕の子供も日本人ですし。普通の公立小学校に通っていましたけど、同級生とかクラスメイトでも苦しんでいる方がいらっしゃるし。日本の貧困は、ちょっとアメリカの貧困と違って、目に見えない形になっているから。
茂木:日本人はちょっと我慢しちゃうとかがあるのかな?
パックン:我慢しちゃいますし…。でもいい面はいっぱいあるんですよ。例えば、住所次第で貧困かどうかは簡単に見分けられないですね。アメリカは、「あの近所はまずい」「この近所は裕福」というのがはっきりしているんですけど、日本はそうじゃないですね。
茂木:ああ、(アメリカは)ゾーニングがあるんですね。
パックン:そうなんですよ。目に見えない貧困のことを少し考えて、皆で能動的に対策を取らないと「日本の将来的には、これはまずいよ!」ということを、この本を書きながら気づいたんですね。
●逆境力 貧乏で劣等感の塊だった僕が、あきらめずに前に進めた理由 (SB新書) / パトリック・ハーラン (著)
(Amazon)
●パックンマックン(@packunmackun) Twitter
●パックンマックン 公式サイト
●パックンマックンの親子で覚える英会話 YouTube
1993年、ハーバード大学の比較宗教学部をご卒業後、22歳の時に来日。
その後、1997年に、吉田眞さんとお笑いコンビ「パックンマックン」を結成。
日米コンビならではのネタで人気を集めます。
お笑い芸人として活動する一方、NHK『英語でしゃべらナイト』などにも出演し、
司会やコメンテーターとしてもご活躍中です。
現在は芸能活動を続けながら、東京工業大学で非常勤講師として、
教壇に立っていらっしゃいます。
──お金がないという劣等感
茂木:この『逆境力 貧乏で劣等感の塊だった僕が、あきらめずに前に進めた理由』の中で“劣等感の塊”と言っていますが、勉強はすごくできたわけじゃないですか。
パックン:勉強はできるタイプなんですけど、がり勉じゃないです。前の授業の宿題を、その次の授業でやっていました。ですから、その日最後の授業の宿題は、翌日の朝一でやるという。
茂木:先生が一番嫌がるタイプの(笑)。
パックン:いえ、僕の先生は、大体僕のことが好きでした。何故かと言うと、全部わかっていたので。
茂木:だからもう教える必要がない、と。
パックン:はい。試験も大体オールAですし、対して研究とかをしていなくても、「今回は数学コンクールがあるから出ないか?」と頼まれて出て、割りと賞を取ったりする、そういう楽な生徒だったんですよ。
茂木:…なんだけど、“劣等感”を持っていたのは何故だったんですか?
パックン:お金がないから。
例えば、僕はおっちょこちょいで忘れ物とか激しいので、子供の頃は上着とかをどこかに置き忘れて、なくしちゃうんですよ。でも上着を買うお金がない。ということは、上着なしでトレーナーとかを重ね着して学校に行く。馬鹿にされますよね。でもしょうがないです。
靴も穴が開くけど新しい靴を買うお金がないから、アメリカの細長いパン1斤を靴下の上に履いて、その上にさらに靴を履くと、これはレインブーツ代わりになるじゃないですか。でも、馬鹿にされます。これが劣等感の始まりと言うか、原点です。
で、お父さんが近くにいない。ですから、他の子供がお父さんに連れて行ってもらい、皆でアメフトをやったりボーイスカウトに参加したりする。僕はお父さんがいないから、皆がやっているそういう活動もできない。
「俺は何者なんだ」と。母がいるけど、母もいつも忙しい。兄弟もいない。お金もない。「俺は誰の役にも立ってないんだ!」と、7〜8歳の頃から思い始めたんですね。
茂木:お母さんが小切手を見て泣いているところを見たことがあるとか。
パックン:そうです。アメリカは自分の貯金から直接小切手を切って、支払いできるんです。それが家計簿の代わりに使えるわけです。
茂木:そうか、あとどれぐらい残っているのかもわかるの?
パックン:そういうことですね。給料日に給料が入って、貯金額がぐんと上がって、それから小切手を1個ずつ切っていくと、減っていくんですね。それが次の給料日までに間に合わないと、夜お母さんはその小切手帳を見て泣いている。「どうしよう。水道代が払えない」「電気代が払えない」「パトリックのコートが買えない」「靴に穴が開いてる、買えない」「大きくなって履けない」「どうしよう」…。
そういうお母さんを見て、俺が何かしなきゃいけないなと思って、10歳の頃に新聞配達を始めたんですね。
茂木:この本を読んでいると、周りの人がずいぶん助けてくれたみたいですね。
パックン:間違いないですね。茂木さんもそうじゃないですか? たぶん成功する皆は、誰かの手を借りていると思うんですよね。
僕はお母さんが就職している時はすごく忙しい。お母さんがいない間、鍵っ子の時に僕が誰に面倒を見て貰ったかと言うと、例えば3軒隣のジェイソン君のお母さん。いつも家にいる。大体手作りクッキーが焼きたてで、学校から帰ると「(ピンポーン)ジェイソン君いるか?」って言って、いなくても「どうぞ上がってクッキー食べて」「牛乳飲んで」「今日はどうだった?」と、僕の話を聞いてくれたわけですね。
茂木:この本がすごくいい本だな、と思うのが、日本の子供たちのこともちゃんと考えてくださっていますよね。
パックン:僕の子供も日本人ですし。普通の公立小学校に通っていましたけど、同級生とかクラスメイトでも苦しんでいる方がいらっしゃるし。日本の貧困は、ちょっとアメリカの貧困と違って、目に見えない形になっているから。
茂木:日本人はちょっと我慢しちゃうとかがあるのかな?
パックン:我慢しちゃいますし…。でもいい面はいっぱいあるんですよ。例えば、住所次第で貧困かどうかは簡単に見分けられないですね。アメリカは、「あの近所はまずい」「この近所は裕福」というのがはっきりしているんですけど、日本はそうじゃないですね。
茂木:ああ、(アメリカは)ゾーニングがあるんですね。
パックン:そうなんですよ。目に見えない貧困のことを少し考えて、皆で能動的に対策を取らないと「日本の将来的には、これはまずいよ!」ということを、この本を書きながら気づいたんですね。
●逆境力 貧乏で劣等感の塊だった僕が、あきらめずに前に進めた理由 (SB新書) / パトリック・ハーラン (著)
(Amazon)
●パックンマックン(@packunmackun) Twitter
●パックンマックン 公式サイト
●パックンマックンの親子で覚える英会話 YouTube