Dream Heart(ドリームハート)

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REPORT 最新のオンエアレポート

Dream HEART vol.424 作家 珠川こおりさん 著書「檸檬先生」

2021年05月15日

珠川こおりさんは、2002年、東京都お生まれです。

小学校2年生から物語の創作をはじめられます。

しかし、高校受験で多忙となり、一時執筆をやめるも、
高校入学を機に、執筆活動を再開されます。

そして、講談社より、5月24日発売の『檸檬先生』で、
第15回 小説現代 長編新人賞を受賞。

現在18歳の、今、大注目の新人作家さんでいらっしゃいます。


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──“共感覚”と“愛”

茂木:『檸檬先生』がどんな内容かということをご紹介したいんですけれども…。
「私立小中一貫校に通う小学三年生の主人公の少年は、音や数字に色が見えたりする“共感覚”を持ち、クラスメイトから蔑まれていた。
ある日、唯一心安らげる場所である音楽室で、中学三年生の少女と出会う。檸檬色に映る彼女もまた、孤独な共感覚者であった…。」
この先はぜひ皆さんお読みいただきたいんですけれど。少年が『檸檬先生』という名前を付けるんですよね。この“檸檬”というのはどんなイメージですか?

珠川:まず、単純に果物にしたかったというのがありまして。その中でも、この檸檬のみずみずしさと言うか、透明感と言うか…酸味があって、というその檸檬の感じがいいなと思って。
あとは“檸檬色”というのもありますし、檸檬色のイメージとも合っていたので、檸檬にしました。

茂木:珠川さんご自身は、共感覚は…?

珠川:持っていないですね。

茂木:これはテーマが“共感覚”ということなんですけど、ずばり、共感覚とはどういうことでしょうか。

珠川:私は持ってないので語れるものでもないんですけど…(笑)。「ひとつの個性」なのかな、と思っています。特別な能力とかではなくて、普通に、共感覚の方としては自分のアイデンティティのひとつという、ナチュラルに存在するものなのかな、と考えています。

茂木:なるほど、さすが芸術家ですね。
脳科学者として、科学的な“共感覚”の定義を補足させていただきますと…。普通、数字には色が付いていないんだけれども、「7は黄色」だとか「2は青」だとか、特定の数字や概念に色が感じられる方。こういう方は、生まれつき自分がそうだから他の人もそうなんだろうと思っていたら、実は自分だけがそうだったということが分かるそうで。「7が黄色」だという方は、「5+2」を見ても黄色だと感じるというようなことが“共感覚”。実は子供の時、みなさん共感覚を持っているんじゃないか、それが大人になるとそれが別れて行ってしまうんじゃないか、という説がある…これが共感覚なんですけど。

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茂木:共感覚に注目しようと思ったのは、何かきっかけがあったんですか?

珠川:共感覚のことを知ったのは結構最近ではあるんですけど、知った時に小説にしようと考えたわけではなかったんです。この『檸檬先生』の構想を考えていく中で、モチーフとして共感覚が出てきたと言いますか…。

茂木:そうなんですね。
小説の中では共感覚というものが、少年と檸檬先生を結びつける非常に大きな役割を果たしているわけですけど、書いていて「これは一番大事なことだな」と思ったのはどんなことでしょう?

珠川:共感覚だけではないんですけど、自分が知らないことに対して真摯に取り組むべきかな、と思っています。面白がって書いているわけではないし、ちゃんと向き合って、ちゃんと知って、それで作品にしていこうとは思いました。

茂木:なるほど…。本当に18歳ですよね(笑)?
“愛”というのも非常に大きなテーマになっていると思うんですけども、珠川さんにとって愛はどんなイメージですか?

珠川:必ずしも上手くいくものではないのかな、と。私自身は今すごく幸せで、家族とも友人ともいい関係を築けているんですけど、色んな人の愛の形というのは、考え方が人それぞれあって、「考え方の違いから上手くいかない愛」というのもあるのかな、と思って。それを描くことによって、「“愛”の形・存在の仕方」について考えて貰えればいいかなと思って、テーマにしたんです。

茂木:「少年と檸檬先生の“愛”」とは、何なんですかね?

珠川:共感覚とか周りの人たちとの関係性とか、すごく似ている点・共有している感覚を持ちつつも、「だんだんと“普通”の枠に入っていく少年」と、「“普通”になれなかった檸檬先生」という、対立する点があって。その中に、二人の自分を認めて愛してくれるというその存在が信じられるか・信じられないかというところが大きく分かれて来るのかな、と思いますね。

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講談社 公式ホームページ


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