2021年03月27日
「Dream Heart」は日本、そして世界で、挑戦をテーマにチャレンジしている人々を毎週ゲストに迎え、その挑戦に迫っていきますが、今週はスペシャルバージョン!
みなさんからお送りいただいたメッセージを、番組パーソナリティの茂木健一郎が、脳科学者として答えていきます!
──子供の才能を伸ばすには
茂木:まずは、こちらのメッセージからいってみましょう。北海道 ラジオネーム <ノブコリッチ>さんです。
いつも楽しく拝聴しています。
茂木さんが聞き手として、ゲストの方が毎回、本当に楽しそうにお話しされている様子が伝わり、聴き心地がとても良く、癒されています。
さて、私は現在2歳の娘の子育て中なのですが、子どもの才能を潰さずに伸ばしてあげたいと思っています。
脳科学的に、子どもにとってどの様に関わったり、声掛けをすると良いのか、アドバイスを頂けると幸いです。
茂木:ノブコリッチさん、本当に素敵なお母さんですね!
今、お子さんの脳の中では、毎日シナプスという神経細胞と神経細胞の間の繋がりが変わってるんですよ。だから、毎日変化していて成長している、一番大事な時期なんです。
この時に一番大事なのは、『お母様が見守ってあげること』なんです。
子供は、お母様が今自分を見てるということを分かってるんですね。そして、“見てもらっている”ということが、安全基地となって、色んなことに挑戦することができるんです。
ずっと見守ってるというのは案外難しいんですよ。ノブコリッチさんも、例えば家事でお皿洗いをしている時に「ママー」と言ったりした時、どうします? お皿洗いの家事を一時とめて、ちゃんとお子さんのところに行けるでしょうかね?
そういうことをやってあげると、実は、脳科学的にはお子様の脳が安全基地を感じて、「今お母さんが見守ってくれてる。ということは、ちょっとチャレンジして困ったりしても、助けてくれるかもしれないな」とか。
あとは、自分が何かチャレンジしていて、今までできなかったことができたり、気づかなかったことに気づいたりした時に、それを“お母さんが見てくれてる”ということで、喜びがさらに増します。脳の中にドーパミンという物質があるんですけど、このドーパミンがさらにたくさん出るようになっています。
あとは大事なのは、『アイコンタクト』ですね。お子様と目を合わせること。目を合わせることによって、ドーパミンが放出されるということが分かっているんです。
そして、『お子様の才能がどこにあるか?』というのは、これは『分からない』んです。
天才は、偶然に発見されます。
お子さんも、何に才能があるのか…それが、例えば、計算することが得意なのか、言葉が得意なのか、絵が得意なのか、音楽が得意なのか…分からないですよね。
ですから、お子さんに色々なことを体験していただいて、それをお母さんが、横からニコニコしながら見ていると、それが安全基地になって、お子さんが、何か「これがいい!」って分かる瞬間というのがあるんですよ。その時に、それが才能になる。
お子さんが楽しんでできることを、お母さんと一緒に、宝探しみたいに、宝箱を開けながら「これかな?」「それともこちらかな?」というふうにやっていって頂けると、きっとお子さんの才能がすくすくと育っていくのではないかな、と思います。
──進路の選び方
茂木:続いて、三重県 ラジオネーム <多肉植物>さんからのメッセージです。
初メールです!西野さんの300年後の壮大な夢がすごいと思いました。
正直に生きる、嘘をつかない!私の目標にしたいと思いました。
茂木さん、素敵なゲストを呼んで下さってありがとうございました。
ところで、私は今年、中学3年になり、進路で悩んでいます。
今は色んなことがやりたいので、高校は普通科に進もうか、それとも建築にも興味があるので、建築科のある高校にしようかと揺れています。
大学は行けたら行きたいです。
茂木さんは、進路で悩んだりしましたか? 是非聞かせて下さい。
茂木:僕も中学校の時は科学者になりたいと思っていました。当時は物理学をやろうと思っていたのかな? でも結局、今は脳科学をやっているじゃないですか。
だから、『やりことは変わっていく』んですよね。やりたいことは、正解ではなくて、『仮説』なんですよね。仮説ということは、「こうじゃないかな?」と思っているということで、それはこれから多肉植物さんが色んなことを勉強したり経験していく中で、仮説は変わっていくんです。
ですから、今の時点で建築をやりたいと思っていることは本当に素敵なことだと思うんですけど、それは仮説だから、本当に建築をやるか分からない。そうなったらそうなったで素敵だし、そうじゃない道を見つけたら、それはそれで素晴らしい人生だと思うんですよ。
僕は、知り合いに建築やっている方がたくさんいるんです。隈研吾さんや、伊東豊雄さんや、安藤忠雄さんとか。そういう方々とお話をしていると、『いい建築を作ろうと思ったら、色んなことを勉強していないと駄目』だな、ということが分かってくるんです。
建築と言うと、どうしても建物の構造がこうだとか、計算したりとか、設計図を書いたりというイメージがあると思うんですけど、今の建築は、“そこで人がどう生きるか”、“街づくりをどうするか”、“色んな文化や芸術などをどう取り入れていくか”と、そういう『総合芸術』と言うんでしょうか。人生の全てが建築に入ってくるんです。
もし、将来、多肉植物さんが建築家をやるとしても、どんな勉強も無駄にはならないし、むしろ、色んなことをやっている人の方が、いい建築を作れるんですね。
ですから、僕は、中学3年になられる今の時点だと…どうでしょう? 『普通科の高校に行っていれば、色んな勉強ができるし、もちろん大学の建築学科にも行けるし、いいのかな』、と思うんですよね。
建築というものに興味を持って、学校の勉強以外に色々学んだり、実際に建築を見に行ったりしていると、それが入口になって、色んなことに興味が移っていくかもしれないので、そこから、世界のことを学ぶ入口…ある意味では“魔法のドア”として、建築をお使いになったらいいのかな、と思います。
とりあえず、受験は大変だと思いますが、体調を崩さずに目標に向かって頑張ってくださいね!
──イライラした時は
茂木:続きまして、大分県 ラジオネーム かなで さんからのメッセージです。
ラジオをいつも楽しみにしています。
茂木先生に質問です。
コロナ禍でニュースなどをみていると、イライラした気持ちになってしまいます。
コロナをみんなで乗り越えていきたい気持ちはありますが、勝手なことをしたりする人の話題で気持ちが腐ってしまいます。
こんな時はどうしたらよいでしょうか…。
茂木:本当にそうですよね! 僕もイライラしたりすることもありますよ。かなでさんの気持ち、すっごく分かります!
一方で、人間の脳は、イライラしてると自分が損をしちゃうんですよ。勝手な行動をしている人のせいでかなでさんまでイライラして、脳がうまく働かなくなったら、残念な結果じゃないですか?
だから、なるべくイライラしない方がいいんですけど…2つポイントがあります。
1つは、イライラが原因となるストレスを溜めないための方法。
これは、『自分がコントロールできないことについては、諦める』と! これはすごく大事なんですよ。
自分が何かやろうと思っても、なかなか思う通りにいかないことにはイライラしちゃうんです。自分が他人に何かを言って、その人の行動を変えようとしても、他人の脳は別なのでなかなか変わらないですよね。
そういう、自分がコントロールできないことは、なるべく諦めるとか、余り見ないようにするとか。その分、自分の生活でベストを尽くしていくというのが、一番イライラやストレスを溜めない方法なんですよね。
もう1つ。そうは言ってもストレスが溜まっちゃうことがあるじゃないですか。
その時にどうすればいいかと言うと、僕がお勧めしているのが『歩くこと』。『走ること』。あるいは、『お風呂に入ってボーッとする』。
脳のディフォルトモードネットワークと言って、ぼんやりすると働く回路があるんですけど、この回路が溜まったイライラ・ストレスを、ぼんやりしている間に解消してくれます。
僕が一番お勧めするのは歩くことなんですけど、本当にご近所でいいので、目安としては30分ぐらいかな? ウォーキングとかをして頂くと、座禅をしてる時と同じように脳がリラックスして、ディフォルトモードネットワークという脳が整理をする回路が働いてくれて、イライラを解消してくれるということが脳科学の研究で分かっています。
だから、もしイライラを溜めてしまったら、散歩しませんか?(笑) あるいは、散歩するのにいいところがなかったら、ゆっくりお風呂に入って頂くとか、そういう形で頭を空っぽにして頂けると、自然に脳がイライラを解消する回路を働かせてくれる、と。
ぜひ参考になさってみてください。
●今夜、ご紹介したような、茂木さんへのご質問メールは、
すべてメッセージフォームにお送りください。
お待ちしております!
●無料音声配信アプリ「AuDee」では、
「茂木健一郎のポジティブ脳教室」を配信中です。
こちらでも、みなさんからのご質問にお答えしています。
(毎週・土曜日、夜10:30に更新)
●茂木健一郎(@kenichiromogi) Twitter
みなさんからお送りいただいたメッセージを、番組パーソナリティの茂木健一郎が、脳科学者として答えていきます!
──子供の才能を伸ばすには
茂木:まずは、こちらのメッセージからいってみましょう。北海道 ラジオネーム <ノブコリッチ>さんです。
いつも楽しく拝聴しています。
茂木さんが聞き手として、ゲストの方が毎回、本当に楽しそうにお話しされている様子が伝わり、聴き心地がとても良く、癒されています。
さて、私は現在2歳の娘の子育て中なのですが、子どもの才能を潰さずに伸ばしてあげたいと思っています。
脳科学的に、子どもにとってどの様に関わったり、声掛けをすると良いのか、アドバイスを頂けると幸いです。
茂木:ノブコリッチさん、本当に素敵なお母さんですね!
今、お子さんの脳の中では、毎日シナプスという神経細胞と神経細胞の間の繋がりが変わってるんですよ。だから、毎日変化していて成長している、一番大事な時期なんです。
この時に一番大事なのは、『お母様が見守ってあげること』なんです。
子供は、お母様が今自分を見てるということを分かってるんですね。そして、“見てもらっている”ということが、安全基地となって、色んなことに挑戦することができるんです。
ずっと見守ってるというのは案外難しいんですよ。ノブコリッチさんも、例えば家事でお皿洗いをしている時に「ママー」と言ったりした時、どうします? お皿洗いの家事を一時とめて、ちゃんとお子さんのところに行けるでしょうかね?
そういうことをやってあげると、実は、脳科学的にはお子様の脳が安全基地を感じて、「今お母さんが見守ってくれてる。ということは、ちょっとチャレンジして困ったりしても、助けてくれるかもしれないな」とか。
あとは、自分が何かチャレンジしていて、今までできなかったことができたり、気づかなかったことに気づいたりした時に、それを“お母さんが見てくれてる”ということで、喜びがさらに増します。脳の中にドーパミンという物質があるんですけど、このドーパミンがさらにたくさん出るようになっています。
あとは大事なのは、『アイコンタクト』ですね。お子様と目を合わせること。目を合わせることによって、ドーパミンが放出されるということが分かっているんです。
そして、『お子様の才能がどこにあるか?』というのは、これは『分からない』んです。
天才は、偶然に発見されます。
お子さんも、何に才能があるのか…それが、例えば、計算することが得意なのか、言葉が得意なのか、絵が得意なのか、音楽が得意なのか…分からないですよね。
ですから、お子さんに色々なことを体験していただいて、それをお母さんが、横からニコニコしながら見ていると、それが安全基地になって、お子さんが、何か「これがいい!」って分かる瞬間というのがあるんですよ。その時に、それが才能になる。
お子さんが楽しんでできることを、お母さんと一緒に、宝探しみたいに、宝箱を開けながら「これかな?」「それともこちらかな?」というふうにやっていって頂けると、きっとお子さんの才能がすくすくと育っていくのではないかな、と思います。
──進路の選び方
茂木:続いて、三重県 ラジオネーム <多肉植物>さんからのメッセージです。
初メールです!西野さんの300年後の壮大な夢がすごいと思いました。
正直に生きる、嘘をつかない!私の目標にしたいと思いました。
茂木さん、素敵なゲストを呼んで下さってありがとうございました。
ところで、私は今年、中学3年になり、進路で悩んでいます。
今は色んなことがやりたいので、高校は普通科に進もうか、それとも建築にも興味があるので、建築科のある高校にしようかと揺れています。
大学は行けたら行きたいです。
茂木さんは、進路で悩んだりしましたか? 是非聞かせて下さい。
茂木:僕も中学校の時は科学者になりたいと思っていました。当時は物理学をやろうと思っていたのかな? でも結局、今は脳科学をやっているじゃないですか。
だから、『やりことは変わっていく』んですよね。やりたいことは、正解ではなくて、『仮説』なんですよね。仮説ということは、「こうじゃないかな?」と思っているということで、それはこれから多肉植物さんが色んなことを勉強したり経験していく中で、仮説は変わっていくんです。
ですから、今の時点で建築をやりたいと思っていることは本当に素敵なことだと思うんですけど、それは仮説だから、本当に建築をやるか分からない。そうなったらそうなったで素敵だし、そうじゃない道を見つけたら、それはそれで素晴らしい人生だと思うんですよ。
僕は、知り合いに建築やっている方がたくさんいるんです。隈研吾さんや、伊東豊雄さんや、安藤忠雄さんとか。そういう方々とお話をしていると、『いい建築を作ろうと思ったら、色んなことを勉強していないと駄目』だな、ということが分かってくるんです。
建築と言うと、どうしても建物の構造がこうだとか、計算したりとか、設計図を書いたりというイメージがあると思うんですけど、今の建築は、“そこで人がどう生きるか”、“街づくりをどうするか”、“色んな文化や芸術などをどう取り入れていくか”と、そういう『総合芸術』と言うんでしょうか。人生の全てが建築に入ってくるんです。
もし、将来、多肉植物さんが建築家をやるとしても、どんな勉強も無駄にはならないし、むしろ、色んなことをやっている人の方が、いい建築を作れるんですね。
ですから、僕は、中学3年になられる今の時点だと…どうでしょう? 『普通科の高校に行っていれば、色んな勉強ができるし、もちろん大学の建築学科にも行けるし、いいのかな』、と思うんですよね。
建築というものに興味を持って、学校の勉強以外に色々学んだり、実際に建築を見に行ったりしていると、それが入口になって、色んなことに興味が移っていくかもしれないので、そこから、世界のことを学ぶ入口…ある意味では“魔法のドア”として、建築をお使いになったらいいのかな、と思います。
とりあえず、受験は大変だと思いますが、体調を崩さずに目標に向かって頑張ってくださいね!
──イライラした時は
茂木:続きまして、大分県 ラジオネーム かなで さんからのメッセージです。
ラジオをいつも楽しみにしています。
茂木先生に質問です。
コロナ禍でニュースなどをみていると、イライラした気持ちになってしまいます。
コロナをみんなで乗り越えていきたい気持ちはありますが、勝手なことをしたりする人の話題で気持ちが腐ってしまいます。
こんな時はどうしたらよいでしょうか…。
茂木:本当にそうですよね! 僕もイライラしたりすることもありますよ。かなでさんの気持ち、すっごく分かります!
一方で、人間の脳は、イライラしてると自分が損をしちゃうんですよ。勝手な行動をしている人のせいでかなでさんまでイライラして、脳がうまく働かなくなったら、残念な結果じゃないですか?
だから、なるべくイライラしない方がいいんですけど…2つポイントがあります。
1つは、イライラが原因となるストレスを溜めないための方法。
これは、『自分がコントロールできないことについては、諦める』と! これはすごく大事なんですよ。
自分が何かやろうと思っても、なかなか思う通りにいかないことにはイライラしちゃうんです。自分が他人に何かを言って、その人の行動を変えようとしても、他人の脳は別なのでなかなか変わらないですよね。
そういう、自分がコントロールできないことは、なるべく諦めるとか、余り見ないようにするとか。その分、自分の生活でベストを尽くしていくというのが、一番イライラやストレスを溜めない方法なんですよね。
もう1つ。そうは言ってもストレスが溜まっちゃうことがあるじゃないですか。
その時にどうすればいいかと言うと、僕がお勧めしているのが『歩くこと』。『走ること』。あるいは、『お風呂に入ってボーッとする』。
脳のディフォルトモードネットワークと言って、ぼんやりすると働く回路があるんですけど、この回路が溜まったイライラ・ストレスを、ぼんやりしている間に解消してくれます。
僕が一番お勧めするのは歩くことなんですけど、本当にご近所でいいので、目安としては30分ぐらいかな? ウォーキングとかをして頂くと、座禅をしてる時と同じように脳がリラックスして、ディフォルトモードネットワークという脳が整理をする回路が働いてくれて、イライラを解消してくれるということが脳科学の研究で分かっています。
だから、もしイライラを溜めてしまったら、散歩しませんか?(笑) あるいは、散歩するのにいいところがなかったら、ゆっくりお風呂に入って頂くとか、そういう形で頭を空っぽにして頂けると、自然に脳がイライラを解消する回路を働かせてくれる、と。
ぜひ参考になさってみてください。
●今夜、ご紹介したような、茂木さんへのご質問メールは、
すべてメッセージフォームにお送りください。
お待ちしております!
●無料音声配信アプリ「AuDee」では、
「茂木健一郎のポジティブ脳教室」を配信中です。
こちらでも、みなさんからのご質問にお答えしています。
(毎週・土曜日、夜10:30に更新)
●茂木健一郎(@kenichiromogi) Twitter