2021年03月20日
尾崎さんは、1984年東京都のお生まれ。
2001年結成のロックバンド「クリープハイプ」の
ヴォーカルとギターを担当されていらっしゃいます。
2012年、アルバム「死ぬまで一生愛されてると思ってたよ」で、メジャーデビュー。
また、2016年には、初の小説「祐介」を書き下ろしで刊行。
その他、ご著書に、「苦汁100%」「苦汁200%」、
「泣きたくなるほど嬉しい日々に」などがございます。
そして、先月の29日に新潮社より刊行された、
尾崎さんにとって初の純文学作品『母影(おもかげ)』は、
第164回芥川賞にノミネートされ話題となりました。
──歌えなくなったからこそ生まれたこと
茂木:バンド「クリープハイプ」としてメジャーデビューしてからは、楽曲としては順調だったじゃないですか。
尾崎:最初はそうだったんですけど…。茂木さんに聞きたいことがあるんです。
そもそも、音楽を最初は楽しくやっていたんですよ。メジャーデビューまでは、自分から曲も作っていました。それでレコーディングしたいと思ったらレコーディングをして、ライブでどんどん新曲を披露して、それを育てて行って…という流れだったんですけど。
急に向こうから「いつまでに作りなさい」ということになったんですよ。「ライブもこれだけやるから」ということで、どんどん決まっていって、それを最初は嬉しかったんですけど、なかなか追いつけなくなった瞬間があったんです。そこから“歌が上手く歌えなくなる”ということが始まったんですよ。もう7年ぐらい前なんですけど。
頭では思ってるんだけど、うまく連動しないというか、自分の理想のメロディの流れがあるんだけど、首がぐっと閉まって声が出て来なくなる、ということが続いて、それでだいぶ悩んでいたんです。喉を診てもらっても異常がないので、気功に行ったり、ちょっと怪しいところにも行ってみたりして、それでもどうしようもなくて、バンドを辞めるかどうかというところまで、何回も話し合いをしていたんですよ。
そういう時に、たまたま「小説を書きませんか?」と言われて小説を書いたというのがあって。他の表現をすることで、そこである種救われました。
自分が小説を書いていて、上手くいかない、難しくて、かなり厳しい評価もされる中でやるというのは、音楽とも繋がっていると言うか。もともと音楽をやっていても、いまだに“思ったように歌えない”ということが続いているんです。
茂木:ええ、そうなんですか?
尾崎:そうなんです。『母影(おもかげ)』では、“読めるけど書けない”というテーマとか、“語彙の少ない子供の視点で書く”というのも、今の音楽活動に近いところがあって、不自由がずっとあるんですよ。
それを色々調べたら、「脳の回路」とも関係があると分かってきたんですけど…。それはどうなのかな? と思って…(笑)。
茂木:「困難を抱えている人ほど、それを乗り越えようとするとすごくクリエイティブになる」という。
良く挙げられるのは、アインシュタインです。アインシュタインは、子供の頃に言葉をしゃべるのがかなり苦手で、5歳までしゃべらなかったらしいんですよ。それを乗り越えようとして空間のイメージとか色々考えていたのが、『相対性理論』を作る天才的なことになったんじゃないか、と言われているんです。
だから、尾崎さんの作品や、言われていることを拝見していると、「ブロック」と言うか、上手く出せない感覚がありますよね。
尾崎:はい。それが常にあって、あるからこそ生まれているということですね。
でも確かに、そうなる前にも、別の「ブロック」があったはずなんですよ。もし何もなかったら、今続けているかの保証はないですよね。
すごく気にするようになったんです。上手くいかない分、他の悪い要素をどんどん潰そうとして努力するようになったし。だから、歌えなくなったことによって、前よりも確実に“歌う”ということには執着しているんです。それでまた、小説という新しい表現にも辿り着きました。
──10代の頃と同じ距離感
茂木:“自分と向き合う”ということで、「エゴサーチ」をするという噂があるんですけど、されるんですか?
尾崎:はい、しますね(笑)。もう辞めたいんですけど、どうしたら辞められますかね?
茂木:いいことも書かれているけど…?
尾崎:いいことも書かれているんですけど、いいことはすぐ消えて、悪いことだけに引っ張られてしまうんです。
茂木:たまたま目にした悪いことが残る? その時はどんな気持ちになるんですか?
尾崎:単純に傷つきますね。苦しくなると言うか。“何でこんなこと言うのかな?”と思って、その人のアカウントを全部見て、何でこんなことを言うのかを納得するまで見て、納得したら次に行きますね。
茂木:(笑)。そうなんですか…!
でも、尾崎さんはそれをクリエイティブに活かしている気がするんですけどね。
尾崎:それはありますね。エネルギーとして使っています。でも、それもだんだん苦しくなってきましたね。
茂木:でも、逆に言うと、クリープハイプはメジャーなバンドになっているし、今回『母影(おもかげ)』が芥川賞の候補になっているわけですから、だんだん、自分が望めば傷つかないポジションにも行けるじゃないですか。それは、クリエイターとしてどうなんですかね?
尾崎:ああ、そうですね。それが、自分は恥ずかしさがあると言うか、無理なんですよね。「ここだよ」という防空壕みたいなものはあるんですけど、そこに入らないですね。何か入れないんですよね。
茂木:『祐介』にも出てきましたけど、自分が何者でもなかった頃の気持ちがずっとあるということですか?
尾崎:ずっとあるし、そのまま上がっていくと言うか。その頃から比べたら、今はとんでもなくありがたい場所にいられているんですけど、でもそこに行ったらそこに行ったで、同じだけ溝があるんです。レベルが高いところに行けばそれなりに自分が通用しないので、10代の駄目だった時と全く同じなんですよね。
何も変わらないまま、景色だけが変わるということですね。
茂木:あぁ…! 恐らく、今リスナーの中で「尾崎世界観さんのそういうところが好きなの!」と言っている方がたくさんいると思うんですけど、ファンはそこら辺を見ているんじゃないかな?
尾崎:それは、自分もそうなんですよね。「この人、理想と現実の距離感が縮まっちゃってるな」という人はいるんですよ。
それこそ『母影(おもかげ)』は「影」がテーマですけど、どこまで行ってもずっと、同じだけの距離感を保っていられるようにはしたいですね。
■プレゼントのお知らせ
今夜のゲスト、クリープハイプの尾崎世界観さんのご著書
『母影(おもかげ)』に、尾崎さんの直筆サインを入れて、
3名の方にプレゼントいたします。
ご希望の方は、お名前やご住所、電話番号など、必要事項を明記の上、
メッセージフォームより、ご応募ください。
茂木さんに聞きたい事や相談したい事など、
一緒にを添えていただけると嬉しいです。
尚、当選者の発表は、
商品の発送をもってかえさせていただきます。
たくさんのご応募、お待ちしております。
●クリープハイプ オフィシャルサイト
●クリープハイプ (@creephyp)Twitter
●尾崎世界観(@ozakisekaikan) Twitter
●母影(おもかげ) / 尾崎世界観
(Amazon)
2001年結成のロックバンド「クリープハイプ」の
ヴォーカルとギターを担当されていらっしゃいます。
2012年、アルバム「死ぬまで一生愛されてると思ってたよ」で、メジャーデビュー。
また、2016年には、初の小説「祐介」を書き下ろしで刊行。
その他、ご著書に、「苦汁100%」「苦汁200%」、
「泣きたくなるほど嬉しい日々に」などがございます。
そして、先月の29日に新潮社より刊行された、
尾崎さんにとって初の純文学作品『母影(おもかげ)』は、
第164回芥川賞にノミネートされ話題となりました。
──歌えなくなったからこそ生まれたこと
茂木:バンド「クリープハイプ」としてメジャーデビューしてからは、楽曲としては順調だったじゃないですか。
尾崎:最初はそうだったんですけど…。茂木さんに聞きたいことがあるんです。
そもそも、音楽を最初は楽しくやっていたんですよ。メジャーデビューまでは、自分から曲も作っていました。それでレコーディングしたいと思ったらレコーディングをして、ライブでどんどん新曲を披露して、それを育てて行って…という流れだったんですけど。
急に向こうから「いつまでに作りなさい」ということになったんですよ。「ライブもこれだけやるから」ということで、どんどん決まっていって、それを最初は嬉しかったんですけど、なかなか追いつけなくなった瞬間があったんです。そこから“歌が上手く歌えなくなる”ということが始まったんですよ。もう7年ぐらい前なんですけど。
頭では思ってるんだけど、うまく連動しないというか、自分の理想のメロディの流れがあるんだけど、首がぐっと閉まって声が出て来なくなる、ということが続いて、それでだいぶ悩んでいたんです。喉を診てもらっても異常がないので、気功に行ったり、ちょっと怪しいところにも行ってみたりして、それでもどうしようもなくて、バンドを辞めるかどうかというところまで、何回も話し合いをしていたんですよ。
そういう時に、たまたま「小説を書きませんか?」と言われて小説を書いたというのがあって。他の表現をすることで、そこである種救われました。
自分が小説を書いていて、上手くいかない、難しくて、かなり厳しい評価もされる中でやるというのは、音楽とも繋がっていると言うか。もともと音楽をやっていても、いまだに“思ったように歌えない”ということが続いているんです。
茂木:ええ、そうなんですか?
尾崎:そうなんです。『母影(おもかげ)』では、“読めるけど書けない”というテーマとか、“語彙の少ない子供の視点で書く”というのも、今の音楽活動に近いところがあって、不自由がずっとあるんですよ。
それを色々調べたら、「脳の回路」とも関係があると分かってきたんですけど…。それはどうなのかな? と思って…(笑)。
茂木:「困難を抱えている人ほど、それを乗り越えようとするとすごくクリエイティブになる」という。
良く挙げられるのは、アインシュタインです。アインシュタインは、子供の頃に言葉をしゃべるのがかなり苦手で、5歳までしゃべらなかったらしいんですよ。それを乗り越えようとして空間のイメージとか色々考えていたのが、『相対性理論』を作る天才的なことになったんじゃないか、と言われているんです。
だから、尾崎さんの作品や、言われていることを拝見していると、「ブロック」と言うか、上手く出せない感覚がありますよね。
尾崎:はい。それが常にあって、あるからこそ生まれているということですね。
でも確かに、そうなる前にも、別の「ブロック」があったはずなんですよ。もし何もなかったら、今続けているかの保証はないですよね。
すごく気にするようになったんです。上手くいかない分、他の悪い要素をどんどん潰そうとして努力するようになったし。だから、歌えなくなったことによって、前よりも確実に“歌う”ということには執着しているんです。それでまた、小説という新しい表現にも辿り着きました。
──10代の頃と同じ距離感
茂木:“自分と向き合う”ということで、「エゴサーチ」をするという噂があるんですけど、されるんですか?
尾崎:はい、しますね(笑)。もう辞めたいんですけど、どうしたら辞められますかね?
茂木:いいことも書かれているけど…?
尾崎:いいことも書かれているんですけど、いいことはすぐ消えて、悪いことだけに引っ張られてしまうんです。
茂木:たまたま目にした悪いことが残る? その時はどんな気持ちになるんですか?
尾崎:単純に傷つきますね。苦しくなると言うか。“何でこんなこと言うのかな?”と思って、その人のアカウントを全部見て、何でこんなことを言うのかを納得するまで見て、納得したら次に行きますね。
茂木:(笑)。そうなんですか…!
でも、尾崎さんはそれをクリエイティブに活かしている気がするんですけどね。
尾崎:それはありますね。エネルギーとして使っています。でも、それもだんだん苦しくなってきましたね。
茂木:でも、逆に言うと、クリープハイプはメジャーなバンドになっているし、今回『母影(おもかげ)』が芥川賞の候補になっているわけですから、だんだん、自分が望めば傷つかないポジションにも行けるじゃないですか。それは、クリエイターとしてどうなんですかね?
尾崎:ああ、そうですね。それが、自分は恥ずかしさがあると言うか、無理なんですよね。「ここだよ」という防空壕みたいなものはあるんですけど、そこに入らないですね。何か入れないんですよね。
茂木:『祐介』にも出てきましたけど、自分が何者でもなかった頃の気持ちがずっとあるということですか?
尾崎:ずっとあるし、そのまま上がっていくと言うか。その頃から比べたら、今はとんでもなくありがたい場所にいられているんですけど、でもそこに行ったらそこに行ったで、同じだけ溝があるんです。レベルが高いところに行けばそれなりに自分が通用しないので、10代の駄目だった時と全く同じなんですよね。
何も変わらないまま、景色だけが変わるということですね。
茂木:あぁ…! 恐らく、今リスナーの中で「尾崎世界観さんのそういうところが好きなの!」と言っている方がたくさんいると思うんですけど、ファンはそこら辺を見ているんじゃないかな?
尾崎:それは、自分もそうなんですよね。「この人、理想と現実の距離感が縮まっちゃってるな」という人はいるんですよ。
それこそ『母影(おもかげ)』は「影」がテーマですけど、どこまで行ってもずっと、同じだけの距離感を保っていられるようにはしたいですね。
■プレゼントのお知らせ
今夜のゲスト、クリープハイプの尾崎世界観さんのご著書
『母影(おもかげ)』に、尾崎さんの直筆サインを入れて、
3名の方にプレゼントいたします。
ご希望の方は、お名前やご住所、電話番号など、必要事項を明記の上、
メッセージフォームより、ご応募ください。
茂木さんに聞きたい事や相談したい事など、
一緒にを添えていただけると嬉しいです。
尚、当選者の発表は、
商品の発送をもってかえさせていただきます。
たくさんのご応募、お待ちしております。
●クリープハイプ オフィシャルサイト
●クリープハイプ (@creephyp)Twitter
●尾崎世界観(@ozakisekaikan) Twitter
●母影(おもかげ) / 尾崎世界観
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