2020年12月26日
12月25日(金)から、俳優・吉沢亮さん主演の映画、
『AWAKE』が全国で順次公開となりました。
この映画は、最高将棋ソフトの開発者をモデルにしています。
そこで、今夜のDreamHEARTは、この映画『AWAKE』に注目すべく、
実際に、将棋ソフトを開発されていらっしゃる、杉村達也さんをお迎えし、
コンピュータ将棋の魅力について、語り合っていきます。
──棋士もAIも尊重した映画『AWAKE』
茂木:杉村達也さんが開発したソフト「水匠」が世界一になったということですけど。
そんなすごい杉村さんじゃないと語れない、この映画『AWAKE』のモデルになった巨瀬亮一さんですが、この方もすごい方なんですか?
杉村:この方はすごい方です! 将棋の奨励会に入会して、それを退会された後にコンピュータ将棋を開発したという方ですから。
茂木:この奨励会というのは、プロになる一歩手前まで行って、それから逆にコンピュータ将棋の方に行った方なんですね。
杉村:その通りですね。
茂木:杉村さんは、この映画『AWAKE』は、どうご覧になりました?
杉村:コンピュータ将棋の開発側を取り上げていただけるのはとても珍しいことだと思うんです。
大体「将棋の棋士」対「コンピュータ将棋・AI」となると、“将棋の棋士側を応援しよう”“AI側は敵だ!”みたいな形になりがちなんですけども、こちらはどちらも尊重していただきつつ、コンピュータ将棋の開発者の方に主点を置いていただいて、とても面白い映画になっているかな、と思っています。
茂木:あまり言うとネタバレになってしまうんですが、人間とプログラムの対決における、ああいう時は、開発者としてはどうなんですか?
杉村:プログラムは我が子のように育てて、最初の弱い時から知っているので…弱いところから強くなって、それで送り出すわけなので、“ちゃんと指すかなぁ?”とか“どうなるかなぁ?”みたいな、そういう形で見守っています。
茂木:(笑)。 そういう目線で見ているんですね。
茂木:映画で、プログラム開発部屋の雑然とした雰囲気はなかなかリアルだったと思うんですけど、吉沢さんはどうですか? オタクっぽかったですか?
杉村:実際にテレビで観るととってもかっこいい方なんですけど、映画の中では、“役に徹してたな”、“さすが、すごいな!”と。
茂木:オタク出してた? さすが吉沢さん!
ちなみに、杉村さんもあまりオタクっぽくはないですね。どちらかと言うと爽やかな…。
杉村:そうですね。仕事柄爽やか風を出さないと、という形で(笑)。根は完全にオタクなんですけど。
茂木:と言うか、オタクが爽やかじゃないと言っているんじゃないんですけどね(笑)。
ただ、コンピュータ将棋の開発者の方を見ると、かなり濃い感じですよね。
杉村:そうですね。皆さん、一癖・二癖ありますよね。
茂木:その辺りを、吉沢さんは今回の『AWAKE』で随分良く出されていましたよね。
杉村:いやもう、“さすがだな”と思いますよね。
──オープンソースで競い合う
茂木:あと、ぜひ教えて頂きたいんですけど、開発者同士で助け合っている部分もあるんですか。この「オープンソース」というのは、どういうことなんですか?
杉村:オープンソースというのは、自分の作ったプログラムのコード…つまり設計図を、そのまま公開することなんです。
茂木:ということは、杉村さんのこの「水匠」も、何か他のソフトを参考にしたりとか、使ったりされてるんですか?
杉村:その通りです。私が一番使ってるのは、「やねうら王」というソフト。そのオープンソースを使わせて頂いて、そこから工夫をして強くしていく、という形でやっています。
茂木:すごく面白いなと思うんですけど、今はもう、コンピュータと人間だと、コンピュータが圧勝だと。ということは、杉村さんたちは「コンピュータ将棋の中で最強がどこか」ということを競い合ってるわけじゃないですか。でも、手の内を見せるんですね。
杉村:そうなんです。それはコンピュータ将棋界のいいところだと思うんですけれども。
最初に情報を公開してくれた「Bonanza」というソフトがございまして、その「Bonanza」が素晴らしい出来で、しかもこんなに強いのに全部公開してくれた、と。
それを使って工夫したソフトというのは、やはり公開しようじゃないか、という形で、公開していくという風潮がコンピュータ将棋業界にはありますね。
茂木:お互い手の内を見せて、やり方も“どうぞ、もし良かったら使ってください”と言いながら、競い合っている。すごくかっこいい人たちじゃないですか!
杉村:1年に1回…最近は半年に1回になったんですけど、コンピュータ将棋大会があるので、その半年間に新たな工夫を誰かが見つけて発表する。それで強くなったら、その人がまた“こういう工夫をやりました”と発表して、それを真似しつつまた新たな工夫を…という形で、どんどんレベルアップしていくんです。
茂木:お互いに助け合って能力を高めていく、というのは、世の中みんなそうできたらいいですね。
杉村さんは世界最強ソフトを作られたわけですけど、ご自身で「ここが一番大事な工夫だった」というのは、どこら辺ですか?
杉村:工夫については、失敗もたくさんあるんですけれども…。
成功したところと言えば、将棋のプログラムというのは、「この局面は勝ちだよ」とか「この局面が負けだよ」ということを、ソフトに学習させて強くしていくものなんですけれども。勝った棋譜としても、強いソフトが指した棋譜の方が当然良くて、強いソフトが指した棋譜の中でも、一番質のいい局面を集めた方が強くなるということがわかってるんです。
「どの局面を勉強させれば一番強くなるのか」というところが、一番工夫しましたね。
茂木:「人工知能にどういうお手本を見せるか?」というところを工夫された、と。
杉村:その通りです。
茂木:人間と人工知能は、今後どうなっていきますかね? これからの生活において、人工知能はこうやって活かしたらいいんじゃないか、というヒントみたいなものはありますか?
杉村:将棋AIもそうですけど、“AIが仕事を奪うんじゃないか”とか、いろいろ言われているところがあると思うんですが。ただ、「自分が仕事をしていくにあたって手助けになる」ということの方が、まずは絶対に多いと思うんです。
しかも、AIを使って自分も勉強して、それで自分の実力も上がるというのは、他のお仕事でもいろいろあると思うので、そうやって共存の時代が必ず来ると言うか、そこから始まるんじゃないかな、と思っています。
茂木:AIが人間よりも遥かに強くなってしまった将棋も、むしろ人気が高まって、将棋の棋士の仕事は増えてますもんね。しかも、将棋の棋士は、AIを使って強くなってきている? これはヒントになりますね!
杉村:その通りですね。
茂木:現在、俳優・吉沢亮さんが主演の映画『AWAKE』が公開されています。将棋を舞台に、人工知能と人間の関係を描いた、本当に面白い映画です。公開されている劇場など、詳しい情報は公式サイトをご覧ください。
●12/25(金)から全国順次公開!俳優・吉沢亮さん主演映画『AWAKE』公式サイト
●映画『AWAKE』公式(@awake_eiga2020)Twitter
●杉村達也 / たややん@水匠(COM将棋) (@tayayan_ts) Twitter
●杉村達也 / たややん オフィシャルブログ
『AWAKE』が全国で順次公開となりました。
この映画は、最高将棋ソフトの開発者をモデルにしています。
そこで、今夜のDreamHEARTは、この映画『AWAKE』に注目すべく、
実際に、将棋ソフトを開発されていらっしゃる、杉村達也さんをお迎えし、
コンピュータ将棋の魅力について、語り合っていきます。
──棋士もAIも尊重した映画『AWAKE』
茂木:杉村達也さんが開発したソフト「水匠」が世界一になったということですけど。
そんなすごい杉村さんじゃないと語れない、この映画『AWAKE』のモデルになった巨瀬亮一さんですが、この方もすごい方なんですか?
杉村:この方はすごい方です! 将棋の奨励会に入会して、それを退会された後にコンピュータ将棋を開発したという方ですから。
茂木:この奨励会というのは、プロになる一歩手前まで行って、それから逆にコンピュータ将棋の方に行った方なんですね。
杉村:その通りですね。
茂木:杉村さんは、この映画『AWAKE』は、どうご覧になりました?
杉村:コンピュータ将棋の開発側を取り上げていただけるのはとても珍しいことだと思うんです。
大体「将棋の棋士」対「コンピュータ将棋・AI」となると、“将棋の棋士側を応援しよう”“AI側は敵だ!”みたいな形になりがちなんですけども、こちらはどちらも尊重していただきつつ、コンピュータ将棋の開発者の方に主点を置いていただいて、とても面白い映画になっているかな、と思っています。
茂木:あまり言うとネタバレになってしまうんですが、人間とプログラムの対決における、ああいう時は、開発者としてはどうなんですか?
杉村:プログラムは我が子のように育てて、最初の弱い時から知っているので…弱いところから強くなって、それで送り出すわけなので、“ちゃんと指すかなぁ?”とか“どうなるかなぁ?”みたいな、そういう形で見守っています。
茂木:(笑)。 そういう目線で見ているんですね。
茂木:映画で、プログラム開発部屋の雑然とした雰囲気はなかなかリアルだったと思うんですけど、吉沢さんはどうですか? オタクっぽかったですか?
杉村:実際にテレビで観るととってもかっこいい方なんですけど、映画の中では、“役に徹してたな”、“さすが、すごいな!”と。
茂木:オタク出してた? さすが吉沢さん!
ちなみに、杉村さんもあまりオタクっぽくはないですね。どちらかと言うと爽やかな…。
杉村:そうですね。仕事柄爽やか風を出さないと、という形で(笑)。根は完全にオタクなんですけど。
茂木:と言うか、オタクが爽やかじゃないと言っているんじゃないんですけどね(笑)。
ただ、コンピュータ将棋の開発者の方を見ると、かなり濃い感じですよね。
杉村:そうですね。皆さん、一癖・二癖ありますよね。
茂木:その辺りを、吉沢さんは今回の『AWAKE』で随分良く出されていましたよね。
杉村:いやもう、“さすがだな”と思いますよね。
──オープンソースで競い合う
茂木:あと、ぜひ教えて頂きたいんですけど、開発者同士で助け合っている部分もあるんですか。この「オープンソース」というのは、どういうことなんですか?
杉村:オープンソースというのは、自分の作ったプログラムのコード…つまり設計図を、そのまま公開することなんです。
茂木:ということは、杉村さんのこの「水匠」も、何か他のソフトを参考にしたりとか、使ったりされてるんですか?
杉村:その通りです。私が一番使ってるのは、「やねうら王」というソフト。そのオープンソースを使わせて頂いて、そこから工夫をして強くしていく、という形でやっています。
茂木:すごく面白いなと思うんですけど、今はもう、コンピュータと人間だと、コンピュータが圧勝だと。ということは、杉村さんたちは「コンピュータ将棋の中で最強がどこか」ということを競い合ってるわけじゃないですか。でも、手の内を見せるんですね。
杉村:そうなんです。それはコンピュータ将棋界のいいところだと思うんですけれども。
最初に情報を公開してくれた「Bonanza」というソフトがございまして、その「Bonanza」が素晴らしい出来で、しかもこんなに強いのに全部公開してくれた、と。
それを使って工夫したソフトというのは、やはり公開しようじゃないか、という形で、公開していくという風潮がコンピュータ将棋業界にはありますね。
茂木:お互い手の内を見せて、やり方も“どうぞ、もし良かったら使ってください”と言いながら、競い合っている。すごくかっこいい人たちじゃないですか!
杉村:1年に1回…最近は半年に1回になったんですけど、コンピュータ将棋大会があるので、その半年間に新たな工夫を誰かが見つけて発表する。それで強くなったら、その人がまた“こういう工夫をやりました”と発表して、それを真似しつつまた新たな工夫を…という形で、どんどんレベルアップしていくんです。
茂木:お互いに助け合って能力を高めていく、というのは、世の中みんなそうできたらいいですね。
杉村さんは世界最強ソフトを作られたわけですけど、ご自身で「ここが一番大事な工夫だった」というのは、どこら辺ですか?
杉村:工夫については、失敗もたくさんあるんですけれども…。
成功したところと言えば、将棋のプログラムというのは、「この局面は勝ちだよ」とか「この局面が負けだよ」ということを、ソフトに学習させて強くしていくものなんですけれども。勝った棋譜としても、強いソフトが指した棋譜の方が当然良くて、強いソフトが指した棋譜の中でも、一番質のいい局面を集めた方が強くなるということがわかってるんです。
「どの局面を勉強させれば一番強くなるのか」というところが、一番工夫しましたね。
茂木:「人工知能にどういうお手本を見せるか?」というところを工夫された、と。
杉村:その通りです。
茂木:人間と人工知能は、今後どうなっていきますかね? これからの生活において、人工知能はこうやって活かしたらいいんじゃないか、というヒントみたいなものはありますか?
杉村:将棋AIもそうですけど、“AIが仕事を奪うんじゃないか”とか、いろいろ言われているところがあると思うんですが。ただ、「自分が仕事をしていくにあたって手助けになる」ということの方が、まずは絶対に多いと思うんです。
しかも、AIを使って自分も勉強して、それで自分の実力も上がるというのは、他のお仕事でもいろいろあると思うので、そうやって共存の時代が必ず来ると言うか、そこから始まるんじゃないかな、と思っています。
茂木:AIが人間よりも遥かに強くなってしまった将棋も、むしろ人気が高まって、将棋の棋士の仕事は増えてますもんね。しかも、将棋の棋士は、AIを使って強くなってきている? これはヒントになりますね!
杉村:その通りですね。
茂木:現在、俳優・吉沢亮さんが主演の映画『AWAKE』が公開されています。将棋を舞台に、人工知能と人間の関係を描いた、本当に面白い映画です。公開されている劇場など、詳しい情報は公式サイトをご覧ください。
●12/25(金)から全国順次公開!俳優・吉沢亮さん主演映画『AWAKE』公式サイト
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●杉村達也 / たややん@水匠(COM将棋) (@tayayan_ts) Twitter
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