2020年08月15日
ブレイディみかこさんは、1965年、福岡県福岡市のお生まれです。
音楽好きが高じてアルバイトとイギリスへの渡航を繰り返し、
1996年からは、イギリスのブライトンにお住まいでいらっしゃいます。
ロンドンの日系企業で数年間勤務したのち、イギリスで保育士の資格を取得。
イギリスの「最底辺保育所」で働きながら、ライター活動を開始されます。
そして2017年に刊行された、『子どもたちの階級闘争』で、
第16回新潮ドキュメント賞を受賞。
2019年には、『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』で、
第73回毎日出版文化賞特別賞、
第2回Yahoo!ニュース本屋大賞 ノンフィクション本大賞、
第7回ブクログ大賞を受賞され、大きな話題と集めました。
そして、現在、『ワイルドサイドをほっつき歩け―ハマータウンのおっさんたち』を
筑摩書房より発売されていらっしゃいます。
──生きづらくなったおっさんたち
茂木:ものすごくオリジナリティが高いと思うのは、今、フェミニズム的な考え方でいろいろ“おっさんたちはどうも肩身が狭い”という中で、この本の温かい目線はすごくユニークな気がしたんです。しかもおっさんたちの悪いところを、「いいよ」と言ってるわけではなく…。これはすごくないですか?
ブレイディ:どうなんでしょうね? これは、EU離脱でイギリスがごちゃごちゃして…もうあの投票が4年前になりますかね。それから3年半ぐらいすごく揺れたじゃないですか。私は残留派(若者が多い)と離脱派(中高齢が多い)の石を投げ合う感じを見て「本当に不毛だな」と。
私も民主主義というのはすごく話し合って、お互いに妥協し、譲るところは譲ったりしながら、落としどころを見つけるということだと思うんですよ。それをすっかり忘れてると言うか、残留派と離脱派が本当に石を投げ合って、勝つことしか考えてない。言い負かして勝つことで、自分たちのしたいようにすることしか考えてなくて、対話がないんです。あれが一番民主主義に反してると言うか、民主主義というのは落としどころが付くまで話し合って決めることなんですよね。
私はイギリスの人たちが話し合って決める感じがすごく好きだったんですけど、対話ができなくなってるな、というのが、でもたぶんこれはイギリスだけの話じゃないと思うんですよね。日本でもそういうところがすごく見えて、最近「生きづらい」といろんな人が言いますけど、そういうことの原因はたぶんそこにあるんじゃないかなと思っています。
“イデオロギーの前に人間がある”、みたいなことを、今すごく忘れているような気がするんですよね。だから、私はこれまですごく政治的な本も書いてますし、Yahoo!ニュースなどで政治のことを書いていたこともありますけど、「今むしろ政治主体でいくよりも、人間が書きたい」というのがあったんですよ。そして「その人間の中から、“なぜその人たちがこういうふうになっているのか”というのを書きたい」というのがあったんですね。
だから女性の問題も、こちらのことを聞いてもらうには、向こうのことも聞かなければいけないし、向こうのこともわからなければいけない、という、もうちょっと一歩進んだところに行かないといけないんじゃないかな、とすごく思いますけどね。
茂木:おっさんたちのいろいろな恋愛が書かれているんですけど、例えば“レイ”と“レイチェル”のパートナー。このレイチェルというのは意外とイケの女性なんですよね?
ブレイディ:そうですね、若いですしね。
茂木:その人がレイというおじさんと付き合ってる。こういう恋愛の描き方で、みかこさんは『いい・悪い』で判断しないですよね。あたたかく「そういう人もいるんだ」というふうにご覧になってますもんね。
ブレイディ:イギリスだと、何度も違うパートナーと一緒になって、それで『ステップ-キッズ』がどんどん増えてくみたいなカップルが結構いますよね。そういうことが当たり前にあります。
でも日本はその辺があまりないからかもしれませんけど。最近この本について取材を受けていて驚いたのが、若い編集者さんの方が「この本を読んですごくビックリしたのが、みんな中高齢になっても恋をしてるし、職場以外の人と友達付き合いを続けている。中高年の生活の中に恋と友情があるのが一番ビックリした」と言われて、私の方が逆にハッとしました。
こっちではそれが当たり前のことだから、「そうか、日本は中高齢になると恋と友情がなくなっちゃうのかな」と思って驚きましたけどね(笑)。
茂木:(笑)。言われてみたらそうかもしれないですね。
このブレイディみかこさんのご著書「ワイルドサイドをほっつき歩け―ハマータウンのおっさんたち」には、ほとんど言っていいほど日本のことは直接触れられてないんですけど、結果として我々が生きているこの日本の社会について考えさせられる内容になってるんですよね。それは非常に優れた批評性でもあるのかな、と思うんですが…。
今イギリスからご覧になっていて、日本の社会はどのように見えますか?
ブレイディ:たまに帰ってもプロモーションとか取材とかをずっと受けたりしているので、あまり街をフラフラひとりで歩いていろんな人の会話を聞いてみるということが最近ないのが少し寂しいんですけど…。
でも、なんかだんだん小さくなっているような気がしますよね。寛容さとか寛大さとか、懐の深さとか、そういうハートがだんだん小さくなってるのかな、という感じはします。
原因がどこにあるか、と言うと、いろいろあるんでしょうけどね。
茂木:おっさんたちがいろいろ失敗をするんですけど、特にお酒を飲んだりとか、女性のことでも失敗したりとか、おっさんたちがすごく人間的に描かれていて、逆に言うと、日本の社会は失敗が許されない雰囲気にもなってるんですよ。
イギリスはどうなんでしょうか? みかこさんが見てらっしゃるイギリス社会は、失敗してしまった人に対してはどんな感じなんですか?
ブレイディ:日本はどちらかと言うと、あまりセカンドチャンスが許されないじゃないですか。例えば就職にしても、大学を出る時に就職活動を一生懸命して、そこで入らないと、その後の人生が決まっちゃうよ、みたいな感じがあるけど、イギリスはそんなことないですよね。
私が若い時にこちらに来てすごくビックリしたのが、夜間の大学で学べるコースがたくさんありまして、そこでいろんな資格を取るために、本当に40代50代になって勉強してる人がいるんですよね。
日本だと、40代50代で新しいキャリアのために勉強する人なんてあんまりいないですよね。その辺の違いはビックリしましたよね。いくつになってもやり直せると言うか、「遅すぎるなんてことはない」という感じがイギリスにはあります。“一回失敗してしまったら終わり”、とか、“このレールに乗ってしまわないと先がない”ということがイギリスにはないですよね。
茂木:ご著書「ワイルドサイドをほっつき歩け―ハマータウンのおっさんたち」はイギリスのおっさんたちの話なんですけども、読んでると、日本でも“みんな年齢とかジェンダー、立場に関係なく、自分の人生を生きていいんだ”という勇気をもらえる素晴らしい本となっています。みなさんぜひお読みいただきたいです。
■プレゼントのお知らせ
本日のゲスト、ブレイディみかこさんのご著書、
「ワイルドサイドをほっつき歩け―ハマータウンのおっさんたち」、
こちらのご著書を3名さまにプレゼントします!
ご希望の方は、必要事項を明記の上、
メッセージフォームより、ご応募ください。
茂木さんに聞きたい事や相談したい事など、
一緒にを添えていただけると嬉しいです。
尚、当選者の発表は、
商品の発送をもってかえさせていただきます。
たくさんのご応募、お待ちしております。
●ワイルドサイドをほっつき歩け --ハマータウンのおっさんたち / ブレイディみかこ
(Amazon)
●筑摩書房(@chikumashobo) 公式Twitter
●ブレイディみかこさんOfficial Blog
●筑摩書房 公式サイト
音楽好きが高じてアルバイトとイギリスへの渡航を繰り返し、
1996年からは、イギリスのブライトンにお住まいでいらっしゃいます。
ロンドンの日系企業で数年間勤務したのち、イギリスで保育士の資格を取得。
イギリスの「最底辺保育所」で働きながら、ライター活動を開始されます。
そして2017年に刊行された、『子どもたちの階級闘争』で、
第16回新潮ドキュメント賞を受賞。
2019年には、『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』で、
第73回毎日出版文化賞特別賞、
第2回Yahoo!ニュース本屋大賞 ノンフィクション本大賞、
第7回ブクログ大賞を受賞され、大きな話題と集めました。
そして、現在、『ワイルドサイドをほっつき歩け―ハマータウンのおっさんたち』を
筑摩書房より発売されていらっしゃいます。
──生きづらくなったおっさんたち
茂木:ものすごくオリジナリティが高いと思うのは、今、フェミニズム的な考え方でいろいろ“おっさんたちはどうも肩身が狭い”という中で、この本の温かい目線はすごくユニークな気がしたんです。しかもおっさんたちの悪いところを、「いいよ」と言ってるわけではなく…。これはすごくないですか?
ブレイディ:どうなんでしょうね? これは、EU離脱でイギリスがごちゃごちゃして…もうあの投票が4年前になりますかね。それから3年半ぐらいすごく揺れたじゃないですか。私は残留派(若者が多い)と離脱派(中高齢が多い)の石を投げ合う感じを見て「本当に不毛だな」と。
私も民主主義というのはすごく話し合って、お互いに妥協し、譲るところは譲ったりしながら、落としどころを見つけるということだと思うんですよ。それをすっかり忘れてると言うか、残留派と離脱派が本当に石を投げ合って、勝つことしか考えてない。言い負かして勝つことで、自分たちのしたいようにすることしか考えてなくて、対話がないんです。あれが一番民主主義に反してると言うか、民主主義というのは落としどころが付くまで話し合って決めることなんですよね。
私はイギリスの人たちが話し合って決める感じがすごく好きだったんですけど、対話ができなくなってるな、というのが、でもたぶんこれはイギリスだけの話じゃないと思うんですよね。日本でもそういうところがすごく見えて、最近「生きづらい」といろんな人が言いますけど、そういうことの原因はたぶんそこにあるんじゃないかなと思っています。
“イデオロギーの前に人間がある”、みたいなことを、今すごく忘れているような気がするんですよね。だから、私はこれまですごく政治的な本も書いてますし、Yahoo!ニュースなどで政治のことを書いていたこともありますけど、「今むしろ政治主体でいくよりも、人間が書きたい」というのがあったんですよ。そして「その人間の中から、“なぜその人たちがこういうふうになっているのか”というのを書きたい」というのがあったんですね。
だから女性の問題も、こちらのことを聞いてもらうには、向こうのことも聞かなければいけないし、向こうのこともわからなければいけない、という、もうちょっと一歩進んだところに行かないといけないんじゃないかな、とすごく思いますけどね。
茂木:おっさんたちのいろいろな恋愛が書かれているんですけど、例えば“レイ”と“レイチェル”のパートナー。このレイチェルというのは意外とイケの女性なんですよね?
ブレイディ:そうですね、若いですしね。
茂木:その人がレイというおじさんと付き合ってる。こういう恋愛の描き方で、みかこさんは『いい・悪い』で判断しないですよね。あたたかく「そういう人もいるんだ」というふうにご覧になってますもんね。
ブレイディ:イギリスだと、何度も違うパートナーと一緒になって、それで『ステップ-キッズ』がどんどん増えてくみたいなカップルが結構いますよね。そういうことが当たり前にあります。
でも日本はその辺があまりないからかもしれませんけど。最近この本について取材を受けていて驚いたのが、若い編集者さんの方が「この本を読んですごくビックリしたのが、みんな中高齢になっても恋をしてるし、職場以外の人と友達付き合いを続けている。中高年の生活の中に恋と友情があるのが一番ビックリした」と言われて、私の方が逆にハッとしました。
こっちではそれが当たり前のことだから、「そうか、日本は中高齢になると恋と友情がなくなっちゃうのかな」と思って驚きましたけどね(笑)。
茂木:(笑)。言われてみたらそうかもしれないですね。
このブレイディみかこさんのご著書「ワイルドサイドをほっつき歩け―ハマータウンのおっさんたち」には、ほとんど言っていいほど日本のことは直接触れられてないんですけど、結果として我々が生きているこの日本の社会について考えさせられる内容になってるんですよね。それは非常に優れた批評性でもあるのかな、と思うんですが…。
今イギリスからご覧になっていて、日本の社会はどのように見えますか?
ブレイディ:たまに帰ってもプロモーションとか取材とかをずっと受けたりしているので、あまり街をフラフラひとりで歩いていろんな人の会話を聞いてみるということが最近ないのが少し寂しいんですけど…。
でも、なんかだんだん小さくなっているような気がしますよね。寛容さとか寛大さとか、懐の深さとか、そういうハートがだんだん小さくなってるのかな、という感じはします。
原因がどこにあるか、と言うと、いろいろあるんでしょうけどね。
茂木:おっさんたちがいろいろ失敗をするんですけど、特にお酒を飲んだりとか、女性のことでも失敗したりとか、おっさんたちがすごく人間的に描かれていて、逆に言うと、日本の社会は失敗が許されない雰囲気にもなってるんですよ。
イギリスはどうなんでしょうか? みかこさんが見てらっしゃるイギリス社会は、失敗してしまった人に対してはどんな感じなんですか?
ブレイディ:日本はどちらかと言うと、あまりセカンドチャンスが許されないじゃないですか。例えば就職にしても、大学を出る時に就職活動を一生懸命して、そこで入らないと、その後の人生が決まっちゃうよ、みたいな感じがあるけど、イギリスはそんなことないですよね。
私が若い時にこちらに来てすごくビックリしたのが、夜間の大学で学べるコースがたくさんありまして、そこでいろんな資格を取るために、本当に40代50代になって勉強してる人がいるんですよね。
日本だと、40代50代で新しいキャリアのために勉強する人なんてあんまりいないですよね。その辺の違いはビックリしましたよね。いくつになってもやり直せると言うか、「遅すぎるなんてことはない」という感じがイギリスにはあります。“一回失敗してしまったら終わり”、とか、“このレールに乗ってしまわないと先がない”ということがイギリスにはないですよね。
茂木:ご著書「ワイルドサイドをほっつき歩け―ハマータウンのおっさんたち」はイギリスのおっさんたちの話なんですけども、読んでると、日本でも“みんな年齢とかジェンダー、立場に関係なく、自分の人生を生きていいんだ”という勇気をもらえる素晴らしい本となっています。みなさんぜひお読みいただきたいです。
■プレゼントのお知らせ
本日のゲスト、ブレイディみかこさんのご著書、
「ワイルドサイドをほっつき歩け―ハマータウンのおっさんたち」、
こちらのご著書を3名さまにプレゼントします!
ご希望の方は、必要事項を明記の上、
メッセージフォームより、ご応募ください。
茂木さんに聞きたい事や相談したい事など、
一緒にを添えていただけると嬉しいです。
尚、当選者の発表は、
商品の発送をもってかえさせていただきます。
たくさんのご応募、お待ちしております。
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