2020年06月20日
今週ゲストにお迎えしたのは、人気脚本家の、中園ミホさんです。
中園さんは、1959年、東京都のお生まれです。
日本大学芸術学部をご卒業後、広告代理店勤務、コピーライター、
占い師を経て、TVドラマ『ニュータウン仮分署』で脚本家デビュー。
2007年『ハケンの品格』で、放送文化基金賞と橋田賞を受賞。
2013年には、『はつ恋』、『Doctor-X 外科医・大門未知子』で、
向田邦子賞と橋田賞をダブル受賞されました。
2014年に、NHK連続テレビ小説『花子とアン』がヒットし、
2018年には、林真理子さん原作の大河ドラマ『西郷どん』の脚本も手がけられます。
そして、今年、2020年には、13年ぶりの続編『ハケンの品格』のオンエアが決定し、
ご活躍中でいらっしゃいます。
──現実の中に一振りのファンタジー
茂木:“中園ミホさん”と言えば“恋愛ドラマ”というイメージが世間ではあると思います。ご自身の恋愛もそうだと思うんですけど、他の人の話を聞いたりして観察されてきたんですか?
中園:人の恋愛を見るのは大好きですね(笑)。だって、恋愛は本当に駄目なところとか見えちゃうじゃないですか。
占い師時代も、人の完璧な格好つけてるところよりも、そういう駄目なところとか綻びとか、そっち見る方が好きだったから。恋愛してメタメタになる人を観察するのが大好きですね。
茂木:『やまとなでしこ』も大ヒットしましたけれども、あのように女性がお金持ちの男性を狙って合コンとかを重ねる、“女性の本音”みたいなところと、でも一方では“純愛”のようなところもあるという、あの辺りは観察の結果なんですか?
中園:いえ。あの時初めて取材を始めたんですけど、「合コンをやりまくるCAさんのお話を、松嶋菜々子さんでやります」というところまでは決まってたんです。でも、私は合コンというのをやったことがなかったので、「まず、取材させてください」と言って、合コンをやったんですよ(笑)。だけど、私は男性側のフジテレビの社員たちと同じ側に座ってて、目の前はCAの綺麗な方がずら〜っと並んでいて、それで合コンが始まりました。
で、すっごい盛り上がってるの。でも私は取材なんであんまり楽しくないし(笑)、しかも男性側に座ってますから、イラっとしたので、「皆さんは男性のどこを見るんですか?」と聞いたんですよ。「それは容姿ですか? お仕事できるかどうかですか? 話が合うかどうかですか? それとも、お金ですか?」と聞いたら、「いいえ、お金なんて!」とセンターに座っている一番綺麗な方がそういうふうにおっしゃって。で、周りに「ね、お金なんか関係ないわよね?」と言ったら、「ええ、お金なんて!」と答えて、みんな5秒ぐらいこっち側に向かって不自然ににこにこ微笑みを浮かべたの。
茂木:(笑)。
中園:それが何か気になったんですよ。“今の不自然な微笑みは何だろう?”と。
その後、ひとりフジテレビの社員が遅れて来たんです。その方が、「遅くなってすみません」と言って、車のキーを置いたんですよ。そしたら、一斉に女性5人がバッってそれを見たのが、ポルシェのキーだったんですよ。“やっぱりお金じゃない”と思って。
だけど私は、お金持ちかどうかを見るのは、洋服のブランドとか時計とかかと思ったら、車のキーなんだな、と思って(笑)。それをそのままドラマに使わせてもらいました。
茂木:へ〜。ご親友でいらっしゃる林真理子さんも、人間の本音と言うか、綺麗ごとじゃなくて全部丸ごと描くことで、数々の傑作小説を書かれて来ていますけど、やっぱりそこですかね? 人間の表・裏、すべて。
中園:『やまとなでしこ』の時、それは思ったんですけど、やっぱり、私もちょっと書いていてえげつないなと思ったんですよ。例えば、「借金まみれのハンサム男と、裕福なブタ男、どっちが女を幸せにしてくれると思いますか?」とか言っちゃうんですよ。それって身も蓋もないじゃないですか。それを松嶋さんが言うから可愛らしいんですけど。
でもこれは抗議の電話とか来るんじゃないかと思ってたら、蓋を開けてみたら大ヒットだったんです。しかも、女性たちが「自分たちがいつも心の片隅でちょっと思ってるけど口にできないことを、神野桜子さんというヒロインはどんどん言ってくれる。それが気持ちいい」と言ってくださって。“なるほど、ドラマってそういう作り方あるんだな”と思いました。
それからは、“みんながとてもじゃないけど言えないけれど、ちょっとみんなどこかに持っているものを書いてやろう”と思って。綺麗ごとは絶対に書かない。ドラマというのはある程度綺麗な方がいいんですけど、私はそうじゃなくて、みんなの本音を書いていこう、と、『やまとなでしこ』の時に思いました。
茂木:そこで掴んだんですかね。
中園:掴んだんですね。
茂木:あれは(視聴率が)30%とかだったんですよね。すごいですよね。そこまでのヒットメーカーになる人というのは極一部分だと思うんですけど、『ハケンの品格』も『Doctor-X』もちょっとファンタジーの要素があるじゃないですか。ちょっと現実離れしたヒロイン像を描くことによって、でもスカッとする、と言うか。その辺りはどうですか?
中園:私ね、本当にすごく取材だけはするんですけど、それをそのまま真面目に書けば芸術祭とか賞を取れるんじゃないか、と、プロデューサーとかに怒られるんですよ。私は派遣さんたちの辛いこともいっぱい聞いています。いっぱい仕事して疲れて家に帰って来て、もう一回ドラマでそれを観たいかな、って言うと、私は観たくないですね。
私だったら、自分の本音は大前春子さんに言って欲しいけど、だけど、思い切りゲラゲラ笑えて、しかもスカッとして、派遣が勝っていく話が観たいし、私は自分が派遣さんだったらそういうドラマが観たいなと思って、書いていますね。だからファンタジーになっちゃうわけだけど。現実と同じことをそのまま観たいですかね?
茂木:ということは、中園ミホ脚本のすごい秘密は、派遣さんの話もCAさんの話もそうですけど、実は社会派にできるような緻密な取材をしてるんだけど、最後の最後で一振り、ファンタジーと言うかエンターテインメントとして魔法の粉をかける、というところにあるのかな。
中園:なんか、分析していただくとちょっと恥ずかしい。そうなのかもしれない(笑)。
茂木:この厳しい中での『ハケンの品格』シーズン2! これはかなり元気になりますね。
中園:ぜひ観てください! 絶対元気になります!
茂木:篠原涼子さんというのはどういう方ですか?
中園:ものすごい菩薩みたいな人。慈愛に満ちた人。
本当は、大前春子はものすごくクールな木枯し紋次郎みたいにしたかったんですよ。「あっしには関わりのないことです」というハードボイルドにしたかったんですだけど、篠原さんに演じて頂いたら、どんなにツンデレにしててもどんどんヒロインの愛情が溢れて来ちゃって。だから、その女優力に引っ張られてあのヒロインになったんです。本当にあの方は愛情の深い人です。
茂木:じゃあその菩薩である篠原涼子さんが主役を務められる、『ハケンの品格』楽しみにしております!
中園:ぜひ! ぜひ観てください!
●中園ミホ オフィシャルブログ
●占いで強運をつかむ / 中園ミホ
(Amazon)
●【公式】ハケンの品格 (@haken_ntv)
中園さんは、1959年、東京都のお生まれです。
日本大学芸術学部をご卒業後、広告代理店勤務、コピーライター、
占い師を経て、TVドラマ『ニュータウン仮分署』で脚本家デビュー。
2007年『ハケンの品格』で、放送文化基金賞と橋田賞を受賞。
2013年には、『はつ恋』、『Doctor-X 外科医・大門未知子』で、
向田邦子賞と橋田賞をダブル受賞されました。
2014年に、NHK連続テレビ小説『花子とアン』がヒットし、
2018年には、林真理子さん原作の大河ドラマ『西郷どん』の脚本も手がけられます。
そして、今年、2020年には、13年ぶりの続編『ハケンの品格』のオンエアが決定し、
ご活躍中でいらっしゃいます。
──現実の中に一振りのファンタジー
茂木:“中園ミホさん”と言えば“恋愛ドラマ”というイメージが世間ではあると思います。ご自身の恋愛もそうだと思うんですけど、他の人の話を聞いたりして観察されてきたんですか?
中園:人の恋愛を見るのは大好きですね(笑)。だって、恋愛は本当に駄目なところとか見えちゃうじゃないですか。
占い師時代も、人の完璧な格好つけてるところよりも、そういう駄目なところとか綻びとか、そっち見る方が好きだったから。恋愛してメタメタになる人を観察するのが大好きですね。
茂木:『やまとなでしこ』も大ヒットしましたけれども、あのように女性がお金持ちの男性を狙って合コンとかを重ねる、“女性の本音”みたいなところと、でも一方では“純愛”のようなところもあるという、あの辺りは観察の結果なんですか?
中園:いえ。あの時初めて取材を始めたんですけど、「合コンをやりまくるCAさんのお話を、松嶋菜々子さんでやります」というところまでは決まってたんです。でも、私は合コンというのをやったことがなかったので、「まず、取材させてください」と言って、合コンをやったんですよ(笑)。だけど、私は男性側のフジテレビの社員たちと同じ側に座ってて、目の前はCAの綺麗な方がずら〜っと並んでいて、それで合コンが始まりました。
で、すっごい盛り上がってるの。でも私は取材なんであんまり楽しくないし(笑)、しかも男性側に座ってますから、イラっとしたので、「皆さんは男性のどこを見るんですか?」と聞いたんですよ。「それは容姿ですか? お仕事できるかどうかですか? 話が合うかどうかですか? それとも、お金ですか?」と聞いたら、「いいえ、お金なんて!」とセンターに座っている一番綺麗な方がそういうふうにおっしゃって。で、周りに「ね、お金なんか関係ないわよね?」と言ったら、「ええ、お金なんて!」と答えて、みんな5秒ぐらいこっち側に向かって不自然ににこにこ微笑みを浮かべたの。
茂木:(笑)。
中園:それが何か気になったんですよ。“今の不自然な微笑みは何だろう?”と。
その後、ひとりフジテレビの社員が遅れて来たんです。その方が、「遅くなってすみません」と言って、車のキーを置いたんですよ。そしたら、一斉に女性5人がバッってそれを見たのが、ポルシェのキーだったんですよ。“やっぱりお金じゃない”と思って。
だけど私は、お金持ちかどうかを見るのは、洋服のブランドとか時計とかかと思ったら、車のキーなんだな、と思って(笑)。それをそのままドラマに使わせてもらいました。
茂木:へ〜。ご親友でいらっしゃる林真理子さんも、人間の本音と言うか、綺麗ごとじゃなくて全部丸ごと描くことで、数々の傑作小説を書かれて来ていますけど、やっぱりそこですかね? 人間の表・裏、すべて。
中園:『やまとなでしこ』の時、それは思ったんですけど、やっぱり、私もちょっと書いていてえげつないなと思ったんですよ。例えば、「借金まみれのハンサム男と、裕福なブタ男、どっちが女を幸せにしてくれると思いますか?」とか言っちゃうんですよ。それって身も蓋もないじゃないですか。それを松嶋さんが言うから可愛らしいんですけど。
でもこれは抗議の電話とか来るんじゃないかと思ってたら、蓋を開けてみたら大ヒットだったんです。しかも、女性たちが「自分たちがいつも心の片隅でちょっと思ってるけど口にできないことを、神野桜子さんというヒロインはどんどん言ってくれる。それが気持ちいい」と言ってくださって。“なるほど、ドラマってそういう作り方あるんだな”と思いました。
それからは、“みんながとてもじゃないけど言えないけれど、ちょっとみんなどこかに持っているものを書いてやろう”と思って。綺麗ごとは絶対に書かない。ドラマというのはある程度綺麗な方がいいんですけど、私はそうじゃなくて、みんなの本音を書いていこう、と、『やまとなでしこ』の時に思いました。
茂木:そこで掴んだんですかね。
中園:掴んだんですね。
茂木:あれは(視聴率が)30%とかだったんですよね。すごいですよね。そこまでのヒットメーカーになる人というのは極一部分だと思うんですけど、『ハケンの品格』も『Doctor-X』もちょっとファンタジーの要素があるじゃないですか。ちょっと現実離れしたヒロイン像を描くことによって、でもスカッとする、と言うか。その辺りはどうですか?
中園:私ね、本当にすごく取材だけはするんですけど、それをそのまま真面目に書けば芸術祭とか賞を取れるんじゃないか、と、プロデューサーとかに怒られるんですよ。私は派遣さんたちの辛いこともいっぱい聞いています。いっぱい仕事して疲れて家に帰って来て、もう一回ドラマでそれを観たいかな、って言うと、私は観たくないですね。
私だったら、自分の本音は大前春子さんに言って欲しいけど、だけど、思い切りゲラゲラ笑えて、しかもスカッとして、派遣が勝っていく話が観たいし、私は自分が派遣さんだったらそういうドラマが観たいなと思って、書いていますね。だからファンタジーになっちゃうわけだけど。現実と同じことをそのまま観たいですかね?
茂木:ということは、中園ミホ脚本のすごい秘密は、派遣さんの話もCAさんの話もそうですけど、実は社会派にできるような緻密な取材をしてるんだけど、最後の最後で一振り、ファンタジーと言うかエンターテインメントとして魔法の粉をかける、というところにあるのかな。
中園:なんか、分析していただくとちょっと恥ずかしい。そうなのかもしれない(笑)。
茂木:この厳しい中での『ハケンの品格』シーズン2! これはかなり元気になりますね。
中園:ぜひ観てください! 絶対元気になります!
茂木:篠原涼子さんというのはどういう方ですか?
中園:ものすごい菩薩みたいな人。慈愛に満ちた人。
本当は、大前春子はものすごくクールな木枯し紋次郎みたいにしたかったんですよ。「あっしには関わりのないことです」というハードボイルドにしたかったんですだけど、篠原さんに演じて頂いたら、どんなにツンデレにしててもどんどんヒロインの愛情が溢れて来ちゃって。だから、その女優力に引っ張られてあのヒロインになったんです。本当にあの方は愛情の深い人です。
茂木:じゃあその菩薩である篠原涼子さんが主役を務められる、『ハケンの品格』楽しみにしております!
中園:ぜひ! ぜひ観てください!
●中園ミホ オフィシャルブログ
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