2020年04月25日
今週ゲストにお迎えしたのは、写真家のハービー・山口さんです。
ハービー・山口さんは、1950年、東京都のご出身です。
大学卒業後の1973年、23歳の時にロンドンに渡り、
10年間の滞在中に、劇団員を経て、写真家になりました。
パンクロックやニューウェーブのムーブメントに遭遇し、
デビュー前のボーイ・ジョージとルームシェアをするなど、
ロンドンの最もエキサイティングだった時代を体験されます。
そうした中で撮影された、生きたロンドンの写真が高く評価され、
帰国後も、福山雅治さんなど、国内アーティストとのコラボレーションをしながら、
常に市井の人々の日常にカメラを向け続けていらっしゃいます。
そのように写真発表をされる傍ら、エッセイ執筆、ラジオ、
テレビのパーソナリティ等でもご活躍中でいらっしゃいます。
──「妥協しないで自分の意思を貫け」
茂木:ハービーさんは先日『Days I Remember』という写真集を出されましたが、白黒のスナップ写真というこのスタイルはもうずっと変わらないんですね。
ハービー:ええ。私自身“スナップ・ポートレート”と呼んでいて、ポートレートとスナップの間なんです。
ポートレートというのは、スタジオに呼んだりモデルさんとかご両親という被写体の方をセットアップして、それなりの背景にお連れして、というのがポートレートですよね。
スナップと言うと、街中で見かけた人を撮ってしまう、というのがスナップですよね。
僕の場合は見かけた人にちょっと声を掛けて、彼らが許してくれるならば、「ちょっと一歩左にずれてくれます?」とか、「ちょっと目線外したやつも一枚いかがですか?」とか、そういうふうにして、ちょっとポートレートみたいな演出を加えてしまって、その場のスナップなんだけど、それをよりいい写真に多少の作り込み・演出をする。
それで“スナップ・ポートレート”と呼んでいるんです。
<ハービー・山口さんが撮影した茂木さん>
茂木:そのようにして、あの「ザ・クラッシュ」のジョー・ストラマーさんにもいきなり声を掛けて撮らせて頂いたという過去もあるんですね。
ハービー:そうなんです。自分のちっぽけな人格と、彼らの許容する心のせめぎ合いで。
彼らが「おお、こいつ真面目に撮るんだな」ということを感じてくれたらオーケーしてくれるし、「こいつは冷やかしだ」とか「黙って撮れよ」みたいになったら、反応も違うんだと思うんですけど……。
その話で、1980年とか、当時は非常にパンクロッカーとして知名度のある方で、偶然地下鉄のホームで見かけて、私はびっくりしたわけですよ。
茂木:地下鉄にいたんですね!
ハービー:ええ。彼は大スターであってもとても質素な生活で、「ロックスター」=「ものすごく贅沢の極み」とか、「退廃」とかそういうこととは無縁の、非常に本音で生きていた人だと思います。
派手な恰好をすることもなく、ベーカー・ストリート駅というところのホームで、私も家に帰る途中で見かけたんです。
茂木:そうだったんですか!
ハービー:私としては、これは写真撮りたい、と思うわけですよね。
茂木:一期一会ですもんね。
ハービー:その通りですね。
しかしプライベートだし、これはNGに違いないと思って一度カメラをバッグにしまったんですが、今おっしゃられたように一期一会だと、撮っていいか聞いてみるだけだったら失礼じゃないだろう、と。
蚊の鳴くような声で「写真撮ってもよろしいでしょうか?」と言ったら、「いいよ」と言うんですよ。
それで数枚ホームで撮ったら「セントラル・ライン」という地下鉄の列車が来まして、一緒に乗って、彼は3駅ぐらいのウイーンズウェイ駅で降りるんです。
その間に3枚ぐらい撮らせてもらって。
茂木:ええ〜!
ハービー:話はここからなんですけど。
彼が降りる駅に電車が止まった。駅のホームが車内にふと差し込んで、車内がちょっと明るくなります。
絞りを2.8から4にぼかして、もう電車は止まってるのでブレずに撮れて、“ああ、優しい瞳が撮れたな”という実感があったんです。
それで、突然、彼が降り際に僕に振り向いたんですね。なんと言ったか。「君ね、撮りたいものはみんな撮れよ。それがパンクだろ」って言って降りて行ったんですよね。
茂木:かっこいい……!
ハービー:その時にはじめて「パンクの精神」というのを身をもって理解したんです。「ピンクのトサカのようなモヒカン、あれはファッションだ」、と。
要は、「パンクの本質は“生き方”だ」、と。「妥協するんではないぞ」、と。
「人に迷惑を掛けなければ、妥協しないで自分の意思を貫け」、ということを、「撮りたいものは撮れ。それがパンクだ」という言葉の裏に、彼は意味を込めたんですね。
茂木:ハービーさんはその時何歳でした?
ハービー:30歳でしたね。
茂木:では、ズシンと来ましたね。
ハービー:ええ。もう本当に嬉しくて。“ああ、ロンドンに来てよかった。パンクっていうのはこういうことか”“僕もそのパンクの気持ちをもう一度蘇えらせて、もう一度写真を撮り直そう”。
そういう嬉しさで、次のノッティング・ヒル・ゲート駅というところで僕は降りましたが、階段を駆け上がるように地表に出まして、ジャンプした覚えがありますね。
■プレゼントのお知らせ
今夜は、図書カード3,000円分に、
番組オリジナルのエコバッグをセットにして、
3名さまにプレゼントします!
ご希望の方は、必要事項を明記の上、 メッセージフォームより、ご応募ください。
茂木さんに聞きたい事や相談したい事など、 一緒にを添えていただけると嬉しいです。
尚、当選者の発表は、 商品の発送をもってかえさせていただきます。 たくさんのご応募、お待ちしております。
●ハービー・山口さん(@herbieyamaguchi) Twitter
↑ハービーさんの最新情報は、Twitterをチェックしてみてください!
●STAY HOME展〜写真家が自室で見ているものたち〜
↑ハービー・山口×ArtStickerによるオンライン写真展
「STAY HOME展」開催。参加者募集中です!
●Days I Remember / ハービー・山口
(Amazon)
ハービー・山口さんは、1950年、東京都のご出身です。
大学卒業後の1973年、23歳の時にロンドンに渡り、
10年間の滞在中に、劇団員を経て、写真家になりました。
パンクロックやニューウェーブのムーブメントに遭遇し、
デビュー前のボーイ・ジョージとルームシェアをするなど、
ロンドンの最もエキサイティングだった時代を体験されます。
そうした中で撮影された、生きたロンドンの写真が高く評価され、
帰国後も、福山雅治さんなど、国内アーティストとのコラボレーションをしながら、
常に市井の人々の日常にカメラを向け続けていらっしゃいます。
そのように写真発表をされる傍ら、エッセイ執筆、ラジオ、
テレビのパーソナリティ等でもご活躍中でいらっしゃいます。
──「妥協しないで自分の意思を貫け」
茂木:ハービーさんは先日『Days I Remember』という写真集を出されましたが、白黒のスナップ写真というこのスタイルはもうずっと変わらないんですね。
ハービー:ええ。私自身“スナップ・ポートレート”と呼んでいて、ポートレートとスナップの間なんです。
ポートレートというのは、スタジオに呼んだりモデルさんとかご両親という被写体の方をセットアップして、それなりの背景にお連れして、というのがポートレートですよね。
スナップと言うと、街中で見かけた人を撮ってしまう、というのがスナップですよね。
僕の場合は見かけた人にちょっと声を掛けて、彼らが許してくれるならば、「ちょっと一歩左にずれてくれます?」とか、「ちょっと目線外したやつも一枚いかがですか?」とか、そういうふうにして、ちょっとポートレートみたいな演出を加えてしまって、その場のスナップなんだけど、それをよりいい写真に多少の作り込み・演出をする。
それで“スナップ・ポートレート”と呼んでいるんです。
<ハービー・山口さんが撮影した茂木さん>
茂木:そのようにして、あの「ザ・クラッシュ」のジョー・ストラマーさんにもいきなり声を掛けて撮らせて頂いたという過去もあるんですね。
ハービー:そうなんです。自分のちっぽけな人格と、彼らの許容する心のせめぎ合いで。
彼らが「おお、こいつ真面目に撮るんだな」ということを感じてくれたらオーケーしてくれるし、「こいつは冷やかしだ」とか「黙って撮れよ」みたいになったら、反応も違うんだと思うんですけど……。
その話で、1980年とか、当時は非常にパンクロッカーとして知名度のある方で、偶然地下鉄のホームで見かけて、私はびっくりしたわけですよ。
茂木:地下鉄にいたんですね!
ハービー:ええ。彼は大スターであってもとても質素な生活で、「ロックスター」=「ものすごく贅沢の極み」とか、「退廃」とかそういうこととは無縁の、非常に本音で生きていた人だと思います。
派手な恰好をすることもなく、ベーカー・ストリート駅というところのホームで、私も家に帰る途中で見かけたんです。
茂木:そうだったんですか!
ハービー:私としては、これは写真撮りたい、と思うわけですよね。
茂木:一期一会ですもんね。
ハービー:その通りですね。
しかしプライベートだし、これはNGに違いないと思って一度カメラをバッグにしまったんですが、今おっしゃられたように一期一会だと、撮っていいか聞いてみるだけだったら失礼じゃないだろう、と。
蚊の鳴くような声で「写真撮ってもよろしいでしょうか?」と言ったら、「いいよ」と言うんですよ。
それで数枚ホームで撮ったら「セントラル・ライン」という地下鉄の列車が来まして、一緒に乗って、彼は3駅ぐらいのウイーンズウェイ駅で降りるんです。
その間に3枚ぐらい撮らせてもらって。
茂木:ええ〜!
ハービー:話はここからなんですけど。
彼が降りる駅に電車が止まった。駅のホームが車内にふと差し込んで、車内がちょっと明るくなります。
絞りを2.8から4にぼかして、もう電車は止まってるのでブレずに撮れて、“ああ、優しい瞳が撮れたな”という実感があったんです。
それで、突然、彼が降り際に僕に振り向いたんですね。なんと言ったか。「君ね、撮りたいものはみんな撮れよ。それがパンクだろ」って言って降りて行ったんですよね。
茂木:かっこいい……!
ハービー:その時にはじめて「パンクの精神」というのを身をもって理解したんです。「ピンクのトサカのようなモヒカン、あれはファッションだ」、と。
要は、「パンクの本質は“生き方”だ」、と。「妥協するんではないぞ」、と。
「人に迷惑を掛けなければ、妥協しないで自分の意思を貫け」、ということを、「撮りたいものは撮れ。それがパンクだ」という言葉の裏に、彼は意味を込めたんですね。
茂木:ハービーさんはその時何歳でした?
ハービー:30歳でしたね。
茂木:では、ズシンと来ましたね。
ハービー:ええ。もう本当に嬉しくて。“ああ、ロンドンに来てよかった。パンクっていうのはこういうことか”“僕もそのパンクの気持ちをもう一度蘇えらせて、もう一度写真を撮り直そう”。
そういう嬉しさで、次のノッティング・ヒル・ゲート駅というところで僕は降りましたが、階段を駆け上がるように地表に出まして、ジャンプした覚えがありますね。
■プレゼントのお知らせ
今夜は、図書カード3,000円分に、
番組オリジナルのエコバッグをセットにして、
3名さまにプレゼントします!
ご希望の方は、必要事項を明記の上、 メッセージフォームより、ご応募ください。
茂木さんに聞きたい事や相談したい事など、 一緒にを添えていただけると嬉しいです。
尚、当選者の発表は、 商品の発送をもってかえさせていただきます。 たくさんのご応募、お待ちしております。
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●STAY HOME展〜写真家が自室で見ているものたち〜
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