2019年12月21日
今週ゲストにお迎えしたのは、グラビア女優でライター、アクティビストの石川優実さんです。
石川さんは、1987年、愛知県生まれ。
2005年に芸能界デビューし、
グラビア、映画、舞台などで広く活動していく中
2017年末に、芸能界で経験した性暴力を「#MeToo」で告白し、話題を集めました。
それ以降、ジェンダー平等を目指し活動。
2019年、職場でのパンプス義務付け反対運動「#KuToo」を展開、
世界中のメディアで取り上げられ、イギリスのBBCが選ぶ、『世界の人々に影響を与えた「100人の女性」』に選出され
現在も、活動を続けていらっしゃいます。
──日本の意識が変わるきっかけ
茂木:僕もTwitter上でいろんなアクティビティを見ているんですけど、「#KuToo」は異例なほど成功した活動と言っていいんじゃないんですかね。
あと、ネーミングセンスが抜群ですね。
石川:これ、私が考えたネーミングじゃないんですよ。最初の愚痴ツイートがあって、それが一気に拡散されました。その時に「こんなに同じことを考えてる人がいるなら運動にしませんか?」と誰かが言ったんですよ。
そこに対して、「じゃあハッシュタグ作りますか、これどうですか?」と出てきたのが「#KuToo」です。一人の女性が作ってくださったすごくセンスのいいものなんです。
茂木:そこも含めて、非常にオリジナルな運動ということを評価されていると思うんですけど。
石川さんの「#KuToo」の本を読ませていただいて、僕は男性として、女性がそこまで“ハイヒール履け”みたいな圧力を受けてるって事をちゃんと認識していなくて。
石川:そうですよね、やっぱり知らないという方は多かったですね。
茂木:実際そういうことって職場とかであるんですか?
石川:そうですね、自分の葬儀の仕事もそうでしたし、どこまでをハイヒールと言うのかは人によって違うかもしれないんですけど。
3センチ〜7センチの間というのはよくある義務付けで、いろんな意見があったんですけど、特にホテルや受付の方、あとCAさんとかですね。外部の人と接するお仕事の方は規定として盛り込まれているとか…あとは“暗黙の了解”みたいなものも多いみたいですね。
茂木:人間の半分は女性で、その女性が仕事をするとか、社会的な何か活動する時に、本人が履いているのが苦痛なのに「この靴履きなさい」って言われるのって、僕の感覚で言うと「やりすぎでしょ!」って…履きたい人は履けばいいけど、履きたくない人は履かなくてもいいんじゃないのかというのが僕の感覚なんですけど。
世間は違うということですね。
石川:違うというか、「マナーとして当たり前のことでしょ」という方が優先的にあって。おそらく、そこに疑問を持つことすらできなかったというのが、今までの状態だったと思いますね。
茂木:女性は当事者ですけどで、皆さん我慢してたってことですか?
石川:もちろん痛くない人もいるみたいなので、あとは履きたい方もいるので、その方たちは我慢してはないと思いますけど。
“我慢してる認識すらなかった”という人が、運動が始まってから聞くことが多いですね。
茂木:石川さんは葬儀社でお仕事をされていて、実際にヒールを履いていた時はかなり痛かったんですか?
石川:痛かったです、靴擦れとか…足の痛みって踵を想像される方が多いと思うんですけど、パンプスの場合はつま先の方なんですよね。
パンプスって基本的に狭いですし、あとはストッキングが大体セットになっているんですね。なので、すごく滑るんですよ。
前にぎゅうぎゅう押し込まれて、小指から血が出ちゃったり、外反母趾になっちゃうとかそういう方が多いですね。自分もそうだったんですけど、本当に痛いです。
茂木:今、職場の環境とか、健康で心の無理がないように働けることを考えるというのは時代の流れだと思うんですけど。
そんな中で、辛い思いを一部の人に強制しているっていうのはどうなんですかね。
石川:問題が可視化されたならば、やっぱり解決しなければいけないことだと思うので、そこを何とかならないかなと思って活動しています。
茂木:イギリスでも似たようなことがあったそうですね?
石川:そうみたいですね。2015年だったと思うんですけど、イギリスで受付の仕事をされていた女性が、ハイヒールを履くように義務付けられていました。
仕事に履くような靴じゃないじゃないですか? なので、この女性は履かずに行ったらしいんですよ、そしたらクビになってしまったっという事件がありまして。
そこで、その女性は「これは性差別の問題だ」ということで署名活動を始めて。すると、3日で15万の署名が集まったそうなんです。でも、すぐに政府から通達が出たということがあったみたいです。
茂木:イギリスは、人権などの考え方が進んでいる国というイメージがあります。
そのイギリスでさえ、何年か前までは女性がそういうことを強制される環境もあったということで、世界は急速に変化しているという事なんですね。
石川:そうですね。もともとイギリスは、男女で服装を分けることを法律で禁止しているんです。しかし、実はまだそういう職場があったということらしいんです。
茂木:日本は、ハイヒールを履くことを強制することはダメ、という法律がないんですよね。
石川:そうなんですよね。服装を男女で分けることを禁止する法律がないみたいですね。
茂木:それこそ、今は「LGBTQ」のように…ジェンダーだって、生物的には女性だけど、心は男性という方もいらっしゃいますもんね。
石川:そうなんですよね。そういう方も、自分は女性じゃないのにスカートを穿かなきゃいけないとか、ヒールを履かなきゃいけないという、女性らしさを一方的に押し付けられることに苦しんでいる人は多いみたいですし。
あと、そもそも女性であってもヒールやパンプス、スカートを穿きたくない女性もいるわけなんですよ。そこも性別で分けるんじゃなくて、「個」にして考えてもらいたいなと思います。
茂木:男性でもスカートを穿きたい人はいますからね。「男性だからこう、女性だからこう」という時代ではない気がするんですけど。
実際に「#KuToo」の問題提起なんですけど、ひとつのやり方として署名サイト「Change.org」で、この署名を呼びかけたところ2万の署名が集まったそうですね。
厚生労働省に提出されたということなんですけど、反響は大きかったですね。
石川:そうですね、2、3ヶ月で集まったのかな。
茂木:日本の意識が変わるきっかけになったと思うんですけど。
いろんなレスも来たということですが…ラジオで言っていいのかな、いわゆる「クソリプ」ってやつですか(笑)。
石川:そうですね(笑)。クソリプ、クソツイート、どっちもあります。
茂木:今回ですね、現代書館から出された石川優実さんの本「#KuToo」なんですけど、そこの部分が読んでて面白かったですね。
石川:面白かったですか、良かった。ありがとうございます(笑)。
茂木:反論のリプライをされている方々がいて。我々脳科学者は「認知的失敗」と言うんですけど。
読解力がちょっと足りなかったり、問題を違う形で解釈しちゃったりとか、全然違う論点を持ち出したりとか。あまり適切じゃないことを言われているというのが、脳科学者として「人間ってこうやって失敗するんだ」という。こういうのは人工知能の研究にも貢献するかもしれません、「人間はこういうミスをする」っていう。
「#KuToo」は、大変面白い本なんですよね。
●石川優実@#KuToo署名中 (@ishikawa_yumi) | Twitter
●#KuToo(クートゥー): 靴から考える本気のフェミニズム / 石川優実
(Amazon)
●現代書館
石川さんは、1987年、愛知県生まれ。
2005年に芸能界デビューし、
グラビア、映画、舞台などで広く活動していく中
2017年末に、芸能界で経験した性暴力を「#MeToo」で告白し、話題を集めました。
それ以降、ジェンダー平等を目指し活動。
2019年、職場でのパンプス義務付け反対運動「#KuToo」を展開、
世界中のメディアで取り上げられ、イギリスのBBCが選ぶ、『世界の人々に影響を与えた「100人の女性」』に選出され
現在も、活動を続けていらっしゃいます。
──日本の意識が変わるきっかけ
茂木:僕もTwitter上でいろんなアクティビティを見ているんですけど、「#KuToo」は異例なほど成功した活動と言っていいんじゃないんですかね。
あと、ネーミングセンスが抜群ですね。
石川:これ、私が考えたネーミングじゃないんですよ。最初の愚痴ツイートがあって、それが一気に拡散されました。その時に「こんなに同じことを考えてる人がいるなら運動にしませんか?」と誰かが言ったんですよ。
そこに対して、「じゃあハッシュタグ作りますか、これどうですか?」と出てきたのが「#KuToo」です。一人の女性が作ってくださったすごくセンスのいいものなんです。
茂木:そこも含めて、非常にオリジナルな運動ということを評価されていると思うんですけど。
石川さんの「#KuToo」の本を読ませていただいて、僕は男性として、女性がそこまで“ハイヒール履け”みたいな圧力を受けてるって事をちゃんと認識していなくて。
石川:そうですよね、やっぱり知らないという方は多かったですね。
茂木:実際そういうことって職場とかであるんですか?
石川:そうですね、自分の葬儀の仕事もそうでしたし、どこまでをハイヒールと言うのかは人によって違うかもしれないんですけど。
3センチ〜7センチの間というのはよくある義務付けで、いろんな意見があったんですけど、特にホテルや受付の方、あとCAさんとかですね。外部の人と接するお仕事の方は規定として盛り込まれているとか…あとは“暗黙の了解”みたいなものも多いみたいですね。
茂木:人間の半分は女性で、その女性が仕事をするとか、社会的な何か活動する時に、本人が履いているのが苦痛なのに「この靴履きなさい」って言われるのって、僕の感覚で言うと「やりすぎでしょ!」って…履きたい人は履けばいいけど、履きたくない人は履かなくてもいいんじゃないのかというのが僕の感覚なんですけど。
世間は違うということですね。
石川:違うというか、「マナーとして当たり前のことでしょ」という方が優先的にあって。おそらく、そこに疑問を持つことすらできなかったというのが、今までの状態だったと思いますね。
茂木:女性は当事者ですけどで、皆さん我慢してたってことですか?
石川:もちろん痛くない人もいるみたいなので、あとは履きたい方もいるので、その方たちは我慢してはないと思いますけど。
“我慢してる認識すらなかった”という人が、運動が始まってから聞くことが多いですね。
茂木:石川さんは葬儀社でお仕事をされていて、実際にヒールを履いていた時はかなり痛かったんですか?
石川:痛かったです、靴擦れとか…足の痛みって踵を想像される方が多いと思うんですけど、パンプスの場合はつま先の方なんですよね。
パンプスって基本的に狭いですし、あとはストッキングが大体セットになっているんですね。なので、すごく滑るんですよ。
前にぎゅうぎゅう押し込まれて、小指から血が出ちゃったり、外反母趾になっちゃうとかそういう方が多いですね。自分もそうだったんですけど、本当に痛いです。
茂木:今、職場の環境とか、健康で心の無理がないように働けることを考えるというのは時代の流れだと思うんですけど。
そんな中で、辛い思いを一部の人に強制しているっていうのはどうなんですかね。
石川:問題が可視化されたならば、やっぱり解決しなければいけないことだと思うので、そこを何とかならないかなと思って活動しています。
茂木:イギリスでも似たようなことがあったそうですね?
石川:そうみたいですね。2015年だったと思うんですけど、イギリスで受付の仕事をされていた女性が、ハイヒールを履くように義務付けられていました。
仕事に履くような靴じゃないじゃないですか? なので、この女性は履かずに行ったらしいんですよ、そしたらクビになってしまったっという事件がありまして。
そこで、その女性は「これは性差別の問題だ」ということで署名活動を始めて。すると、3日で15万の署名が集まったそうなんです。でも、すぐに政府から通達が出たということがあったみたいです。
茂木:イギリスは、人権などの考え方が進んでいる国というイメージがあります。
そのイギリスでさえ、何年か前までは女性がそういうことを強制される環境もあったということで、世界は急速に変化しているという事なんですね。
石川:そうですね。もともとイギリスは、男女で服装を分けることを法律で禁止しているんです。しかし、実はまだそういう職場があったということらしいんです。
茂木:日本は、ハイヒールを履くことを強制することはダメ、という法律がないんですよね。
石川:そうなんですよね。服装を男女で分けることを禁止する法律がないみたいですね。
茂木:それこそ、今は「LGBTQ」のように…ジェンダーだって、生物的には女性だけど、心は男性という方もいらっしゃいますもんね。
石川:そうなんですよね。そういう方も、自分は女性じゃないのにスカートを穿かなきゃいけないとか、ヒールを履かなきゃいけないという、女性らしさを一方的に押し付けられることに苦しんでいる人は多いみたいですし。
あと、そもそも女性であってもヒールやパンプス、スカートを穿きたくない女性もいるわけなんですよ。そこも性別で分けるんじゃなくて、「個」にして考えてもらいたいなと思います。
茂木:男性でもスカートを穿きたい人はいますからね。「男性だからこう、女性だからこう」という時代ではない気がするんですけど。
実際に「#KuToo」の問題提起なんですけど、ひとつのやり方として署名サイト「Change.org」で、この署名を呼びかけたところ2万の署名が集まったそうですね。
厚生労働省に提出されたということなんですけど、反響は大きかったですね。
石川:そうですね、2、3ヶ月で集まったのかな。
茂木:日本の意識が変わるきっかけになったと思うんですけど。
いろんなレスも来たということですが…ラジオで言っていいのかな、いわゆる「クソリプ」ってやつですか(笑)。
石川:そうですね(笑)。クソリプ、クソツイート、どっちもあります。
茂木:今回ですね、現代書館から出された石川優実さんの本「#KuToo」なんですけど、そこの部分が読んでて面白かったですね。
石川:面白かったですか、良かった。ありがとうございます(笑)。
茂木:反論のリプライをされている方々がいて。我々脳科学者は「認知的失敗」と言うんですけど。
読解力がちょっと足りなかったり、問題を違う形で解釈しちゃったりとか、全然違う論点を持ち出したりとか。あまり適切じゃないことを言われているというのが、脳科学者として「人間ってこうやって失敗するんだ」という。こういうのは人工知能の研究にも貢献するかもしれません、「人間はこういうミスをする」っていう。
「#KuToo」は、大変面白い本なんですよね。
●石川優実@#KuToo署名中 (@ishikawa_yumi) | Twitter
●#KuToo(クートゥー): 靴から考える本気のフェミニズム / 石川優実
(Amazon)
●現代書館