2019年12月14日
今週ゲストにお迎えしたのは、先週に引き続き、映画監督の周防正行さんです。
周防監督は、1956年、東京都のご出身。
立教大学文学部仏文学科をご卒業後、1989年、本木雅弘さん主演の「ファンシイダンス」で一般映画監督をデビューされます。
そして、再び、本木雅弘さんを組んだ1992年の「シコふんじゃった。」では
学生相撲の世界を描き、第16回日本アカデミー賞最優秀作品賞をはじめ、数々の映画賞を受賞。
その後、1996年の「Shall we ダンス?」では、第20回日本アカデミー賞13部門を独占受賞。
この「Shall we ダンス?」は、全世界で公開され、2005年にはハリウッドでリメイク版も製作されました。
2007年の「それでもボクはやってない」では、刑事裁判の内実を描いて、
センセーションを巻き起こし、キネマ旬報日本映画ベストワンなど、各映画賞を総なめにしました。
その後、2011年には「ダンシング・チャップリン」を、
2012年に「終の信託」、2014年には「舞妓はレディ」を発表され、ご活躍中でいらっしゃいます。
──リアリズムの追求
茂木:周防監督の映画をいつも本当に安心して観られるのは、監督って基本的に人間というものを信じて肯定してらっしゃるとこありませんか?
周防:好きは好きかもしれないですね(笑)。「Shall we ダンス?」を撮ったときも
ダンスホールで踊っている人たちの顔を見て“こんな日本人の顔を見たことがない”と思ったんですよ。
“これをみんなに知ってほしい”と、思ったんですよね。
日本人は、ステレオタイプでいろんな風に言われちゃうんですけど、世の中にはいろんな人がいて。
日本人だって一人一人こんなに違う、なんでこんな行動をするのか、なんでこんな風に考えるのか、というのを同じ日本人として考えたい、という思いはいつもあります。
だから、“究極なんだ?”って言われると、日本人論をいつもやってるっていう事なのかもしれないですね。
茂木:僕は本当に感動したのが、「それでもボクはやってない」の小日向さんが裁判官役で出てきて。
映画の中では、ともすれば、悪役になりがちな役柄だったんだけど、小日向さんの裁判官の論理というのかな……あの判決をする思考の後付って、“そういうのあるよね”って思っちゃったんですよ。
ああいう役の方にさえ、監督は愛を持って見てらっしゃるところがある感じがして。
周防:ああいうタイプの裁判官って確かにいらっしゃるんですね、観終わった後に弁護士の方に、「ああいう人いますね〜」と言われるんですよ。
そういう意味では、なぜこの人は、こういう理屈で、こういう判決文を書くんだろうって、そこを考えたいという方ではあります。
茂木:お話を伺っていて“なるほど”と思ったんですけど、一貫してリアリズムではあるってことですよね。
周防:それは現実そっくり、というリアリズムではなくて、僕の作る映画の中のリアリズム。
その世界に“こんな奴いないだろう”っていう人は登場させない。そのまま現実に現れたら、「そんな人いないでしょ」って言われるかもしれないけど。
僕の映画の世界の中では確かに存在している、竹中直人さんのやる役なんて、まさに僕の映画の中ではちゃんと存在しているけど、あのまま現実に飛び出してきたらやっぱり変な人ですよね。
その映画の中で、リアリズムが貫かれていれば、どんな突拍子もない話でも許せるっていうか…面白いと思うんですよね。
そこに、“この世界の中でそんなこと言う奴いる?”とか、“そんな態度の奴いる?”って思っちゃうと、そこから白けちゃう。そういう感じなんですよね。
茂木:今回の「カツベン!」でも、竹中直人さんは色々アドリブがあったそうですね
周防:竹中さんがすごいのは、映画のテーマとかそのシーンの意味は外さないようなアドリブなんですよ。
僕が描いている一本の線があるとすると、そこの線の端っこを渡り歩いてくる、どこまでその端っこを伸ばせるかっていうような、それでも僕の世界を押し広げる事ができる、そんな芝居をずっとしてくれるので。
僕は見ながら「これ面白い、OK」とか、「これちょっと線ハミ出た、NG」とか、そういう線の引き方をしてるのでなるべく自由に動いてもらう。
あの人は映画が大好きだから、映画監督の世界を大事にするという基本があるんですよ。好き勝手にやるアドリブじゃないんですよ。
その映画にふさわしいアドリブをなんとか作ってくれる、そういう人なんですよ。
茂木:今回の「カツベン!」では、井上真央さんのキスシーンがありますね。
あれはすごいですね。
周防:編集時に「ちょっと長いんじゃないですか?」って言われても、切りませんでした(笑)。
茂木:あれは一発OKだったということですね。
周防:井上真央さんは素晴らしかったです。キスシーンだけではなくて、すべて素晴らしいんですけど。
井上真央さんには遊びでその役を作るっていうか、そういうことをする彼女を見てみたくて。この映画の中の、美しい大人の女性という存在なので、主人公をちょっとあしらうような、そういうお姉さんにしたくて。キスシーンもそういうつもりで、魅力的なものにしたいなと思いました。
茂木:何か指示は出されたんですか?
周防:「とろけるようなキスをしてほしい」という指示で、あとは彼女の演技力ですね。
茂木:そして、竹野内豊さんの警官役もすごい存在感がありました。
周防:竹野内さんもびっくりしました。僕は、役者さんが現場に入ってから「このシーンは、こうやりましょう」って言わないんですね。
そのシーンを読んでいるわけだし、セットがあるわけだから。「じゃあ好きに動いてみてください」っていうところから始めるんですよ。
そのときに、竹野内さんがちょっととぼけたというか…無声映画時代の、活動写真のように撮りたかったから、ちょっとオーバーアクト気味に演じてもらっているんですけど。
そのオーバーアクトぶりが、今までの僕の知ってる竹野内さんじゃなくて、“そういう芝居でいってくれるんだったら、それでいきましょう”と思って、その延長線上にいろんな仕掛け、僕なりの演出を加えていったのですごく楽しかったです。
茂木:監督の映画は俳優さんが自由に演じることで、監督自身もいろいろ作品を考えるっていうところがあるっていうことですか?
周防:ありますね。役者さんだけじゃなくて、現場にいる技術スタッフ、助手さんに至るまで、何か気が付いたら意見が言えるように、そういう現場にしておきたいんですよ。
だから緩い現場にしておきたいんです。何を言っても怒られない、冗談でも何でもみんなが言えちゃう現場にしたくて。
そういう一言が素晴らしいアイデアではなかったとしても、そこから僕が新しい視点からものを見ることができる、今心がけているのは、誰もが自由にものを言える現場にすることです。
■プレゼントのお知らせ
番組でご紹介した、
12月13日(金)より、全国で公開されます。
周防正行監督の最新作 映画『カツベン!』
こちらの非売品のプレス用映画パンフレットを、
6名さまにプレゼントします!
ご希望の方は、必要事項を明記の上、
メッセージフォームより、ご応募ください。
茂木さんに聞きたい事や相談したい事など、
一緒にを添えていただけると嬉しいです。
尚、当選者の発表は、
商品の発送をもってかえさせていただきます。
たくさんのご応募、お待ちしております。
●周防正行監督最新作 映画『カツベン!』公式サイト
●映画『カツベン!』オフィシャル・アルバム
(Amazon)
周防監督は、1956年、東京都のご出身。
立教大学文学部仏文学科をご卒業後、1989年、本木雅弘さん主演の「ファンシイダンス」で一般映画監督をデビューされます。
そして、再び、本木雅弘さんを組んだ1992年の「シコふんじゃった。」では
学生相撲の世界を描き、第16回日本アカデミー賞最優秀作品賞をはじめ、数々の映画賞を受賞。
その後、1996年の「Shall we ダンス?」では、第20回日本アカデミー賞13部門を独占受賞。
この「Shall we ダンス?」は、全世界で公開され、2005年にはハリウッドでリメイク版も製作されました。
2007年の「それでもボクはやってない」では、刑事裁判の内実を描いて、
センセーションを巻き起こし、キネマ旬報日本映画ベストワンなど、各映画賞を総なめにしました。
その後、2011年には「ダンシング・チャップリン」を、
2012年に「終の信託」、2014年には「舞妓はレディ」を発表され、ご活躍中でいらっしゃいます。
──リアリズムの追求
茂木:周防監督の映画をいつも本当に安心して観られるのは、監督って基本的に人間というものを信じて肯定してらっしゃるとこありませんか?
周防:好きは好きかもしれないですね(笑)。「Shall we ダンス?」を撮ったときも
ダンスホールで踊っている人たちの顔を見て“こんな日本人の顔を見たことがない”と思ったんですよ。
“これをみんなに知ってほしい”と、思ったんですよね。
日本人は、ステレオタイプでいろんな風に言われちゃうんですけど、世の中にはいろんな人がいて。
日本人だって一人一人こんなに違う、なんでこんな行動をするのか、なんでこんな風に考えるのか、というのを同じ日本人として考えたい、という思いはいつもあります。
だから、“究極なんだ?”って言われると、日本人論をいつもやってるっていう事なのかもしれないですね。
茂木:僕は本当に感動したのが、「それでもボクはやってない」の小日向さんが裁判官役で出てきて。
映画の中では、ともすれば、悪役になりがちな役柄だったんだけど、小日向さんの裁判官の論理というのかな……あの判決をする思考の後付って、“そういうのあるよね”って思っちゃったんですよ。
ああいう役の方にさえ、監督は愛を持って見てらっしゃるところがある感じがして。
周防:ああいうタイプの裁判官って確かにいらっしゃるんですね、観終わった後に弁護士の方に、「ああいう人いますね〜」と言われるんですよ。
そういう意味では、なぜこの人は、こういう理屈で、こういう判決文を書くんだろうって、そこを考えたいという方ではあります。
茂木:お話を伺っていて“なるほど”と思ったんですけど、一貫してリアリズムではあるってことですよね。
周防:それは現実そっくり、というリアリズムではなくて、僕の作る映画の中のリアリズム。
その世界に“こんな奴いないだろう”っていう人は登場させない。そのまま現実に現れたら、「そんな人いないでしょ」って言われるかもしれないけど。
僕の映画の世界の中では確かに存在している、竹中直人さんのやる役なんて、まさに僕の映画の中ではちゃんと存在しているけど、あのまま現実に飛び出してきたらやっぱり変な人ですよね。
その映画の中で、リアリズムが貫かれていれば、どんな突拍子もない話でも許せるっていうか…面白いと思うんですよね。
そこに、“この世界の中でそんなこと言う奴いる?”とか、“そんな態度の奴いる?”って思っちゃうと、そこから白けちゃう。そういう感じなんですよね。
茂木:今回の「カツベン!」でも、竹中直人さんは色々アドリブがあったそうですね
周防:竹中さんがすごいのは、映画のテーマとかそのシーンの意味は外さないようなアドリブなんですよ。
僕が描いている一本の線があるとすると、そこの線の端っこを渡り歩いてくる、どこまでその端っこを伸ばせるかっていうような、それでも僕の世界を押し広げる事ができる、そんな芝居をずっとしてくれるので。
僕は見ながら「これ面白い、OK」とか、「これちょっと線ハミ出た、NG」とか、そういう線の引き方をしてるのでなるべく自由に動いてもらう。
あの人は映画が大好きだから、映画監督の世界を大事にするという基本があるんですよ。好き勝手にやるアドリブじゃないんですよ。
その映画にふさわしいアドリブをなんとか作ってくれる、そういう人なんですよ。
茂木:今回の「カツベン!」では、井上真央さんのキスシーンがありますね。
あれはすごいですね。
周防:編集時に「ちょっと長いんじゃないですか?」って言われても、切りませんでした(笑)。
茂木:あれは一発OKだったということですね。
周防:井上真央さんは素晴らしかったです。キスシーンだけではなくて、すべて素晴らしいんですけど。
井上真央さんには遊びでその役を作るっていうか、そういうことをする彼女を見てみたくて。この映画の中の、美しい大人の女性という存在なので、主人公をちょっとあしらうような、そういうお姉さんにしたくて。キスシーンもそういうつもりで、魅力的なものにしたいなと思いました。
茂木:何か指示は出されたんですか?
周防:「とろけるようなキスをしてほしい」という指示で、あとは彼女の演技力ですね。
茂木:そして、竹野内豊さんの警官役もすごい存在感がありました。
周防:竹野内さんもびっくりしました。僕は、役者さんが現場に入ってから「このシーンは、こうやりましょう」って言わないんですね。
そのシーンを読んでいるわけだし、セットがあるわけだから。「じゃあ好きに動いてみてください」っていうところから始めるんですよ。
そのときに、竹野内さんがちょっととぼけたというか…無声映画時代の、活動写真のように撮りたかったから、ちょっとオーバーアクト気味に演じてもらっているんですけど。
そのオーバーアクトぶりが、今までの僕の知ってる竹野内さんじゃなくて、“そういう芝居でいってくれるんだったら、それでいきましょう”と思って、その延長線上にいろんな仕掛け、僕なりの演出を加えていったのですごく楽しかったです。
茂木:監督の映画は俳優さんが自由に演じることで、監督自身もいろいろ作品を考えるっていうところがあるっていうことですか?
周防:ありますね。役者さんだけじゃなくて、現場にいる技術スタッフ、助手さんに至るまで、何か気が付いたら意見が言えるように、そういう現場にしておきたいんですよ。
だから緩い現場にしておきたいんです。何を言っても怒られない、冗談でも何でもみんなが言えちゃう現場にしたくて。
そういう一言が素晴らしいアイデアではなかったとしても、そこから僕が新しい視点からものを見ることができる、今心がけているのは、誰もが自由にものを言える現場にすることです。
■プレゼントのお知らせ
番組でご紹介した、
12月13日(金)より、全国で公開されます。
周防正行監督の最新作 映画『カツベン!』
こちらの非売品のプレス用映画パンフレットを、
6名さまにプレゼントします!
ご希望の方は、必要事項を明記の上、
メッセージフォームより、ご応募ください。
茂木さんに聞きたい事や相談したい事など、
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尚、当選者の発表は、
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