2019年12月07日
今週ゲストにお迎えしたのは、2019年12月13日(金)より、最新作「カツベン!」を、全国で公開されます。映画監督の周防正行さんです。
周防監督は、1956年、東京都のご出身。
立教大学文学部仏文学科をご卒業後、1989年、
本木雅弘さん主演の「ファンシイダンス」で一般映画監督をデビューされます。
そして、再び、本木雅弘さんを組んだ1992年の「シコふんじゃった。」では、
学生相撲の世界を描き、第16回日本アカデミー賞最優秀作品賞をはじめ、
数々の映画賞を受賞。
その後、1996年の「Shall we ダンス?」では、
第20回日本アカデミー賞13部門を独占受賞。
この「Shall we ダンス?」は、全世界で公開され、
2005年にはハリウッドでリメイク版も製作されました。
2007年の「それでもボクはやってない」では、刑事裁判の内実を描いて、
センセーションを巻き起こし、キネマ旬報日本映画ベストワンなど、
各映画賞を総なめにしました。
その後、2011年に「ダンシング・チャップリン」を、
2012年に「終の信託」を、2014年には「舞妓はレディ」を発表され、
ご活躍中でいらっしゃいます。
映画のタイトルにもなっている「カツベン」とは、無声映画時代に活躍した「活動弁士」の略。
「無声映画」とは、音声・音響、俳優の語るセリフが入っていない映画のことで、当時は「活動写真」とも呼ばれていました。
その映画を上映中に、内容を解説する事を専門にやっていたのが「活動弁士」。
今からおよそ100年前、楽士の奏でる音楽と共に、独自の“しゃべり”で、観客を映画に引き込む役割をされていました。
──映画「カツベン!」
茂木:今回の映画「カツベン!」を拝見していて、最初の30分ぐらいで、この世界が本当に素敵で愛おしくて、ずっとここにいたいって思うぐらい魅力的でした。
周防:ありがとうございます!
茂木:活動弁士を知らない方もいらっしゃると思うんですけども、この「カツベン!」という映画を観ると全て分かるようになってますよね。
周防:はい。日本映画の始めの一歩。あの当時の賑やかな活動写真を上映していた映画館の様子とか、当時の時代の雰囲気がわかっていただけるかなと思います。
今回、活動弁士という職業に焦点を当ててるんですけど、活動写真的な面白さの映画をやろうと。活動弁士が活躍する世界を、まるで活動写真のように撮ってしまおうというのが、いつものスタイルとは違うと思います。
映画の原点にあった面白さで、この映画を皆さんに観ていただこう。そういう形でスタートしました。
茂木:主人公の活動弁士を演じてらっしゃる成田凌さんは、100人ぐらい集まったオーディションで選ばれたそうですね。
周防:毎日毎日、若い役者さんと会い続けたんですね。それは、僕が今の若い役者をあまり知らなかったからなんです。
どんな人たちがいるのか、お会いして話をする良い機会だと思ったので、オーディションというよりも面接したみたいな感じですね。
いろんな役者さんと面接をして、最終的に成田さんに出ていただくことにしました。
茂木:成田さんの活動弁士役、ハマってらっしゃいましたね!
周防:そうですね。この映画で初めて活動弁士の喋りを聞く人がほとんどだから、活動弁士の喋りってすごい!面白い!と思っていただけないとこの映画が嘘になっちゃうので、とにかく成田さんには、活動弁士の語りを芸の域に高めてほしいとお願いして、本当に一生懸命練習してもらいました。
茂木:そして、ヒロイン役に抜擢されたのが黒島結菜さん。この方も綺麗ですけど、独特の存在感がありますね。
周防:そうなんです。あんなに可愛くて綺麗なのに、オーディションのときに「私は本当にここにいていいのか」みたいな迷いを感じさせるような子だったんですね。
まだ女優という仕事に対しても信じきれてないというか、女優ってどういうことなんだろう?みたいな若者らしい迷いを感じて。
誠実な若者が「私は何者なんだ」って問いかけるような感じがしたんですよね。それがすごくこの映画のヒロインにぴったりだなぁと思って、彼女にしました。
茂木:この映画はヒーロー・ヒロインの魅力も素晴らしいんですけども、一方で、竹中直人さん、渡辺えりさん、小日向文世さん、そして草刈民代さんといういつもの周防映画お馴染みの俳優さんたちも出ていらっしゃいます。
周防:彼らはシナリオを読んでいる中で、どんどんキャラクターが彼らの顔になっていっちゃったんですね。
茂木:脚本を読んでいるうちにすでに役者さんの顔が浮かんでいたんですか?
周防:そうなんです。今回、初めて自分の脚本じゃないんですね。
ずっと一緒に仕事をしていた片島章三さんという助監督をやってくれていた人が書いてくれたんですけど、彼の本を映画にするぞと思って読んでると、それぞれの役の顔が浮かんでくるんですよ。
なぜ若い役者にいっぱい会ったかと言うと、ヒーローとヒロインの顔が具体例に浮かんでこなかったからなんです。
茂木:今回の映画「カツベン!」は、いろんな伏線があったり、人間模様も非常に複雑に絡んでるんだけど、物語としてスッと入ってくるんですよね。
周防:それは片島さんの力だと思います。片島さんの脚本を読んだときに、活動弁士という言葉は知っていたけど無視してきたなって反省したんです。
学生時代にサイレント映画をよく観ていたんですけど、「サイレント映画はサイレントで見てこそ監督の意図がわかるんだ。監督はサイレントで撮ってるんだから完成形はサイレントだ。」と信じ込んで観ていたんです。
外国映画には活動弁士がいなくて字幕と音楽だけなのでそういう考えはなかったんですけど、日本映画については活動弁士は邪魔だろうと思っていたんですね。
それが、片島さんの本を読んだ時に、明治・大正・昭和。日本製のサイレント映画をサイレントのまま観てた人なんてこの世にいなかったんだと思ったんです。
それは、映画監督も知っていたはずだと。
茂木:作る側もそれを前提に撮っていたということですね。
周防:はい。そうすると、今までの僕の見方って違うんじゃないかなと思ったんです。だって、監督は活動弁士の喋りも音楽も、入ることがわかってて撮っていた。じゃあ、そのための準備は映画の中で絶対しているはずじゃないか。
そういう思いがあって、改めて活動弁士が日本の映画監督に与えた影響なんてことも考え始めたんです。
初期日本映画って何だったんだろうと思って、この作品を撮ろうという風に思いました。
茂木:本当に深い話ですよね。
監督が映画監督を志されたのは、蓮實重彦先生が授業で「映画というのは映っているものが全てだ」とおっしゃられたのがきっかけだと伺っているんですけど、
そういう意味においてはサイレント映画というのは映っているものが全てではあるんだけど、そこに活動弁士という語りが入ると。
周防:上映の際、日本では必ず入ったそうです。
これは、世界のどこにもない日本映画史独特の30年間だったわけですよ。
茂木:これは、日本の文化の伝統というのがあるんでしょうか。
周防:語りの文化の影響だと思います。
平家物語を語る琵琶法師とか、浄瑠璃とか。人形浄瑠璃なんてまさに無言の人形の芝居を外からの声によって物語として仕立て上げていく。
能にも歌舞伎にもそういうものがあって、落語、講談、浪曲…。日本の語り芸の幅ってすごいですよね。紙芝居なんて、まさにサイレント映画のようですよね。
そういう風に日本人って語りを聞いてストーリーを楽しむっていうことを身につけてきた民族なんだと思って、無音の絵がそこにあった時に誰かが喋った方がいいだろうって思って、そういう流れで誕生した仕事じゃないかなと思ったんです。
茂木:この作品は、映画に対する愛や、コミュニティみたいなものが本当に魅力的な作品で。色使いも本当に素敵ですよね!
周防:ありがとうございます。
さっき言っていたように、僕自身が活動弁士を無視していたということは、日本の活動写真時代の人たちへの尊敬が欠けてたってことじゃないかと思って。
そういう意味では、僕らの仕事の第一歩目をやった人たちだから、日本映画を面白くしたいと思ってみんなが頑張っていた時代なので、その時代をちゃんと描きたいなと思いました。
■プレゼントのお知らせ
番組でご紹介した、
12月13日(金)より、全国で公開されます。
周防正行監督の最新作 映画『カツベン!』
こちら劇場鑑賞券を3組6名さまにプレゼントします!
(劇場鑑賞券はムビチケとなります。)
ご希望の方は、必要事項を明記の上、
メッセージフォームより、ご応募ください。
茂木さんに聞きたい事や相談したい事など、
一緒に添えていただけると嬉しいです。
尚、当選者の発表は、
商品の発送をもってかえさせていただきます。
たくさんのご応募、お待ちしております。
●周防正行監督最新作 映画『カツベン!』公式サイト
●映画『カツベン!』オフィシャル・アルバム
(Amazon)
周防監督は、1956年、東京都のご出身。
立教大学文学部仏文学科をご卒業後、1989年、
本木雅弘さん主演の「ファンシイダンス」で一般映画監督をデビューされます。
そして、再び、本木雅弘さんを組んだ1992年の「シコふんじゃった。」では、
学生相撲の世界を描き、第16回日本アカデミー賞最優秀作品賞をはじめ、
数々の映画賞を受賞。
その後、1996年の「Shall we ダンス?」では、
第20回日本アカデミー賞13部門を独占受賞。
この「Shall we ダンス?」は、全世界で公開され、
2005年にはハリウッドでリメイク版も製作されました。
2007年の「それでもボクはやってない」では、刑事裁判の内実を描いて、
センセーションを巻き起こし、キネマ旬報日本映画ベストワンなど、
各映画賞を総なめにしました。
その後、2011年に「ダンシング・チャップリン」を、
2012年に「終の信託」を、2014年には「舞妓はレディ」を発表され、
ご活躍中でいらっしゃいます。
映画のタイトルにもなっている「カツベン」とは、無声映画時代に活躍した「活動弁士」の略。
「無声映画」とは、音声・音響、俳優の語るセリフが入っていない映画のことで、当時は「活動写真」とも呼ばれていました。
その映画を上映中に、内容を解説する事を専門にやっていたのが「活動弁士」。
今からおよそ100年前、楽士の奏でる音楽と共に、独自の“しゃべり”で、観客を映画に引き込む役割をされていました。
──映画「カツベン!」
茂木:今回の映画「カツベン!」を拝見していて、最初の30分ぐらいで、この世界が本当に素敵で愛おしくて、ずっとここにいたいって思うぐらい魅力的でした。
周防:ありがとうございます!
茂木:活動弁士を知らない方もいらっしゃると思うんですけども、この「カツベン!」という映画を観ると全て分かるようになってますよね。
周防:はい。日本映画の始めの一歩。あの当時の賑やかな活動写真を上映していた映画館の様子とか、当時の時代の雰囲気がわかっていただけるかなと思います。
今回、活動弁士という職業に焦点を当ててるんですけど、活動写真的な面白さの映画をやろうと。活動弁士が活躍する世界を、まるで活動写真のように撮ってしまおうというのが、いつものスタイルとは違うと思います。
映画の原点にあった面白さで、この映画を皆さんに観ていただこう。そういう形でスタートしました。
茂木:主人公の活動弁士を演じてらっしゃる成田凌さんは、100人ぐらい集まったオーディションで選ばれたそうですね。
周防:毎日毎日、若い役者さんと会い続けたんですね。それは、僕が今の若い役者をあまり知らなかったからなんです。
どんな人たちがいるのか、お会いして話をする良い機会だと思ったので、オーディションというよりも面接したみたいな感じですね。
いろんな役者さんと面接をして、最終的に成田さんに出ていただくことにしました。
茂木:成田さんの活動弁士役、ハマってらっしゃいましたね!
周防:そうですね。この映画で初めて活動弁士の喋りを聞く人がほとんどだから、活動弁士の喋りってすごい!面白い!と思っていただけないとこの映画が嘘になっちゃうので、とにかく成田さんには、活動弁士の語りを芸の域に高めてほしいとお願いして、本当に一生懸命練習してもらいました。
茂木:そして、ヒロイン役に抜擢されたのが黒島結菜さん。この方も綺麗ですけど、独特の存在感がありますね。
周防:そうなんです。あんなに可愛くて綺麗なのに、オーディションのときに「私は本当にここにいていいのか」みたいな迷いを感じさせるような子だったんですね。
まだ女優という仕事に対しても信じきれてないというか、女優ってどういうことなんだろう?みたいな若者らしい迷いを感じて。
誠実な若者が「私は何者なんだ」って問いかけるような感じがしたんですよね。それがすごくこの映画のヒロインにぴったりだなぁと思って、彼女にしました。
茂木:この映画はヒーロー・ヒロインの魅力も素晴らしいんですけども、一方で、竹中直人さん、渡辺えりさん、小日向文世さん、そして草刈民代さんといういつもの周防映画お馴染みの俳優さんたちも出ていらっしゃいます。
周防:彼らはシナリオを読んでいる中で、どんどんキャラクターが彼らの顔になっていっちゃったんですね。
茂木:脚本を読んでいるうちにすでに役者さんの顔が浮かんでいたんですか?
周防:そうなんです。今回、初めて自分の脚本じゃないんですね。
ずっと一緒に仕事をしていた片島章三さんという助監督をやってくれていた人が書いてくれたんですけど、彼の本を映画にするぞと思って読んでると、それぞれの役の顔が浮かんでくるんですよ。
なぜ若い役者にいっぱい会ったかと言うと、ヒーローとヒロインの顔が具体例に浮かんでこなかったからなんです。
茂木:今回の映画「カツベン!」は、いろんな伏線があったり、人間模様も非常に複雑に絡んでるんだけど、物語としてスッと入ってくるんですよね。
周防:それは片島さんの力だと思います。片島さんの脚本を読んだときに、活動弁士という言葉は知っていたけど無視してきたなって反省したんです。
学生時代にサイレント映画をよく観ていたんですけど、「サイレント映画はサイレントで見てこそ監督の意図がわかるんだ。監督はサイレントで撮ってるんだから完成形はサイレントだ。」と信じ込んで観ていたんです。
外国映画には活動弁士がいなくて字幕と音楽だけなのでそういう考えはなかったんですけど、日本映画については活動弁士は邪魔だろうと思っていたんですね。
それが、片島さんの本を読んだ時に、明治・大正・昭和。日本製のサイレント映画をサイレントのまま観てた人なんてこの世にいなかったんだと思ったんです。
それは、映画監督も知っていたはずだと。
茂木:作る側もそれを前提に撮っていたということですね。
周防:はい。そうすると、今までの僕の見方って違うんじゃないかなと思ったんです。だって、監督は活動弁士の喋りも音楽も、入ることがわかってて撮っていた。じゃあ、そのための準備は映画の中で絶対しているはずじゃないか。
そういう思いがあって、改めて活動弁士が日本の映画監督に与えた影響なんてことも考え始めたんです。
初期日本映画って何だったんだろうと思って、この作品を撮ろうという風に思いました。
茂木:本当に深い話ですよね。
監督が映画監督を志されたのは、蓮實重彦先生が授業で「映画というのは映っているものが全てだ」とおっしゃられたのがきっかけだと伺っているんですけど、
そういう意味においてはサイレント映画というのは映っているものが全てではあるんだけど、そこに活動弁士という語りが入ると。
周防:上映の際、日本では必ず入ったそうです。
これは、世界のどこにもない日本映画史独特の30年間だったわけですよ。
茂木:これは、日本の文化の伝統というのがあるんでしょうか。
周防:語りの文化の影響だと思います。
平家物語を語る琵琶法師とか、浄瑠璃とか。人形浄瑠璃なんてまさに無言の人形の芝居を外からの声によって物語として仕立て上げていく。
能にも歌舞伎にもそういうものがあって、落語、講談、浪曲…。日本の語り芸の幅ってすごいですよね。紙芝居なんて、まさにサイレント映画のようですよね。
そういう風に日本人って語りを聞いてストーリーを楽しむっていうことを身につけてきた民族なんだと思って、無音の絵がそこにあった時に誰かが喋った方がいいだろうって思って、そういう流れで誕生した仕事じゃないかなと思ったんです。
茂木:この作品は、映画に対する愛や、コミュニティみたいなものが本当に魅力的な作品で。色使いも本当に素敵ですよね!
周防:ありがとうございます。
さっき言っていたように、僕自身が活動弁士を無視していたということは、日本の活動写真時代の人たちへの尊敬が欠けてたってことじゃないかと思って。
そういう意味では、僕らの仕事の第一歩目をやった人たちだから、日本映画を面白くしたいと思ってみんなが頑張っていた時代なので、その時代をちゃんと描きたいなと思いました。
■プレゼントのお知らせ
番組でご紹介した、
12月13日(金)より、全国で公開されます。
周防正行監督の最新作 映画『カツベン!』
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(劇場鑑賞券はムビチケとなります。)
ご希望の方は、必要事項を明記の上、
メッセージフォームより、ご応募ください。
茂木さんに聞きたい事や相談したい事など、
一緒に添えていただけると嬉しいです。
尚、当選者の発表は、
商品の発送をもってかえさせていただきます。
たくさんのご応募、お待ちしております。
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