2019年11月23日
今週ゲストにお迎えしたのは、先週に引き続き、乙武洋匡さんです。
1976年、東京都生まれ。
1998年、大学在学中に上梓した『五体不満足』は、600万部のベストセラーとなり、話題を集めました。
2000年、早稲田大学政経学部をご卒業後は、スポーツライター、小学校の教諭などを務められます。
現在は、執筆、講演活動のほか、インターネットテレビ「AbemaTV」の報道番組、
『AbemaPrime』のMCとしてもご活躍中です。
そして11月1日、講談社より、著書「四肢奮迅」を刊行されました。
──自己肯定感を持てないことの生きづらさ
茂木:この本読んで改めて、乙武さんはアスリートだなぁと思いましたが、いよいよ東京オリンピック・パラリンピックが近づいてきましたね。注目してる競技とかありますか?
乙武:観ていて面白いのは車椅子バスケ、車椅子ラグビー、この辺りですね。
車椅子同士がぶつかり合い、その音が競技場中に響き渡るほど迫力というのは本当に面白いものがあります。
かといって、迫力一辺倒ではなくすごく戦略性が問われる緻密なスポーツでもあるんですね。車椅子バスケももちろん面白いんですが、車椅子ラグビーの日本代表は昨年の世界選手権で金メダルに輝いているんです!
そして、10月に行われた8カ国対抗戦というものでも3位に輝いてるんです。
茂木:乙武さん詳しいですね! では、オリンピック・パラリンピックはかなり注目されてると。
乙武:そうですね。特にパラリンピックでは私もいろんな競技を楽しませていただきましたし、認知度に比べるともっともっとこの魅力を伝えたいという思いが強くありますので、何かお役に立てたらなという風には思っています。
茂木:乙武さんは小学校の先生や作家、スポーツキャスターもされていて、今は「AbemaTV」でMCもされたりと色んな新しいことにチャレンジされていますけど、
“障害があるのに頑張ってる”っていう見方をする方もいらっしゃるでしょう。
乙武:はい。そうですね。
茂木:そこを抜いても、一人の人間としてすごいチャレンジをされてきているなと思うんです。その辺り、ご本人としてはどう思ってらっしゃいますか?
乙武:こうやってお名前を出させていただくことがおこがましいとは思いながらも、私が個人的に尊敬をして目指しているのが元メジャーリーガーの野茂英雄さんなんですね。
彼はもちろん選手としても素晴らしい活躍をなさったんですけれど、元々、近鉄バッファローズという日本のプロ野球のチームにいらっしゃった中で「自分はメジャーリーガーになるんだ」と決められました。
ですが、当時はまだ日本人の選手が海を渡ってメジャーリーガーになるというルールが整備されていなかったんです。そこでメジャーリーガーになると言って手をあげたところでマスコミから大バッシングを浴びたんです。
なんて身勝手なんだとか、傲慢だとか。それでも彼は意志を曲げずに自分で道を切り開いていき、結果海を渡りノーヒットノーランをしたり、新人王を取ったりという風に大活躍をした。
もちろん、イチローさんもすごいです。松井秀喜さんもいっぱいホームランを打った。みんなすごいです。
でも、彼らが活躍できたのは誰のおかげって言うと、野茂さんが悪者になりながらも意志を貫き通して海を渡ってくださったことで皆が行ける道が開けたわけですよね。
やっぱり日本って前例主義が非常にはびこってしまっているので、車椅子に乗った人が“こういうことやってみたいんです!”って言ったときに前例がないからって断られてしまうのは非常に悔しい思いをすることになると思うんです。
そのときに、「昔、乙武とかいうおっさんがこういうことを頑張ってやってたから、あなたも頑張ればできるかもね」って言ってもらえるような分野をなるべく多く作っておきたいなと思ってるんです。
色んなことに手を出してとか言われるんですけれども、たとえ周りからそう評価されようとも、今自分が生きている時代から評価を受けなくとも、30年後や50年後の時代にあのおっさんがいてよかったなと思ってもらえるような生き方や活動ができたらいいなと思っています。
茂木:そういうチャレンジ精神の大元には、自己肯定感というのがあるわけですもんね。それは、
お母さんやお父さんがそういう風に育ててくださったというのが大きいですか?
乙武:そうですね。無条件に愛を注いでくれるっていうのは非常に子供にとっては自信になりますし、安全基地というものになりますよね。
自分自身が何かをチャレンジするっていうときに自分自身の心が安定していないと、なかなか新しいことをやってみようという気持ちにはなりにくいですし、チャレンジするには失敗もつきものですから、失敗したらどうしようという風に悩んでしまうこともあります。でもそんなとき、誰かが無条件で応援してくれると思えてると頑張ろうという気持ちも湧いてくると思います。
そういった意味で、私は両親の育て方だったり、日頃から支えてくれる仲間たちには本当に感謝をしていますね。
茂木:本当に今の社会、自己肯定感を持てない方が多いんですよ。
乙武:これは決して皆さんのせいではないと思っていて。日本の社会が同質性、均質性というものを求めすぎているからだと思うんですね。
みんなが同じっていうのはそれによって安心できてる部分もあるんですけれども、逆に同じでないといけないという脅迫観念にもつながっていると思うんですよ。
でもね、冷静になって考えてみて欲しいんです。全員が同じはずないじゃないですか。顔形だけじゃなく、境遇が違えば価値観も違ってくる。みんな考え方とか信じてることも違う。
正義だって一つじゃない。同じことも右から見るか左から見るかによって全く見え方が違ってくる。違いがあって当たり前なんですよね。
でも、違いというものがあると自分はそのコミュニティからはじき出されてしまうんじゃないか、否定されてしまうんじゃないかと考えると不安でしょうがなくなる。そういったところが自己肯定感を持ちにくい原因だと思うんです。
これを克服していくために、僕らが勇気を持って同調圧力の強い社会を脱していこうよ。一人一人が違って当たり前っていう社会にしていこうよと。
これは決してマイノリティの方々のためだけに言ってるわけではなくて、自己肯定感を持てない全ての人にとって、多様性のある社会の方が生きやすいと思うんですよね。
茂木:乙武さんはご著書を通してそういうことをずっと示されてる気がします。
こういうことって言葉では入ってきますけど、どうしたら体でわかるんでしょうね。
乙武:これまでは意識と制度、この二本柱だと思っていたんですね。
そういった意味でメディアで人々の意識に働きかけるべく活動してきたつもりですし、今度は制度かなと思って政治の道を志しましたけれども、その道が閉ざされてしまったので、今私は三本目の柱として、テクノロジーというものに注目をしています。
例えば、今回の私の義足プロジェクトでいえば膝のモーターを組み込むことで歩けるようになったり、
吉藤オリィさんという方が開発した「分身ロボット」というものは病気や障害によって家で寝たきりの方でも、分身ロボットを操作することによってカフェで店員を務めることができるという画期的なものなのですが、こういうテクノロジーによって寝たきりの方にも働くという喜びを届けられたり…。
茂木先生が疑問を呈してくださったように、なかなか人々の意識を変えるというのは時間のかかることなので、テクノロジーで色々補っていく、解決していくということにも今後は力を入れてきたいなという風に思っています。
茂木:乙武さんが講談社から出されました「四肢奮迅」。ここにある意味ではテクノロジーによって人の可能性がどう広がっていくかということが乙武さんの経験を通して描かれていますね。
本当に素晴らしい本です。勇気をもらえるし、元気になりますね!
乙武:ありがとうございます!
■プレゼントのお知らせ
今夜のゲスト、乙武洋匡さんの著書『四肢奮迅』に、
乙武洋匡さんの直筆サインを入れて、3名の方にプレゼントいたします!
ご希望の方は、必要事項を明記の上、
メッセージフォームより、ご応募ください。
尚、当選者の発表は、
商品の発送をもってかえさせていただきます。
たくさんのご応募、お待ちしております。
●『乙武洋匡さんーTwitter』
●乙武 洋匡|note
●四肢奮迅/ 乙武洋匡
(Amazon)
1976年、東京都生まれ。
1998年、大学在学中に上梓した『五体不満足』は、600万部のベストセラーとなり、話題を集めました。
2000年、早稲田大学政経学部をご卒業後は、スポーツライター、小学校の教諭などを務められます。
現在は、執筆、講演活動のほか、インターネットテレビ「AbemaTV」の報道番組、
『AbemaPrime』のMCとしてもご活躍中です。
そして11月1日、講談社より、著書「四肢奮迅」を刊行されました。
──自己肯定感を持てないことの生きづらさ
茂木:この本読んで改めて、乙武さんはアスリートだなぁと思いましたが、いよいよ東京オリンピック・パラリンピックが近づいてきましたね。注目してる競技とかありますか?
乙武:観ていて面白いのは車椅子バスケ、車椅子ラグビー、この辺りですね。
車椅子同士がぶつかり合い、その音が競技場中に響き渡るほど迫力というのは本当に面白いものがあります。
かといって、迫力一辺倒ではなくすごく戦略性が問われる緻密なスポーツでもあるんですね。車椅子バスケももちろん面白いんですが、車椅子ラグビーの日本代表は昨年の世界選手権で金メダルに輝いているんです!
そして、10月に行われた8カ国対抗戦というものでも3位に輝いてるんです。
茂木:乙武さん詳しいですね! では、オリンピック・パラリンピックはかなり注目されてると。
乙武:そうですね。特にパラリンピックでは私もいろんな競技を楽しませていただきましたし、認知度に比べるともっともっとこの魅力を伝えたいという思いが強くありますので、何かお役に立てたらなという風には思っています。
茂木:乙武さんは小学校の先生や作家、スポーツキャスターもされていて、今は「AbemaTV」でMCもされたりと色んな新しいことにチャレンジされていますけど、
“障害があるのに頑張ってる”っていう見方をする方もいらっしゃるでしょう。
乙武:はい。そうですね。
茂木:そこを抜いても、一人の人間としてすごいチャレンジをされてきているなと思うんです。その辺り、ご本人としてはどう思ってらっしゃいますか?
乙武:こうやってお名前を出させていただくことがおこがましいとは思いながらも、私が個人的に尊敬をして目指しているのが元メジャーリーガーの野茂英雄さんなんですね。
彼はもちろん選手としても素晴らしい活躍をなさったんですけれど、元々、近鉄バッファローズという日本のプロ野球のチームにいらっしゃった中で「自分はメジャーリーガーになるんだ」と決められました。
ですが、当時はまだ日本人の選手が海を渡ってメジャーリーガーになるというルールが整備されていなかったんです。そこでメジャーリーガーになると言って手をあげたところでマスコミから大バッシングを浴びたんです。
なんて身勝手なんだとか、傲慢だとか。それでも彼は意志を曲げずに自分で道を切り開いていき、結果海を渡りノーヒットノーランをしたり、新人王を取ったりという風に大活躍をした。
もちろん、イチローさんもすごいです。松井秀喜さんもいっぱいホームランを打った。みんなすごいです。
でも、彼らが活躍できたのは誰のおかげって言うと、野茂さんが悪者になりながらも意志を貫き通して海を渡ってくださったことで皆が行ける道が開けたわけですよね。
やっぱり日本って前例主義が非常にはびこってしまっているので、車椅子に乗った人が“こういうことやってみたいんです!”って言ったときに前例がないからって断られてしまうのは非常に悔しい思いをすることになると思うんです。
そのときに、「昔、乙武とかいうおっさんがこういうことを頑張ってやってたから、あなたも頑張ればできるかもね」って言ってもらえるような分野をなるべく多く作っておきたいなと思ってるんです。
色んなことに手を出してとか言われるんですけれども、たとえ周りからそう評価されようとも、今自分が生きている時代から評価を受けなくとも、30年後や50年後の時代にあのおっさんがいてよかったなと思ってもらえるような生き方や活動ができたらいいなと思っています。
茂木:そういうチャレンジ精神の大元には、自己肯定感というのがあるわけですもんね。それは、
お母さんやお父さんがそういう風に育ててくださったというのが大きいですか?
乙武:そうですね。無条件に愛を注いでくれるっていうのは非常に子供にとっては自信になりますし、安全基地というものになりますよね。
自分自身が何かをチャレンジするっていうときに自分自身の心が安定していないと、なかなか新しいことをやってみようという気持ちにはなりにくいですし、チャレンジするには失敗もつきものですから、失敗したらどうしようという風に悩んでしまうこともあります。でもそんなとき、誰かが無条件で応援してくれると思えてると頑張ろうという気持ちも湧いてくると思います。
そういった意味で、私は両親の育て方だったり、日頃から支えてくれる仲間たちには本当に感謝をしていますね。
茂木:本当に今の社会、自己肯定感を持てない方が多いんですよ。
乙武:これは決して皆さんのせいではないと思っていて。日本の社会が同質性、均質性というものを求めすぎているからだと思うんですね。
みんなが同じっていうのはそれによって安心できてる部分もあるんですけれども、逆に同じでないといけないという脅迫観念にもつながっていると思うんですよ。
でもね、冷静になって考えてみて欲しいんです。全員が同じはずないじゃないですか。顔形だけじゃなく、境遇が違えば価値観も違ってくる。みんな考え方とか信じてることも違う。
正義だって一つじゃない。同じことも右から見るか左から見るかによって全く見え方が違ってくる。違いがあって当たり前なんですよね。
でも、違いというものがあると自分はそのコミュニティからはじき出されてしまうんじゃないか、否定されてしまうんじゃないかと考えると不安でしょうがなくなる。そういったところが自己肯定感を持ちにくい原因だと思うんです。
これを克服していくために、僕らが勇気を持って同調圧力の強い社会を脱していこうよ。一人一人が違って当たり前っていう社会にしていこうよと。
これは決してマイノリティの方々のためだけに言ってるわけではなくて、自己肯定感を持てない全ての人にとって、多様性のある社会の方が生きやすいと思うんですよね。
茂木:乙武さんはご著書を通してそういうことをずっと示されてる気がします。
こういうことって言葉では入ってきますけど、どうしたら体でわかるんでしょうね。
乙武:これまでは意識と制度、この二本柱だと思っていたんですね。
そういった意味でメディアで人々の意識に働きかけるべく活動してきたつもりですし、今度は制度かなと思って政治の道を志しましたけれども、その道が閉ざされてしまったので、今私は三本目の柱として、テクノロジーというものに注目をしています。
例えば、今回の私の義足プロジェクトでいえば膝のモーターを組み込むことで歩けるようになったり、
吉藤オリィさんという方が開発した「分身ロボット」というものは病気や障害によって家で寝たきりの方でも、分身ロボットを操作することによってカフェで店員を務めることができるという画期的なものなのですが、こういうテクノロジーによって寝たきりの方にも働くという喜びを届けられたり…。
茂木先生が疑問を呈してくださったように、なかなか人々の意識を変えるというのは時間のかかることなので、テクノロジーで色々補っていく、解決していくということにも今後は力を入れてきたいなという風に思っています。
茂木:乙武さんが講談社から出されました「四肢奮迅」。ここにある意味ではテクノロジーによって人の可能性がどう広がっていくかということが乙武さんの経験を通して描かれていますね。
本当に素晴らしい本です。勇気をもらえるし、元気になりますね!
乙武:ありがとうございます!
■プレゼントのお知らせ
今夜のゲスト、乙武洋匡さんの著書『四肢奮迅』に、
乙武洋匡さんの直筆サインを入れて、3名の方にプレゼントいたします!
ご希望の方は、必要事項を明記の上、
メッセージフォームより、ご応募ください。
尚、当選者の発表は、
商品の発送をもってかえさせていただきます。
たくさんのご応募、お待ちしております。
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●四肢奮迅/ 乙武洋匡
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