2019年11月09日
今週ゲストにお迎えしたのは、先週に引き続き、理論物理学の博士号を持つソムリエール・杉山明日香さんです。
東京都生まれ、佐賀県の唐津育ち。
大学院在学中より、有名予備校の数学講師として、教鞭をとる傍ら、
ワインスクール「ASUKA L’ecole du Vin」を主宰し、ソムリエ資格試験対策の講座を開講されていらっしゃいます。
また東京・西麻布では、ワインバー「GOBLIN(ゴブリン)」 を、
パリでは、日本酒&シャンパーニュをテーマにした和食店「ENYAA(エンヤー)」をプロデュースされるなど
ワインや日本酒関連のお仕事を、日本だけでなく海外でも精力的に行っています。
今週はリトル・モアブックスより発売中の杉山さんの著書「受験のプロに教わる ソムリエ試験対策講座 ワイン地図帳付き<2019年度版>」についてお話を伺いました。
──ワインの話は日常会話
茂木:まず、この表紙なんですけど、写真家の川内倫子さんが撮影されたものなんですよね。
杉山:実は、倫子さんとは大の仲良しなんです。彼女も大のワイン好きで、一緒に生産者の方をビジットしたり、毎年いろんなワイン産地を回っているんですね。
倫子さんも欧州でのお仕事が結構多いんですが、私も欧州に居ることが多いので、産地で直接で待ち合わせして写真を撮ってもらって、という感じです。この2019年度版は、コニャックで撮ったんです。
茂木:ブドウが映っている写真で、向こうから光が透けて見えていて、いかにも川内倫子ワールドといった感じで非常に芸術的な写真なんですけど、ご一緒に回られているんですね。
ワインと芸術ってヨーロッパでは大変深い関係がありますもんね。
杉山:ありますね。ヨーロッパにいると思うのが、どういう場面でも皆さんワインの話からされています。
茂木:そうなんですか!
杉山:例えば大きなパーティがあったとして、スタンディングでアペリティフのタイムが必ずあるので、そこでシャンパーニュが振舞われるというのが基本なんですけど、そしたら「このシャンパーニュは〜」っていう感じで、日本人がお天気の話をするみたいな感覚でワインの話を皆さん自然にされますね。
茂木:日本ではビジネスパーソンは国際的な教養がないとダメなんだ、みたいな本がベストセラーになっているんですけど、今のお話を伺うとワインの教養も欠かせないという感じですか?
杉山:ヨーロッパにおいては特に必要なのかなと思うことはあります。
茂木:ワインのエキスパートの試験であるソムリエ試験。ワインエキスパートの試験の対策として、『受験のプロに教わる ソムリエ試験対策講座 ワイン地図帳付き<2019年度版>』は非常に重要なんですけど、最近はCBTと言われるコンピューターを使った出題の形式になったんですよね。
杉山:はい。2018年からその形式に変わりまして。18、19年と二回、CBT方式で行われているんです。
今までと違うのは、それぞれ人によって問題が違ってくるんです。フランスとかイタリアとかのワイン大国の出題数が元々は多かったんですが、人によってはちょっとマニアックな国の問題が多くなっちゃったりもするんです。
茂木:コンピューターが選ぶんですね。
杉山:そうです。なので、そこは生徒さんによっては大変みたいです。
茂木:フランスとかイタリアだけではなく、ウルグアイとかも押さえておかないといけないと。
杉山さんが書かれた本にはワイン地図帳も付いていますが、ブルガリアやスロベニアなども…。
杉山:ワインを作っている国は基本的にはほぼ載っています。全てのワイン産地と、ヨーロッパなんかはワインの法律がすごく細かく決められているので、ワイン法の勉強もするんですよ。
フランスのワイン法を元としてEUのワイン法が出来ていまして。ドイツとかイタリアもフランスのワイン法をベースとしたものが各国それぞれオリジナルであるので、そのオリジナルの法律とEUワイン法の両方を併せ持った法律でワイン業界は運営されているんです。
茂木:ワインと日本酒を巡るいろんな面白い動きがあるじゃないですか。今、一番注目されてる動きって例えばどんなことですか?
杉山:今、海外で日本酒が浸透しつつあるところなんですよね。
海外では日本酒ではなく「酒」という名称で売られてるんですが、「酒」という名前は知っているけど、ちゃんとした酒を飲んだ事ないっていう方の方が多いんです。なので今はそこに皆さん注目しています。
フランス人の方ってやっぱり探究心旺盛ですし、味わいが好きなので酒を教えてくれってよく言われるんですよ。
なので皆さん作りから学びたいと思われますし、うちのレストランに来てるお客様も「これどうやって作るの?」と聞かれます。
茂木:杉山さんは、日本のワインスクールで日本人に教えているだけじゃなくて、フランス人に日本酒を教えているんですか!
杉山:お節介なので(笑)。
茂木:ご著書の中でも書かれていましたが、純米酒や大吟醸酒なんかもフランスの人が興味を持っているんですよね。
杉山:そうですね。純米吟醸・純米大吟醸とかの言葉まで知ってる方がいらっしゃるんですよ。でも、その差が何なのかっていうのを知りたいと。
茂木:それで、理論物理の博士号を持っている杉山さんが教えるわけですね。面白いなあ〜。
今、ワイン文化はますます成熟していて、しかも日本酒もそこに入ってきています。来年は東京オリンピックなんかもあってインバウンドのお客さんもいらして…。
ワインを巡る文化っていうのはこれからどうなっていくと思いますか?
杉山:日本酒がもともと日本では当たり前のように飲まれていた感じで、日本においてワインっていうのは日常に必要不可欠なもの。ワインブームとかではなくなってきてるなっていうのを感じています。
茂木:完全に定着してきていると。そんな中、我々がワインを楽しむ上で、こういう感じでやった方がいいんじゃないか、みたいなご提案はありますか。
杉山:ワインも日本酒も究極の食中酒だと思うので、お食事と一緒に合わせながら楽しんでいただくと、よりワインの美味しさが分かっていただけるかなと思います。
茂木:なるほど。杉山さんはワインを日本に輸入されるお仕事もされていますが、
プロとして、ワインを評価するときと、プライベートでワインを味わう、楽しむときというのはモードは変わるんですか?
杉山:変わりますね。プロとしてテイスティングするときは最初から最後まで香りと味わいに緊張感をもって飲んでるんですけど、
プライベートで飲む時は最初の一杯目は普段通りちょっとプロみたいに香りと味わいを確認するんですが、その後は何も気にせず美味しいな〜と思ってカパカパ飲んでます(笑)。
茂木:良かった。今、ちょっと安心しました(笑)。
●「Asuka L'ecole du Vin」公式ホームページ
●受験のプロに教わる ソムリエ試験対策講座
ワイン地図帳付き<2019年度版> / 杉山明日香
(Amazon)
東京都生まれ、佐賀県の唐津育ち。
大学院在学中より、有名予備校の数学講師として、教鞭をとる傍ら、
ワインスクール「ASUKA L’ecole du Vin」を主宰し、ソムリエ資格試験対策の講座を開講されていらっしゃいます。
また東京・西麻布では、ワインバー「GOBLIN(ゴブリン)」 を、
パリでは、日本酒&シャンパーニュをテーマにした和食店「ENYAA(エンヤー)」をプロデュースされるなど
ワインや日本酒関連のお仕事を、日本だけでなく海外でも精力的に行っています。
今週はリトル・モアブックスより発売中の杉山さんの著書「受験のプロに教わる ソムリエ試験対策講座 ワイン地図帳付き<2019年度版>」についてお話を伺いました。
──ワインの話は日常会話
茂木:まず、この表紙なんですけど、写真家の川内倫子さんが撮影されたものなんですよね。
杉山:実は、倫子さんとは大の仲良しなんです。彼女も大のワイン好きで、一緒に生産者の方をビジットしたり、毎年いろんなワイン産地を回っているんですね。
倫子さんも欧州でのお仕事が結構多いんですが、私も欧州に居ることが多いので、産地で直接で待ち合わせして写真を撮ってもらって、という感じです。この2019年度版は、コニャックで撮ったんです。
茂木:ブドウが映っている写真で、向こうから光が透けて見えていて、いかにも川内倫子ワールドといった感じで非常に芸術的な写真なんですけど、ご一緒に回られているんですね。
ワインと芸術ってヨーロッパでは大変深い関係がありますもんね。
杉山:ありますね。ヨーロッパにいると思うのが、どういう場面でも皆さんワインの話からされています。
茂木:そうなんですか!
杉山:例えば大きなパーティがあったとして、スタンディングでアペリティフのタイムが必ずあるので、そこでシャンパーニュが振舞われるというのが基本なんですけど、そしたら「このシャンパーニュは〜」っていう感じで、日本人がお天気の話をするみたいな感覚でワインの話を皆さん自然にされますね。
茂木:日本ではビジネスパーソンは国際的な教養がないとダメなんだ、みたいな本がベストセラーになっているんですけど、今のお話を伺うとワインの教養も欠かせないという感じですか?
杉山:ヨーロッパにおいては特に必要なのかなと思うことはあります。
茂木:ワインのエキスパートの試験であるソムリエ試験。ワインエキスパートの試験の対策として、『受験のプロに教わる ソムリエ試験対策講座 ワイン地図帳付き<2019年度版>』は非常に重要なんですけど、最近はCBTと言われるコンピューターを使った出題の形式になったんですよね。
杉山:はい。2018年からその形式に変わりまして。18、19年と二回、CBT方式で行われているんです。
今までと違うのは、それぞれ人によって問題が違ってくるんです。フランスとかイタリアとかのワイン大国の出題数が元々は多かったんですが、人によってはちょっとマニアックな国の問題が多くなっちゃったりもするんです。
茂木:コンピューターが選ぶんですね。
杉山:そうです。なので、そこは生徒さんによっては大変みたいです。
茂木:フランスとかイタリアだけではなく、ウルグアイとかも押さえておかないといけないと。
杉山さんが書かれた本にはワイン地図帳も付いていますが、ブルガリアやスロベニアなども…。
杉山:ワインを作っている国は基本的にはほぼ載っています。全てのワイン産地と、ヨーロッパなんかはワインの法律がすごく細かく決められているので、ワイン法の勉強もするんですよ。
フランスのワイン法を元としてEUのワイン法が出来ていまして。ドイツとかイタリアもフランスのワイン法をベースとしたものが各国それぞれオリジナルであるので、そのオリジナルの法律とEUワイン法の両方を併せ持った法律でワイン業界は運営されているんです。
茂木:ワインと日本酒を巡るいろんな面白い動きがあるじゃないですか。今、一番注目されてる動きって例えばどんなことですか?
杉山:今、海外で日本酒が浸透しつつあるところなんですよね。
海外では日本酒ではなく「酒」という名称で売られてるんですが、「酒」という名前は知っているけど、ちゃんとした酒を飲んだ事ないっていう方の方が多いんです。なので今はそこに皆さん注目しています。
フランス人の方ってやっぱり探究心旺盛ですし、味わいが好きなので酒を教えてくれってよく言われるんですよ。
なので皆さん作りから学びたいと思われますし、うちのレストランに来てるお客様も「これどうやって作るの?」と聞かれます。
茂木:杉山さんは、日本のワインスクールで日本人に教えているだけじゃなくて、フランス人に日本酒を教えているんですか!
杉山:お節介なので(笑)。
茂木:ご著書の中でも書かれていましたが、純米酒や大吟醸酒なんかもフランスの人が興味を持っているんですよね。
杉山:そうですね。純米吟醸・純米大吟醸とかの言葉まで知ってる方がいらっしゃるんですよ。でも、その差が何なのかっていうのを知りたいと。
茂木:それで、理論物理の博士号を持っている杉山さんが教えるわけですね。面白いなあ〜。
今、ワイン文化はますます成熟していて、しかも日本酒もそこに入ってきています。来年は東京オリンピックなんかもあってインバウンドのお客さんもいらして…。
ワインを巡る文化っていうのはこれからどうなっていくと思いますか?
杉山:日本酒がもともと日本では当たり前のように飲まれていた感じで、日本においてワインっていうのは日常に必要不可欠なもの。ワインブームとかではなくなってきてるなっていうのを感じています。
茂木:完全に定着してきていると。そんな中、我々がワインを楽しむ上で、こういう感じでやった方がいいんじゃないか、みたいなご提案はありますか。
杉山:ワインも日本酒も究極の食中酒だと思うので、お食事と一緒に合わせながら楽しんでいただくと、よりワインの美味しさが分かっていただけるかなと思います。
茂木:なるほど。杉山さんはワインを日本に輸入されるお仕事もされていますが、
プロとして、ワインを評価するときと、プライベートでワインを味わう、楽しむときというのはモードは変わるんですか?
杉山:変わりますね。プロとしてテイスティングするときは最初から最後まで香りと味わいに緊張感をもって飲んでるんですけど、
プライベートで飲む時は最初の一杯目は普段通りちょっとプロみたいに香りと味わいを確認するんですが、その後は何も気にせず美味しいな〜と思ってカパカパ飲んでます(笑)。
茂木:良かった。今、ちょっと安心しました(笑)。
●「Asuka L'ecole du Vin」公式ホームページ
●受験のプロに教わる ソムリエ試験対策講座
ワイン地図帳付き<2019年度版> / 杉山明日香
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