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Dream HEART vol.333 2012年ロンドン五輪 柔道女子57キロ級金メダリスト松本薫さん

2019年08月17日

今週ゲストにお迎えしたのは、2012年ロンドン五輪 柔道女子57キロ級金メダリストで、2月に現役を引退された松本薫さんです。

1987年 石川県金沢市生まれ。6歳より岩井柔道塾で柔道を始められます。
兼六中学、金沢学院東高校そして帝京大学をご卒業されまして、2012年ロンドンオリンピック柔道女子57kg以下級で金メダルを獲得されました。
当時、この階級では日本人初の金メダル獲得で、ロンドンオリンピックでのメダル獲得第一号としても話題を集めました。

その後、2016年にはリオデジャネイロ大会に出場し銅メダルを獲得され、今年の2月に現役引退を発表されました


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──ロンドン五輪という大舞台で


茂木:ロンドン五輪の決勝のときの表情って、ご自身でご覧になってどうですか?

松本:いや、ヤバイ顔してますね(笑)。

茂木:あのとき、ポイントが入ったと思ったら取り消しになったりしたじゃないですか。延長に入っていて相手選手の反則みたいなのもあって…凄くドラマチックな展開でしたよね。
日本人選手団としても第一号の金メダルだということで、選手団全体も一気に気分が盛り上がったでしょう。

松本:そうですね。それまで100%勝つと言われてた2選手が負けたので、私にとってはそれが大きな転機で。この人たちも人間だったんだと思って。
なので、私みたいな人間はもっと負ける可能性があるな、それだったら一つでも多く畳の上に立って試合をしたいなっていう風に思ったんです。
最初は緊張してガチガチだったんですけど2選手の負けを通して切り替えることができました。

茂木:松本選手はグランドスラム大会もどんどん制覇していて、世界レベルの大会でも優勝経験は何回もあったと思いますが、やっぱりオリンピックは特別でしたか?

松本:特別でしたね。4年に一度というのと、アスリートにとっての夢、そこに対して懸ける想いがやっぱり全然違うなって感じましたし、外国人選手も普段の試合では諦めるところが、オリンピックになると諦めないんですよ。

茂木:オリンピックは最高の舞台ですからね。

松本:だから、決勝ももっと楽に勝てると思ったんですよ。いつも勝っている選手だったので。
でも、全然投げれなくて、なかなか諦めてくれなくて…。

茂木:普段にないような力が出てくるのがオリンピックだと。

松本:そうですね。ビックリしました!

茂木:野獣というニックネームはご自身としてはいかがですか?

松本:ありがたかったですね。天才ではなかったので…。

茂木:松本選手はご自身でそうおっしゃいますけど、それはどうしてですか?

松本:今までの柔道家は何か長けているものがあったんですけど、私はどの技に対しても長けているものがなかったんですね。
私は戦い方を変えただけなんです。柔道で戦おうと思ったら勝てなかったので、柔道じゃなくて強く見せたりとか、相手に恐怖心を与えるとか。相手が100%の状態で戦わせない方のやり方で勝ったんです。

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茂木:松本さんの戦いぶりを観ていると劇画の主人公のように見えるんですけど、実際ご本人の中でも本番の一ヶ月くらい前からそういうスイッチを徐々に入れていくんだそうですね。

松本:そうです。ルーティンとして野獣スイッチみたいなのがあって。それを一個ずつ入れていくという。

茂木:具体的にいうと、野獣スイッチというのはどういうものなんですか?

松本:細かいことなんですけど、一つは女のスイッチを切ったりとか。

茂木:女性らしい仕草を辞めるということですか?

松本:辞めますね。普段は日焼け止めとかをちゃんと塗るんですけど、そういうのを塗らなくなったり…。
箸の持ち方を変えますね。男性は手の第1関節から曲げて握り込むように箸を持つんですけど、女性の場合は力が弱いので握り込むという作業はあまりできなくて、手のひらでそっと持って、基本的に女性は脇を開けないんです。
女性は曲線で動くんですけど、それをちょっと変えます。普段の仕草でも脇を開けて話を聞いたりとか。

茂木:そういうことを1ヶ月くらい前から意識しているんですね。

松本:そうですね。最終的に山にも籠ります。日の出前、真っ暗の中で走って第六感を研ぎ澄ませるんです。

茂木:日の出前の真っ暗な山道を走るんですか!

松本:めっちゃ怖いですよ。おじいちゃんが一番怖いんです(笑)。

茂木:どういうことですか?

松本:散歩をしているのか、早朝でもおじいちゃんがいるんですよね。

茂木:まさか、オリンピック出場選手が走っていると思わないから、おじいちゃんもビックリですね(笑)。
そうなると、普段から技量は磨いていると思いますが、やはり最後は精神なんですね。

松本:そうですね。普段の試合は1ヶ月で、オリンピックは半年くらいかかりました。

茂木:半年かけて! 半年間野獣生活をしていた究極の状態を、我々は決勝で観ていたんですね。
決勝は本当に激しい戦いでしたが、相手のミスを誘ったというか、反則を誘って勝負が決まったじゃないですか。あのときの気持ちはどうでした?

松本:判定が決まるまでは気が抜けない状態で。判定が来た瞬間は、小さい頃からの柔道人生がブワッと走馬灯のように走って、畳の上で初めて泣きました。

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来週も引き続き、2012年ロンドン五輪 柔道女子57キロ級金メダリストで、2月に現役を引退した松本薫さんをゲストにお迎えします。お楽しみに!