2019年07月06日
今週ゲストにお迎えしたのは、「デア・リング東京オーケストラ」の創立者で、指揮者の西脇義訓さんです。
1948年愛知県生まれ。
15歳でチェロを始め、大学では慶應義塾ワグネル・ソサィエティー・オーケストラに在籍されました。
1971年に日本ホログラム、現在のユニバーサル ミュージックに入社されました。
2001年には、録音家の福井末憲さんとともに、N&F社を設立。
長岡京室内アンサンブル、サイトウ・キネン・オーケストラ チェリストの青木十良さんなどの録音CD制作に携われています。
そして、2013年にはデアリング東京オーケストラを創立、録音プロデューサーと指揮者を兼ねて現在に至ります。
──人間の心の香りのする音楽
茂木:デアリング東京オーケストラは、“原点に返った演奏”ということなんですけれども
どういう点が今までのオーケストラと違うところなのでしょうか?
西脇:結果的には、今のオーケストラの常識とされているものの、ほぼすべて逆になりました。
それは逆にしようとして逆にしたわけではなくて、理想的な音楽、響きを作る上で結果的に逆になったんです。
原点に戻るという意味は、音楽の一番大切なこと、特に演奏で大切なことはお互いによく聴き合うということだと思うんですよね。聴くということを追求して、デアリング東京オーケストラの一番テーマにしていることが空間力なんですよ。
茂木:はい。
西脇:我々のオーケストラは指揮者が一番中心で偉いというわけではなくて、どちらかというと、フラットな組織で、コンサートマスターもトップもいないんですよ。
茂木:コンサートマスターがいないんですか!
西脇:全員がフラット、上下関係は一切ないですよ。一番大切なのは、みんなで合わせるんだけど隣とか指揮者とかトップとか、コンサートマスターに合わせるのではなくて、空間で合わせようということなんです。
茂木:お互いに空間の中で聴き合って合わせていくんですね。
西脇:ホールの空間に、いかにいい響き、良い流れで音楽を作っていくことが大切なことだと思うようになりまして。
それが音楽の原点だと思うんだけど、実際にやっていることは全員が前向いてやったのですが、空間を感じながら耳を澄ませていると、人間はいろんな感覚が開いてくるんですね。
ちょっとした気配などに敏感になるので、全体でどういう方向へ行くかというのが分かるようになってくるものなんですよ。
茂木:プロデュースはずっとされてきたわけですけど、“オーケストラを作ってしまおう”と、思いが募ったのはどうしてなんですか?
西脇:オーケストラの録音はずいぶんしたんですけど、自分が求めている音、響きを作るためには自分でやるしかないと思ったんですよ。
茂木:なるほど、それで若手中心のオーケストラを作られたわけですね。
今、新しいオーケストラを作るというのは、クラシック界では一つのトレンドみたいなものがあるのでしょうか?
西脇:ないことはないですけど、日本は東京だけで10のプロのオーケストラがあるわけですよ。
札幌から仙台、名古屋、金沢、大阪には4つぐらいあるし、広島、九州と全国ほぼプロのオーケストラはできたので大体整ったと思います。
その中で新しいオーケストラを作る意味があるのかというのは、ただ作れば良いというものでもない状況にはなってきていると思います。
こういうオーケストラの響きは、昔はあったと思いますが、最近ではオーケストラが技術的にも革新されてきたし、いろんな意味で機能的には良くなってきたんだけれども、音が大きくなりすぎていて調和のとれたオーケストラが世界中から消えていっていて、どこを聴いても同じようなオーケストラになりつつあるんですよ。
茂木:「デアリング東京オーケストラ」は、画期的な事件だというぐらい新しいと、最初は録音から始められたんですか?
西脇:録音は通常の業務なので、オーケストラを集めて録音してCDにして少しずつ聴いてもらったり。
実際にやってみないと分からないこともいっぱいあるので、4回は録音だけをやっていました。
茂木:このオーケストラの奏者は、全員客席に向かって座られるんですか?
西脇:最初は前を向いてやっていて、その他にもいろいろな配置でやっています。
茂木:若手の音楽家達が中心ということですが、そういう活躍の場を得られるというのは嬉しいですよね。
西脇:そうですね。最初集める時はある程度説明するんですけど、みんな分からないわけですよね。半信半疑でみんな来たと思うんですよ。
かなりの人が反発して、場合によっては暴動が起きるかもわかんないってくらい思っていたんですよ。
茂木:うんうん。
西脇:実際に録音して、終わった後に“自分が今まで経験したことのないやり方だけど、演奏してて楽しかった、気持ち良かった”と言ってくれたんですよ
茂木:オーケストラのメンバーも新しい体験だったんですね。
西脇:オーケストラのメンバーが支持してくれたから、ここまで続いたのであって。
仕事としてやるということもあるでしょうけど、単なる仕事としてやるんだったら、これほど一生懸命にやってくれないと思います。
メンバーが、「また、次ぜひやりましょうよ!」と言ってくる人が多いので続いているのだと思います。
茂木:聴衆の感想としては、「開演早々、音の良さにビックリしました」、それから「久しぶりに人間の顔をした音楽、人間の心の香りのする音楽を聴きました」と、絶賛じゃないですか!
西脇:お客さんからもそういう感想を頂いて、本当に嬉しかったし、僕だけでなくオーケストラをやっている人たち全員が望んでプロになっていると思うんですよね。
●デア・リング東京オーケストラ 公式サイト
9/4(水)東京オペラシティでのコンサートチケット販売中!
●N&F 公式サイト
来週も引き続き、若手中心のプロ楽団「デア・リング東京オーケストラ」の創立者で
指揮者であり、プロデューサーでもある、西脇義訓さんをお迎えしてお送りいたします。
お楽しみに!
1948年愛知県生まれ。
15歳でチェロを始め、大学では慶應義塾ワグネル・ソサィエティー・オーケストラに在籍されました。
1971年に日本ホログラム、現在のユニバーサル ミュージックに入社されました。
2001年には、録音家の福井末憲さんとともに、N&F社を設立。
長岡京室内アンサンブル、サイトウ・キネン・オーケストラ チェリストの青木十良さんなどの録音CD制作に携われています。
そして、2013年にはデアリング東京オーケストラを創立、録音プロデューサーと指揮者を兼ねて現在に至ります。
──人間の心の香りのする音楽
茂木:デアリング東京オーケストラは、“原点に返った演奏”ということなんですけれども
どういう点が今までのオーケストラと違うところなのでしょうか?
西脇:結果的には、今のオーケストラの常識とされているものの、ほぼすべて逆になりました。
それは逆にしようとして逆にしたわけではなくて、理想的な音楽、響きを作る上で結果的に逆になったんです。
原点に戻るという意味は、音楽の一番大切なこと、特に演奏で大切なことはお互いによく聴き合うということだと思うんですよね。聴くということを追求して、デアリング東京オーケストラの一番テーマにしていることが空間力なんですよ。
茂木:はい。
西脇:我々のオーケストラは指揮者が一番中心で偉いというわけではなくて、どちらかというと、フラットな組織で、コンサートマスターもトップもいないんですよ。
茂木:コンサートマスターがいないんですか!
西脇:全員がフラット、上下関係は一切ないですよ。一番大切なのは、みんなで合わせるんだけど隣とか指揮者とかトップとか、コンサートマスターに合わせるのではなくて、空間で合わせようということなんです。
茂木:お互いに空間の中で聴き合って合わせていくんですね。
西脇:ホールの空間に、いかにいい響き、良い流れで音楽を作っていくことが大切なことだと思うようになりまして。
それが音楽の原点だと思うんだけど、実際にやっていることは全員が前向いてやったのですが、空間を感じながら耳を澄ませていると、人間はいろんな感覚が開いてくるんですね。
ちょっとした気配などに敏感になるので、全体でどういう方向へ行くかというのが分かるようになってくるものなんですよ。
茂木:プロデュースはずっとされてきたわけですけど、“オーケストラを作ってしまおう”と、思いが募ったのはどうしてなんですか?
西脇:オーケストラの録音はずいぶんしたんですけど、自分が求めている音、響きを作るためには自分でやるしかないと思ったんですよ。
茂木:なるほど、それで若手中心のオーケストラを作られたわけですね。
今、新しいオーケストラを作るというのは、クラシック界では一つのトレンドみたいなものがあるのでしょうか?
西脇:ないことはないですけど、日本は東京だけで10のプロのオーケストラがあるわけですよ。
札幌から仙台、名古屋、金沢、大阪には4つぐらいあるし、広島、九州と全国ほぼプロのオーケストラはできたので大体整ったと思います。
その中で新しいオーケストラを作る意味があるのかというのは、ただ作れば良いというものでもない状況にはなってきていると思います。
こういうオーケストラの響きは、昔はあったと思いますが、最近ではオーケストラが技術的にも革新されてきたし、いろんな意味で機能的には良くなってきたんだけれども、音が大きくなりすぎていて調和のとれたオーケストラが世界中から消えていっていて、どこを聴いても同じようなオーケストラになりつつあるんですよ。
茂木:「デアリング東京オーケストラ」は、画期的な事件だというぐらい新しいと、最初は録音から始められたんですか?
西脇:録音は通常の業務なので、オーケストラを集めて録音してCDにして少しずつ聴いてもらったり。
実際にやってみないと分からないこともいっぱいあるので、4回は録音だけをやっていました。
茂木:このオーケストラの奏者は、全員客席に向かって座られるんですか?
西脇:最初は前を向いてやっていて、その他にもいろいろな配置でやっています。
茂木:若手の音楽家達が中心ということですが、そういう活躍の場を得られるというのは嬉しいですよね。
西脇:そうですね。最初集める時はある程度説明するんですけど、みんな分からないわけですよね。半信半疑でみんな来たと思うんですよ。
かなりの人が反発して、場合によっては暴動が起きるかもわかんないってくらい思っていたんですよ。
茂木:うんうん。
西脇:実際に録音して、終わった後に“自分が今まで経験したことのないやり方だけど、演奏してて楽しかった、気持ち良かった”と言ってくれたんですよ
茂木:オーケストラのメンバーも新しい体験だったんですね。
西脇:オーケストラのメンバーが支持してくれたから、ここまで続いたのであって。
仕事としてやるということもあるでしょうけど、単なる仕事としてやるんだったら、これほど一生懸命にやってくれないと思います。
メンバーが、「また、次ぜひやりましょうよ!」と言ってくる人が多いので続いているのだと思います。
茂木:聴衆の感想としては、「開演早々、音の良さにビックリしました」、それから「久しぶりに人間の顔をした音楽、人間の心の香りのする音楽を聴きました」と、絶賛じゃないですか!
西脇:お客さんからもそういう感想を頂いて、本当に嬉しかったし、僕だけでなくオーケストラをやっている人たち全員が望んでプロになっていると思うんですよね。
●デア・リング東京オーケストラ 公式サイト
9/4(水)東京オペラシティでのコンサートチケット販売中!
●N&F 公式サイト
来週も引き続き、若手中心のプロ楽団「デア・リング東京オーケストラ」の創立者で
指揮者であり、プロデューサーでもある、西脇義訓さんをお迎えしてお送りいたします。
お楽しみに!