2019年06月15日
今週ゲストにお迎えしたのは、先週に引き続き、今年の8月1日から開催される「あいちトリエンナーレ2019」の芸術監督に抜擢された、ジャーナリスト・津田大介さんです。
津田大介さんは、1973年東京都のご出身。
早稲田大学社会科学部をご卒業後、
メディアとジャーナリズム、著作権、コンテンツビジネス、表現の自由などを
専門分野として執筆活動を行っていらっしゃいます。
近年は地域の振興、社会起業、テクノロジーが社会を
どのように変えるかをテーマに取材を続けていらっしゃいます。
2013年、世界経済フォーラム(ダボス会議)の
「ヤング・グローバル・リーダー」に選出。
現在は、早稲田大学文学学術院教授、
一般社団法人インターネットユーザー協会の代表理事でもいらっしゃいます。
──インターネットの在り方
茂木:津田さんは早稲田大学社会科学部在学中にIT関連のライターとして執筆活動を始められて、1998年には『すぐ効くNEC PC‐98シリーズのトラブルシューティング』という本を出されているんですよね。
津田:僕、元々はパソコンライターなんですよ。全然大学で勉強しない、本当にダメ大学生の典型みたいなやつで、でも大学時代にパソコンとかインターネットが来ていたので、そればっかりはやってたんですね。
その知識だけは人よりあったので、自分が何か書けるとしたらこれしかないだろうってことで、アルバイトでいろんなライターさんのお手伝いをしながらパソコン、インターネット雑誌業界に潜り込んで。そこからキャリアがスタートしました。
茂木:そして、Twitterのアカウント作られたのが2007年ということで、かなり初期の頃にアカウントを作られてますね。
最初はIT関連のライターとしてスタートされて、その後どんどん仕事の幅を広げて来られて、現在は早稲田大学院の教授をされていますけど、早稲田ってジャーナリストとかメディア志望の方が多いじゃないですか。
早稲田の独特の雰囲気みたいなのがあったんじゃないですか?
津田:早稲田ってやっぱりマンモス大学なんですよね。実は2番目に学生数が多い大学で、他の大学との一番の違いっていうのが、高田馬場の近辺にキャンパスが集中しているんですよ。多くの大学って1、2年と3、4年が違ったりするじゃないですか。
慶応だったら日吉と三田だったり、東大だったら駒場と本郷とかで。でも、早稲田の場合4年間で同じ場所に4万人ぐらいいるので、すごい巨大なコミュニティのるつぼができるんですよね。
面白い奴もつまんない奴もいっぱいいて、自由に何か色々できるっていう感じがやっぱり早稲田のいいところだなと思いますよね。
茂木:インターネットの功罪って今いろいろ言われていて。当時はインターネットってより民主的で開かれた社会にすると言われていたところが、最近はフェイクニュースの問題だとか色々出てきているじゃないですか。
津田さんは、今インターネットをどうご覧になっていますか?
津田:元々やっぱり僕インターネットが好きでこういう仕事してるので、今もインターネットが好きな部分は当然あるんですよね。例えば、TwitterとかFacebookみたいなソーシャルメディアが普及したことで、社会的な可能性も沢山良いところはあると思うんです。
ここ10年くらいに出てきたインターネットの可能性で一番素晴らしいと思うものは、クラウドファンディングだと思うんですよね。こういうことをやりたい、でもお金とか人脈とかスポンサーがいないので実現できないっていう人が、意志とかプランを示すことでそれに共感した人が事前にお金を集めていろんなこと実現できる。
こういうのができたことはインターネットのすごくいいところだと思うんですけど、同時にインターネットの活動がマスメディア並みに影響力を持つようになって、広告がどんどんインターネットの方に流れていくわけですよね。
そうすると、インターネットの広告料目当てに質の悪い情報を流したり、それがいわゆるフェイクニュースですよね。あるいはヘイトスピーチみたいなものに繋がるような状況になっている。
インターネットの問題っていうのは、広告の問題と切り離せなくなっているということだと思うんです。
茂木:なるほど。
津田:広告とか資本の論理にインターネットの情報っていうのが歪められる機会が増えてしまったが故に、今いろんなトラブルが起きていて、そのうちの一つはブレグジットもそうでしょうし、トランプ大統領の誕生とかにも影響していますし、沖縄の基地問題とかに対して心ないことを言う人がいるとか、そういうことも全部含めてすごく政治利用されている。それが資本の論理によって起こされているということ。
これが今起きている問題の本質なんだろうなと思いますね。
茂木:津田さんは、2012年に出された『動員の革命 - ソーシャルメディアは何を変えたのか』、『ウェブで政治を動かす!』と、この辺りからインターネットと政治、民主主義の関係について色々と考えてこられてると思うんですけど、海外の論調なんかを見ていても民主主義の危機だというような見方もあるんですけど、今後どうすればいいですか?
津田:2012年に書いた時は、僕もかなりポジティブな可能性というのを論じてはいたんですけど、当時の認識は僕もやっぱり甘かったなって反省してるとこもあって。
インターネットってすごく巨大な管理者がいるわけじゃないですよね。巨大な管理者がいるわけではない、誰でも使えるものであるがゆえに何か問題が起こった時に規制する手段というのがない。
ここが大きな問題なんですけど、これはなかなかに示唆的で。インターネットって管理者がいないという話をしたじゃないですか。
でも、中国のインターネットって政府が管理してますよね。だから、中国にはフェイクニュースとかヘイトスピーチの問題ってあんまり存在しないわけですよ。ただその代わり、中国には政府を批判する自由がないっていうような問題がある。
これは広告の問題でもあるけれども、インターネットの管理、流れる情報が社会的な問題を起こすぐらいの影響力を持っている時にどう対処していくのかっていう、人類がこれから解決しなきゃいけない問題に今直面していて。
それに対しての答えを誰も持っていないという状況でもあるということですね。
茂木:今、学生なんかはインターネットにいろんな可能性を見ていて。
自分が生きていく上でどうそれを使っていくかだったり、自分の価値を高めたり、活動をどう広げていくか模索している人も多いと思うんですけれど、
津田さんはある意味で大先輩で成功した事例じゃないですか。これからの若い人はどうすればいいんですかね?
津田:やっぱり、チャンスはすごく平等になってきてると思うんですよね。かつてはそういう情報を発信したいだとか、自分で表現をしたいと思っても場が少なかったんですよ。
表現をするところの土俵に上がるまでがすごく大変だったんですけど、今は何かやろうと思ったらすぐに出来ますよね。
何なら、スマホ一個で表現だって出来てしまう。
だからこそ大変だっていう部分もあるとは思うんですけど、やりたいことをまず見つける、あるいは表現したいことを見つけてそれをインターネットに公開して、いろんな人と繋がったり学んだりして自分の表現したいことの質を高めていくっていう、これの繰り返しだとは思いますけどね。
茂木:学生の中には、Twitterなどでアクティブになると炎上が怖いという意見もありまして。津田さんは炎上を何回も経験されていると思うんですけど、どういう心構えでいるべきなんでしょう?
津田:自分が悪くて、誤解を招くような発言で炎上するっていうことはもちろん反省したりもするんですけど、今回の『あいちトリエンナーレ』で、美術業界が男性に偏っているので、これを少し変えるきっかけとして男女平等にしますって言っていろんな議論が沸騰している。これはいい炎上だと思うんですよ。
みんなが気になって、これを話題にするしかないみたいな状況になる問題提起というのは、問題提起自体が多分よかったっていう部分もあると思うので、炎上と言っても自分が誰かを傷つけたことで炎上してるって言うんだったら謝った方がいいでしょうけど、
そうではなくて、いろんな人がそれには触れざるを得なくなるような炎上だったら恐れることはないと思います。
それをやることによって敵も増えるかもしれないけれども、それ以上に味方が増えるっていう事もあるので、炎上している時には、自分のことを応援してくれる人もいるんだっていうことを想像する力っていうのも大事だと思いますけどね。
茂木:批判的なコメントの背後には、実は賛同している人もいると。
津田:それを言ってくれる人もいるし、言わない人もいますね。
今回の『あいちトリエンナーレ』の取り組みにしても、僕一応Twitterで全部検索して見ているんですけど、9割賛成してますよ。
でも、やっぱり残り1割ぐらいの人が文句を言ってるっていう状況です。だけど、それを定量的に見ることで、この問題はどこまでどういう風に届いてるのかっていうのも予想することができるんです。
自分が表現して、その表現に対する反応みたいなものも見れるっていうのはいい時代でもあるんですけど、その表現に対してどういう反応があるのかっていうのはネットだけじゃないですからね。
世の中にはネットをやらない人もたくさんいるので、ネットはあくまで一つの参考にしつつ、未知の考え方とか、いろんな人と出会うためのツールとして使っていくっていうのはいいと思いますけどね。
今週は、番組特製のエコバッグ と 3,000円分の図書カードをプレゼント!
エコバッグの色は、紺色と茶色の2種類あります。どれが来るかは届いてからのお楽しみ!
ご希望の方は、必要事項を明記の上、
メッセージフォームより、ご応募ください。
尚、当選者の発表は、
商品の発送をもってかえさせていただきます。
たくさんのご応募、お待ちしております。
●あいちトリエンナーレ2019
● 津田大介 (@tsuda) · Twitter
●津田大介 公式サイト
来週は、お笑い芸人「エレキコミック」の、やつい いちろうさんをお迎えしてお送りいたします。
お楽しみに!
津田大介さんは、1973年東京都のご出身。
早稲田大学社会科学部をご卒業後、
メディアとジャーナリズム、著作権、コンテンツビジネス、表現の自由などを
専門分野として執筆活動を行っていらっしゃいます。
近年は地域の振興、社会起業、テクノロジーが社会を
どのように変えるかをテーマに取材を続けていらっしゃいます。
2013年、世界経済フォーラム(ダボス会議)の
「ヤング・グローバル・リーダー」に選出。
現在は、早稲田大学文学学術院教授、
一般社団法人インターネットユーザー協会の代表理事でもいらっしゃいます。
──インターネットの在り方
茂木:津田さんは早稲田大学社会科学部在学中にIT関連のライターとして執筆活動を始められて、1998年には『すぐ効くNEC PC‐98シリーズのトラブルシューティング』という本を出されているんですよね。
津田:僕、元々はパソコンライターなんですよ。全然大学で勉強しない、本当にダメ大学生の典型みたいなやつで、でも大学時代にパソコンとかインターネットが来ていたので、そればっかりはやってたんですね。
その知識だけは人よりあったので、自分が何か書けるとしたらこれしかないだろうってことで、アルバイトでいろんなライターさんのお手伝いをしながらパソコン、インターネット雑誌業界に潜り込んで。そこからキャリアがスタートしました。
茂木:そして、Twitterのアカウント作られたのが2007年ということで、かなり初期の頃にアカウントを作られてますね。
最初はIT関連のライターとしてスタートされて、その後どんどん仕事の幅を広げて来られて、現在は早稲田大学院の教授をされていますけど、早稲田ってジャーナリストとかメディア志望の方が多いじゃないですか。
早稲田の独特の雰囲気みたいなのがあったんじゃないですか?
津田:早稲田ってやっぱりマンモス大学なんですよね。実は2番目に学生数が多い大学で、他の大学との一番の違いっていうのが、高田馬場の近辺にキャンパスが集中しているんですよ。多くの大学って1、2年と3、4年が違ったりするじゃないですか。
慶応だったら日吉と三田だったり、東大だったら駒場と本郷とかで。でも、早稲田の場合4年間で同じ場所に4万人ぐらいいるので、すごい巨大なコミュニティのるつぼができるんですよね。
面白い奴もつまんない奴もいっぱいいて、自由に何か色々できるっていう感じがやっぱり早稲田のいいところだなと思いますよね。
茂木:インターネットの功罪って今いろいろ言われていて。当時はインターネットってより民主的で開かれた社会にすると言われていたところが、最近はフェイクニュースの問題だとか色々出てきているじゃないですか。
津田さんは、今インターネットをどうご覧になっていますか?
津田:元々やっぱり僕インターネットが好きでこういう仕事してるので、今もインターネットが好きな部分は当然あるんですよね。例えば、TwitterとかFacebookみたいなソーシャルメディアが普及したことで、社会的な可能性も沢山良いところはあると思うんです。
ここ10年くらいに出てきたインターネットの可能性で一番素晴らしいと思うものは、クラウドファンディングだと思うんですよね。こういうことをやりたい、でもお金とか人脈とかスポンサーがいないので実現できないっていう人が、意志とかプランを示すことでそれに共感した人が事前にお金を集めていろんなこと実現できる。
こういうのができたことはインターネットのすごくいいところだと思うんですけど、同時にインターネットの活動がマスメディア並みに影響力を持つようになって、広告がどんどんインターネットの方に流れていくわけですよね。
そうすると、インターネットの広告料目当てに質の悪い情報を流したり、それがいわゆるフェイクニュースですよね。あるいはヘイトスピーチみたいなものに繋がるような状況になっている。
インターネットの問題っていうのは、広告の問題と切り離せなくなっているということだと思うんです。
茂木:なるほど。
津田:広告とか資本の論理にインターネットの情報っていうのが歪められる機会が増えてしまったが故に、今いろんなトラブルが起きていて、そのうちの一つはブレグジットもそうでしょうし、トランプ大統領の誕生とかにも影響していますし、沖縄の基地問題とかに対して心ないことを言う人がいるとか、そういうことも全部含めてすごく政治利用されている。それが資本の論理によって起こされているということ。
これが今起きている問題の本質なんだろうなと思いますね。
茂木:津田さんは、2012年に出された『動員の革命 - ソーシャルメディアは何を変えたのか』、『ウェブで政治を動かす!』と、この辺りからインターネットと政治、民主主義の関係について色々と考えてこられてると思うんですけど、海外の論調なんかを見ていても民主主義の危機だというような見方もあるんですけど、今後どうすればいいですか?
津田:2012年に書いた時は、僕もかなりポジティブな可能性というのを論じてはいたんですけど、当時の認識は僕もやっぱり甘かったなって反省してるとこもあって。
インターネットってすごく巨大な管理者がいるわけじゃないですよね。巨大な管理者がいるわけではない、誰でも使えるものであるがゆえに何か問題が起こった時に規制する手段というのがない。
ここが大きな問題なんですけど、これはなかなかに示唆的で。インターネットって管理者がいないという話をしたじゃないですか。
でも、中国のインターネットって政府が管理してますよね。だから、中国にはフェイクニュースとかヘイトスピーチの問題ってあんまり存在しないわけですよ。ただその代わり、中国には政府を批判する自由がないっていうような問題がある。
これは広告の問題でもあるけれども、インターネットの管理、流れる情報が社会的な問題を起こすぐらいの影響力を持っている時にどう対処していくのかっていう、人類がこれから解決しなきゃいけない問題に今直面していて。
それに対しての答えを誰も持っていないという状況でもあるということですね。
茂木:今、学生なんかはインターネットにいろんな可能性を見ていて。
自分が生きていく上でどうそれを使っていくかだったり、自分の価値を高めたり、活動をどう広げていくか模索している人も多いと思うんですけれど、
津田さんはある意味で大先輩で成功した事例じゃないですか。これからの若い人はどうすればいいんですかね?
津田:やっぱり、チャンスはすごく平等になってきてると思うんですよね。かつてはそういう情報を発信したいだとか、自分で表現をしたいと思っても場が少なかったんですよ。
表現をするところの土俵に上がるまでがすごく大変だったんですけど、今は何かやろうと思ったらすぐに出来ますよね。
何なら、スマホ一個で表現だって出来てしまう。
だからこそ大変だっていう部分もあるとは思うんですけど、やりたいことをまず見つける、あるいは表現したいことを見つけてそれをインターネットに公開して、いろんな人と繋がったり学んだりして自分の表現したいことの質を高めていくっていう、これの繰り返しだとは思いますけどね。
茂木:学生の中には、Twitterなどでアクティブになると炎上が怖いという意見もありまして。津田さんは炎上を何回も経験されていると思うんですけど、どういう心構えでいるべきなんでしょう?
津田:自分が悪くて、誤解を招くような発言で炎上するっていうことはもちろん反省したりもするんですけど、今回の『あいちトリエンナーレ』で、美術業界が男性に偏っているので、これを少し変えるきっかけとして男女平等にしますって言っていろんな議論が沸騰している。これはいい炎上だと思うんですよ。
みんなが気になって、これを話題にするしかないみたいな状況になる問題提起というのは、問題提起自体が多分よかったっていう部分もあると思うので、炎上と言っても自分が誰かを傷つけたことで炎上してるって言うんだったら謝った方がいいでしょうけど、
そうではなくて、いろんな人がそれには触れざるを得なくなるような炎上だったら恐れることはないと思います。
それをやることによって敵も増えるかもしれないけれども、それ以上に味方が増えるっていう事もあるので、炎上している時には、自分のことを応援してくれる人もいるんだっていうことを想像する力っていうのも大事だと思いますけどね。
茂木:批判的なコメントの背後には、実は賛同している人もいると。
津田:それを言ってくれる人もいるし、言わない人もいますね。
今回の『あいちトリエンナーレ』の取り組みにしても、僕一応Twitterで全部検索して見ているんですけど、9割賛成してますよ。
でも、やっぱり残り1割ぐらいの人が文句を言ってるっていう状況です。だけど、それを定量的に見ることで、この問題はどこまでどういう風に届いてるのかっていうのも予想することができるんです。
自分が表現して、その表現に対する反応みたいなものも見れるっていうのはいい時代でもあるんですけど、その表現に対してどういう反応があるのかっていうのはネットだけじゃないですからね。
世の中にはネットをやらない人もたくさんいるので、ネットはあくまで一つの参考にしつつ、未知の考え方とか、いろんな人と出会うためのツールとして使っていくっていうのはいいと思いますけどね。
今週は、番組特製のエコバッグ と 3,000円分の図書カードをプレゼント!
エコバッグの色は、紺色と茶色の2種類あります。どれが来るかは届いてからのお楽しみ!
ご希望の方は、必要事項を明記の上、
メッセージフォームより、ご応募ください。
尚、当選者の発表は、
商品の発送をもってかえさせていただきます。
たくさんのご応募、お待ちしております。
●あいちトリエンナーレ2019
● 津田大介 (@tsuda) · Twitter
●津田大介 公式サイト
来週は、お笑い芸人「エレキコミック」の、やつい いちろうさんをお迎えしてお送りいたします。
お楽しみに!