Dream Heart(ドリームハート)

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Dream HEART vol.320 地球をフィールドとして活動している写真家・石川直樹さん

2019年05月18日

今週ゲストにお迎えしたのは、先週に引き続き、リトルモアブックスから写真集「この星の光の地図を写す」を発売された、地球をフィールドとして活動している写真家の石川直樹さんです。

1977年 東京都ご出身。
早稲田大学を卒業されて、さらに東京藝術大学大学院 美術研究科博士後期課程を修了。
人類学、民俗学などの領域に関心を持ち、辺境から都市まであらゆる場所を旅しながら作品を発表し続けていらっしゃいます。
「CORONA」により土門拳賞を受賞され、
「最後の冒険家 太平洋に消えた神田道夫」で開高健ノンフィクション賞を受賞されています。
この度、20年の旅の軌跡を収めた写真集「この星の光の地図を写す」をリトルモアブックスより発売されました。

今週は、石川直樹さんの生き方についてお話を伺いました。


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──アンテナを広げて世界と向き合う

茂木:そもそも旅を知ったきっかけは、高校2年生のときにインド、ネパールに旅に出られたことだそうですが、なんでここに行こうと思ったんですか?

石川:いろんな旅行記とかを読んでたのと、高校の世界史の先生が昔バックパッカーやってた人で、授業の合間にちょいちょいバックパッカーのときの話をしてくれて、インドの話とかもしてくれたんです。それにちょっと影響を受けちゃったっていうのもありますね。

茂木:ここでは何を見たんですか?

石川:手でご飯を食べるとか、トイレとかでも紙を使わないとか。自分が日本で常識だと思ってたことが、いっぱいあるうちの一つの考え方に過ぎないんだっていうことを、幸か不幸か17歳ぐらいのときに身をもって知ることになって。
そしたら、もっともっと面白い世界や、違う世界があるんじゃないかというのを17歳のときに感じて、旅へ出るきっかけになったんですよね。

茂木:それまで石川さんは都会っ子だったんですよね。

石川:東京の初台で生まれたので、都会っ子といえば都会っ子かもしれないですね。

茂木:そこからいきなりインドに行って、よく適応できましたね。

石川:山の近くで生まれたら多分登山に興味なかっただろうし、海岸の近くで生まれたら海に興味なかったのかもしれなくて。
街中だったから旅への憧れがあって、インドとかネパールで衝撃を受けたんだと思います。でも、面白いなと思ったんですよね。それで、その後もずっと旅を続けることになっちゃったんです。

茂木:ネパールに行ったときは、やっぱりヒマラヤ山脈とかを目にしたんですか?

石川:見ました。トレッキングもやって、シェルパ族の人たちと話をしたりしました。インドで色々と騙されたりしたので、ネパールで休養してた感じだったんですね。山を見て英気を養ってから、またインドに戻ったみたいな感じです。

茂木:世界が広いということを高校2年生で知ってしまったということなんですね。それまでは文学少年だったんですか?

石川:サッカーをやったりとか、外で遊ぶのも好きでした。でも、学校の授業というよりは、本ばかり読んでいた感じですね。

茂木:早稲田では何の勉強されたんでしょう?

石川:文化人類学をやってました。

茂木:その辺りから、今の仕事に繋がるようなことをされていたんですね。

石川:そうですね。ロビンソン・クルーソーとか十五少年漂流記とかの冒険記を昔から読んでいたので、そうすると文化人類学的な興味に繋がっていって、さらに旅へ旅へ…みたいな感じで広がっていくっていう感じでしょうかね。

茂木:ありとあらゆる地球の場所に行ってきた石川直樹さんですけど、石川さんから見た地球ってどうですか?

石川:僕にとってはすごく面白い場所ですね。例えば、やりたいことが見つからないとか、好きなことが分からないっていう方はいっぱいいると思うけど、アンテナを広げて世界と向き合うと、今いるこの場所って面白いなっていうのすごく感じますけどね。

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茂木:石川さんは本当にいろんなことをやってますよね。人生の生き方においても意外と冒険するタイプなんですか?

石川:そうですね。冒険好きですよ。例えば、引越しとかもしたくない、環境も変えたくないっていう人もいっぱいいるでしょうけど、僕なんかは常に変幻自在でありたいというか、どこでも行くし、新しいものに出会っていたいっていうタイプなんですよね。

茂木:住むところは一応決まってるんですか?

石川:一応、東京に家があるんですけど、雨風しのげれば別にどこでも…っていう感じです。

茂木:だいたい一年のうち、何日ぐらいその家にいるんですか?

石川:あんまりいないですね。3分の2ぐらいはどこかに行っちゃってます。

茂木:進出鬼没ですね! 連絡が取れなくて編集者の人が困ったりしませんか?

石川:それもありますよね。かなり辺境の地から何か送ったりとか、エベレストのベースキャンプまで
ゲラが届いたこともありましたし、大変でしたね。

茂木:石川さんは力が入ってないですよね。冒険ということにアイデンティティを置いているわけでもないし、やっぱり写真なんですかね。

石川:写真ですね。姿勢としては全てを受け入れたいというか。拒絶したりとか壁を作ったりというよりは、何でも受け入れたいなっていう気持ちがあります。

茂木:今後、我々が思ってもいないフィールドに行く可能性もあるかなと思うんですけど、今考えてることってありますか?

石川:この夏、パキスタンの山に遠征に行こうかなと思っていて。その前にチベットの山とかに行って高所順応をして体を慣らそうかなとかと思っているのが近々の旅ですね。
宇宙とかにも行ってみたいなという気持ちはずっとあります。

茂木:宇宙には行きたいんですね!

石川:行きたいですね。火星には標高3万メートルの山があるんですけど、エベレストも麓から見てもでかい山なのに、火星の3万メートルの山とか麓から見たらどんなんだろうと思って。登れないにしろ、見るだけでも見てみたいなって気持ちはずっとありますね。

茂木:オリンポス山ですね。

石川:はい。頂上はどんな景色なのか、どんな風に立ちはだかってるのかなとか知りたいですよね。

茂木:今回の写真集「この星の光の地図を写す」。ここに収録されている写真はどれも全部素晴らしいんですけど、プリントして見るとまたいいじゃないですか。

石川:そうですね。ものとしてのプリントっていうのは存在感ありますよね。

茂木:今の写真ってどうしてもデジタルだったり小さな画面で見てますけど、いろんなあり方がある中で我々はどう接すればいいんですかね?

石川:これだけ氾濫してますからね。でも、写真って時間が止まってるということが、時間を止めてるっていうことが面白いなと思います。
当たり前になりすぎちゃって身近だけど、そんなメディアってないですからね。

茂木:ぜひ、展覧会場で石川さんの写真を見ていただきたいですね。

石川:そうですね。見ていただきたいです。


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