2019年03月02日
今週ゲストにお迎えしたのは、「ピコ太郎」プロデューサーの古坂大魔王さんです。
1973年、青森県生まれ。
高校卒業後、お笑い芸人を目指して上京し、お笑いトリオ「底抜けAIR-LINE」としてデビュー。
現在は、古坂大魔王として、バラエティ番組に出演し、コメンテーターとしてもご活躍中です。
また、音楽活動も行っていて、メジャーアーティストとのコラボや、楽曲提供を手がけていらっしゃいます。
そして、世界的シンガーソングライター、「ピコ太郎」のプロデューサーとして
活躍の場を国内外へ広げていらっしゃいます。
そんな、古坂大魔王さんにお話を伺いました。
──ピコ太郎ヒットの理由
茂木:ピコ太郎、世間の人はピコ太郎の大ヒットが、たまたまジャスティンが見てツイートして、ラッキーだったんじゃねーかって思ってる人まだ世間にもいるじゃないですか?
古坂大魔王:9割5分そうだと思いますよ(笑)。
茂木:ところが、この「ピコ太郎のつくりかた」を読むと、実はその背後にいかに長い努力があって、ヒットは必然だったんじゃないかと。
古坂大魔王:僕はそういう風に思うようにしてます。時間ないときはめんどくさいから運だって言うんですけど(笑)。
僕は運って風のような感覚があって、風ってたまに“ビュッ!”って吹く、その瞬間にたまたま自分が羽が生えてれば飛べるんですね。きちっと羽を手入れして、飛べるような練習をしておいて、飛んだ時に長く跳べるかっていう練習をしておかないと飛べないと思うんですね。
茂木:飛べないんですよね。
古坂大魔王:本にも書いてあるんですけど、僕はすごい天邪鬼でして、自分がすごい気に入って買った服を友達が着てるのを見たら捨てるくらいの感じで。
茂木:人と同じことはやりたくないと。
古坂大魔王:お笑いも大好きになって、うちは実家がすごい厳しい家だったので兄弟3人男いるんですけど。
“みんな公務員になれ”っていう風に言われていたんですね、“公務員の真逆はなんだろう?”と思ったら、“芸人だ”と思ったんですね。
で、テレビの中で一番暴れてる人は誰か? それがたけしさんだったんですね。“よし! この人になろう!”っていう風に思って始まったんですね。
茂木:うんうん。
古坂大魔王:今度、お笑いの現場に来ると“流行っている漫才はやらない”っていう感じで、ずっと“やらない、やらない、やらない”っていう、自分では10歩先に行ってるっていう意識があったんですけど。10歩先って、ぐるっと回って2歩後ろだったんですね(笑)。
だから昔、「お前、何で音楽なんてやってんだよ、古いな」って言われたんですよ。
茂木:僕もドリフ大好きでしたけど、ドリフのコントは音楽と異常に深く結びついてますもんね。
古坂大魔王:ほぼ音楽ですよね、リズムネタだったり、早口言葉だったり、それがカッコ良かったんですよね。
しかも僕は、とんねるずさんがど真ん中だったんですね。
茂木:はい。
古坂大魔王:とんねるずさんは当たり前のようにいい歌を歌って、紅白にも出て、ふざける。
あれがポップですごくカッコ良かったんですよ。
茂木:そういう古坂さんの長年の思いがあって、今回ピコ太郎なんですけど、いかにこだわっているかというのを象徴するのが「TR 808」。
これは何なんですか?
古坂大魔王:簡単に言うと、その昔ドラムってやっぱり音がうるさくて、ドラムってお金がないと持てなかったんですね。
ドラムはバンドで欲しいんだけど、ドラムがいないからしょうがなくドラムのバーチャルを作ろうということで、Rolandがリズムマシーンっていうのを作ったんですね。
茂木:リズムマシーンですか。
古坂大魔王:ドラムの音ってやっぱり生の音なので再現できなくて。コンピュータで作ったら、“ポーン”とか、“ティーン”とか、“カーン”が、なんとか機械でドラムに似せて作った音なんですね。
茂木:はいはい。
古坂大魔王:この音がすごくチープなんですけど、音がすごく太いんですよ。大きい音で出すとスピーカーがビリビリ言うんですね。
その音が海外とかでもあまり使ってなかったんですね、古い機械なので。“これを使うのがダサい”っていうような雰囲気の時期があったんです。
僕はその音がずっと好きだったんで、“だったら今使おう”と、さっきの人が着てる服は着たくないっていう感覚で。
茂木:なるほど。
古坂大魔王:その音を現代の科学の、パソコンの中の内部のコンプレッサーを使うと“バーン!”って音が出るんですよ。
しょぼい音を爆音で出した、それをシンプルに出してピコ太郎が変な歌を歌ったら面白いだろうなと思ったんですね。すると、まずミュージシャン界隈でウケたんですよ。
音楽のEDMと言われる、あの方向の音でちょっと使い始めたっぽかったんで、97年ぐらいにPPAPはあったんですけど。“今だ!”と思って、初めて2歩前ぐらいの音として使ったんです。
茂木:英語のウィキペディアで「PPAP」を見ると、EDMに分類されていますもんね。
そういう意味においては、音楽のトレンドのいいタイミングだったんですね。
古坂大魔王:ピコ太郎の曲ってリズムネタみたいなもんですから。あの誰でも分かる英語だっていうことが、たまたまハマったんですけど。
実はピコ太郎で、外国人の前とかでよくやっていたんですよ。クラブに行って、横浜のガスパニックとか、渋谷のフーラとか昔あったんですけど。そこに行くと外国人がいっぱいいたんですね。
ベタベタに英語がウケるんですね、日本人で言うとボビーオロゴンの日本語みたいなもんでしょうね。だから「アイ・ハブ・ア・ペン」と言うとウケる、その感覚がうっすら沈殿していたんですね。
茂木:蓄積があったと。
古坂大魔王:ピコ太郎をいろんなところにプレゼンしていったら、全員「やらない」って言ったんですよ。
レコード会社、事務所、テレビ番組、ラジオ番組「こんなのウケるはずない」って。
茂木:プレゼンしたんですね!
10万円予算で、あれ編集すごい凝ったんでしょ?
古坂大魔王:最近ユーチューバーって、やっぱり凄いじゃないですか? 勢い、人気もあります。
でも、芸的に言われるとけっこう問題発言かもしれないですけど、まったくつまらないんです。
茂木:古坂さん本の中で書いてますけど、間が大事だって。
古坂大魔王:そうです! ユーチューバーの皆さんは編集力がすごいんですよ。
これがもう文化レベルになるぐらいで、今までテレビが何十年やってきた編集を全て真逆にいったんですね。間を全切りにしたんですね、「てにをは」どころか、言葉の一個一個を詰め始めたんですね。
茂木:ええ、ええ。
古坂大魔王:これ素晴らしいなと、これは自分が作った歌も自分の間でやっぱりやらなきゃいけないと思って。
編集任せようと思ったんですけど、テレビにいっぱい出ても自分の好きな間では編集できてるっていうのは、なかなかないので。
これを自分で覚えようと思って、素材だけもらって、自分でElementsっていうのを買って、一ヶ月くらいほぼ毎日最終的に“出来た!”っていうフォルダが、30〜40ありますね。
茂木:うわ〜。
古坂大魔王:動画って、短い分何回も見ると思うんですよ。
そうすると、朝見る人と、昼見る人と、夜見る人と、車の中で見る人、電車の中で見る人、イヤホン、スピーカーフォンの人、全部でやってみようと思ったんですね。
茂木:すごいな!
古坂大魔王:やってみると、朝見ると間が短すぎて、夜見ると間が長すぎて、その中間って何かって考えて…1フレーズずらして、どれが一番面白いか自分で実験したんです。
奥さんに10パターンをランダムに並べてもらって、自分で面白いなと思ったものが“これ!”っていうのが大体一緒になったので、それでいってみようとなったんですね。
茂木:すごいですよね、短い楽曲の中に凝縮したものが。
古坂大魔王:あれを楽曲として捉えてくれた世間もすごいなと思ったんですね。
茂木:アメリカってすごい国だよね、ビルボードのチャートで平等に扱うんですね。
古坂大魔王:あれを動画の一個ととらえずに、音楽として捉えて。あの時って正直、音源発売してないと思うんですよ。
日本が良い悪いの意見にいきたくないんですけど、やっぱりエンターテインメントはアメリカのもので、向こうは移民の文化で、自分たちが良いと思うものは良いという風にするしかないと思ったんですよ。
茂木:うんうん。
古坂大魔王:“あれ面白い”って思ったから、すぐバットマンを書いた原作者が、バットマンでピコ太郎をぶん殴ってる絵を描いたりとか、みんな遊び始めたんです。
日本は「海外で流行ってるんだよね、“ペンパイナッポーアッポーペン”っていうオチを知って見てみたら『つまんねー、子供だまし』」っていう感覚、評論家なんですよね。アメリカは客と演者なんですよ、そこがすごいなと思いましたね。
●古坂大魔王 公式サイト
本日、お届けしたピコ太郎さんの曲「Can you see? I'm SUSHI」の動画は、ピコ太郎さんの公式サイトでご覧いただけます!
●ピコ太郎(PIKOTARO)オフィシャルサイト
●ピコ太郎のつくりかた (NewsPicks Book) / 古坂 大魔王 (著)
(Amazon)
来週も引き続き、「ピコ太郎」のプロデューサー、古坂大魔王さんをお迎えしてお送りいたします。
お楽しみに!
1973年、青森県生まれ。
高校卒業後、お笑い芸人を目指して上京し、お笑いトリオ「底抜けAIR-LINE」としてデビュー。
現在は、古坂大魔王として、バラエティ番組に出演し、コメンテーターとしてもご活躍中です。
また、音楽活動も行っていて、メジャーアーティストとのコラボや、楽曲提供を手がけていらっしゃいます。
そして、世界的シンガーソングライター、「ピコ太郎」のプロデューサーとして
活躍の場を国内外へ広げていらっしゃいます。
そんな、古坂大魔王さんにお話を伺いました。
──ピコ太郎ヒットの理由
茂木:ピコ太郎、世間の人はピコ太郎の大ヒットが、たまたまジャスティンが見てツイートして、ラッキーだったんじゃねーかって思ってる人まだ世間にもいるじゃないですか?
古坂大魔王:9割5分そうだと思いますよ(笑)。
茂木:ところが、この「ピコ太郎のつくりかた」を読むと、実はその背後にいかに長い努力があって、ヒットは必然だったんじゃないかと。
古坂大魔王:僕はそういう風に思うようにしてます。時間ないときはめんどくさいから運だって言うんですけど(笑)。
僕は運って風のような感覚があって、風ってたまに“ビュッ!”って吹く、その瞬間にたまたま自分が羽が生えてれば飛べるんですね。きちっと羽を手入れして、飛べるような練習をしておいて、飛んだ時に長く跳べるかっていう練習をしておかないと飛べないと思うんですね。
茂木:飛べないんですよね。
古坂大魔王:本にも書いてあるんですけど、僕はすごい天邪鬼でして、自分がすごい気に入って買った服を友達が着てるのを見たら捨てるくらいの感じで。
茂木:人と同じことはやりたくないと。
古坂大魔王:お笑いも大好きになって、うちは実家がすごい厳しい家だったので兄弟3人男いるんですけど。
“みんな公務員になれ”っていう風に言われていたんですね、“公務員の真逆はなんだろう?”と思ったら、“芸人だ”と思ったんですね。
で、テレビの中で一番暴れてる人は誰か? それがたけしさんだったんですね。“よし! この人になろう!”っていう風に思って始まったんですね。
茂木:うんうん。
古坂大魔王:今度、お笑いの現場に来ると“流行っている漫才はやらない”っていう感じで、ずっと“やらない、やらない、やらない”っていう、自分では10歩先に行ってるっていう意識があったんですけど。10歩先って、ぐるっと回って2歩後ろだったんですね(笑)。
だから昔、「お前、何で音楽なんてやってんだよ、古いな」って言われたんですよ。
茂木:僕もドリフ大好きでしたけど、ドリフのコントは音楽と異常に深く結びついてますもんね。
古坂大魔王:ほぼ音楽ですよね、リズムネタだったり、早口言葉だったり、それがカッコ良かったんですよね。
しかも僕は、とんねるずさんがど真ん中だったんですね。
茂木:はい。
古坂大魔王:とんねるずさんは当たり前のようにいい歌を歌って、紅白にも出て、ふざける。
あれがポップですごくカッコ良かったんですよ。
茂木:そういう古坂さんの長年の思いがあって、今回ピコ太郎なんですけど、いかにこだわっているかというのを象徴するのが「TR 808」。
これは何なんですか?
古坂大魔王:簡単に言うと、その昔ドラムってやっぱり音がうるさくて、ドラムってお金がないと持てなかったんですね。
ドラムはバンドで欲しいんだけど、ドラムがいないからしょうがなくドラムのバーチャルを作ろうということで、Rolandがリズムマシーンっていうのを作ったんですね。
茂木:リズムマシーンですか。
古坂大魔王:ドラムの音ってやっぱり生の音なので再現できなくて。コンピュータで作ったら、“ポーン”とか、“ティーン”とか、“カーン”が、なんとか機械でドラムに似せて作った音なんですね。
茂木:はいはい。
古坂大魔王:この音がすごくチープなんですけど、音がすごく太いんですよ。大きい音で出すとスピーカーがビリビリ言うんですね。
その音が海外とかでもあまり使ってなかったんですね、古い機械なので。“これを使うのがダサい”っていうような雰囲気の時期があったんです。
僕はその音がずっと好きだったんで、“だったら今使おう”と、さっきの人が着てる服は着たくないっていう感覚で。
茂木:なるほど。
古坂大魔王:その音を現代の科学の、パソコンの中の内部のコンプレッサーを使うと“バーン!”って音が出るんですよ。
しょぼい音を爆音で出した、それをシンプルに出してピコ太郎が変な歌を歌ったら面白いだろうなと思ったんですね。すると、まずミュージシャン界隈でウケたんですよ。
音楽のEDMと言われる、あの方向の音でちょっと使い始めたっぽかったんで、97年ぐらいにPPAPはあったんですけど。“今だ!”と思って、初めて2歩前ぐらいの音として使ったんです。
茂木:英語のウィキペディアで「PPAP」を見ると、EDMに分類されていますもんね。
そういう意味においては、音楽のトレンドのいいタイミングだったんですね。
古坂大魔王:ピコ太郎の曲ってリズムネタみたいなもんですから。あの誰でも分かる英語だっていうことが、たまたまハマったんですけど。
実はピコ太郎で、外国人の前とかでよくやっていたんですよ。クラブに行って、横浜のガスパニックとか、渋谷のフーラとか昔あったんですけど。そこに行くと外国人がいっぱいいたんですね。
ベタベタに英語がウケるんですね、日本人で言うとボビーオロゴンの日本語みたいなもんでしょうね。だから「アイ・ハブ・ア・ペン」と言うとウケる、その感覚がうっすら沈殿していたんですね。
茂木:蓄積があったと。
古坂大魔王:ピコ太郎をいろんなところにプレゼンしていったら、全員「やらない」って言ったんですよ。
レコード会社、事務所、テレビ番組、ラジオ番組「こんなのウケるはずない」って。
茂木:プレゼンしたんですね!
10万円予算で、あれ編集すごい凝ったんでしょ?
古坂大魔王:最近ユーチューバーって、やっぱり凄いじゃないですか? 勢い、人気もあります。
でも、芸的に言われるとけっこう問題発言かもしれないですけど、まったくつまらないんです。
茂木:古坂さん本の中で書いてますけど、間が大事だって。
古坂大魔王:そうです! ユーチューバーの皆さんは編集力がすごいんですよ。
これがもう文化レベルになるぐらいで、今までテレビが何十年やってきた編集を全て真逆にいったんですね。間を全切りにしたんですね、「てにをは」どころか、言葉の一個一個を詰め始めたんですね。
茂木:ええ、ええ。
古坂大魔王:これ素晴らしいなと、これは自分が作った歌も自分の間でやっぱりやらなきゃいけないと思って。
編集任せようと思ったんですけど、テレビにいっぱい出ても自分の好きな間では編集できてるっていうのは、なかなかないので。
これを自分で覚えようと思って、素材だけもらって、自分でElementsっていうのを買って、一ヶ月くらいほぼ毎日最終的に“出来た!”っていうフォルダが、30〜40ありますね。
茂木:うわ〜。
古坂大魔王:動画って、短い分何回も見ると思うんですよ。
そうすると、朝見る人と、昼見る人と、夜見る人と、車の中で見る人、電車の中で見る人、イヤホン、スピーカーフォンの人、全部でやってみようと思ったんですね。
茂木:すごいな!
古坂大魔王:やってみると、朝見ると間が短すぎて、夜見ると間が長すぎて、その中間って何かって考えて…1フレーズずらして、どれが一番面白いか自分で実験したんです。
奥さんに10パターンをランダムに並べてもらって、自分で面白いなと思ったものが“これ!”っていうのが大体一緒になったので、それでいってみようとなったんですね。
茂木:すごいですよね、短い楽曲の中に凝縮したものが。
古坂大魔王:あれを楽曲として捉えてくれた世間もすごいなと思ったんですね。
茂木:アメリカってすごい国だよね、ビルボードのチャートで平等に扱うんですね。
古坂大魔王:あれを動画の一個ととらえずに、音楽として捉えて。あの時って正直、音源発売してないと思うんですよ。
日本が良い悪いの意見にいきたくないんですけど、やっぱりエンターテインメントはアメリカのもので、向こうは移民の文化で、自分たちが良いと思うものは良いという風にするしかないと思ったんですよ。
茂木:うんうん。
古坂大魔王:“あれ面白い”って思ったから、すぐバットマンを書いた原作者が、バットマンでピコ太郎をぶん殴ってる絵を描いたりとか、みんな遊び始めたんです。
日本は「海外で流行ってるんだよね、“ペンパイナッポーアッポーペン”っていうオチを知って見てみたら『つまんねー、子供だまし』」っていう感覚、評論家なんですよね。アメリカは客と演者なんですよ、そこがすごいなと思いましたね。
●古坂大魔王 公式サイト
本日、お届けしたピコ太郎さんの曲「Can you see? I'm SUSHI」の動画は、ピコ太郎さんの公式サイトでご覧いただけます!
●ピコ太郎(PIKOTARO)オフィシャルサイト
●ピコ太郎のつくりかた (NewsPicks Book) / 古坂 大魔王 (著)
(Amazon)
来週も引き続き、「ピコ太郎」のプロデューサー、古坂大魔王さんをお迎えしてお送りいたします。
お楽しみに!