2019年02月16日
今週ゲストにお迎えしたのは、東京バレエ団の芸術監督、斎藤友佳理さんです。
斎藤さんは、1967年、横浜市のお生まれ。
6歳でバレエを始め、15歳からロシアへ短期留学を繰り返し、
1987年、東京バレエ団に入団。
詩情あふれる典雅な踊りとドラマティックな表現力で人気を集め、
1992年のロシア公演「ラ・シルフィード」をボリショイ劇場、
マリインスキー劇場などで踊り、大絶賛されます。
2005年に芸術選奨 文部科学大臣賞を、
また、2012年に『オネーギン』を演じ、これまでの芸術への功績に対し、
紫綬褒章を受章されました。
その後、バレエ教師の資格を取得するため、在学していた、
ロシア国立舞踊大学院のバレエマスターと教師科を首席で卒業し、
東京バレエ団の公演の指導、演出を行い、高い評価を得ていらっしゃいます。
そして、2015年8月に東京バレエ団芸術監督に就任され、
ご活躍中でいらっしゃいます。
今週は、3月から行われる最新作「海賊」についてお話を伺いました。
──東京バレエ団最新作「海賊」
茂木:東京バレエ団は、2019年3月15日(金)〜3月17日(日)まで、東京文化会館で新作公演「海賊」を上演されますが、
この「海賊」という作品、バレエファンの方はよくご存知だと思うんですけども、クラシックバレエの父と言われるマリウス・プティパ氏が手がけた作品ということで。
このプティパさんってのはすごい方なんですよね。
斎藤:そうですね。クラシックバレエとは切っても切り離せない関係と言うか。ほとんど彼の作品が元となっているものが多いです。
茂木:「白鳥の湖」とかもそうですよね。
斎藤:全部ではないですけど携わっていて。「眠れる森の美女」や「ラ・バヤデール」など…。
古典バレエということに関しては彼がすべてと言っても過言ではないぐらいです。
茂木:この「海賊」という作品を今やろうと思ったのはどういうきっかけなんですか?
斎藤:古典バレエと言うと女性がメインになってしまって。限られた男性数人が活躍できるんですが、古典バレエの中でも「海賊」という作品は女性と男性が50%ずつぐらい、みんな見せ場が多くて。
今、東京バレエ団のダンサーたちの中でも男性がものすごく成長してきているタイミングなので、その中でやる古典バレエは何がいいのだろうかと考えた時に、「海賊」という作品が頭に浮かびました。
茂木:なるほど。芸術監督としては団員の成長とかも考えていらっしゃるんですね。
斎藤:今いるダンサーにとって、どの作品をチョイスして、その作品によってどのようにダンサー達が成長していくかっていうことを一番最初に考えています。
茂木:この公演は、マリウス・プティパ氏の生誕200年の締めくくりとして。ということですが…。
斎藤:2018年が生誕200年だったんです。
去年も200年祭ということで、プティパの作品だけを集めてガラコンサートをやったんですけど、年度末に彼の全幕作品っていうことで東京バレエ団が今までなかったレパートリーの中から、この「海賊」という作品を選択しました。
茂木:プティパ・イヤーの締めくくりということですね!
この「海賊」は、抜粋で上演されるパ・ド・ドゥが有名なんですけど、今回は3幕全部やると!貴重な機会になりますね。
斎藤:そうですね。「海賊」そのものが、21世紀になってからヨーロッパ・ロシア以外で全幕が上演されるようになったんですね。
それまではあまり知られていなくて、パ・ド・ドゥの部分だけがポピュラーだったんですけれども、一番最初に振り付けされて作られたのが1856年、パリ・オペラ座で上演されて。
その時の振り付けがジョゼフ・マジリエという方で、音楽がアドルフ・アダンという方の全幕作品だったんですけれども、今残っている形は1899年にマリウス・プティパがマジリエのものを改定して作ったものなんです。彼自身もその前に作っていたんですけど、あまり評価されなくて。
彼が1899年に作ったものが一番みんなから受け入れられて成功して、その後にグーセフ、セルギエフ…という風に伝承されていくんですね。
茂木:はい。
斎藤:今回、東京バレエ団でやるバージョンは、アンナ=マリー・ホームズさんという方の版で。
セルギエフが改定したものを彼女がさらに改定して、時代とともに合ったものに。解釈も少しずつ変えてまた短縮されて…。その作品を今回、東京バレエ団がやります。
茂木:今回の上演は海外バレエ上演のトレンドの最先端を、初めて日本に紹介することもなるということですね。
斎藤:そうですね。他の日本のバレエ団でも「海賊」を全幕やっているところはあるんですけど、アンナ=マリー・ホームズさんの版は日本のバレエ団では初めてです。
茂木:3幕の花園の場面が非常に美しいと有名で、ここも一つの見所になるんでしょうか。
斎藤:「海賊」の作品の良さというのは、お姫様と王子様のおとぎ話ということではなくて、オスマン帝国時代のハーレムや海賊の住みかを舞台にしていて、そこには冒険があり、ロマンスがあり、戦いがあると。
踊りの要素から考えても幻想のクラシックの場として花園のシーンがあったり、キャラクターダンスの要素がたくさん含まれていて力強い踊りがありますし、主役たちのテクニックが要求される場面もあり…。
本当にいろんな要素が含まれた作品なんですね。
茂木:物語自体は、ギリシャに面した地中海のイオニア海の浜辺が舞台で、海賊・コンラッドと、ギリシャの娘・メドゥーラとの恋愛物語だということですが…。
斎藤:そこが柱になりますね。コンラッドの忠臣であるアリという男性。そして、友人であるビルバンド。それから奴隷商人のランケデムなど…。
主要なキャラクターが全員男性なんですよ。そういうところで、ものすごく男性が活躍する場が多い作品です。
茂木:なるほど!今回、キャストはダブルキャストということで、皆さんの意気込みはいかがですか?
斎藤:先日、アンナ=マリー・ホームズさんが来日されて、直接ダンサーたちに指導してくださっています。彼女自身がロシアで教育を受けた方でカナダ人の方なんですけど、ロシア語も話せてフランス語も話せて、とてもエネルギッシュでユーモアたっぷりな先生で。
絶対にこうしないといけないっていうことを押し付けずに、とても良い雰囲気でリハーサルが進んでいると思います。
茂木:素晴らしい舞台になりそうですね!東京バレエ団は元々、モーリス・ベジャールさんと一緒に、男性ダンサーが頑張る作品がたくさんありましたもんね。
斎藤:そうなんです。創立者である佐々木忠次さんも大切な大切な宝物を私たちに残してくれたと思っているんですけど、ベジャールの作品は男性が活躍する場がたくさんあって。
「春の祭典」にしても、「ボレロ」にしても、「ザ・カブキ」にしても…。それが東京バレエ団の魅力の一つだと思っているんです。
だからこそ、ベジャールの作品以外でも男性が活躍できる作品を、と常日頃思っていて、この「海賊」という作品を選びました。
茂木:東京バレエ団の伝統って本当に素晴らしいですよね!
いろんなバレエカンパニーがありますけど、(東京バレエ団は)男性と女性のダンスのバランスがいいですね。
斎藤:そうですね。今特に、男性のバレエダンサーを希望する男の子たちがたくさん増えてきてるのは事実なんです。だからこそ、男性が活躍できる作品をこれからもたくさん持っていきたいと思っています。
茂木:バレエというと、優美さもあるんですけど、鍛えられた肉体の躍動感とか、ダイナミズムも魅力だと思います。今回の「海賊」はそのあたりも魅力ですよね。
斎藤:テクニック的にはものすごく高い要素が含まれているので、まずアカデミックに古典の動きはできなければいけない。
その中でキャラクターを表現しながら、またユーモラスな所もたくさんあるので、そこをどこまで表現できるかっていうところが一番の課題だと思います。
茂木:東京文化会館という劇場はどうですか?
斎藤:私にとっては本当に日本で一番素晴らしい劇場だと思っています。
劇場内もそうですし、舞台に行くまでの道のりもそうですし、客席と舞台との距離感だとか…全てですね!
本当によくできた劇場だと思います。東京バレエ団は東京文化会館を使うことが多いんですけど、
東京都内に劇場がどんどん無くなってきて。
本当に深刻な問題を抱えていると思うんです。そんな中、この東京文化会館があることが本当に心の支えになっています。
茂木:そういう意味において、今回の「海賊」は”聖地”とも言える東京文化会館での上演ですから、観に行くしかないですね!
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●東京バレエ団公演「海賊」公式サイト
●「ユカリューシャ―奇跡の復活を果たしたバレリーナ」 / 斎藤 友佳理
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来週も引き続き、東京バレエ団の芸術監督・斎藤友佳理さんをお迎えしてお送りいたします。
お楽しみに!
斎藤さんは、1967年、横浜市のお生まれ。
6歳でバレエを始め、15歳からロシアへ短期留学を繰り返し、
1987年、東京バレエ団に入団。
詩情あふれる典雅な踊りとドラマティックな表現力で人気を集め、
1992年のロシア公演「ラ・シルフィード」をボリショイ劇場、
マリインスキー劇場などで踊り、大絶賛されます。
2005年に芸術選奨 文部科学大臣賞を、
また、2012年に『オネーギン』を演じ、これまでの芸術への功績に対し、
紫綬褒章を受章されました。
その後、バレエ教師の資格を取得するため、在学していた、
ロシア国立舞踊大学院のバレエマスターと教師科を首席で卒業し、
東京バレエ団の公演の指導、演出を行い、高い評価を得ていらっしゃいます。
そして、2015年8月に東京バレエ団芸術監督に就任され、
ご活躍中でいらっしゃいます。
今週は、3月から行われる最新作「海賊」についてお話を伺いました。
──東京バレエ団最新作「海賊」
茂木:東京バレエ団は、2019年3月15日(金)〜3月17日(日)まで、東京文化会館で新作公演「海賊」を上演されますが、
この「海賊」という作品、バレエファンの方はよくご存知だと思うんですけども、クラシックバレエの父と言われるマリウス・プティパ氏が手がけた作品ということで。
このプティパさんってのはすごい方なんですよね。
斎藤:そうですね。クラシックバレエとは切っても切り離せない関係と言うか。ほとんど彼の作品が元となっているものが多いです。
茂木:「白鳥の湖」とかもそうですよね。
斎藤:全部ではないですけど携わっていて。「眠れる森の美女」や「ラ・バヤデール」など…。
古典バレエということに関しては彼がすべてと言っても過言ではないぐらいです。
茂木:この「海賊」という作品を今やろうと思ったのはどういうきっかけなんですか?
斎藤:古典バレエと言うと女性がメインになってしまって。限られた男性数人が活躍できるんですが、古典バレエの中でも「海賊」という作品は女性と男性が50%ずつぐらい、みんな見せ場が多くて。
今、東京バレエ団のダンサーたちの中でも男性がものすごく成長してきているタイミングなので、その中でやる古典バレエは何がいいのだろうかと考えた時に、「海賊」という作品が頭に浮かびました。
茂木:なるほど。芸術監督としては団員の成長とかも考えていらっしゃるんですね。
斎藤:今いるダンサーにとって、どの作品をチョイスして、その作品によってどのようにダンサー達が成長していくかっていうことを一番最初に考えています。
茂木:この公演は、マリウス・プティパ氏の生誕200年の締めくくりとして。ということですが…。
斎藤:2018年が生誕200年だったんです。
去年も200年祭ということで、プティパの作品だけを集めてガラコンサートをやったんですけど、年度末に彼の全幕作品っていうことで東京バレエ団が今までなかったレパートリーの中から、この「海賊」という作品を選択しました。
茂木:プティパ・イヤーの締めくくりということですね!
この「海賊」は、抜粋で上演されるパ・ド・ドゥが有名なんですけど、今回は3幕全部やると!貴重な機会になりますね。
斎藤:そうですね。「海賊」そのものが、21世紀になってからヨーロッパ・ロシア以外で全幕が上演されるようになったんですね。
それまではあまり知られていなくて、パ・ド・ドゥの部分だけがポピュラーだったんですけれども、一番最初に振り付けされて作られたのが1856年、パリ・オペラ座で上演されて。
その時の振り付けがジョゼフ・マジリエという方で、音楽がアドルフ・アダンという方の全幕作品だったんですけれども、今残っている形は1899年にマリウス・プティパがマジリエのものを改定して作ったものなんです。彼自身もその前に作っていたんですけど、あまり評価されなくて。
彼が1899年に作ったものが一番みんなから受け入れられて成功して、その後にグーセフ、セルギエフ…という風に伝承されていくんですね。
茂木:はい。
斎藤:今回、東京バレエ団でやるバージョンは、アンナ=マリー・ホームズさんという方の版で。
セルギエフが改定したものを彼女がさらに改定して、時代とともに合ったものに。解釈も少しずつ変えてまた短縮されて…。その作品を今回、東京バレエ団がやります。
茂木:今回の上演は海外バレエ上演のトレンドの最先端を、初めて日本に紹介することもなるということですね。
斎藤:そうですね。他の日本のバレエ団でも「海賊」を全幕やっているところはあるんですけど、アンナ=マリー・ホームズさんの版は日本のバレエ団では初めてです。
茂木:3幕の花園の場面が非常に美しいと有名で、ここも一つの見所になるんでしょうか。
斎藤:「海賊」の作品の良さというのは、お姫様と王子様のおとぎ話ということではなくて、オスマン帝国時代のハーレムや海賊の住みかを舞台にしていて、そこには冒険があり、ロマンスがあり、戦いがあると。
踊りの要素から考えても幻想のクラシックの場として花園のシーンがあったり、キャラクターダンスの要素がたくさん含まれていて力強い踊りがありますし、主役たちのテクニックが要求される場面もあり…。
本当にいろんな要素が含まれた作品なんですね。
茂木:物語自体は、ギリシャに面した地中海のイオニア海の浜辺が舞台で、海賊・コンラッドと、ギリシャの娘・メドゥーラとの恋愛物語だということですが…。
斎藤:そこが柱になりますね。コンラッドの忠臣であるアリという男性。そして、友人であるビルバンド。それから奴隷商人のランケデムなど…。
主要なキャラクターが全員男性なんですよ。そういうところで、ものすごく男性が活躍する場が多い作品です。
茂木:なるほど!今回、キャストはダブルキャストということで、皆さんの意気込みはいかがですか?
斎藤:先日、アンナ=マリー・ホームズさんが来日されて、直接ダンサーたちに指導してくださっています。彼女自身がロシアで教育を受けた方でカナダ人の方なんですけど、ロシア語も話せてフランス語も話せて、とてもエネルギッシュでユーモアたっぷりな先生で。
絶対にこうしないといけないっていうことを押し付けずに、とても良い雰囲気でリハーサルが進んでいると思います。
茂木:素晴らしい舞台になりそうですね!東京バレエ団は元々、モーリス・ベジャールさんと一緒に、男性ダンサーが頑張る作品がたくさんありましたもんね。
斎藤:そうなんです。創立者である佐々木忠次さんも大切な大切な宝物を私たちに残してくれたと思っているんですけど、ベジャールの作品は男性が活躍する場がたくさんあって。
「春の祭典」にしても、「ボレロ」にしても、「ザ・カブキ」にしても…。それが東京バレエ団の魅力の一つだと思っているんです。
だからこそ、ベジャールの作品以外でも男性が活躍できる作品を、と常日頃思っていて、この「海賊」という作品を選びました。
茂木:東京バレエ団の伝統って本当に素晴らしいですよね!
いろんなバレエカンパニーがありますけど、(東京バレエ団は)男性と女性のダンスのバランスがいいですね。
斎藤:そうですね。今特に、男性のバレエダンサーを希望する男の子たちがたくさん増えてきてるのは事実なんです。だからこそ、男性が活躍できる作品をこれからもたくさん持っていきたいと思っています。
茂木:バレエというと、優美さもあるんですけど、鍛えられた肉体の躍動感とか、ダイナミズムも魅力だと思います。今回の「海賊」はそのあたりも魅力ですよね。
斎藤:テクニック的にはものすごく高い要素が含まれているので、まずアカデミックに古典の動きはできなければいけない。
その中でキャラクターを表現しながら、またユーモラスな所もたくさんあるので、そこをどこまで表現できるかっていうところが一番の課題だと思います。
茂木:東京文化会館という劇場はどうですか?
斎藤:私にとっては本当に日本で一番素晴らしい劇場だと思っています。
劇場内もそうですし、舞台に行くまでの道のりもそうですし、客席と舞台との距離感だとか…全てですね!
本当によくできた劇場だと思います。東京バレエ団は東京文化会館を使うことが多いんですけど、
東京都内に劇場がどんどん無くなってきて。
本当に深刻な問題を抱えていると思うんです。そんな中、この東京文化会館があることが本当に心の支えになっています。
茂木:そういう意味において、今回の「海賊」は”聖地”とも言える東京文化会館での上演ですから、観に行くしかないですね!
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来週も引き続き、東京バレエ団の芸術監督・斎藤友佳理さんをお迎えしてお送りいたします。
お楽しみに!