2018年10月27日
今週ゲストにお迎えしたのは、先週に引き続き
角川書店より「ことことこーこ」を刊行されました、作家の阿川佐和子さんをお迎えしました。
阿川さんは、1953年生まれ、東京都生まれ。
慶応義塾大学ご卒業後、報道番組のキャスターなどを務める。
その後、渡米し、帰国後、エッセイスト、小説家として活躍。
1999年に壇ふみさんとの往復エッセイ「ああ言えばこう食う」で、講談社エッセイ賞、
2000年「ウメ子」で、坪田譲治文学賞、
2008年、『婚約のあとで』で、島清恋愛文学賞を受賞。
2012年に刊行された、『聞く力 心をひらく35のヒント』は170万部を突破する、大ベストセラーを記録し、2014年に、菊池寛賞を受賞されました。
現在も、作家のみならず、インタビュアー、女優など、
マルチにご活躍中でいらっしゃいます。
そんな阿川さんに、お話しを伺いました。
──父との関係
茂木:家族というと、話題なのが旦那さんとの出会いとかを伺ってもいいですか?
阿川:キタキタ!(笑)
茂木:今は幸せですか?
阿川:まあ、幸せです(笑)。
茂木:旦那さんは大学の先生をされていたんですよね?
阿川:そうですね、今もちょっとしています。
茂木:お父様の阿川弘之さんがあまりにも偉い方だったじゃないですか? やっぱりファザコンだったんですか?
阿川:手身近に申し上げます、ある意味ファザコンだと思います。なぜならば、父のような人じゃない人を求めて大きくなったんです。
茂木:今の旦那さんはお父様とは…?
阿川:全然違う性格です。本質的に男だから似ているところもあるかもしれないけど、とにかく父はワンマンで自分の意に反していることが許せないというか。
いらちで、短気で、一種の甘えなんだと思うんですけど、女性を労働力と思っているところがあって。
茂木:はい。
阿川:うちは家族が父と母と、子供は女は私1人なんですよ。あと、3人男兄弟なんですけど。
やっぱり、女は常に台所に入って、自分が原稿書いて、疲れて何か美味いものを食いたいなと思った時に、母と娘が「お父様、こんなものを作ってみましたけど美味しいですか? 朝からずっとお父様のご飯のために働いております、私たち」ということが、理想だったらしいんです。
それなのに、私は父の性格に似ているものだから、そんなの嫌だと思っていちいち反抗するからぶつかることが多かったんですよ。
茂木:うんうん(笑)。
阿川:父が“いらついているんじゃないか?”ということを常に気にしながら、大人になるまで生きてきたんです。
意識が強いっていうことは、たぶんファザコンなんだと思うんです。
茂木:そういうお父様だったんだけど、今の旦那さんは穏やかな方なんですか?
阿川:穏やかですね。ビックリするのが荷物を持ってくれるんですよ。うちの父は荷物は女が持つものだという感じだったから。
例えば、スーパーから一緒に帰ってくる時にすぐに荷物を持ってくれるし。私が仕事でキンキンカンカン、資料も読まなきゃいけないし、原稿の締め切りもあるしと……うちの父のように言っていると、ずーっと黙って遠くにいるんですよ。
“そろそろ機嫌が治ったかな?”っていうときに戻ってくるんですよ。
茂木:距離感のとり方が上手いんですね。お料理は手伝ってくれるんですか?
阿川:お皿洗いはしてくれるし、私がすごく忙しいときには洗濯物をしてくれたり、自分のワイシャツにアイロンかけるし。
茂木:え! 自分のワイシャツにアイロンかけるんですか!?
阿川:甘ったれでもないから自分のペースは自分のペースで守るっていう。気が付いたときにふと思ったんですけど、私の話はほとんど聞いていないですね(笑)。
茂木:ん? 聞いてないんですか(笑)。
阿川:こっちが、“ギャギャギャ”って言ってると、たぶん他のこと考えてるんだろうなって(笑)。
茂木:世間ではシニアな年齢で結婚というので、そこも注目されましたけどそのあたりどうですか?
阿川:そう言われてみれば、“こんな年で結婚するか”とか、“今更しなくてもいいんじゃないか”と言われましたけど。
茂木:やっぱり結婚するというのはいいものですか?
阿川:安心できるっていうんですかね、私も長く仕事をしてるし、あちらも仕事してるし。
若い頃に私が結婚してたら相手の人生のペースや趣味に沿わなきゃいけないとか、白無垢じゃないけど「これから私を染めてください」みたいな妻になることが理想だという風な、古い考えを持っていたけど。
これだけ互いの半分の人生を過ごしちゃっていると、何が楽って互いに強制し合わない。
茂木:うんうん。
阿川:「お前はこっちに来たんだから、こっちの色に染まれ!」ということをあっちは求めないし、私も私のペースで忙しければ、あっちはあっちで好きなことをやっていける。
ベタベタもしないけど、すごく冷たくもないっていう、ほどよいぬるい関係っていうんですか(笑)。
茂木:はい(笑)。
阿川:だけど互いに心配はし合うけど、あとは補填し合うっていうんですかね。
“こっちが、いま大変なんだな、じゃあ、ここで補助しようかな”っていうことも、自分が長く仕事をしてきたからこそ、他者に寛容になれるっていうところはあるんじゃないかと思います。
──ロールモデル
茂木:今は未婚率が上がって、年を重ねても結婚されてない方、パートナーがいない方もいるじゃないですか?
阿川さんの経験からすると希望はありますかね。
阿川:40歳代の女の子に「阿川さん! すごく励みになりました、私にはあと25年あります」なんて言われちゃって(笑)。
茂木:女性から見てロールモデルというか、憧れの人というところはあると思うんですけど
ご自身としてはどうですか?
阿川:私はその場しのぎで生きてきて、本当にそうなんですよね。
その場その場で“こういうことやってみない?”って言われて「ムリムリムリ!」って言いながら、“望んでくださっているんだから”と思ってやってみて、それが長続きせず、深くもいかず。
よく仕事を始めたばかりの頃は、父にも上司にも言われたけど「もうちょっとひとつのことに専念して、自分の専門分野というものを持って、他のものに手を出せば軸がしっかりして、“この事については右に出るものはいない”っていうような、深いものの考え方とか研究の仕方をしろ」って言われたんだけど、“何にすりゃりいいんだろう?”って思ってるうちに、40過ぎて、50過ぎて、60過ぎちゃったんですよ。
茂木:うんうん。
阿川:「マルチに」って言ってくださるんですけど、あらゆることに手を出してるだけの話で。
手を出しちゃった責任は、ある程度の点数は出さないと申し訳ないと思って必死にもがいているっていう、これがロールモデルっていうことはないと思いますよ。
茂木:小説は書き続けていらっしゃいますし、芯と言っていいんじゃないですかね。
阿川:小説だって、まだ分からないです。自分は全然力ついてないと思うけど書き続けるしかないし。
インタビューも正直言って好きじゃないです、緊張しますから。
茂木:そうなんですか。
阿川:人にどんどん会いたい、なんて思ってないもの。だけど与えられてるから、期待されてることにはある程度の及第点を出さないと申し訳ないと思うから必死になるだけで。
茂木:そのプロ意識がね。
阿川:でも、長く続けていればきっと何かは身に付くでしょ。
茂木:そう思います。小説は今回改めて思いましたけど、お父さんは偉大な小説家で、お父さんのお師匠さんが志賀直哉さんで。
ちょっと、志賀直哉入ってる感じしますけど。
阿川:え!? そんな褒め言葉!
茂木:阿川さんとマインドフルネスの話をしたことがありますけど、いろんなことをくまなく全部明瞭に見て
それを言葉に直しているというところが、志賀直哉的なところがあるなと思いますけどね。
阿川:精進します(笑)。
●Dream HEART vol.290 阿川佐和子
放送されなかった未公開エピソード満載です!
ぜひ、podcastもお聴きください!
●KADOKAWAオフィシャルサイト
●ことことこーこ / 阿川佐和子 (角川書店)
(Amazon)
来週のゲストは、シンガーソングライターの高橋優さんをゲストにお迎えいたします。
どうぞお楽しみに。
角川書店より「ことことこーこ」を刊行されました、作家の阿川佐和子さんをお迎えしました。
阿川さんは、1953年生まれ、東京都生まれ。
慶応義塾大学ご卒業後、報道番組のキャスターなどを務める。
その後、渡米し、帰国後、エッセイスト、小説家として活躍。
1999年に壇ふみさんとの往復エッセイ「ああ言えばこう食う」で、講談社エッセイ賞、
2000年「ウメ子」で、坪田譲治文学賞、
2008年、『婚約のあとで』で、島清恋愛文学賞を受賞。
2012年に刊行された、『聞く力 心をひらく35のヒント』は170万部を突破する、大ベストセラーを記録し、2014年に、菊池寛賞を受賞されました。
現在も、作家のみならず、インタビュアー、女優など、
マルチにご活躍中でいらっしゃいます。
そんな阿川さんに、お話しを伺いました。
──父との関係
茂木:家族というと、話題なのが旦那さんとの出会いとかを伺ってもいいですか?
阿川:キタキタ!(笑)
茂木:今は幸せですか?
阿川:まあ、幸せです(笑)。
茂木:旦那さんは大学の先生をされていたんですよね?
阿川:そうですね、今もちょっとしています。
茂木:お父様の阿川弘之さんがあまりにも偉い方だったじゃないですか? やっぱりファザコンだったんですか?
阿川:手身近に申し上げます、ある意味ファザコンだと思います。なぜならば、父のような人じゃない人を求めて大きくなったんです。
茂木:今の旦那さんはお父様とは…?
阿川:全然違う性格です。本質的に男だから似ているところもあるかもしれないけど、とにかく父はワンマンで自分の意に反していることが許せないというか。
いらちで、短気で、一種の甘えなんだと思うんですけど、女性を労働力と思っているところがあって。
茂木:はい。
阿川:うちは家族が父と母と、子供は女は私1人なんですよ。あと、3人男兄弟なんですけど。
やっぱり、女は常に台所に入って、自分が原稿書いて、疲れて何か美味いものを食いたいなと思った時に、母と娘が「お父様、こんなものを作ってみましたけど美味しいですか? 朝からずっとお父様のご飯のために働いております、私たち」ということが、理想だったらしいんです。
それなのに、私は父の性格に似ているものだから、そんなの嫌だと思っていちいち反抗するからぶつかることが多かったんですよ。
茂木:うんうん(笑)。
阿川:父が“いらついているんじゃないか?”ということを常に気にしながら、大人になるまで生きてきたんです。
意識が強いっていうことは、たぶんファザコンなんだと思うんです。
茂木:そういうお父様だったんだけど、今の旦那さんは穏やかな方なんですか?
阿川:穏やかですね。ビックリするのが荷物を持ってくれるんですよ。うちの父は荷物は女が持つものだという感じだったから。
例えば、スーパーから一緒に帰ってくる時にすぐに荷物を持ってくれるし。私が仕事でキンキンカンカン、資料も読まなきゃいけないし、原稿の締め切りもあるしと……うちの父のように言っていると、ずーっと黙って遠くにいるんですよ。
“そろそろ機嫌が治ったかな?”っていうときに戻ってくるんですよ。
茂木:距離感のとり方が上手いんですね。お料理は手伝ってくれるんですか?
阿川:お皿洗いはしてくれるし、私がすごく忙しいときには洗濯物をしてくれたり、自分のワイシャツにアイロンかけるし。
茂木:え! 自分のワイシャツにアイロンかけるんですか!?
阿川:甘ったれでもないから自分のペースは自分のペースで守るっていう。気が付いたときにふと思ったんですけど、私の話はほとんど聞いていないですね(笑)。
茂木:ん? 聞いてないんですか(笑)。
阿川:こっちが、“ギャギャギャ”って言ってると、たぶん他のこと考えてるんだろうなって(笑)。
茂木:世間ではシニアな年齢で結婚というので、そこも注目されましたけどそのあたりどうですか?
阿川:そう言われてみれば、“こんな年で結婚するか”とか、“今更しなくてもいいんじゃないか”と言われましたけど。
茂木:やっぱり結婚するというのはいいものですか?
阿川:安心できるっていうんですかね、私も長く仕事をしてるし、あちらも仕事してるし。
若い頃に私が結婚してたら相手の人生のペースや趣味に沿わなきゃいけないとか、白無垢じゃないけど「これから私を染めてください」みたいな妻になることが理想だという風な、古い考えを持っていたけど。
これだけ互いの半分の人生を過ごしちゃっていると、何が楽って互いに強制し合わない。
茂木:うんうん。
阿川:「お前はこっちに来たんだから、こっちの色に染まれ!」ということをあっちは求めないし、私も私のペースで忙しければ、あっちはあっちで好きなことをやっていける。
ベタベタもしないけど、すごく冷たくもないっていう、ほどよいぬるい関係っていうんですか(笑)。
茂木:はい(笑)。
阿川:だけど互いに心配はし合うけど、あとは補填し合うっていうんですかね。
“こっちが、いま大変なんだな、じゃあ、ここで補助しようかな”っていうことも、自分が長く仕事をしてきたからこそ、他者に寛容になれるっていうところはあるんじゃないかと思います。
──ロールモデル
茂木:今は未婚率が上がって、年を重ねても結婚されてない方、パートナーがいない方もいるじゃないですか?
阿川さんの経験からすると希望はありますかね。
阿川:40歳代の女の子に「阿川さん! すごく励みになりました、私にはあと25年あります」なんて言われちゃって(笑)。
茂木:女性から見てロールモデルというか、憧れの人というところはあると思うんですけど
ご自身としてはどうですか?
阿川:私はその場しのぎで生きてきて、本当にそうなんですよね。
その場その場で“こういうことやってみない?”って言われて「ムリムリムリ!」って言いながら、“望んでくださっているんだから”と思ってやってみて、それが長続きせず、深くもいかず。
よく仕事を始めたばかりの頃は、父にも上司にも言われたけど「もうちょっとひとつのことに専念して、自分の専門分野というものを持って、他のものに手を出せば軸がしっかりして、“この事については右に出るものはいない”っていうような、深いものの考え方とか研究の仕方をしろ」って言われたんだけど、“何にすりゃりいいんだろう?”って思ってるうちに、40過ぎて、50過ぎて、60過ぎちゃったんですよ。
茂木:うんうん。
阿川:「マルチに」って言ってくださるんですけど、あらゆることに手を出してるだけの話で。
手を出しちゃった責任は、ある程度の点数は出さないと申し訳ないと思って必死にもがいているっていう、これがロールモデルっていうことはないと思いますよ。
茂木:小説は書き続けていらっしゃいますし、芯と言っていいんじゃないですかね。
阿川:小説だって、まだ分からないです。自分は全然力ついてないと思うけど書き続けるしかないし。
インタビューも正直言って好きじゃないです、緊張しますから。
茂木:そうなんですか。
阿川:人にどんどん会いたい、なんて思ってないもの。だけど与えられてるから、期待されてることにはある程度の及第点を出さないと申し訳ないと思うから必死になるだけで。
茂木:そのプロ意識がね。
阿川:でも、長く続けていればきっと何かは身に付くでしょ。
茂木:そう思います。小説は今回改めて思いましたけど、お父さんは偉大な小説家で、お父さんのお師匠さんが志賀直哉さんで。
ちょっと、志賀直哉入ってる感じしますけど。
阿川:え!? そんな褒め言葉!
茂木:阿川さんとマインドフルネスの話をしたことがありますけど、いろんなことをくまなく全部明瞭に見て
それを言葉に直しているというところが、志賀直哉的なところがあるなと思いますけどね。
阿川:精進します(笑)。
●Dream HEART vol.290 阿川佐和子
放送されなかった未公開エピソード満載です!
ぜひ、podcastもお聴きください!
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●ことことこーこ / 阿川佐和子 (角川書店)
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来週のゲストは、シンガーソングライターの高橋優さんをゲストにお迎えいたします。
どうぞお楽しみに。