Dream Heart(ドリームハート)

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REPORT 最新のオンエアレポート

Dream HEART vol.277 白井聡さん

2018年07月21日

今週ゲストにお迎えしたのは、先週に引き続き、政治学者の白井聡さんです。

白井さんは、1977年、東京都のご出身。
早稲田大学 政治経済学部 政治学科卒業後、一橋大学大学院 社会学研究科 博士課程単位取得退学。
2010年、一橋大学博士(社会学)の学位を取得。

専門は社会思想、政治学で、主にロシア革命の指導者である、レーニンの政治思想をテーマとした研究を手掛けられていましたが、
3.11を基点に日本現代史を論じた『永続敗戦論――戦後日本の核心』で、第4回いける本大賞、第35回石橋湛山賞、第12回角川財団学芸賞を受賞されていらっしゃいます。
近年は現代日本政治史の分野でも活躍中で、京都精華大学人文学部の専任講師を務めていらっしゃいます。
先日、集英社新書から「国体論 菊と星条旗」を刊行されました。


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──世の中の動き


茂木:政治学ってそもそもどういう学問なんですかね?

白井:私も政治学者を名乗っているんですけどはぐれ政治学者なので(笑)。
あまり政治学一般を代表できないんですけど、僕なりの政治学ということで言えば僕がやろうとしているのは単に政治制度だけじゃなくて、ある意味その制度の下で蠢いているものにどう目配りするかっていうことなんですね。

茂木:うんうん。

白井:よく往々にして「政治というのは利害の調整だ」とイメージされていると思うんですよね。
仮に政治的事象が利害の調整につきるのであれば戦争とか起きないんですよ。

茂木:なるほど。

白井:戦争をしたら勝った方だってダメージがあるわけですから。利害の計算だけで済むんだったら戦争も無くなるはずなんですけどなくならない。
“なんでなくならないんだろう?”ってなると、人々に利害を感じさせるそれ以前の力っていうのがあると思うんですね。それを分析していくっていうのが、僕にとっての政治を考えるっていうことなんです。

茂木:面白いですね、そういうことで世の中が動いてるわけですもんね。

白井:そうですね。

茂木:なぜ政治学を志そうとされたのかっていうことなんですけど、お父様は早稲田大学第15代総長を務められた白井克彦先生で、お父様は工学ですよね?

白井:そうですね、特に電気系ですね。

茂木:お父様はそういう方向で、息子さんは政治学にいったのはどういうことなんでしょうか?

白井:僕は理数系の科目があまり好きじゃなかったですね、なんとなく社会科学系の方向へいって、いまいち経済学とか法学にはあまりリアルなものを感じられなくて。
そうすると、政治学くらいがいいかなという感じになったということなんですけど。

茂木:早稲田政経に行かれたのはお父さんも早稲田だし、早稲田愛してるというような…?。

白井:そうですね、やっぱり慶應に行くわけにいかないですからね(笑)。

茂木:入られた時はお父様はどういう立場だったんですか?

白井:ナンバー2位だったんじゃないですかね。ただ、僕は大学院で一橋大学に行ってるわけですけど。
僕が大学院に上がる頃に、うちの親父は総長になるという見込みが立ってたんですね。なので、早稲田にそのままいるのは遠慮しようと思って。

茂木:そうだったんですか!じゃあ、それがなかったら今は早稲田だったかもしれないんですね。

白井:純粋学問的に言って大学院を移って良かったと思いますけどね。というのは、大学ごとに楽譜みたいなものがありますからね。他の大学に行くと“こんなものの見方をするんだな”っていう新しい刺激や発見がありましたから、そこは経験するべきだなと思いましたね。

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茂木:博士号をとられた論文が「レーニンの政治思想:比較思想の試み」ということなんですけど、文系の学者のトレーニングの中で博士論文を書くというのはどういう意味があると思われますか?

白井:例えて言うなら自動車の運転免許ですね。
どういうことかと言うと、運転免許を持っているということは外で車を走らせてよろしいと、だけれども、そのドライバーが優秀なドライバーであるかどうかを証明するものではない、今の博士論文の位置付けはそうなっていますから。

茂木:なるほど、でも運転免許ではあると?

白井:一応世の中で学者とか研究者と名乗っていいですよ、という感じにはなるということですね。

茂木:そして学者として注目を集めるきっかけになったのが「永続敗戦論――戦後日本の核心」ですが、当時ツイッター上でよく見ましたね。
反響はどうでしたか?

白井:この本で時事論的なものに初めて挑戦して、売れないと恥ずかしいな、困るなと思ったんですけど。
その点では部数が出たので良かったと思いますが、“刺激を受けた”とか、ずっとモヤモヤしていて、万事おかしいけど何がおかしいのかよく分からなくてモヤモヤして嫌な気分だったところに「永続敗戦論――戦後日本の核心」を読んで、“そうだよ!こういうことじゃないか!”と、モヤモヤしてるけど上手く説明できないところを、説明できたのかなというのがあって、僕としてはそういう感想が一番ありがたかったですね。

茂木:この本のメッセージは、僕の理解だと敗戦という事実を日本人が認めてないからこそ、敗戦という状況が永続してしまっているということでよろしいんでしょうか?

白井:はい、そういうことです。

茂木:確かに書かれるまで気付かなかったところもあるのかもしれませんね。
この本を書かれた後の学者生活って、それまでと変わったところはいろいろありましたか?

白井:そうですね、時事的な話題についてマスコミの関係から取材を受けるとか、講演のような形で話してくれとかですね。そういう機会は増えて現在に至りますね。

茂木:学者さんにとってメディアっていうのはどう付き合うのがいいんですかね?
白井さんはどう考えてらっしゃいますか?

白井:学者としてというか、一言論人としてということになりますけど。
好きでも嫌いでも何でも、付き合わないわけにいかない対象ですから。基本的にはオールウェルカムで、私の言ってることは読まれてナンボですから。基本的にはどこからの話でもお答えしますよというスタンスでやっていますね。

茂木:白井さんはツイッターはやってらっしゃらないですよね。それは何かお考えがあって?

白井:ツイッターで随分疲弊している身の回りの人を見ていますので(笑)。

茂木:おそらく白井さんがツイッターに降臨されたら喜ばれると思いますけどね。

白井:Facebookはやっているんですよ、最近フレンドの数が増えてきたんですけど。
直接の知り合いじゃない人がフレンドにいるっていう状態になってきてるんですよね。そうすると、だんだん冗談が言えなくなってくるんですよ(笑)。


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『国体論 菊と星条旗』 集英社新書



来週は、辻仁成さんをお迎えします。
どうぞお楽しみに。