2018年03月31日
今週ゲストにお迎えしたのは、先週に引き続き、講談社から発売されています
「銀河鉄道の父」で、第158回直木賞を受賞された、作家の門井慶喜さんをお迎えしました。
門井さんは、群馬県のご出身で、現在46歳。
同志社大学文学部をご卒業後、
2003年、オール讀物推理小説新人賞を「キッドナッパーズ」で受賞しデビュー。
2015年に『東京帝大叡古教授』が第153回直木賞候補に、
2016年に『家康、江戸を建てる』が第155回直木賞候補となり、
今年、2018年に『銀河鉄道の父』で第158回直木賞を受賞されました。
今週は、門井さんがどんな風に作品を書かれているのか、 お伺いしていきます。
──より良い小説を書くために
茂木:門井さんは歴史が好きということですが、どの時代が好きとかあるんですか?
門井:名前が慶喜なものですから、どうしても幕末はやっぱり気になっちゃうというか、他人ごとではない感じがします。
茂木:徳川慶喜はどういうイメージですか?
門井:僕としては、最近40歳を過ぎてやっと和解したって感じなんです。
茂木:どういうことですか?
門井:子供の頃はこの名前があまり好きではなくて、例えば門井竜馬だったら誰もが認める英雄ですし、門井信長だったら、キャラクターもはっきりしてる。
そういう名前ならいいんですけれども、慶喜って褒める人はめちゃめちゃ褒めるし、悪口言う人はめちゃめちゃ悪口言うじゃないですか。
子供って、全部を自分への評価と受け止めてしまうので、その意味で名前という点ではアイデンティティを確立するのには苦労したという覚えがあるんですね。
茂木:お父様はそこまで考えてつけられたんですかね?
門井:おそらく、父は慶喜賛成だったんでしょうね。徳川家のヒーローだと思って付けたんでしょうが、世間の評価はそうではなかったということですね。
茂木:門井さんご自身は、明治維新、幕末などはどのようにご覧になっているんですか?
門井:今は、素直にどちらも肯定できるようになりました。若い頃ってなかなか対立概念の両立って難しいんですね。
どっちかに決めちゃいたがるけれど、そうではないし。歴史っていうのは勝った者だけが作るのではない。
日本の幕末近代、幕末明治の場合には負けた側の徳川家からもいっぱい人材が明治維新の政府に出てるわけですね。そういうことも含めて今は僕はどっちとも仲がいいつもりです(笑)。
茂木:今後の門井さんの作品にも、そのあたりのお話が出てきそうですね。
門井さんご自身は、いつもどういう感じで小説を書かれてるんですか?執筆時間はどれくらいなんでしょう?
門井:僕は朝4時に起きます。
茂木:4時に起きる!? 早起きですね!
門井:4時半には仕事を始めますね。
僕は一戸建ての家に住んでるんですが、道を挟んだ反対側に2 LDKの部屋を一部屋借りてまして、そこでコーヒーを入れて、ちょっと甘いクッキーを食べながら朝の仕事を始めます。
だいたい朝の7時ぐらいまでそれをやって、一回家に帰り、子供達とご飯を食べて子供たちを学校に送り出してしまうと、だいたい朝の7時50分ぐらいに昼寝をします。
10〜15分くらいで目が覚めると脳がリセットされると言いますか、頭がフレッシュな状態になって、次の仕事に立ち向かうことができるんです。
茂木:またそこから仕事をされるんですね。どれくらいまでされるんですか?
門井:あとは夕方の18時くらいまで仕事部屋に入ります。その間はもちろん休んだり、散歩に出たりもするんですけど、基本的には本を読んだり、書いたりっていう時間ですね。
茂木:一日、原稿用紙何枚くらい書かれるんですか?
門井:これだけやっても、一日5枚か6枚くらいですね。
茂木:かなりゆっくりしていますね。それは、どういう部分に時間をかけてらっしゃるんですか?
門井:文章の推敲が多いみたいですね。あと、資料の読み込みですね。この二つでほとんど時間取られてますね。
やっぱり、ある一定以上のクオリティでないと出す気になれないという…。良くいえば職人気質。悪く言えば…何でしょうかね?(笑)
──歴史を振り返ることで学べること
茂木:門井さんは推理小説、ミステリー、サスペンス、歴史小説…本当に色んなジャンルの小説を書かれてるんですけど、今後はどういう方向に書き進めていこうっていうイメージみたいなものはございますか?
門井:おそらく、今後は歴史ものを小説の形で書いていくっていう仕事に絞っていくんだろうと思います。
茂木:絞っていくんですね。
門井:ここ何作かは全てそういう作品ですし、僕としてもすごく書きやすくて読者に対して伝えられるものも大きいと思ってますので、この路線で今後も続けていこうと思ってます。
茂木:歴史って、やっぱり我々にとってすごく大事なものだと思うんですけど、門井さんから見て歴史を振り返ることから学べる事ってどんなことですか?
門井:逆説的な言い方かもしれませんが、大切なのは現代だなっていうことをいつも思います。
人間って、大昔の人でも今の人でも、もちろんやってることは色々変わるし、真理も変わるんですけれど、本質っていうのはあんまり変わらないような気がするんですね。
逆に言ったら、時代が違っても変わらないものこそ、人間の本質であるということも言えるんだと思うんです。
そういう人間の本質を探るためのツールあるいは鏡として、一番有効なのが僕にとっては歴史なんじゃないかなという風に思ってます。
茂木:これは、日本の歴史には限らないかもしれない?
門井:はい、そうです。
茂木:ということになると、書くテーマは随分あると思うんですが、今どれくらい構想としては頭の中にあるんですか?
門井:ノートに書いてあるメモ程度のものまで含めたら、もう100は超えているはずです。
茂木:急がないと書き終わらないですね!(笑)
門井:そうですね。一日24時間ってこんなに短かったんだっていう風に最近は思います。
茂木:でも、今回おめでたいことがあったわけですから、ちょっと休もうとか、少し旅行に行くとか、そういうご予定はないんですか?
門井:ちょっと休みたいなと思ってます(笑)。例えば高知県に行って歴史のことは考えず、美味しいものだけを食べて帰ってくるみたいな、そういうことやりたいなと思ったりします。
茂木:絶対、龍馬ゆかりの桂浜とか、和霊神社とか行っちゃいそうだな〜(笑)。
でも、そういう意味において、作家にオフはあってないようなもんですもんね。
門井:その通りですね。
茂木:この番組、夢がテーマなんですけど今後の夢はなんでしょうか?
門井:僕はやっぱり本が好きなので、自分だけの図書館を作りたいっていう夢があります。
実は更にもう一つありまして、自分のためなんだけれども、オープンな図書館にしたいんですね。
茂木:じゃあ、皆さんが来て資料として見られる場所にしたいということですね。雑誌でいう所の大宅文庫みたいな感じですね。
門井:そうですね。そういうイメージですね!僕はガラスかなにかで仕切られた部屋の中で執筆をしていると。
茂木:門井文庫、これはどこに作りますかね?
門井:僕が住んでるのは大阪ですので、自宅のそばに作らないと仕事ができないという実際的な問題がありますので…(笑)。でも、本当に夢ですね!
●講談社 公式サイト
(Amazon)
来週も引き続き、来週は作家・営業コンサルタントの和田裕美さんをお迎えします。
どうぞお楽しみに。
「銀河鉄道の父」で、第158回直木賞を受賞された、作家の門井慶喜さんをお迎えしました。
門井さんは、群馬県のご出身で、現在46歳。
同志社大学文学部をご卒業後、
2003年、オール讀物推理小説新人賞を「キッドナッパーズ」で受賞しデビュー。
2015年に『東京帝大叡古教授』が第153回直木賞候補に、
2016年に『家康、江戸を建てる』が第155回直木賞候補となり、
今年、2018年に『銀河鉄道の父』で第158回直木賞を受賞されました。
今週は、門井さんがどんな風に作品を書かれているのか、 お伺いしていきます。
──より良い小説を書くために
茂木:門井さんは歴史が好きということですが、どの時代が好きとかあるんですか?
門井:名前が慶喜なものですから、どうしても幕末はやっぱり気になっちゃうというか、他人ごとではない感じがします。
茂木:徳川慶喜はどういうイメージですか?
門井:僕としては、最近40歳を過ぎてやっと和解したって感じなんです。
茂木:どういうことですか?
門井:子供の頃はこの名前があまり好きではなくて、例えば門井竜馬だったら誰もが認める英雄ですし、門井信長だったら、キャラクターもはっきりしてる。
そういう名前ならいいんですけれども、慶喜って褒める人はめちゃめちゃ褒めるし、悪口言う人はめちゃめちゃ悪口言うじゃないですか。
子供って、全部を自分への評価と受け止めてしまうので、その意味で名前という点ではアイデンティティを確立するのには苦労したという覚えがあるんですね。
茂木:お父様はそこまで考えてつけられたんですかね?
門井:おそらく、父は慶喜賛成だったんでしょうね。徳川家のヒーローだと思って付けたんでしょうが、世間の評価はそうではなかったということですね。
茂木:門井さんご自身は、明治維新、幕末などはどのようにご覧になっているんですか?
門井:今は、素直にどちらも肯定できるようになりました。若い頃ってなかなか対立概念の両立って難しいんですね。
どっちかに決めちゃいたがるけれど、そうではないし。歴史っていうのは勝った者だけが作るのではない。
日本の幕末近代、幕末明治の場合には負けた側の徳川家からもいっぱい人材が明治維新の政府に出てるわけですね。そういうことも含めて今は僕はどっちとも仲がいいつもりです(笑)。
茂木:今後の門井さんの作品にも、そのあたりのお話が出てきそうですね。
門井さんご自身は、いつもどういう感じで小説を書かれてるんですか?執筆時間はどれくらいなんでしょう?
門井:僕は朝4時に起きます。
茂木:4時に起きる!? 早起きですね!
門井:4時半には仕事を始めますね。
僕は一戸建ての家に住んでるんですが、道を挟んだ反対側に2 LDKの部屋を一部屋借りてまして、そこでコーヒーを入れて、ちょっと甘いクッキーを食べながら朝の仕事を始めます。
だいたい朝の7時ぐらいまでそれをやって、一回家に帰り、子供達とご飯を食べて子供たちを学校に送り出してしまうと、だいたい朝の7時50分ぐらいに昼寝をします。
10〜15分くらいで目が覚めると脳がリセットされると言いますか、頭がフレッシュな状態になって、次の仕事に立ち向かうことができるんです。
茂木:またそこから仕事をされるんですね。どれくらいまでされるんですか?
門井:あとは夕方の18時くらいまで仕事部屋に入ります。その間はもちろん休んだり、散歩に出たりもするんですけど、基本的には本を読んだり、書いたりっていう時間ですね。
茂木:一日、原稿用紙何枚くらい書かれるんですか?
門井:これだけやっても、一日5枚か6枚くらいですね。
茂木:かなりゆっくりしていますね。それは、どういう部分に時間をかけてらっしゃるんですか?
門井:文章の推敲が多いみたいですね。あと、資料の読み込みですね。この二つでほとんど時間取られてますね。
やっぱり、ある一定以上のクオリティでないと出す気になれないという…。良くいえば職人気質。悪く言えば…何でしょうかね?(笑)
──歴史を振り返ることで学べること
茂木:門井さんは推理小説、ミステリー、サスペンス、歴史小説…本当に色んなジャンルの小説を書かれてるんですけど、今後はどういう方向に書き進めていこうっていうイメージみたいなものはございますか?
門井:おそらく、今後は歴史ものを小説の形で書いていくっていう仕事に絞っていくんだろうと思います。
茂木:絞っていくんですね。
門井:ここ何作かは全てそういう作品ですし、僕としてもすごく書きやすくて読者に対して伝えられるものも大きいと思ってますので、この路線で今後も続けていこうと思ってます。
茂木:歴史って、やっぱり我々にとってすごく大事なものだと思うんですけど、門井さんから見て歴史を振り返ることから学べる事ってどんなことですか?
門井:逆説的な言い方かもしれませんが、大切なのは現代だなっていうことをいつも思います。
人間って、大昔の人でも今の人でも、もちろんやってることは色々変わるし、真理も変わるんですけれど、本質っていうのはあんまり変わらないような気がするんですね。
逆に言ったら、時代が違っても変わらないものこそ、人間の本質であるということも言えるんだと思うんです。
そういう人間の本質を探るためのツールあるいは鏡として、一番有効なのが僕にとっては歴史なんじゃないかなという風に思ってます。
茂木:これは、日本の歴史には限らないかもしれない?
門井:はい、そうです。
茂木:ということになると、書くテーマは随分あると思うんですが、今どれくらい構想としては頭の中にあるんですか?
門井:ノートに書いてあるメモ程度のものまで含めたら、もう100は超えているはずです。
茂木:急がないと書き終わらないですね!(笑)
門井:そうですね。一日24時間ってこんなに短かったんだっていう風に最近は思います。
茂木:でも、今回おめでたいことがあったわけですから、ちょっと休もうとか、少し旅行に行くとか、そういうご予定はないんですか?
門井:ちょっと休みたいなと思ってます(笑)。例えば高知県に行って歴史のことは考えず、美味しいものだけを食べて帰ってくるみたいな、そういうことやりたいなと思ったりします。
茂木:絶対、龍馬ゆかりの桂浜とか、和霊神社とか行っちゃいそうだな〜(笑)。
でも、そういう意味において、作家にオフはあってないようなもんですもんね。
門井:その通りですね。
茂木:この番組、夢がテーマなんですけど今後の夢はなんでしょうか?
門井:僕はやっぱり本が好きなので、自分だけの図書館を作りたいっていう夢があります。
実は更にもう一つありまして、自分のためなんだけれども、オープンな図書館にしたいんですね。
茂木:じゃあ、皆さんが来て資料として見られる場所にしたいということですね。雑誌でいう所の大宅文庫みたいな感じですね。
門井:そうですね。そういうイメージですね!僕はガラスかなにかで仕切られた部屋の中で執筆をしていると。
茂木:門井文庫、これはどこに作りますかね?
門井:僕が住んでるのは大阪ですので、自宅のそばに作らないと仕事ができないという実際的な問題がありますので…(笑)。でも、本当に夢ですね!
●講談社 公式サイト
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来週も引き続き、来週は作家・営業コンサルタントの和田裕美さんをお迎えします。
どうぞお楽しみに。