2018年03月17日
今週ゲストにお迎えしたのは、現在、東京・新宿ピカデリー、
Bunkamuraル・シネマ、東劇ほか、全国でロードショーされている映画、
「しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス」の監督、アシュリング・ウォルシュさんをお迎えしました。
この映画「しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス」は、
カナダの女性画家、モード・ルイスと彼女の夫の半生を描いた実話です。
モード・ルイスは、日本では、知る人ぞ知る存在ですが、
本国・カナダでは、最も愛されている画家の1人です。
鮮やかな色彩で、カナダの美しい風景や動物たちを描き、
その愛とユーモアに満ちた心象風景は、オークションで500万円を超える値段で取引されるなど、大変な人気です。
【映画「しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス」】
カナダ東部の小さな町で叔母と暮らすモード・ルイスは、買い物中に見かけた家政婦募集の広告を貼り出したエベレットに興味を抱き、彼が暮らす町外れの小屋に押しかけます。
子どもの頃から重度のリウマチを患っているモードと、孤児院育ちで学もないエベレット。そんな2人の同居生活はトラブルの連続でしたが、はみ出し者の2人は互いを認め合い、結婚します。
そしてある時、魚の行商を営むエベレットの顧客であるサンドラが2人の家を訪れ、モードが部屋の壁に描いたニワトリの絵を見て、モードの絵の才能を見抜き絵の制作を依頼。やがてモードの絵は評判を呼び、アメリカのニクソン大統領から依頼が来るまでになるが・・・。
──心惹かれるもの
茂木:最初は、どのような経緯でこの企画が立ち上がったのでしょうか?
アシュリング・ウォルシュ:ちょうど、「ディラン・トマス」という、ウェールズの有名な詩人の映画を作ろうということで、ウェールズのカーディフに滞在している時に、メールでプロデューサーから脚本が送られてきました。脚本を読んで、すぐに惚れ込んでしまいました。
最近、自分がエージェントに送ったメールを見つけたんですけど、”何があっても、この映画の作り手たちに会いたい”と、そのくらいこの作品を作りたいと書いてありました。
茂木:ウォルシュ監督は、脚本を全部読み終わる前に”撮りたい”と思ったとお聞きしました。
アシュリング・ウォルシュ:その通りなんです。脚本を読み始めて10ページで作りたいと思いました。
女流画家の素晴らしい物語だと思いましたし、脚本読み終わる前に、主演のサリー・ホーキンスの名前をメモっていたくらいなんです。
茂木:この作品には、サリー・ホーキンスさんがぴったりだと思ったということですね?
アシュリング・ウォルシュ:サリー・ホーキンスは、以前に仕事をしたことがあって、友人でもあるんですね。
この役どころは1人の女優さんに演じてもらいたいと思いました。若い女性の時代から年を重ねてまで…彼女だったら、それができると確信していましたし、この役を彼女が気に入ってくれると思っていました。
茂木:サリー・ホーキンスさんは、普段からお付き合いがあるんですか?
アシュリング・ウォルシュ:実は昨日もメールしたばかりなんです。
サリーは「シェイプ・オブ・ウォーター」で、アカデミー章にノミネートされているその件だったんですね。
お互いにキャリアを通して、何度でもお仕事をしたい、そんな仲です。
茂木:モード・ルイスを献身的にサポートした夫のエベレットの役が、「いまを生きる」でブレイクしまして、「6才のボクが、大人になるまで。」で、アカデミー賞助演男優賞にノミネートされました、アメリカ出身のイーサン・ホークが演じています。
イーサン・ホークさんも素晴らしい方なんですけど、この映画を観まして、雰囲気が最初から最後まで魅力的に、映画の世界に包み込まれるような素晴らしい映画だったと思います。
アシュリング・ウォルシュ:とても嬉しいです。映画作家としてまさにやろうと思っていたことですから。
観客の方が見たときに信じられるような世界をつくること、視覚的な部分も含めて、魅力を感じたり、興味を惹かれるようなものにすることを大切にしています。
今回、主人公が画家ですから、なおさらそういう部分を大切にしました。
茂木:モード・ルイスさんという1人の人間にとっての絵とはどういう意味があったのか?
彼女の絵の魅力はどこにあるのか教えてもらえますか?
アシュリング・ウォルシュ:若年性リウマチになって、ずっと進行しているような状況だったんですね。
年をとってから不自由さは増してしまったんですけど、若いときは学校でいじめにもあって。
お母様がホームスクールに切り替えて、絵を教えたのもお母様だったそうなんです。
おそらく彼女が1人でできるものであり、それは彼女がのめり込めるものであったんじゃないかと、絵を描くということはそういう意味を彼女は持っていたんじゃないかと思います。
自分が興味を持っている世界観を、彼女がどんな風に絵に落とすのか、そこにすごく魅力を感じますね。
そこにはユーモアもあって、黒猫が3匹いる絵であったりとか、季節を混ぜ込んでしまって雪と桜とチューリップがいっぺんに登場するような作品に、彼女らしいユーモアを感じてそれを魅力に思います。
実はシンプルかと思うと、とても複雑なんですね。この映画を作るために、彼女の作品を50〜60点複製しなければいけなかったんですけど、それが大変な作業だったんです。彼女の見る世界は魅力的で、ひとつの絵ですが、夫がソリを引いていて奇妙な犬がいる絵なんかもあるんですけど大好きですね。
生活は非常に厳しいものであったけど、彼女はああいう風に世界を見ていたんだなと、そのシンプルさに心惹かれます。
──映画を作り続けたい
茂木:今回の映画は、ある意味では厳しい環境の中で暮らしてる女性が、アートの力で生きる喜びを見出していくという映画だと思うんですけど。
監督自身も映画という芸術に関わっていらして、芸術が人間に対して与える勇気、喜びはどういうものだと思いますか?
アシュリング・ウォルシュ:仰ったような力、私もアートは持っている思います。世界を変えることもできるし、世界の見方を変える力をアートは持っているんじゃないかと思います。今回の作品を見ていただくときに、映画の持つ力を改めて感じることができました。
たとえば、ベルリンやトロントの映画祭で上映したときに、観客の方がすごく反応してくださって。エンドロールの時って、海外のお客様はどんどん立ち上がって帰ってしまうんですけど。
この作品は、みなさんエンドロールのあいだ静かに座ってらっしゃったんですね。自分の中で、この作品のエンディングをじっくり感じる時間が必要だったのかなと思いました。
アートの持つ力というものが重要なもので、誰もが子供のときから夢というものを抱いてるわけです。だけれども、小学校で「宇宙飛行士になりたいです」と言ったら、「忘れなさい」と周りから言われたりする。
誰の中にも、クリエイティビティというものがある、音楽、ものを書くこと、アートというのはセラピー的な側面もあると思いますし。
今回は、絵を描くということを描いていますけど、私は映画を作っていて、この2つは非常につながりがあるんだけど、映画を好きなのは人とコラボレーションしながら作れるという側面なんじゃないかと思います。
絵を描くということは、孤独な作業でもあると思いますから。映画を作るとき、私のスタート地点というのは1枚の写真であったり、ひとつの絵画の作品だったりするんです。
私と同じように、多くの人が絵というものからインスピレーションを得ることもできますし、気持ちの上でグッと引き込まれることがあると思います。
その絵と向き合ったときの体験というのを、この映画を観てしていただけるような、そういう作品を作りたいと考えました。
茂木:この番組は夢がテーマなんですけど、ウォルシュ監督、今後の夢は何なのか教えていただけますか?
アシュリング・ウォルシュ:映画を作り続けたいというのが夢です、映画というのは制作期間が空いてしまうことも多いんですけど。この先、ギャップがどんどん短くなっていけばいいなと思いますし、”観たい”と思わせるような作品を作りたい。
いまの映画の業界は、いくつになっても活躍できる場所だと思うんですね。黒澤明監督がそうであったように、私もいつまでも映画を作り続けたいと思っています。
■プレゼントのお知らせ
映画「しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス」の劇場鑑賞券を、3組6名の方にプレゼントいたします。
ご希望の方は、必要事項を明記の上、番組ホームページのメッセージフォームより、ご応募ください。
番組へのご意見など、メッセージを添えていただけると嬉しいです。
尚、当選者の発表は、商品の発送をもってかえさせていただきます。
たくさんのご応募お待ちしています。
●映画「しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス」公式サイト
※上映館については、上記のサイトでご確認ください。
来週は、小説家の門井慶喜さんをお迎えします。
どうぞお楽しみに。
Bunkamuraル・シネマ、東劇ほか、全国でロードショーされている映画、
「しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス」の監督、アシュリング・ウォルシュさんをお迎えしました。
この映画「しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス」は、
カナダの女性画家、モード・ルイスと彼女の夫の半生を描いた実話です。
モード・ルイスは、日本では、知る人ぞ知る存在ですが、
本国・カナダでは、最も愛されている画家の1人です。
鮮やかな色彩で、カナダの美しい風景や動物たちを描き、
その愛とユーモアに満ちた心象風景は、オークションで500万円を超える値段で取引されるなど、大変な人気です。
【映画「しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス」】
カナダ東部の小さな町で叔母と暮らすモード・ルイスは、買い物中に見かけた家政婦募集の広告を貼り出したエベレットに興味を抱き、彼が暮らす町外れの小屋に押しかけます。
子どもの頃から重度のリウマチを患っているモードと、孤児院育ちで学もないエベレット。そんな2人の同居生活はトラブルの連続でしたが、はみ出し者の2人は互いを認め合い、結婚します。
そしてある時、魚の行商を営むエベレットの顧客であるサンドラが2人の家を訪れ、モードが部屋の壁に描いたニワトリの絵を見て、モードの絵の才能を見抜き絵の制作を依頼。やがてモードの絵は評判を呼び、アメリカのニクソン大統領から依頼が来るまでになるが・・・。
──心惹かれるもの
茂木:最初は、どのような経緯でこの企画が立ち上がったのでしょうか?
アシュリング・ウォルシュ:ちょうど、「ディラン・トマス」という、ウェールズの有名な詩人の映画を作ろうということで、ウェールズのカーディフに滞在している時に、メールでプロデューサーから脚本が送られてきました。脚本を読んで、すぐに惚れ込んでしまいました。
最近、自分がエージェントに送ったメールを見つけたんですけど、”何があっても、この映画の作り手たちに会いたい”と、そのくらいこの作品を作りたいと書いてありました。
茂木:ウォルシュ監督は、脚本を全部読み終わる前に”撮りたい”と思ったとお聞きしました。
アシュリング・ウォルシュ:その通りなんです。脚本を読み始めて10ページで作りたいと思いました。
女流画家の素晴らしい物語だと思いましたし、脚本読み終わる前に、主演のサリー・ホーキンスの名前をメモっていたくらいなんです。
茂木:この作品には、サリー・ホーキンスさんがぴったりだと思ったということですね?
アシュリング・ウォルシュ:サリー・ホーキンスは、以前に仕事をしたことがあって、友人でもあるんですね。
この役どころは1人の女優さんに演じてもらいたいと思いました。若い女性の時代から年を重ねてまで…彼女だったら、それができると確信していましたし、この役を彼女が気に入ってくれると思っていました。
茂木:サリー・ホーキンスさんは、普段からお付き合いがあるんですか?
アシュリング・ウォルシュ:実は昨日もメールしたばかりなんです。
サリーは「シェイプ・オブ・ウォーター」で、アカデミー章にノミネートされているその件だったんですね。
お互いにキャリアを通して、何度でもお仕事をしたい、そんな仲です。
茂木:モード・ルイスを献身的にサポートした夫のエベレットの役が、「いまを生きる」でブレイクしまして、「6才のボクが、大人になるまで。」で、アカデミー賞助演男優賞にノミネートされました、アメリカ出身のイーサン・ホークが演じています。
イーサン・ホークさんも素晴らしい方なんですけど、この映画を観まして、雰囲気が最初から最後まで魅力的に、映画の世界に包み込まれるような素晴らしい映画だったと思います。
アシュリング・ウォルシュ:とても嬉しいです。映画作家としてまさにやろうと思っていたことですから。
観客の方が見たときに信じられるような世界をつくること、視覚的な部分も含めて、魅力を感じたり、興味を惹かれるようなものにすることを大切にしています。
今回、主人公が画家ですから、なおさらそういう部分を大切にしました。
茂木:モード・ルイスさんという1人の人間にとっての絵とはどういう意味があったのか?
彼女の絵の魅力はどこにあるのか教えてもらえますか?
アシュリング・ウォルシュ:若年性リウマチになって、ずっと進行しているような状況だったんですね。
年をとってから不自由さは増してしまったんですけど、若いときは学校でいじめにもあって。
お母様がホームスクールに切り替えて、絵を教えたのもお母様だったそうなんです。
おそらく彼女が1人でできるものであり、それは彼女がのめり込めるものであったんじゃないかと、絵を描くということはそういう意味を彼女は持っていたんじゃないかと思います。
自分が興味を持っている世界観を、彼女がどんな風に絵に落とすのか、そこにすごく魅力を感じますね。
そこにはユーモアもあって、黒猫が3匹いる絵であったりとか、季節を混ぜ込んでしまって雪と桜とチューリップがいっぺんに登場するような作品に、彼女らしいユーモアを感じてそれを魅力に思います。
実はシンプルかと思うと、とても複雑なんですね。この映画を作るために、彼女の作品を50〜60点複製しなければいけなかったんですけど、それが大変な作業だったんです。彼女の見る世界は魅力的で、ひとつの絵ですが、夫がソリを引いていて奇妙な犬がいる絵なんかもあるんですけど大好きですね。
生活は非常に厳しいものであったけど、彼女はああいう風に世界を見ていたんだなと、そのシンプルさに心惹かれます。
──映画を作り続けたい
茂木:今回の映画は、ある意味では厳しい環境の中で暮らしてる女性が、アートの力で生きる喜びを見出していくという映画だと思うんですけど。
監督自身も映画という芸術に関わっていらして、芸術が人間に対して与える勇気、喜びはどういうものだと思いますか?
アシュリング・ウォルシュ:仰ったような力、私もアートは持っている思います。世界を変えることもできるし、世界の見方を変える力をアートは持っているんじゃないかと思います。今回の作品を見ていただくときに、映画の持つ力を改めて感じることができました。
たとえば、ベルリンやトロントの映画祭で上映したときに、観客の方がすごく反応してくださって。エンドロールの時って、海外のお客様はどんどん立ち上がって帰ってしまうんですけど。
この作品は、みなさんエンドロールのあいだ静かに座ってらっしゃったんですね。自分の中で、この作品のエンディングをじっくり感じる時間が必要だったのかなと思いました。
アートの持つ力というものが重要なもので、誰もが子供のときから夢というものを抱いてるわけです。だけれども、小学校で「宇宙飛行士になりたいです」と言ったら、「忘れなさい」と周りから言われたりする。
誰の中にも、クリエイティビティというものがある、音楽、ものを書くこと、アートというのはセラピー的な側面もあると思いますし。
今回は、絵を描くということを描いていますけど、私は映画を作っていて、この2つは非常につながりがあるんだけど、映画を好きなのは人とコラボレーションしながら作れるという側面なんじゃないかと思います。
絵を描くということは、孤独な作業でもあると思いますから。映画を作るとき、私のスタート地点というのは1枚の写真であったり、ひとつの絵画の作品だったりするんです。
私と同じように、多くの人が絵というものからインスピレーションを得ることもできますし、気持ちの上でグッと引き込まれることがあると思います。
その絵と向き合ったときの体験というのを、この映画を観てしていただけるような、そういう作品を作りたいと考えました。
茂木:この番組は夢がテーマなんですけど、ウォルシュ監督、今後の夢は何なのか教えていただけますか?
アシュリング・ウォルシュ:映画を作り続けたいというのが夢です、映画というのは制作期間が空いてしまうことも多いんですけど。この先、ギャップがどんどん短くなっていけばいいなと思いますし、”観たい”と思わせるような作品を作りたい。
いまの映画の業界は、いくつになっても活躍できる場所だと思うんですね。黒澤明監督がそうであったように、私もいつまでも映画を作り続けたいと思っています。
■プレゼントのお知らせ
映画「しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス」の劇場鑑賞券を、3組6名の方にプレゼントいたします。
ご希望の方は、必要事項を明記の上、番組ホームページのメッセージフォームより、ご応募ください。
番組へのご意見など、メッセージを添えていただけると嬉しいです。
尚、当選者の発表は、商品の発送をもってかえさせていただきます。
たくさんのご応募お待ちしています。
●映画「しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス」公式サイト
※上映館については、上記のサイトでご確認ください。
来週は、小説家の門井慶喜さんをお迎えします。
どうぞお楽しみに。