2018年03月10日
今週ゲストにお迎えしたのは、作家・エッセイストの小澤征良さんです。
小澤さんは、お父さまは、日本を代表する指揮者の小澤征爾さん。
お母さまは、元モデルで女優の入江美樹さん。
征良さんは長女として、アメリカ・サンフランシスコで生まれました。
上智大学 比較文化学部 卒業後、
メトロポリタン歌劇場 首席演出家デイヴィッド・ニース氏につき、オペラ演出を学ぶ。
2002年に集英社から『おわらない夏』で作家デビュー。
著書に小説『蒼いみち』(講談社)『しずかの朝』(新潮社)、
エッセイ集『思い出のむこうへ』(筑摩書房)『そら いろいろ』(新潮社)
……などがあります。
小澤征良さんにお話を伺いました。
──オペラが好きで
茂木:小澤征良さんがデイヴィッド・ニースさんのところでオペラ演出を学ばれたということなんですけど、もともとオペラは子供の頃から親しんでいるんですよね?
小澤:最初に見たのは3歳くらいのとき、パッと思い出すのは決闘のシーンか何かで…うちの父が指揮をしてて、二階のバルコニーにところで見ているんですよ。
茂木:場所はどこですか?
小澤:ロンドンだと思うんですけど。
茂木:何のオペラかはわからないけど、決闘のシーンは覚えてると(笑)。
小澤征爾さんの子供として育つ中での音楽は、ほとんど生で聴いてらっしゃるっていうことですよね。
小澤:リハーサルとかでも、楽屋で遊んでるのが大好きで、うちの弟なんかは漫画読んでたり。今、生の音楽が特に好きなんですけど、そういう環境にいられたのも大きいのかなと思っていて、すごく感謝してます。
茂木:今回の「小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクトXVI」も、ある意味ではフェスティバルみたいなもので、フェスというものはどうですか?
小澤:私は好きです、あと裏方が好きなので(笑)。
みんなで一つの目標に向かって……だから文化祭みたいなものです。
それぞれの役割を持った人たちが、演出家も、出演者も、演奏もそうだし、照明もいて、裏のスタッフがいて…何かに向かっているみたいな、そういうのが好きです。
茂木:今回の演目はプッチーニの歌劇「ジャンニ・スキッキ」と、ラヴェルの歌劇「子どもと魔法」ということなんですけど。
小澤:はい、二本立てです。
茂木:これは豪華ですね。
小澤:2つとも短いオペラなので、珍しい小一時間のオペラです。
茂木:「ジャンニ・スキッキ」というと、皆さん”え?”って思われるかもしれないですけど、この中のアリアで「私のお父様」というのが有名で、みんな絶対に知ってますよね。
小澤:聴いたら知ってると思います。オペラっていうと、長くて、暗くて、重くて…みたいな印象があるのかなと思うんですけど。
こういう作品に関しては心踊るといいますか、昔のイタリアのコメディのワンシーンを、機械を全く通してない生の音で聴けるっていうのは、その時代を本当に覗き見てるみたいなワクワク感がありますね。
茂木:「ジャンニ・スキッキ」は、途中で音楽だけの部分もあるから、そうするとデイヴィッド・ニースさんの演出が爆発ですね!どんな演出するんですかね(笑)。
小澤:楽しみですね(笑)。
──小澤征爾音楽塾
茂木:征良さんは、どういう形でプロジェクトに?
小澤:私は、前にデイヴィッドのアシスタントをさせてもらった経験もあって、オペラが好きという気持ちも強いのでサポートさせてもらって。
茂木:これは若い音楽家を育てたいという思いがあるんですか?
小澤:もともとはそうです。父が若いときにオペラを経験して、若いときに音楽家として一流の歌手たちと、一緒に作品を作る。オペラを通じて学べることの特別さを痛感していまして。
ぜひ、それを若い子たちに渡したいという気持ちがすごく強くて。
茂木:はい。
小澤:2000年に、京都にあるロームというコンピューターの半導体を作ってる会社の、佐藤 研一郎さんという会長さんがオペラが好きで、佐藤さんご自身も熱い思いを音楽とオペラに持っている方で。
賛同してくださって、2000年から始まってるのが「小澤征爾音楽塾」という、オペラを通じて若い子たちの成長を助けるといいますか、そういう場を与えながらも世界レベルの公演を提供していくという……ヨーロッパとかアメリカの、オペラ歌手の父の仲間たちは「征爾、日本ですごいことやってるよ」と、業界の中ではわりと知られている活動です。
茂木:オーディションで選ばれて、16〜29歳の若い音楽家の方々が参加されるということで、これは大変な経験でしょうね。
小澤:見ていると、オペラを一個作るのに2週間とか、4週間弱かかるんですけど。
練習の一日目に出してる音と、最終的なゲネプロとかまで来ちゃうと、”本当に同じグループかな?”と思うくらい聴いてても変わるので、すごくのめり込んでやっていますね。
茂木:優れた指揮者って、当然といえば当然なんですけど、どの楽器がどういう音を出しているかとか、全部把握されているじゃないですか?
演奏家にとっては、聞こえちゃってるわけだから怖いですよね。
小澤:「バイオリンのセクションのあの人が遅い」とか、そういうのがあるから(笑)。
茂木:指揮者っていうと、本番での指揮者の姿をご覧になっていると思うんですけど。
積み上げていく中で細かい指示をされているんですもんね。
小澤:あと、ニュアンスとか、オペラは人間の喜怒哀楽の感情が現れやすいじゃないですか?
そうすると、歌手の方の歌い方だったり、演技だったり、そういうものに触発されて。
オペラの制作をする過程で、演奏者の方もオケの方も、技術はあっても悲しみとか、怒りとか、喜びを、どう体で表現するかっていのが、すごく変わっていくらしいんですね。それがすごく大事なことなんですね。
茂木:なるほど〜。
小澤:技術だけじゃないから、技術の向こう側にあるものを掴まなきゃダメ、人間の持っているものを最大限表現するということなんですね。
茂木:音楽って人間そのものですよね。
●「小澤征爾音楽塾」公式サイト
※「小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクトXVI」については、上記のサイトをご覧ください。
来週は、映画監督のアシュリング・ウォルシュさんをお迎えします。
どうぞお楽しみに。
小澤さんは、お父さまは、日本を代表する指揮者の小澤征爾さん。
お母さまは、元モデルで女優の入江美樹さん。
征良さんは長女として、アメリカ・サンフランシスコで生まれました。
上智大学 比較文化学部 卒業後、
メトロポリタン歌劇場 首席演出家デイヴィッド・ニース氏につき、オペラ演出を学ぶ。
2002年に集英社から『おわらない夏』で作家デビュー。
著書に小説『蒼いみち』(講談社)『しずかの朝』(新潮社)、
エッセイ集『思い出のむこうへ』(筑摩書房)『そら いろいろ』(新潮社)
……などがあります。
小澤征良さんにお話を伺いました。
──オペラが好きで
茂木:小澤征良さんがデイヴィッド・ニースさんのところでオペラ演出を学ばれたということなんですけど、もともとオペラは子供の頃から親しんでいるんですよね?
小澤:最初に見たのは3歳くらいのとき、パッと思い出すのは決闘のシーンか何かで…うちの父が指揮をしてて、二階のバルコニーにところで見ているんですよ。
茂木:場所はどこですか?
小澤:ロンドンだと思うんですけど。
茂木:何のオペラかはわからないけど、決闘のシーンは覚えてると(笑)。
小澤征爾さんの子供として育つ中での音楽は、ほとんど生で聴いてらっしゃるっていうことですよね。
小澤:リハーサルとかでも、楽屋で遊んでるのが大好きで、うちの弟なんかは漫画読んでたり。今、生の音楽が特に好きなんですけど、そういう環境にいられたのも大きいのかなと思っていて、すごく感謝してます。
茂木:今回の「小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクトXVI」も、ある意味ではフェスティバルみたいなもので、フェスというものはどうですか?
小澤:私は好きです、あと裏方が好きなので(笑)。
みんなで一つの目標に向かって……だから文化祭みたいなものです。
それぞれの役割を持った人たちが、演出家も、出演者も、演奏もそうだし、照明もいて、裏のスタッフがいて…何かに向かっているみたいな、そういうのが好きです。
茂木:今回の演目はプッチーニの歌劇「ジャンニ・スキッキ」と、ラヴェルの歌劇「子どもと魔法」ということなんですけど。
小澤:はい、二本立てです。
茂木:これは豪華ですね。
小澤:2つとも短いオペラなので、珍しい小一時間のオペラです。
茂木:「ジャンニ・スキッキ」というと、皆さん”え?”って思われるかもしれないですけど、この中のアリアで「私のお父様」というのが有名で、みんな絶対に知ってますよね。
小澤:聴いたら知ってると思います。オペラっていうと、長くて、暗くて、重くて…みたいな印象があるのかなと思うんですけど。
こういう作品に関しては心踊るといいますか、昔のイタリアのコメディのワンシーンを、機械を全く通してない生の音で聴けるっていうのは、その時代を本当に覗き見てるみたいなワクワク感がありますね。
茂木:「ジャンニ・スキッキ」は、途中で音楽だけの部分もあるから、そうするとデイヴィッド・ニースさんの演出が爆発ですね!どんな演出するんですかね(笑)。
小澤:楽しみですね(笑)。
──小澤征爾音楽塾
茂木:征良さんは、どういう形でプロジェクトに?
小澤:私は、前にデイヴィッドのアシスタントをさせてもらった経験もあって、オペラが好きという気持ちも強いのでサポートさせてもらって。
茂木:これは若い音楽家を育てたいという思いがあるんですか?
小澤:もともとはそうです。父が若いときにオペラを経験して、若いときに音楽家として一流の歌手たちと、一緒に作品を作る。オペラを通じて学べることの特別さを痛感していまして。
ぜひ、それを若い子たちに渡したいという気持ちがすごく強くて。
茂木:はい。
小澤:2000年に、京都にあるロームというコンピューターの半導体を作ってる会社の、佐藤 研一郎さんという会長さんがオペラが好きで、佐藤さんご自身も熱い思いを音楽とオペラに持っている方で。
賛同してくださって、2000年から始まってるのが「小澤征爾音楽塾」という、オペラを通じて若い子たちの成長を助けるといいますか、そういう場を与えながらも世界レベルの公演を提供していくという……ヨーロッパとかアメリカの、オペラ歌手の父の仲間たちは「征爾、日本ですごいことやってるよ」と、業界の中ではわりと知られている活動です。
茂木:オーディションで選ばれて、16〜29歳の若い音楽家の方々が参加されるということで、これは大変な経験でしょうね。
小澤:見ていると、オペラを一個作るのに2週間とか、4週間弱かかるんですけど。
練習の一日目に出してる音と、最終的なゲネプロとかまで来ちゃうと、”本当に同じグループかな?”と思うくらい聴いてても変わるので、すごくのめり込んでやっていますね。
茂木:優れた指揮者って、当然といえば当然なんですけど、どの楽器がどういう音を出しているかとか、全部把握されているじゃないですか?
演奏家にとっては、聞こえちゃってるわけだから怖いですよね。
小澤:「バイオリンのセクションのあの人が遅い」とか、そういうのがあるから(笑)。
茂木:指揮者っていうと、本番での指揮者の姿をご覧になっていると思うんですけど。
積み上げていく中で細かい指示をされているんですもんね。
小澤:あと、ニュアンスとか、オペラは人間の喜怒哀楽の感情が現れやすいじゃないですか?
そうすると、歌手の方の歌い方だったり、演技だったり、そういうものに触発されて。
オペラの制作をする過程で、演奏者の方もオケの方も、技術はあっても悲しみとか、怒りとか、喜びを、どう体で表現するかっていのが、すごく変わっていくらしいんですね。それがすごく大事なことなんですね。
茂木:なるほど〜。
小澤:技術だけじゃないから、技術の向こう側にあるものを掴まなきゃダメ、人間の持っているものを最大限表現するということなんですね。
茂木:音楽って人間そのものですよね。
●「小澤征爾音楽塾」公式サイト
※「小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクトXVI」については、上記のサイトをご覧ください。
来週は、映画監督のアシュリング・ウォルシュさんをお迎えします。
どうぞお楽しみに。