2017年09月02日
今週お迎えしたのは、先週に引き続き、MITメディア・ラボ所長、伊藤穰一さんです。
1966年、京都生まれ。
少年時代をアメリカ・ミシガン州で過ごし、14歳で帰国。
アメリカ・タフツ大学、シカゴ大学などで物理学を学ぶ。
日本では、インターネット技術の普及に尽力。
インターネット事業への投資に携わり、これまでに Twitterなど、
ネットベンチャー企業の事業展開、事業育成を支援している。
2011年9月、日本人として初めて、マサチューセッツ工科大学のメディア・ラボの所長に就任。
そんな伊藤穰一に、お話を伺いました。
──水と油
茂木:MITの大学の中での会話としては、課題とか、方向性が議論されているんですか?
伊藤:1000人の教授がいるので、それは同じ数にしてるんだけど。みんなバラバラなんだよね。
だから、特に”MITとして”っていうのは無いですね、本当にいろいろで。
茂木:はい。
伊藤:いまトランプ政権になって、僕も勉強してるんだけど40年代、50年代のアメリカって共産党恐怖で、例えばニューヨークタイムズの定期購読者とか、国際会議に出た人とか、そういう人をトラッキングして、いじめてたの。
茂木:そうなんですね。
伊藤:アメリカの大学はアカデミックフリーダムの宣言とかして、永久教授っていうシステムを作って。
自由な発言と、考えるフリーダムを守るっていう大学の立場という位置付けができたので。
MITもそこの中で、ベトナム戦争の反対運動とかもいっぱいあったんだけど。
そういう意味でいうと、MITっていうのは多様な意見が守られて共存しているというのが一つの特徴ですね。
茂木:はいはい。
伊藤:科学技術、反体制的な意見も、大学として守るということを僕もやりだして。一部の大学の中の人では、大学の重要なことを忘れてたなという話題は出てきていると思います。
茂木:ボストンでは、MITと並んでハーバードがあるんですけど。この2つの関係っていうのはどんな感じなんですか?
伊藤:僕も今度、ハーバードの法学部でVisiting professorをやるんですよ。
茂木:え、引き抜かれちゃうんですか?
伊藤:いえ、Visiting professorですからね(笑)。
ハーバードとMITーと一緒に授業してるのね、水と油のようなんだけど、うちの学生はとにかく物を作って、ほとんど喋ってないの。
僕の学生がハーバードに着いて行って授業とかやってると、「みんな、ただずっと喋ってるの?」って言うんですよ。
で、ハーバードの子を連れてくると「あまり物を考えないで、物を作ってるの?」って言うんですよね(笑)、そこが大きく違うんですよね。
茂木:なるほど。
伊藤:ハーバードの弁護士とか、国の人たちっていうのはすごい優秀な人たちがいるんですよ。
ハーバードの法学部の連中と、うちの暗号学者を一緒にすると面白いんだよね。両方わかる人じゃないと未来の技術を作れないし、アメリカの権力者はハーバードが多いの。
茂木:そうですね。
伊藤:MITは若手の科学者を見つけてきて、中で育てるんですよ。だから、MITの教授はハーバードの中で育っているんですよ。
ハーバードは有名になった人を引き抜いてくるの、MITは有名になってから引っ張ってくるのは、比較的稀ですね。
──ゴールは作らない
茂木:お子さんが生まれたということで、おめでとうございます。子育てはご自身でもされているんですか?
伊藤:一生懸命やっています(笑)。やっとインタラクションがあって、「ART FOR BABY」というアートの本を見せたり、それこそ村上さんの絵とか子供に良さそうな絵だけがあるんだけど。
茂木:へ〜。
伊藤:それを見せると、必死に見て笑っているんですよ。
茂木:もう教育が始まってるんですね。
伊藤:100日間のソーシャルインタラクションが、脳のブートストラップに重要なんですよ。
自然にやりたい、触ったり、目線……これって、脳の発達に重要だと思ってハマっていますね。
茂木:どういう子供になっていくんですかね。
伊藤:うちの母親は、僕と妹、全然違うのに両方ともちゃんと応援してくれたんですよ。
茂木:いいですね。
伊藤:”どんな子になりたいのか?”というのを一生懸命見て、それをひたすら応援しようと思っているので、こっちからイメージを押し付けないようにしています。
茂木:穰一さんがボストンエリアに住むとするじゃないですか?そうすると、どういう学校のオプションがあるんですか?
伊藤:アンスクーリングと言って、まったく授業をやらない。ホームスクーリング、家で授業をやる…いろいろあると思うんですけど、その子によると思うの。
小さい時はなかなか選べないけど、パターンを見て、一番ふさわしいパターンで何でも可能性の範囲にはあるつもりです。
茂木:穰一さんの今後の夢って、どういうことですか?
伊藤:僕はあまりゴールは作らない、常に毎年楽しくなっていっている、僕の夢はこのまま毎年楽しくなっていくことが夢で。
周りに面白い人たちがいっぱいいて、その人たちと面白いことをするのが夢だし、それが現実でもあるので。
夢と現実が一緒になっちゃっているんだけど、アボリジニみたいな感じ(笑)。
茂木:ドリームタイムですね(笑)。
●「9プリンシプルズ:加速する未来で勝ち残るために」
伊藤 穰一 (著), ジェフ・ ハウ (著), 山形 浩生 (翻訳)
(Amazon)
来週は、コピーライターの佐々木圭一さんをお迎えしてお話をうかがっていきます。
どうぞお楽しみに。
1966年、京都生まれ。
少年時代をアメリカ・ミシガン州で過ごし、14歳で帰国。
アメリカ・タフツ大学、シカゴ大学などで物理学を学ぶ。
日本では、インターネット技術の普及に尽力。
インターネット事業への投資に携わり、これまでに Twitterなど、
ネットベンチャー企業の事業展開、事業育成を支援している。
2011年9月、日本人として初めて、マサチューセッツ工科大学のメディア・ラボの所長に就任。
そんな伊藤穰一に、お話を伺いました。
──水と油
茂木:MITの大学の中での会話としては、課題とか、方向性が議論されているんですか?
伊藤:1000人の教授がいるので、それは同じ数にしてるんだけど。みんなバラバラなんだよね。
だから、特に”MITとして”っていうのは無いですね、本当にいろいろで。
茂木:はい。
伊藤:いまトランプ政権になって、僕も勉強してるんだけど40年代、50年代のアメリカって共産党恐怖で、例えばニューヨークタイムズの定期購読者とか、国際会議に出た人とか、そういう人をトラッキングして、いじめてたの。
茂木:そうなんですね。
伊藤:アメリカの大学はアカデミックフリーダムの宣言とかして、永久教授っていうシステムを作って。
自由な発言と、考えるフリーダムを守るっていう大学の立場という位置付けができたので。
MITもそこの中で、ベトナム戦争の反対運動とかもいっぱいあったんだけど。
そういう意味でいうと、MITっていうのは多様な意見が守られて共存しているというのが一つの特徴ですね。
茂木:はいはい。
伊藤:科学技術、反体制的な意見も、大学として守るということを僕もやりだして。一部の大学の中の人では、大学の重要なことを忘れてたなという話題は出てきていると思います。
茂木:ボストンでは、MITと並んでハーバードがあるんですけど。この2つの関係っていうのはどんな感じなんですか?
伊藤:僕も今度、ハーバードの法学部でVisiting professorをやるんですよ。
茂木:え、引き抜かれちゃうんですか?
伊藤:いえ、Visiting professorですからね(笑)。
ハーバードとMITーと一緒に授業してるのね、水と油のようなんだけど、うちの学生はとにかく物を作って、ほとんど喋ってないの。
僕の学生がハーバードに着いて行って授業とかやってると、「みんな、ただずっと喋ってるの?」って言うんですよ。
で、ハーバードの子を連れてくると「あまり物を考えないで、物を作ってるの?」って言うんですよね(笑)、そこが大きく違うんですよね。
茂木:なるほど。
伊藤:ハーバードの弁護士とか、国の人たちっていうのはすごい優秀な人たちがいるんですよ。
ハーバードの法学部の連中と、うちの暗号学者を一緒にすると面白いんだよね。両方わかる人じゃないと未来の技術を作れないし、アメリカの権力者はハーバードが多いの。
茂木:そうですね。
伊藤:MITは若手の科学者を見つけてきて、中で育てるんですよ。だから、MITの教授はハーバードの中で育っているんですよ。
ハーバードは有名になった人を引き抜いてくるの、MITは有名になってから引っ張ってくるのは、比較的稀ですね。
──ゴールは作らない
茂木:お子さんが生まれたということで、おめでとうございます。子育てはご自身でもされているんですか?
伊藤:一生懸命やっています(笑)。やっとインタラクションがあって、「ART FOR BABY」というアートの本を見せたり、それこそ村上さんの絵とか子供に良さそうな絵だけがあるんだけど。
茂木:へ〜。
伊藤:それを見せると、必死に見て笑っているんですよ。
茂木:もう教育が始まってるんですね。
伊藤:100日間のソーシャルインタラクションが、脳のブートストラップに重要なんですよ。
自然にやりたい、触ったり、目線……これって、脳の発達に重要だと思ってハマっていますね。
茂木:どういう子供になっていくんですかね。
伊藤:うちの母親は、僕と妹、全然違うのに両方ともちゃんと応援してくれたんですよ。
茂木:いいですね。
伊藤:”どんな子になりたいのか?”というのを一生懸命見て、それをひたすら応援しようと思っているので、こっちからイメージを押し付けないようにしています。
茂木:穰一さんがボストンエリアに住むとするじゃないですか?そうすると、どういう学校のオプションがあるんですか?
伊藤:アンスクーリングと言って、まったく授業をやらない。ホームスクーリング、家で授業をやる…いろいろあると思うんですけど、その子によると思うの。
小さい時はなかなか選べないけど、パターンを見て、一番ふさわしいパターンで何でも可能性の範囲にはあるつもりです。
茂木:穰一さんの今後の夢って、どういうことですか?
伊藤:僕はあまりゴールは作らない、常に毎年楽しくなっていっている、僕の夢はこのまま毎年楽しくなっていくことが夢で。
周りに面白い人たちがいっぱいいて、その人たちと面白いことをするのが夢だし、それが現実でもあるので。
夢と現実が一緒になっちゃっているんだけど、アボリジニみたいな感じ(笑)。
茂木:ドリームタイムですね(笑)。
●「9プリンシプルズ:加速する未来で勝ち残るために」
伊藤 穰一 (著), ジェフ・ ハウ (著), 山形 浩生 (翻訳)
(Amazon)
来週は、コピーライターの佐々木圭一さんをお迎えしてお話をうかがっていきます。
どうぞお楽しみに。