2017年04月29日
今週お迎えするのは、先週に引き続き、アーティスト・作曲家の渋谷慶一郎さんです。
渋谷さんは、1973年生まれ。
東京芸術大学音楽学部作曲科卒業後、2002年に、音楽レーベル「ATAK」を設立。
国内外で先鋭的な電子音響作品をリリースされてきました。
そのほか、音楽だけでなく、デザイン、ネットワークテクノロジー、映像など、
多様なクリエーターの顔もお持ちで、日本を代表するアーティストとして、
世界でも精力的に活動をされています。
今夜は、渋谷さんが注目しているモノや、今後の夢などについて伺いました。
──音楽はきっかけでしかない
茂木:芸術を取り囲む環境が19世紀に戻ってくるということですが、パトロンがいる感じになるんですかね?
渋谷:そうなってくるんじゃないかと思います。CDとかよく言われるのが、売れないし、配信なんてお金にならないし…そうなると、コンサートになってくるんだけど。コンサートで稼げばいいって言うけど、コンサートばっかりやってると新しいものが作れなくなっちゃうから、人類って新しいものが必要じゃないですか?
茂木:そうですね。
渋谷:自然の流れとしてどこかがサポートする。それが、国じゃないパターンが出てくるんじゃないかと思います。
茂木:渋谷さん自身、あるいはヨーロッパの人たちは芸術が人類にとって必要だと思っているんですか?
渋谷:芸術っていうのは融合的なものなんですね。音楽はスポーツの要素もあるし、リアーナが歌って、ビヨンセが歌って”わー!”ってなるのって、陸上で”わー!”ってなるのと、そんなに変わらないじゃないですか?
茂木:アスリート的なね。
渋谷:歌詞のみならず、作るっていうことは哲学的な側面もあるし。あとは時間感覚で何分に一回面白くするっていう、数学的な側面もあるし。
総合的な刺激、それこそ脳に対する刺激じゃないかなと思っていて。
茂木:しかも世界が動いてて、テクノロジーも新しくなっていて。融合的なことで出来ることが広がってるし、深まっているんだろうね。
渋谷:ある種の答えが出ると思っていて、ウケる曲って、歴史的に見ても世界的に見ても早く作った曲なんですよ、ささっと作った曲。
茂木:モーツァルトなんかもそうだよね。
渋谷:僕の曲なんかでも、ウケるのはサクサクと5、6分で作った曲で、”ウ〜〜ン”と唸って書いたものはダメなんですよね。
茂木:それは何でなんですかね?
渋谷:脳の問題で、脳が刺激を受ける回転数というか…作るサーキットが一致してると思うんですよね。
膨大な時間をかけたものっていうのは全体構造じゃなくて、ある部分、キャッチーな部分があるじゃないですか?
膨大な時間をかけて練りこんだものって、脳はそんなに複雑に受けてないじゃないですか?脳のサーキットに着火して、刺激が蔓延して、気持ちいいって感じる。そのサイクルで作っているようなものがウケるんだと思うんですけどね。
茂木:渋谷さんは、作曲してるときはどういう感じでやってるんですか?
基本的にキーボードですか?
渋谷:頭の中でやってるかな。ただ、頭の中でできるものと、実際に音出して、コンピューターとか、キーボード弾いたりとか…同じ”ドミソ”でも、シンセサイザーの”ドミソ”と、ピアノの”ドミソ”は違うじゃないですか?
そこに起きる感情ってあるじゃないですか?そこで起きる感情が重要で、”ドミソ”って、聴いたことない人はほとんどいないじゃないですか?
そうすると、”あのときの音だ!”ってなるじゃないですか、ある種懐かしいとか”あれだ!”っていうことを脳は思うじゃない?
そのこと自体が感動的なのであって、音楽自体じゃないと思うんですよ。
茂木:ということは、音楽はひとつのきっかけであり、実態は感情ということですか。
喜怒哀楽とか簡単に言うけど、実際には無限のニュアンスがあるじゃないですか?それってどう捉えてるんですか?
渋谷:無限のニュアンスの細かいところまで表現するのは無理じゃないですか。自分が今持っている感覚が、ある種の強さがあると思ったら先に進めるし、すごい少なくても、すごく強い影響があるとか…そういう自分の中で起きてることと、どういう伝播力っていうか、どういう刺激になり得るのかな?ということは考えますね。
茂木:創造するって自分のことを追い詰めていくから、バランスを崩すギリギリのところまでいくと思うんですね。”これ以上まずいな”という時はありますか?
渋谷:ありますね。
茂木:そういう時はどうしますか?
渋谷:いっちゃいますね(笑)。
茂木:いっちゃうんですか(笑)、どうやって戻ってくるんですか?
渋谷:でも、寝れば治りますよ。
茂木:”渋谷慶一郎はなぜ強靭なのか”というのは、秘密は寝ることにあったの?
渋谷:ショートスリーパーだけど、”こうじゃなくじゃいけない”はないから。
茂木:睡眠時間はどれくらいとってますか?
渋谷:4時間くらいあれば大丈夫ですかね。5時間あれば、もっといいですね。
──パリのオペラ座にて
茂木:渋谷慶一郎さんの、今後の活動予定ってありますか?
渋谷:5月に、パリのオペラ座のガルニエっていうお城みたいなところで……そこに出演しますね。
茂木:ホンチャンのところじゃないですか!あそこをおさえたら、すごいことになるね。
渋谷:5日間くらい出ますね、日本人の音楽家はあまり出ないですから。
あとは、9月にオーストラリアで新作を発表しますね。大きいフェスティバルがあって、そこでTHE ENDと僕の新作を発表します。
茂木:たまには東京にも来てくださいよ。
渋谷:東京は制作するのに一番いいですよ、夜まで働いてても変な目で見られないし、好きなだけ徹夜で作れるっていうか…ワーカホリックじゃないですか。
茂木:東京で作った音楽を世界中に持って行ってください。この番組のテーマが夢なんですけど、渋谷さんの夢って何ですか?
渋谷:異例でありたいんですよね、前例がないやり方でいろんなことをやりたいですね。
茂木:楽しみですね。
渋谷:でも、大変ですよ。交渉もあれば…籠ることもあるし、課長島耕作みたいな生活ですよ(笑)。
茂木:今まで例がないようなアーティストとしての生き方は、その後に続く人もいるだろうしね。
渋谷:よく思うのは、年とったときに刺激を受けるのは僕よりも若い世代の作品に刺激を受けるしかなくなるじゃないですか。
その時に、若い世代がつまんなかったりすると困るから、いろんな可能性があったほうがいいと思いますね。
●「ATAK 公式サイト」
●「渋谷慶一郎 (@keiichiroshibuy) | Twitter」
来週は、ピアニストの小山実稚恵さんをお迎えしてお話をうかがっていきます。
どうぞお楽しみに。
渋谷さんは、1973年生まれ。
東京芸術大学音楽学部作曲科卒業後、2002年に、音楽レーベル「ATAK」を設立。
国内外で先鋭的な電子音響作品をリリースされてきました。
そのほか、音楽だけでなく、デザイン、ネットワークテクノロジー、映像など、
多様なクリエーターの顔もお持ちで、日本を代表するアーティストとして、
世界でも精力的に活動をされています。
今夜は、渋谷さんが注目しているモノや、今後の夢などについて伺いました。
──音楽はきっかけでしかない
茂木:芸術を取り囲む環境が19世紀に戻ってくるということですが、パトロンがいる感じになるんですかね?
渋谷:そうなってくるんじゃないかと思います。CDとかよく言われるのが、売れないし、配信なんてお金にならないし…そうなると、コンサートになってくるんだけど。コンサートで稼げばいいって言うけど、コンサートばっかりやってると新しいものが作れなくなっちゃうから、人類って新しいものが必要じゃないですか?
茂木:そうですね。
渋谷:自然の流れとしてどこかがサポートする。それが、国じゃないパターンが出てくるんじゃないかと思います。
茂木:渋谷さん自身、あるいはヨーロッパの人たちは芸術が人類にとって必要だと思っているんですか?
渋谷:芸術っていうのは融合的なものなんですね。音楽はスポーツの要素もあるし、リアーナが歌って、ビヨンセが歌って”わー!”ってなるのって、陸上で”わー!”ってなるのと、そんなに変わらないじゃないですか?
茂木:アスリート的なね。
渋谷:歌詞のみならず、作るっていうことは哲学的な側面もあるし。あとは時間感覚で何分に一回面白くするっていう、数学的な側面もあるし。
総合的な刺激、それこそ脳に対する刺激じゃないかなと思っていて。
茂木:しかも世界が動いてて、テクノロジーも新しくなっていて。融合的なことで出来ることが広がってるし、深まっているんだろうね。
渋谷:ある種の答えが出ると思っていて、ウケる曲って、歴史的に見ても世界的に見ても早く作った曲なんですよ、ささっと作った曲。
茂木:モーツァルトなんかもそうだよね。
渋谷:僕の曲なんかでも、ウケるのはサクサクと5、6分で作った曲で、”ウ〜〜ン”と唸って書いたものはダメなんですよね。
茂木:それは何でなんですかね?
渋谷:脳の問題で、脳が刺激を受ける回転数というか…作るサーキットが一致してると思うんですよね。
膨大な時間をかけたものっていうのは全体構造じゃなくて、ある部分、キャッチーな部分があるじゃないですか?
膨大な時間をかけて練りこんだものって、脳はそんなに複雑に受けてないじゃないですか?脳のサーキットに着火して、刺激が蔓延して、気持ちいいって感じる。そのサイクルで作っているようなものがウケるんだと思うんですけどね。
茂木:渋谷さんは、作曲してるときはどういう感じでやってるんですか?
基本的にキーボードですか?
渋谷:頭の中でやってるかな。ただ、頭の中でできるものと、実際に音出して、コンピューターとか、キーボード弾いたりとか…同じ”ドミソ”でも、シンセサイザーの”ドミソ”と、ピアノの”ドミソ”は違うじゃないですか?
そこに起きる感情ってあるじゃないですか?そこで起きる感情が重要で、”ドミソ”って、聴いたことない人はほとんどいないじゃないですか?
そうすると、”あのときの音だ!”ってなるじゃないですか、ある種懐かしいとか”あれだ!”っていうことを脳は思うじゃない?
そのこと自体が感動的なのであって、音楽自体じゃないと思うんですよ。
茂木:ということは、音楽はひとつのきっかけであり、実態は感情ということですか。
喜怒哀楽とか簡単に言うけど、実際には無限のニュアンスがあるじゃないですか?それってどう捉えてるんですか?
渋谷:無限のニュアンスの細かいところまで表現するのは無理じゃないですか。自分が今持っている感覚が、ある種の強さがあると思ったら先に進めるし、すごい少なくても、すごく強い影響があるとか…そういう自分の中で起きてることと、どういう伝播力っていうか、どういう刺激になり得るのかな?ということは考えますね。
茂木:創造するって自分のことを追い詰めていくから、バランスを崩すギリギリのところまでいくと思うんですね。”これ以上まずいな”という時はありますか?
渋谷:ありますね。
茂木:そういう時はどうしますか?
渋谷:いっちゃいますね(笑)。
茂木:いっちゃうんですか(笑)、どうやって戻ってくるんですか?
渋谷:でも、寝れば治りますよ。
茂木:”渋谷慶一郎はなぜ強靭なのか”というのは、秘密は寝ることにあったの?
渋谷:ショートスリーパーだけど、”こうじゃなくじゃいけない”はないから。
茂木:睡眠時間はどれくらいとってますか?
渋谷:4時間くらいあれば大丈夫ですかね。5時間あれば、もっといいですね。
──パリのオペラ座にて
茂木:渋谷慶一郎さんの、今後の活動予定ってありますか?
渋谷:5月に、パリのオペラ座のガルニエっていうお城みたいなところで……そこに出演しますね。
茂木:ホンチャンのところじゃないですか!あそこをおさえたら、すごいことになるね。
渋谷:5日間くらい出ますね、日本人の音楽家はあまり出ないですから。
あとは、9月にオーストラリアで新作を発表しますね。大きいフェスティバルがあって、そこでTHE ENDと僕の新作を発表します。
茂木:たまには東京にも来てくださいよ。
渋谷:東京は制作するのに一番いいですよ、夜まで働いてても変な目で見られないし、好きなだけ徹夜で作れるっていうか…ワーカホリックじゃないですか。
茂木:東京で作った音楽を世界中に持って行ってください。この番組のテーマが夢なんですけど、渋谷さんの夢って何ですか?
渋谷:異例でありたいんですよね、前例がないやり方でいろんなことをやりたいですね。
茂木:楽しみですね。
渋谷:でも、大変ですよ。交渉もあれば…籠ることもあるし、課長島耕作みたいな生活ですよ(笑)。
茂木:今まで例がないようなアーティストとしての生き方は、その後に続く人もいるだろうしね。
渋谷:よく思うのは、年とったときに刺激を受けるのは僕よりも若い世代の作品に刺激を受けるしかなくなるじゃないですか。
その時に、若い世代がつまんなかったりすると困るから、いろんな可能性があったほうがいいと思いますね。
●「ATAK 公式サイト」
●「渋谷慶一郎 (@keiichiroshibuy) | Twitter」
来週は、ピアニストの小山実稚恵さんをお迎えしてお話をうかがっていきます。
どうぞお楽しみに。