Dream Heart(ドリームハート)

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REPORT 最新のオンエアレポート

Dream HEART vol.212 渋谷慶一郎さん

2017年04月22日

今週は、アーティスト・作曲家の渋谷慶一郎さんです。

渋谷さんは、1973年生まれ。
東京芸術大学音楽学部作曲科卒業後、2002年に、音楽レーベル「ATAK」を設立。
国内外で先鋭的な電子音響作品をリリースされてきました。

そのほか、音楽だけでなく、デザイン、ネットワークテクノロジー、映像など、
多様なクリエーターの顔もお持ちで、日本を代表するアーティストとして、
世界でも精力的に活動をされています。

今夜は、そんな渋谷さんをお招きしてパリでの活動を伺いました。




──死とは何か?


茂木:渋谷さんは世界を飛び回っているイメージですけど、パリと東京の2拠点なんですか?

渋谷:2拠点なんだけど今年もっと増えるという…拠点がないというか、今話してるのは、オーストラリアとジョージアもやるかもっていう話ですね。

茂木:音楽レーベル「ATAK」からアルバム作品をリリースされていて。
音の芸術家っていう感じ、一音一音を突き詰める方ですよね。

渋谷:最初、茂木さんと会ったのが15年前ですよね、ソニーで話をしましたよね(笑)。

茂木:2013年、初音ミク主演で世界初の映像とコンピュータ音響による、ボーカロイド・オペラ「THE END」これはすごかったですね。

渋谷:あれは予想以上に長寿作品になっていて、今でも世界中からオファーがきてますね。

茂木:パリ公演も大成功ということでしたが、どんな様子でした?

渋谷:パリはすごく熱狂的で、前売りチケットが30分で売り切れました。
一番印象的だったのは、最後幕が下がって、3秒くらいの沈黙の後すごい拍手だったんですよ。あの3秒、殺されるかと思いましたけどね(笑)。
”ブーーー!”か、”ワーーー!”か、どちらか分からないじゃないですか。

茂木:どっちか分からないですからね。

渋谷:そのあと、CD販売しながら劇場でサイン会をやったんですけど。
その年で一番物販が売れて、お客さんが議論を始めちゃって帰らないんですよ。

茂木:やっぱりフランス人は芸術について熱いですね。

渋谷:話しますよね。言葉しか信じてないところがあるから楽ですよね。

茂木:日本人みたいに阿吽の呼吸みたいのがないと。

渋谷:そうですね、”わかるでしょ?”みたいなのがないから。

茂木:このテーマとしては何だったんですか?

渋谷:”死とは何か?”ということは、古典的なオペラでもよく扱われる題材ですよね。死ぬのか死なないのか…自問自答していくと、お父さんの死とか恋人の死って、固有の死になるじゃないですか?
それは、”死とは何か?”ではないじゃないですか。だから、死なないものが死について考えると、”死の本質って何か?”ということを展開できるんじゃないかなと思ったんですね。





──パリの街で


茂木:非常に画期的な作品だったと思うんですけど、フランス人の論争って、どういうことを論争していたんですか?

渋谷:けっこう言われたのが、中盤以降はほとんど僕がリグレット書いたんですけど。
人が死ぬと、例えば茂木さんが死んだ時に「茂木がさ〜、」っていう話をみんなできるじゃないですか。
例えば「君がさ……」「あなたがさ…」は、死ぬとそう呼べなくなるじゃないですか。
”あなた”とか、”君”って代名詞っていうか…みんな死ぬと名前が消えちゃうと思うけど、名前は残るんですよ。

茂木:名前自体は残るんですよね。

渋谷:「茂木さんは……」とかは、ずっと言ってられるんですけど。「あなた」とか、「君」って呼ぶことが二度とできない。
だから、死んで無くなるのは本人に付属するものというよりも、関係性なんですね。特にコミュニケーションなんですね。
死の本質は、コミュニケーションとか関係性に近いんじゃないかなっていうのを提示したら、それに対してすごく反応してました。

茂木:死生観とか、ヨーロッパ伝統のものと日本は違うけど、やっぱり感じるものが違うんですね。
いろんなメディアから取材も受けたと思うんですけど、どんなことを聞かれましたか?

渋谷:合同記者会見みたいなものがあって、「なんで、初音ミクでオペラを作ろうと思ったんですか?」と言われて、「その質問は100回くらい答えてるから、せっかくフランスまで来たんだから、もうちょっと面白いこと言ってくれ」って言って、記者会見が始まったんですよ(笑)。
聞かれることは、国によってはあまり変わらないですね。どちらかというと、オーディエンスの反応の方が違いますね。

茂木:メディアは、意外と典型的なことを聞いてくるんですか。

渋谷:インターネット以降はメディアはどこも一緒ですよ、結局受けられる情報量が増えたから、わかりやすくて目立つものじゃないと、キャッチするのが億劫みたいな感じになってますよね。

茂木:パリって、ピカソも、ゴッホもそうだし、いろんな才能のあった…音楽家ももちろんそうですけど、パリに来るじゃないですか?そういう芸術家を応援するっていうのは、伝統があるんですね。

渋谷:それはすごいあると思う。リスペクトが、日本だと成功してるアーティストと、成功してないアーティストって、扱いが違うじゃないですか?

茂木:極端に変わりますよね。

渋谷:それが本当にないですね。「何作ってるの?」って聞いて、「こういうのを作ってる」って言って、そこで社会的にどうとか、金が儲かってるとかっていうことはなく、やっぱりコミュニケーションというか、話で「それ面白いね」とかっていうのがすぐ始まるんですよ。

茂木:アートに関するリテラシーが、全般的に高いのかもしれないですね。


「ATAK 公式サイト」

「渋谷慶一郎 (@keiichiroshibuy) | Twitter」


来週も引き続き、アーティスト・作曲家の渋谷慶一郎さんをお迎えしてお話をうかがっていきます。
どうぞお楽しみに。