2017年01月15日
今夜お迎えしたのは、先週に引き続き、神の手”を持つドクターと呼ばれる、
ニューヨーク在住の外科医、加藤友朗さんです。
加藤さんは多臓器移植の世界的第一人者であり、技術的に大変困難と言われていた腫瘍切除手術を
世界で初めて成功させたことでも知られていらっしゃいます。
現在は、ニューヨーク、コロンビア大学医学部、外科の教授を務めていらっしゃいます。
今週は、そんな加藤先生をお迎えして「奇跡の手術」についてお話を伺いました
──手術が不可能な患者を救った手術法とは
茂木:加藤さんが『神の手』と呼ばれるようになった理由のひとつ、手術が不可能とされているガンの患者さんを救った「多臓器体外摘出腫瘍切除手術」。大変難しい言葉なんですけど、これはどういう手術なんでしょう?
加藤:手術が出来ないって時、色んな状況があるんですけど、患者さんが弱り過ぎていて出来ないとか、ガンが広がり過ぎちゃって出来ないとか。
その中のひとつに腫瘍が血管に巻き付いていて出来ないということがあるんです。特に大きな血管に巻き付いていますと、血管から色んな臓器に血流がいってますから、腫瘍を切ってしまうと血流が切れちゃう。そうすると臓器が壊死してしまうってことで、手術が出来なかったんです。
技術的に出来ないだけだけど、出来るようにしてやれば長期的な生存が期待できるものもあるんです。この手術はどういうものかって言うと、腹部臓器に流れる血管に絡み付いている腫瘍があった時、絡みついている先に全ての臓器がほぼ血流を受けている血管っていうのは2本あるんです。
茂木:なるほど!
加藤:その1本が腹腔動脈、もう1本が上腸間膜動脈って言うんですけど、この2本の血管で腹部内蔵ほとんどすべてに血流が行くんです。でも、その2本の血管に同時に絡んでいる腫瘍があると、それを取ることで全ての腹部内蔵が壊死してしまう。
それをどうすれば出来るようになるかっていうと、血流が途絶えても壊死しない方法があるんです。臓器移植の時は、血流が途絶えても臓器は保存できるじゃないですか
茂木:身体の外でってことですね。
加藤:はい。脳死のドナーから臓器を取り出した後に保存液に漬けて冷やすことで、そのまま臓器ってかなりの時間生存出来るんです。
その発想で、腫瘍だけを取るのではなくて、腫瘍と同時に身体の臓器をいったん外に取り出しちゃうんですよ。取り出したうえで血液を除いて保存液に漬けて氷冷すれば、臓器はそのまま生きられますよね。
身体の外で腫瘍を取って、また血管をつなぎ直して元に戻すっていう手術なんです。
茂木:ということは、身体の外にいったん臓器を出した後に、外で手術をして元に戻すっていうことですか?
加藤:そういうことですね。
茂木:大規模な手術のように思えるんですけど、どれくらい時間がかかるんですか?
加藤:今までやった手術は、ほとんどは15時間を超えていますね。一番長いのは24時間を超えています。
茂木:その間、ずっと加藤先生が手術をされているんですか?
加藤:そうですね。僕一人でやるわけではないですけど、間に少し休憩を取るくらいですね。
茂木:体力的にも精神的にも大変じゃないですか?
加藤:でも、不思議と出来るんですよね。後から考えるとなんであんなことが出来たんだろうって思うんですけど…
茂木:これを世界で初めてされたのが加藤先生ということで、それで助からなかった命が助かるって事ですから、スゴイですよね!
──目で見て読むのではなく、耳で聞き取るのが大事
茂木:先週もTaylor Swiftの楽曲で英語を学んだんですけど、今週も何か1曲お願いします!
加藤:今週はBruno Marsの「Marry You」を紹介したいと思います。
タイトルの意味は「キミと結婚する」なんですけど、最初は「We're looking for something dumb to do」
“something dumb”っていうのは“何かバカげたこと”っていう意味で、その次の「Hey baby I think I wanna marry you」これ、ちょっとおかしいって分かります?
茂木:どういうところがおかしいんでしょう?
加藤:「marry you」っていうのは結婚するってことですから、プロポーズって考えると、「I think」はおかしいんですよね。
茂木:確かに!言われてみるとそうですね。
加藤:なので、アメリカ人に「I think I wanna marry you」って言うと、「don't you know so?(そんなことも知らないの?)」って言われてしまいます(笑)。
本来は「I want to marry you」のはずですよね。それをあえてふざけて言っているんです。英語がある程度分かると、しゃれた感じっていうのが分かるんです。
茂木:けして相手をバカにしているというわけではなく…
加藤:少しチャラっぽい感じですね。「今夜は良い夜だから結婚しよう〜」って感じなんです。
茂木:軽いノリで言っている感じなんですね。
加藤:その後が「Is it the look in your eyes」この「the look」っていうのがポイントで“見た目”って感じですね。
そして、その後が「Or is it this dancing juice?」
「dancing juice」っていうのはお酒のスラングですね。だから、「キミの目を見ていたから結婚したくなったのか、それともお酒のせいなのか?」っていう、ちょっとふざけた感じです。チャラいと言えばチャラい歌詞なんですよね(笑)。
茂木:これも、今風の若者が使う英語なんですかね?
加藤:「I think I wanna marry you」というのを今の若者が言うかどうかはともかく、「Who cares(そんなことどうでもいい)」っていうのはよく使う言葉ですね。
茂木:改めて歌詞を見ると、単語としては難しくないのに、なぜか日本人は聞き取れないんですよね。
加藤:これも皆さん言うんですけど、知らない単語は無いんですよ。だけど、聞き取れないって不思議でしょ?
茂木:不思議です。目からウロコですね。
加藤:日常会話でワーッと喋り出した時に日本人が聞き取れなくて置いていかれてしまった時も、みんな難しい単語は使っていないんですよ。ただ単に、聞き取る耳が出来ていないんです。
茂木:その耳が出来なくてみんな苦労していると思うんですけど、これは非常に有力なやり方ですね!
加藤:ちょっと読んでもらうだけでビックリするくらい分かるようになるんです。でも、読んでもらうことがポイントなんです。目で見て読むんじゃなくて、読んでもらった音を聞き取る。
そういうやり方をすると相当変わります。ぜひ、番組を聴いてもらいたいですね。
●加藤友朗さんが、洋楽から生きた英会話を教えてくれる!「ENGLISH JUKE BOX (イングリッシュ ジューク ボックス)」公式ホームページ
来週のゲストは、1910年代のイギリスで参政権を求めた女性たちの運動家「サフラジェット」のリーダーとして活動していたエメリン・パンクハーストさんのひ孫、ヘレン・パンクハーストさんをお迎えしてお話をうかがっていきます。
どうぞお楽しみに。
ニューヨーク在住の外科医、加藤友朗さんです。
加藤さんは多臓器移植の世界的第一人者であり、技術的に大変困難と言われていた腫瘍切除手術を
世界で初めて成功させたことでも知られていらっしゃいます。
現在は、ニューヨーク、コロンビア大学医学部、外科の教授を務めていらっしゃいます。
今週は、そんな加藤先生をお迎えして「奇跡の手術」についてお話を伺いました
──手術が不可能な患者を救った手術法とは
茂木:加藤さんが『神の手』と呼ばれるようになった理由のひとつ、手術が不可能とされているガンの患者さんを救った「多臓器体外摘出腫瘍切除手術」。大変難しい言葉なんですけど、これはどういう手術なんでしょう?
加藤:手術が出来ないって時、色んな状況があるんですけど、患者さんが弱り過ぎていて出来ないとか、ガンが広がり過ぎちゃって出来ないとか。
その中のひとつに腫瘍が血管に巻き付いていて出来ないということがあるんです。特に大きな血管に巻き付いていますと、血管から色んな臓器に血流がいってますから、腫瘍を切ってしまうと血流が切れちゃう。そうすると臓器が壊死してしまうってことで、手術が出来なかったんです。
技術的に出来ないだけだけど、出来るようにしてやれば長期的な生存が期待できるものもあるんです。この手術はどういうものかって言うと、腹部臓器に流れる血管に絡み付いている腫瘍があった時、絡みついている先に全ての臓器がほぼ血流を受けている血管っていうのは2本あるんです。
茂木:なるほど!
加藤:その1本が腹腔動脈、もう1本が上腸間膜動脈って言うんですけど、この2本の血管で腹部内蔵ほとんどすべてに血流が行くんです。でも、その2本の血管に同時に絡んでいる腫瘍があると、それを取ることで全ての腹部内蔵が壊死してしまう。
それをどうすれば出来るようになるかっていうと、血流が途絶えても壊死しない方法があるんです。臓器移植の時は、血流が途絶えても臓器は保存できるじゃないですか
茂木:身体の外でってことですね。
加藤:はい。脳死のドナーから臓器を取り出した後に保存液に漬けて冷やすことで、そのまま臓器ってかなりの時間生存出来るんです。
その発想で、腫瘍だけを取るのではなくて、腫瘍と同時に身体の臓器をいったん外に取り出しちゃうんですよ。取り出したうえで血液を除いて保存液に漬けて氷冷すれば、臓器はそのまま生きられますよね。
身体の外で腫瘍を取って、また血管をつなぎ直して元に戻すっていう手術なんです。
茂木:ということは、身体の外にいったん臓器を出した後に、外で手術をして元に戻すっていうことですか?
加藤:そういうことですね。
茂木:大規模な手術のように思えるんですけど、どれくらい時間がかかるんですか?
加藤:今までやった手術は、ほとんどは15時間を超えていますね。一番長いのは24時間を超えています。
茂木:その間、ずっと加藤先生が手術をされているんですか?
加藤:そうですね。僕一人でやるわけではないですけど、間に少し休憩を取るくらいですね。
茂木:体力的にも精神的にも大変じゃないですか?
加藤:でも、不思議と出来るんですよね。後から考えるとなんであんなことが出来たんだろうって思うんですけど…
茂木:これを世界で初めてされたのが加藤先生ということで、それで助からなかった命が助かるって事ですから、スゴイですよね!
──目で見て読むのではなく、耳で聞き取るのが大事
茂木:先週もTaylor Swiftの楽曲で英語を学んだんですけど、今週も何か1曲お願いします!
加藤:今週はBruno Marsの「Marry You」を紹介したいと思います。
タイトルの意味は「キミと結婚する」なんですけど、最初は「We're looking for something dumb to do」
“something dumb”っていうのは“何かバカげたこと”っていう意味で、その次の「Hey baby I think I wanna marry you」これ、ちょっとおかしいって分かります?
茂木:どういうところがおかしいんでしょう?
加藤:「marry you」っていうのは結婚するってことですから、プロポーズって考えると、「I think」はおかしいんですよね。
茂木:確かに!言われてみるとそうですね。
加藤:なので、アメリカ人に「I think I wanna marry you」って言うと、「don't you know so?(そんなことも知らないの?)」って言われてしまいます(笑)。
本来は「I want to marry you」のはずですよね。それをあえてふざけて言っているんです。英語がある程度分かると、しゃれた感じっていうのが分かるんです。
茂木:けして相手をバカにしているというわけではなく…
加藤:少しチャラっぽい感じですね。「今夜は良い夜だから結婚しよう〜」って感じなんです。
茂木:軽いノリで言っている感じなんですね。
加藤:その後が「Is it the look in your eyes」この「the look」っていうのがポイントで“見た目”って感じですね。
そして、その後が「Or is it this dancing juice?」
「dancing juice」っていうのはお酒のスラングですね。だから、「キミの目を見ていたから結婚したくなったのか、それともお酒のせいなのか?」っていう、ちょっとふざけた感じです。チャラいと言えばチャラい歌詞なんですよね(笑)。
茂木:これも、今風の若者が使う英語なんですかね?
加藤:「I think I wanna marry you」というのを今の若者が言うかどうかはともかく、「Who cares(そんなことどうでもいい)」っていうのはよく使う言葉ですね。
茂木:改めて歌詞を見ると、単語としては難しくないのに、なぜか日本人は聞き取れないんですよね。
加藤:これも皆さん言うんですけど、知らない単語は無いんですよ。だけど、聞き取れないって不思議でしょ?
茂木:不思議です。目からウロコですね。
加藤:日常会話でワーッと喋り出した時に日本人が聞き取れなくて置いていかれてしまった時も、みんな難しい単語は使っていないんですよ。ただ単に、聞き取る耳が出来ていないんです。
茂木:その耳が出来なくてみんな苦労していると思うんですけど、これは非常に有力なやり方ですね!
加藤:ちょっと読んでもらうだけでビックリするくらい分かるようになるんです。でも、読んでもらうことがポイントなんです。目で見て読むんじゃなくて、読んでもらった音を聞き取る。
そういうやり方をすると相当変わります。ぜひ、番組を聴いてもらいたいですね。
●加藤友朗さんが、洋楽から生きた英会話を教えてくれる!「ENGLISH JUKE BOX (イングリッシュ ジューク ボックス)」公式ホームページ
来週のゲストは、1910年代のイギリスで参政権を求めた女性たちの運動家「サフラジェット」のリーダーとして活動していたエメリン・パンクハーストさんのひ孫、ヘレン・パンクハーストさんをお迎えしてお話をうかがっていきます。
どうぞお楽しみに。