2016年11月06日
今夜お迎えしたのは、先週に引き続き、国際的に活躍をされていらっしゃる
指揮者の井上道義さんをお迎えしました。
井上さんは、桐朋学園大学卒業後、
ミラノ・スカラ座主催 グィド・カンテルリ指揮者コンクールに優勝。
それ以来、一躍、内外の注目を集め、世界的な活躍を開始されます。
その後、1976年に日本フィルハーモニー交響楽団の定期演奏会で日本デビュー。
これまでに、ニュージーランド 国立交響楽団首席客演指揮者、新日本フィル音楽監督、
京都市交響楽団音楽監督を務めました。
現在は、大阪フィルハーモニー交響楽団の首席指揮者、
そして、オーケストラ・アンサンブル金沢音楽監督、ラ・フォル・ジュルネ金沢を含む
多くの実験的企画に携わっています。
今夜は、井上道義さんにご自身の人生のこと、今後のお仕事について伺いました。
──劇的な人生
茂木:マエストロは、実績的には大指揮者なんですけど。
びっくりしたのが、最近では作曲に取り組まれているんですか?
井上:未来の事を考えれば、僕には作曲があると思っていますね。
茂木:どういう曲を作っているんですか?
井上:自分の事しか書けないですね(笑)、私小説みたいな作品ですよ。
茂木:お父様の正義さんをテーマに書かれいてるんですか?
井上:今はそうです。劇場音楽、オペラみたいなものですね。
茂木:お父様は米国籍で、戦争中に苦労されたということも?
井上:父親と母親の話は劇的で、ひどい人生です。戦争に思い切り影響されてますね。
父は日本人ですけど、アメリカ生まれで、アメリカ移民の息子として生まれて。彼が大きくなった頃は日本人は非常に差別されました。
茂木:強制収容なども?
井上:強制収容されないために、日本に出てきた。そしたら、日本では英語しか喋れない日本人は差別されました。でも、資生堂に入ったんですよ。そこで、母親と社内結婚をしたんだけど母は英語がよくできました。
10歳上の父親は、英語しかできない素敵な男だったから結婚したんですよ(笑)。
茂木:なるほど(笑)。
井上:寡黙な男だと思っていたんだけど、何の事はない、日本語ができなかったからなんですよ(笑)。
その父親は、日本で差別されたのでフィリピンに逃れていったんですよ。それで、母親も船で追いかけて行ったんだけど、最終的にはマッカーサーが攻めて来たから、ジャングルに半年間逃れたんです。
茂木:そうだったんですね。
井上:でも、僕自身が母親のお腹から生まれてきたのは日本に帰って来てからなんです。
だけど、父親と母親は性的な関係があったにもかかわらず、僕は生まれなかったんです。
日本に帰って来た時に、うちの父親は女の人が好きな人で…母のことを顧みなかったときに、母は素敵な米軍の男に惚れて僕が生まれたんです。
父親は”正義”という名前なんだけど、赤ちゃん見たけど「絶対に俺の子じゃない!」って言って、どうするとなって…「俺の子供として育てる」と言って、”道義”という、道義的な名前を付けたんですよ(笑)。
茂木:ご自身の名前から1字とったということですよね。
井上:そうですね。僕はずっと知らなかったんですよ、正義の子供だと思ってたんです。父が死んでから僕の出生がわかって、父親に申し訳なかった。めちゃくちゃ反抗ばかりしてて、申し訳なかったということで作品を書きたくなったんですよ。
──指揮者が見る夢とは
茂木:マエストロの人生もすごいんですけど、お人柄のダイナミックさというか…指揮者の方、みんなマエストロの様じゃないですよね?(笑)
井上:違いますよ(笑)。そういう点では、ユニークなのかもしれない。
これは僕がそうなってるんじゃなくて、そうなっちゃってるだけだから、僕に責任はないです(笑)。
茂木:マエストロの今後の夢、どういうことをされたいですか?
井上:僕は夢があったから指揮者になったんじゃなくて、14歳の時に、”じいさんになっても、ずっと楽しく生きたい”と思って。
だから、このままの自分もとっておきたいというので、指揮者だったら取っておけそうだなと思ってやっているんですけど。
今そのじいさんになっているので、自分のやりたかったことはできてると思う。
茂木:そうですね。
井上:それで困るのは、その先どうするかですよね。いま作曲もやっていますけど、結局、夢っていうのは過去なんですよ。みんな過去の材料ですから。
茂木:確かにそうですね。
井上:それを上手く結びつけて、未来のようにしてるのが夢でしょ?だから、これは完全にクラシックなんですよ。
クラシックの世界っていうのは、夢が沢山ある。過去を知れば知るほど未来が分かるっていうのは、本当に真理です。
茂木:むしろ、過去を振り返るというか。
井上:夢は昔の自分と、今の自分をどうやって折り合いつけるかという事ですね、それを作曲でやっていこうと思います。
茂木:僕、本当に楽しみなんですけど。曲の傾向としては、現代曲のようなことではなく、ってことですか?
井上:これは楽しいと思います、日本語が分かりやすいオペラにしています。
分かりやすくない日本語のオペラが多いので、それにはチャレンジしたいです。
それから、オーケストラだけ聴いても面白いオペラにしたいと思っています。一回聴いただけで面白いオペラにもしたいと思っていますね。
●「指揮者 井上道義 オフィシャルウェブサイト」
「東燃ゼネラル児童文化賞・音楽賞について」
来週は、アーティストの遊佐未森さんをお迎えして、お話をうかがっていきます。
どうぞお楽しみに。
指揮者の井上道義さんをお迎えしました。
井上さんは、桐朋学園大学卒業後、
ミラノ・スカラ座主催 グィド・カンテルリ指揮者コンクールに優勝。
それ以来、一躍、内外の注目を集め、世界的な活躍を開始されます。
その後、1976年に日本フィルハーモニー交響楽団の定期演奏会で日本デビュー。
これまでに、ニュージーランド 国立交響楽団首席客演指揮者、新日本フィル音楽監督、
京都市交響楽団音楽監督を務めました。
現在は、大阪フィルハーモニー交響楽団の首席指揮者、
そして、オーケストラ・アンサンブル金沢音楽監督、ラ・フォル・ジュルネ金沢を含む
多くの実験的企画に携わっています。
今夜は、井上道義さんにご自身の人生のこと、今後のお仕事について伺いました。
──劇的な人生
茂木:マエストロは、実績的には大指揮者なんですけど。
びっくりしたのが、最近では作曲に取り組まれているんですか?
井上:未来の事を考えれば、僕には作曲があると思っていますね。
茂木:どういう曲を作っているんですか?
井上:自分の事しか書けないですね(笑)、私小説みたいな作品ですよ。
茂木:お父様の正義さんをテーマに書かれいてるんですか?
井上:今はそうです。劇場音楽、オペラみたいなものですね。
茂木:お父様は米国籍で、戦争中に苦労されたということも?
井上:父親と母親の話は劇的で、ひどい人生です。戦争に思い切り影響されてますね。
父は日本人ですけど、アメリカ生まれで、アメリカ移民の息子として生まれて。彼が大きくなった頃は日本人は非常に差別されました。
茂木:強制収容なども?
井上:強制収容されないために、日本に出てきた。そしたら、日本では英語しか喋れない日本人は差別されました。でも、資生堂に入ったんですよ。そこで、母親と社内結婚をしたんだけど母は英語がよくできました。
10歳上の父親は、英語しかできない素敵な男だったから結婚したんですよ(笑)。
茂木:なるほど(笑)。
井上:寡黙な男だと思っていたんだけど、何の事はない、日本語ができなかったからなんですよ(笑)。
その父親は、日本で差別されたのでフィリピンに逃れていったんですよ。それで、母親も船で追いかけて行ったんだけど、最終的にはマッカーサーが攻めて来たから、ジャングルに半年間逃れたんです。
茂木:そうだったんですね。
井上:でも、僕自身が母親のお腹から生まれてきたのは日本に帰って来てからなんです。
だけど、父親と母親は性的な関係があったにもかかわらず、僕は生まれなかったんです。
日本に帰って来た時に、うちの父親は女の人が好きな人で…母のことを顧みなかったときに、母は素敵な米軍の男に惚れて僕が生まれたんです。
父親は”正義”という名前なんだけど、赤ちゃん見たけど「絶対に俺の子じゃない!」って言って、どうするとなって…「俺の子供として育てる」と言って、”道義”という、道義的な名前を付けたんですよ(笑)。
茂木:ご自身の名前から1字とったということですよね。
井上:そうですね。僕はずっと知らなかったんですよ、正義の子供だと思ってたんです。父が死んでから僕の出生がわかって、父親に申し訳なかった。めちゃくちゃ反抗ばかりしてて、申し訳なかったということで作品を書きたくなったんですよ。
──指揮者が見る夢とは
茂木:マエストロの人生もすごいんですけど、お人柄のダイナミックさというか…指揮者の方、みんなマエストロの様じゃないですよね?(笑)
井上:違いますよ(笑)。そういう点では、ユニークなのかもしれない。
これは僕がそうなってるんじゃなくて、そうなっちゃってるだけだから、僕に責任はないです(笑)。
茂木:マエストロの今後の夢、どういうことをされたいですか?
井上:僕は夢があったから指揮者になったんじゃなくて、14歳の時に、”じいさんになっても、ずっと楽しく生きたい”と思って。
だから、このままの自分もとっておきたいというので、指揮者だったら取っておけそうだなと思ってやっているんですけど。
今そのじいさんになっているので、自分のやりたかったことはできてると思う。
茂木:そうですね。
井上:それで困るのは、その先どうするかですよね。いま作曲もやっていますけど、結局、夢っていうのは過去なんですよ。みんな過去の材料ですから。
茂木:確かにそうですね。
井上:それを上手く結びつけて、未来のようにしてるのが夢でしょ?だから、これは完全にクラシックなんですよ。
クラシックの世界っていうのは、夢が沢山ある。過去を知れば知るほど未来が分かるっていうのは、本当に真理です。
茂木:むしろ、過去を振り返るというか。
井上:夢は昔の自分と、今の自分をどうやって折り合いつけるかという事ですね、それを作曲でやっていこうと思います。
茂木:僕、本当に楽しみなんですけど。曲の傾向としては、現代曲のようなことではなく、ってことですか?
井上:これは楽しいと思います、日本語が分かりやすいオペラにしています。
分かりやすくない日本語のオペラが多いので、それにはチャレンジしたいです。
それから、オーケストラだけ聴いても面白いオペラにしたいと思っています。一回聴いただけで面白いオペラにもしたいと思っていますね。
●「指揮者 井上道義 オフィシャルウェブサイト」
「東燃ゼネラル児童文化賞・音楽賞について」
来週は、アーティストの遊佐未森さんをお迎えして、お話をうかがっていきます。
どうぞお楽しみに。